2017年12月1日に任天堂より発売された、Nintendo Switch用RPG『ゼノブレイド2』。本作を200時間以上遊び倒した編集者によるレビュー。

 2017年12月1日に任天堂より発売された、Nintendo Switch用RPG『ゼノブレイド2』。本作を200時間以上遊び倒した編集者によるレビューをお届けする。

 ゴリラは中ほどに現れる。

“覚醒シーン”が大好きだ

王道オブ王道。『ゼノ』シリーズおなじみのグノーシス主義的にいうならば、『ゼノブレイド2』の物語は、“王道のイデア”だ。

 2クールアニメの11話とかで、強敵にズタボロにやられた主人公や仲間が、パワーアップして無双するやつ。あれが超好き。

 というか、嫌いな人を知らない。いたら挙手していただきたい。そのまま一本背負いしてやる。

 さて、なぜこんな話をしたかといえば、『ゼノブレイド2』のストーリーが“まるで覚醒シーンのバーゲンセール”とでも呼ぶべき、クライマックスの連続だったから。本作は章仕立てに区切られているのだが、2話に1回くらいの頻度で覚醒シーンが登場する。制作陣は“加減”って言葉を知らないのか。本当にありがとうございます。

ヒロインの“ホムラ”も金髪になって髪が伸びるぞ!

 ストーリーラインは、まさに王道のボーイ・ミーツ・ガール。次第に壮大になる物語とは裏腹に、主人公である“レックス”の根底にあるのは、一貫して“大切な女の子との約束”。すんごい個人的な理由! でも、だからこそ共感できる。

 またレックスは、伝承の楽園を夢見る16歳の“少年”でありながら、稼ぎ頭として村を支える立派な“大人”の考え方も持ち合わせている。このあたりのバランス感覚も、感情移入しやすいポイントかもしれない。

 脇を固める仲間たちも魅力的だ。

 “ジーク・B・極(アルティメット)・玄武”は、初登場時こそコメディリリーフだが、正体を明かした途端、頼れる年長者としてレックスを見守ってくれる。反則的なギャップだ。

 ジークのパートナー“サイカ”も、攻撃モーションを短縮させるスキルがべらぼうに強くて重宝した。物語が進むにつれて、サイカのビン底眼鏡が透き通っていく演出は『ゼノブレイド2』七不思議のひとつだと思う。未プレイの方には全く意味が伝わっていないと思うが、そうとしか言えないんだからしょうがない。

 ノポン族の“トラ”と、人工ブレイド(=アンドロイド)である“ハナ”は、レックスたちのような異能の力を持っているわけではない。自分の持つ“偽物”の力にコンプレックスを抱き、“本物”を目指して前向きに頑張ろうとするハナの姿は、あまりに人間臭い。人工的に作られた心を持ちながら、作中で“絆”を一番大切にしているのは他ならない彼女だ。

 そうした背景もあって、レックスが大切な人との絆を忘れそうになったとき、あるいは、絆を守るために道を誤りそうになったとき、ハナの言葉はプレイヤーの胸を強く打つ。

 “ニア”はかわいい。

 かわいい。

終盤、「ニアがかわいい」以外の記憶がすっぽり抜け落ちている章がある。

 そんなわけで、プレイしている僕は終始「レックス……みんな……がんばれ……!」と“運動会のお母さん”になっているから、結構な頻度で訪れる物語の山場には、もう気持ちが昂ぶって仕方がない。覚醒と感動が織りなす、カタルシスに次ぐカタルシス。アドレナリンの蛇口が開きっぱなしになって、頭ん中のクラシアンが総稼働する。

 「お客さん、なんでこんなになるまで放っといたんですか!」、「いや、覚醒シーンが……」、「ああ、覚醒シーンなら仕方ないっすね」と、修理に来たお兄さんも納得して帰っていく。

「ネタバレするな!」と怒られてしまいそうだが、紹介しているカットは氷山の一角でしかない。

 そうした山場で流れる音楽もすばらしい。

 前作ゼノブレイドといえば、サウンドトラックの評価が非常に高いタイトルで、フィールドやイベントを彩る名曲の数々に魅了されたファンは数知れない。『ゼノブレイド2』になってもその魅力は相変わらずで、ただでさえ激アツな展開に……

 こんなにもエモーショナルな音楽が重なるのである。こちらは、感動的な場面で流れることが多いボーカル曲。盛り上がりがピークに達したときのBGM“Counterattack”も心に響く。

 さて、ここであなたの疑問にお答えしよう。

「そんなに覚醒シーンが続いたら、マンネリ化しちゃうんじゃないの?」

 しない。

 いや、ごめん。するかもしれない。感情の閾値って人それぞれだから。確実なことは言えない。でも僕はしなかった。終盤に入ると物語が一気にシリアスになって、謎がみるみる回収されていく。こうした怒涛の展開は初代『ゼノブレイド』に通じるものがあるので、シリーズファンは絶対にプレイしてほしい。

 ただし、王道がゆえのご都合主義感は若干否めない。個人的には、ヒロインである“ホムラ”が、“理想の女の子”すぎて、逆に萎縮してしまった。かわいくて優しくて料理もできて、おまけに最初から好感度がMAXに近いんだもの。現実にこんな子がいたら、「壺でも買わされるんじゃないか」とちょっとビビる。

主人公・レックスの口癖は「行こう!」。大人たちを巻き込んで、前だけ向いて走っていく。そんな姿が青臭く感じることもあるが、大人目線で感情移入できるような、成熟したキャラクターもしっかり用意されている。

 以上、ストーリーについて述べた。女性はどうかわからないけど、男っていくつになっても、DNAに脈々と刻まれた“王道を愛する少年の人格”を飼っていると思う。次週の少年ジャンプを心待ちにしていた、あの頃の気持ち。そいつが叫ぶのだ。「おんもしれ~っ!(どん!)」って。

佳境へと進むにつれ、高橋哲哉氏率いる制作陣の“色”も見え隠れし始める。

君は、初めてゴリラを見たときの感情を思い出せるか?

 じゃあ、ゲームシステムはどうなのか。これまた本能が喜ぶ作りになっている。

 最大の特徴は、広大で探索し甲斐のあるマップだ。洞窟、崖に垂れ下がったツタ、素潜り可能な水場……そうした怪しい場所の先には、必ずご褒美が用意されている。それは、時に強力なアイテムであったり、あるいは想像を超えた絶景だったりする。

 「あそこには、何があるんだろう」、「どうやって辿り着くんだろう」……そうした探究心が、どうしようもなく刺激されるのだ。

 序盤の草原には、適正レベルのモンスターに混じって、レベル80を越えるゴリラ(姿のモンスター)が徘徊していたりする。当然、勝てるわけがない。子どものころ、初めてゴリラ(本物の)を見たときのことを思い出してほしい。

「覚えてないわ。貴重な幼少期の記憶容量をゴリラに割く奴、いる?」

 申し訳ない。よく考えたら僕も覚えていない。だから勘で話す。たぶん「なんだコイツ、スゲエ―!」と、畏怖と、驚きと、ワクワクがないまぜになった感情を抱いたのではないだろうか。勘だけど。

 本作でレベル80越えのゴリラ型モンスター、もうゴリラと呼ぶが、ゴリラを目撃したときの印象も全く同じだ。

 「見つかったらボロ雑巾みたいにされる……」という畏怖「世界には、こんなに強いモンスターがいるんだ」という驚き「いつかこいつを倒せるんだろうか」というワクワク感――。

 瞳に映るすべてが新鮮だった幼少期のように、『ゼノブレイド2』の世界は輝きに満ち溢れている。

“バルバロッサ”という、やたらカッコいい名前がついている。貴族のゴリラだ。こうした固有名を冠するユニークモンスターは、同レベル帯の敵を凌ぐ実力を持つ。負けてもペナルティ無しで復活できるので安心。

 そう感じるのは、ゴリラをはじめとするモンスターたちを見ていると、その生態系が容易に想像できてしまうからだ。

 レベル80越えの強ゴリラの周囲には、レベル20程度の弱ゴリラが群れを作っている。ほかにも、洞窟に文明を築いている人型モンスター、封印された神体に祈りを捧げるモンスター、卵を守るようにこちらを襲ってくるモンスター……、例を挙げればキリがない。単なる記号ではない生命の営みが、巨神獣(※)には息づいている。

※『ゼノブレイド2』の舞台となる大地もまた、巨大な生物の背中や体内に存在する。

 自分の話で恐縮なのだが、僕は秘境と呼ばれる土地を巡るのが大好きで、ボリビアのウユニ塩湖、ベネズエラのギアナ高地、ジャングル、砂漠など、RPGに登場するような数々のロケーションを実際に旅してきた。

 だが、それでもなお『ゼノブレイド』シリーズのフィールドには、どうしようもなく心が震える。現実の絶景を目の当たりにしたときと同じように、脚が歩みを止めなくなる。本能が、理性のブレーキをぶっ壊してしまう。

 フィクションだからこそできるファンタジー表現と、フィクションであることを忘れてしまう生命のリアル。さらに、探究心をくすぐるレベルデザインまでもがブレンドされた、最高と評するにふさわしいフィールドがここにある。“世界の絶景100選”みたいな写真集に想いを馳せる暇があったら、『ゼノブレイド2』を遊んで欲しい。

 自宅にいながら、旅の感動を存分に味わえる。実際に味わってきた奴が言うんだから、そこそこ説得力はあるはず。きっと。たぶん。

 反面、戦闘システムは、本能だけでプレイするには少々複雑だ。一度システムを理解してしまえば、超ダメージを与えて敵を一掃する快感と、適度な間隔で訪れるピンチをどちらも味わえるのだが……。チュートリアルの不親切さも相まって、若干のとっつきにくさは否めない。

 だがこれは、言い換えれば“懐の広さ”なんじゃないか、と思う。

 僕のパーティーは、“属性玉”と呼ばれる爆弾のようなものをハイスピードで4~6個作り出し、一気に破裂させて超ダメージを与える戦法を得意としている。これがめちゃめちゃ気持ちいい。『HUNTER×HUNTER』で例えるなら、ゲンスルー組の“解放(リリース)”みたいな戦法だ。

 だが、同じく本作をプレイしている友人に話を聞くと、敵を転ばせたり、空中に吹き飛ばしたり、叩きつけたりして、一方的な戦いを繰り広げているらしい。バラと戦ったときのビスケじゃん、えげつねえな。

“属性玉”で大ダメージを与えるシーンの参考動画。解放してやったぜ! 恐怖からな!!

 共通しているのは、システムを理解し、そのためのスキルセットにこだわり始めたとき、本作の戦闘は劇的に面白さを増すということ。前述したような、遥か格上の強敵に勝利したときの達成感は、シリーズを通した醍醐味のひとつだ。

 加えて、ランダムな順番で入手できる“ブレイド(武器の守護者のようなもの)”たちが、そうした遊びの多様性に拍車をかける。発売前は未知数だった“ブレイド”のランダム入手だが、実際に遊んでみると、ストーリーの本筋を邪魔することなく、戦闘のほどよいスパイスとなってくれた。

ブレイドには、それぞれ専用のイベントが設定されており、個性をガッツリ掘り下げてくれる。個人的には氷属性のナナコオリがお気に入り。『ゼノブレイド2』は、ナナコオリちゃんと一緒にトップアイドルを目指すゲームです。

 最後に、アップデートについて語らねばなるまい。2017年12月22日に配信された更新データver1.1.1、通称“神アプデ”によって、さまざまな不満点が解消された。

 探索が楽しいゲームだけに、マップ周辺の利便性が向上したのは本当にうれしい。ユーザーインターフェースについての細かい不満点は残っているが、最大の難点だったマップが改善されたことで、長時間遊んでもストレスを感じないほど快適になっている。また、ミニゲームの難易度調整に喜びの声を上げたプレイヤーも多いだろう。

 アップデート前に書かれたレビューを眺めていると、上記2点を欠点として挙げているものが散見するが、これらは既に解消されているので安心してほしい。

『ゼノサーガ』シリーズよりKOS-MOS Re:が参戦している。攻撃タイプのブレイドなのに、回復技も使えるからズルい。“戦略を選ばずパーティーに組み込めるくらいには強いが、バランスブレイカーというほどではない”という丁度いい能力でのゲスト参戦。

本能が歓喜するRPG

 僕は現在20代そこそこだが、今でも週刊少年ジャンプを愛読している。おそらく30歳になっても、40歳になっても読み続けるだろう。

 つまり言いたいのは、大人になっても、王道に心揺さぶられる気持ちと、未知の世界に対する冒険心は消えないはずだということ。もし見つからないのなら、それは眠っているだけなんじゃないか。大きなショックを与えればきっと目を覚ます。

 『ゼノブレイド2』こそ、我々の本能を歓喜させる刺激となりうる。どっぷりめり込めるゲームをお探しの方は、ぜひ手に取っていただけたなら、喜ばしいことこの上ない。

(TEXT/戸部マミヤ)