いまから遡ること30年、1987年12月18日に、ファミリーコンピュータ用ソフト『ファイナルファンタジー』(以下、『FF』)が発売された。
坂口博信氏らが、小さな容量にたっぷりの内容を詰め込んだ『ドラゴンクエスト』の存在に衝撃を受け、「自分たちもファミコンでRPGを作ろう」と考えて始まったプロジェクトだという『FF』。第1作の発売後、『FF』はさまざまな進化を続け、いまは『ドラゴンクエスト』とともに、スクウェア・エニックスを代表するRPGシリーズとしてその名を轟かせている。
この『FF』30周年という節目を祝う企画のひとつとして、オーケストラコンサートツアー“FINAL FANTASY 30th Anniversary Distant Worlds: music from FINAL FANTASY JIRITSU / 而立”が、2017年7月よりスタート。オーストラリア公演を皮切りに、アメリカやイギリス、フランスなどで行われ、12月に日本に凱旋。12月8日に大阪公演、12月9日、10日に東京公演が行われた。本記事では、12月10日の公演の模様をリポートしよう。
東京公演では、演奏前に、植松伸夫氏、天野喜孝氏、スクウェア・エニックス代表取締役社長 松田洋祐氏が登壇。今回のツアーのタイトルに“而立”と付けたのは植松氏とのことで、孔子の“三十而立(三十にして立つ)”という有名な言葉を引用し、「『FF』も30年の経験を持って、『FF』なりの価値観を持って踏み出すときなのかなと考えた」と、名付けの理由を語った。
天野氏は、最初の『FF』のコンサートが開催されたときのことをいまでも覚えているそうで、「『FF』の空間に入った感じがした」と当時を振り返った。いまも、メインテーマなどが流れると、『FF』の空間に入った気持ちになるとのことで、“植松氏の音楽と『FF』はつながっている”とのコメントも。
なお、会場には来られなかった坂口氏からは、ビデオレターが到着。植松氏との出会いに感謝していること(“本人に直接は言えないが、カメラには言える”とか)、深い世界観が内包された天野氏の絵が、『FF』を深く広くしてくれたことに感謝していることを語り、来場者には“音の震えが体に浸透していく課程を楽しんでほしい”とメッセージを送った。
そして松田氏が、改めてファンに挨拶を述べ、演奏がスタート。おなじみの「プレリュード」から始まり、「ビッグブリッヂの死闘」(『FFV』)や「ザナルカンドにて」(『FFX』)といった人気曲から、「Heavensward」(『FFXIV』)、「APOCALYPSIS NOCTIS」(『FFXV』)といった近年発売された『FF』の楽曲まで、幅広い曲が披露された。
植松伸夫氏が作曲した、『FFXV』の“オンライン拡張パック:戦友”の主題歌「Choosing Hope」の演奏では、ソリストの鈴木瑛美子さんが圧巻の歌声を披露。鈴木さんは、なんと現役女子高生。湖池屋のテレビCMでパワフルな歌声を耳にした人も多いと思うが、東京国際フォーラムのステージ上でもその歌声は健在で、歌い終えた後は大きな拍手が会場を包んだ。
また、Distant Worldsと言えば、演奏中にゲームの映像が流れる点も見どころだが、「オープニング~爆破ミッション」(『FFVII』)では、オリジナル版の映像から始まり、途中から現在開発中の『FFVII リメイク』の映像に切り替わるという、粋な演出が行われた。ちなみに、2015年に公開された『FFVII リメイク』のトレーラーに使われている音源は、過去のDistant Worldsで演奏されたものだという。
『FFVI』の人気曲である「オペラ~マリアとドラクゥ」は、日本で披露されるのは、2012年のDistant Worlds以来。ゲームでは収録されなかった、ドラクゥとラルスの一騎打ちシーンを含む完全版で、オーケストラの演奏とコーラス、ソリストたちの声、ナレーションによって描かれた物語に、来場者はスタンディングオベーションで賞賛を送った。
オペラの後、「FFメインテーマ」とともにスタッフロールが流れ、その後アンコールで「エアリスのテーマ」、「片翼の天使」が披露され、シリーズ30周年の節目を祝うDistant Worlds日本公演は終了となった。しかし、ツアー自体はまだまだ続く予定で、1月にはニューヨーク、カンザスシティ、ロサンゼルスで開催予定だ。
終演後のインタビューで、「遠い先のことはあまり考えていない」と植松氏は語る。そのとき、「これ、おもしろいんじゃない」と感じることを実行していっているとのこと。指揮のアーニー・ロス氏も、おもしろいと思ったことはすぐに実行するタイプで、気が合うとか。きっと両氏は、ニューヨーク以降の公演についても、そのフットワークの軽さで、いろいろな試みを取り入れていくのだろう。
なお、インタビューには、鈴木瑛美子さんも参加した。ファンに受け入れてもらえるだろうか……と緊張していたそうだが、5000人を前に歌いきったことについて、植松氏は“拍手が続いていたことが、来場者の胸を打っている証拠だ”と賞賛。アーニー・ロス氏も「おめでとう」とメッセージを送った。両氏は、鈴木さんの海外デビューをいつにするか? という話題で盛り上がっていたが、ぜひ日本でも、また鈴木さんの歌声が聴ける機会を設けてほしいと思う。
東京公演 セットリスト
・第一部
1.プレリュード 【FINAL FANTASY シリーズ】
2.ビッグブリッヂの死闘 【FINAL FANTASY V】
3.勝利のファンファーレ 【FINAL FANTASY シリーズ】
4.星降る峡谷 【FINAL FANTASY VII】
5.独りじゃない 【FINAL FANTASY IX】
6.The Oath 【FINAL FANTASY VIII】
7.剣の一閃 【FINAL FANTASY XII】
8.Heavensward 【FINAL FANTASY XIV】
9.ファングのテーマ 【FINAL FANTASY XIII】
10.Choosing Hope 【FINAL FANTASY XV】
ソリスト:鈴木瑛美子
11.Liberi Fatali 【FINAL FANTASY VIII】
・第二部
12.オープニング~爆破ミッション 【FINAL FANTASY VII】
13.愛のテーマ 【FINAL FANTASY IV】
14.Sword Song バトルメドレー 【FINAL FANTASY XI】
15.APOCALYPSIS NOCTIS 【FINAL FANTASY XV】
16.ザナルカンドにて 【FINAL FANTASY X】
17.オペラ~マリアとドラクゥ 【FINAL FANTASY VI】
ソリスト:太田悦世 / 渡邉具晃 / 押見春喜 ナレーター:郡正夫
18.FFメインテーマ 【FINAL FANTASY シリーズ】
・アンコール
19.エアリスのテーマ 【FINAL FANTASY VII】
20.片翼の天使 【FINAL FANTASY VII】
大阪公演 セットリスト
東京公演に先んじて行われた大阪公演では、光田康典氏が登壇し、氏が作曲した「IGNIS and RAVUS Theme Medley」が演奏された。大阪公演のセットリストも、併せて紹介しよう。
・第一部
1.プレリュード 【FINAL FANTASYシリーズ】
2.ビッグブリッヂの死闘 【FINAL FANTASY V】
3.勝利のファンファーレ 【FINAL FANTASY シリーズ】
4.星降る峡谷 【FINAL FANTASY VII】
5.独りじゃない 【FINAL FANTASY IX】
6.The Oath 【FINAL FANTASY VIII】
7.剣の一閃 【FINAL FANTASY XII】
8.Heavensward 【FINAL FANTASY XIV】
9.ファングのテーマ 【FINAL FANTASY XIII】
10.愛のテーマ 【FINAL FANTASY IV】
11.APOCALYPSIS NOCTIS 【FINAL FANTASY XV】
12.Liberi Fatali 【FINAL FANTASY VIII】
・第二部
13.オープニング~爆破ミッション 【FINAL FANTASY VII】
14.IGNIS and RAVUS Theme Medley 【FINAL FANTASY XV】
作曲家・光田康典氏登壇
15.Sword Song バトルメドレー 【FINAL FANTASY XI】
16.ザナルカンドにて 【FINAL FANTASY X】
17.オペラ~マリアとドラクゥ 【FINAL FANTASY VI】
ソリスト:太田悦世 / 渡邉具晃 / 押見春喜 ナレーター:郡正夫
18.FFメインテーマ 【FINAL FANTASY シリーズ】
・アンコール
19.エアリスのテーマ 【FINAL FANTASY VII】
20.片翼の天使 【FINAL FANTASY VII】
週刊ファミ通2017年12月28日号(2017年12月14日発売)では『FF』30周年特集を掲載!
週刊ファミ通2017年12月28日号(2017年12月14日発売)では、『FF』シリーズのファンから寄せられた思い出のエピソードやイラストを軸に、クリエイターへのアンケートや特別企画も加え、節目をお祝いする40ページの特集をお届け。植松伸夫氏のファミ通コラムが限定復活&コラム特別版も掲載しているので、ぜひチェックを。