アニメーション監督細田守氏の最新作『未来のミライ』が、2018年7月20日に公開されることが、本日2017年12月13日に開催された記者発表会で発表された。ここでは、その記者発表会の内容をリポートする。
本作は、映画『時をかける少女』、『サマーウォーズ』などで知られる細田守監督の最新作。舞台は横浜市の磯子区、金沢区をモチーフとしており、生まれたばかりの妹“ミライ”に両親の愛情を奪われた4歳の男の子“くんちゃん”が主人公。くんちゃんは未来からやってきた妹の“ミライ”と出会い兄妹を軸に物語が展開する。
100分ほどの上映時間を予定しており、家族の歴史をめぐる冒険を、くんちゃんの家一軒と庭ひとつをおもな舞台として描く。映画的なサスペンスではなく、身近なことから世の中を開拓していき、愛と自分自身を探す旅になる。また、妹のミライが未来からやってくるとことから、時間を行ったり来たりする展開もあるそうだ。
細田監督は、「小さな子どもの目線から、新しい命ができて世界が広がり、子どものささいな出来事を通して、人間の人生のテーマを垣間見れると思う」と話す。また、子どもに限らず、子育てをしている大人、子ども時代に同じような経験をした大人にも楽しめるとし、子供の視点を通して世界をダイナミックに見せていきたいと意気込みを語った。
また、主人公を4歳の男の子にした理由については、「自分の子供が4歳だから」と明かす細田監督。二児の父親である細田監督は、子育ての時間が映画の発想の主であったそうで、世界映画史の中であまりない“4歳の男児”が主人公の本作に対し、「チャレンジでもある」と述べた。
“くんちゃん”という、少し変わった名前の由来については、揺れ動いているような状態を表していると細田監督。「●●君」でも「●●ちゃん」でもない、つまりアイデンティティが定まっていない状態を示しているようだ。
妹の“ミライ”についても、そういったアイデンティティが揺れ動く状態から、どのようにして未来にたどり着くかを表したという。
「いまの世の中は価値観が変わっていく時代。ひと昔前は結婚をすることが当たり前でしたが、いまはそうではない。生きかたは自由になり、子供を作らなくていい。僕はひとりっ子で昔は珍しがられたが、いまはそうではない。多様な価値観があるだけ、個人(個性)が揺れ動いている時代になっている。これをやっておけばいいという基準がありません。この揺れ動いている時代(くんちゃん)や価値観の中で、どう生きて、未来(ミライ)はどうなっていくのか、そういったいろいろな意味を込めている」と明かしてくれた。
細田監督の作品は、『サマーウォーズ』から家族を描いているが、家族をテーマにし続けている理由について、“家族”はひとつの作品で語りつくせるものではないと断言する。
『おおかみこどもの雨と雪』は子育てに奮闘する母親、そして『バケモノの子』は父親の物語、『未来のミライ』は兄妹に焦点を当てている。本作については、5歳の長男と、もうすぐ2歳になる長女の父親である細田監督の実体験が色濃く出ており、「二人目が生まれた瞬間に、子どもどうしの母親の愛をめぐる争奪戦……狂おしいばかりのやりとりを見て、人間は愛なしにはいられないと感じました。因縁があり、愛を失った方は愛について何を考えて成長していくのかを見て欲しい。家族そのものは時代とともに変化しているし、変化しているならその都度描いていいと思う。子供だろうが大人だろうが、本質的なものを垣間みれるし、興味が尽きないモチーフだと思います」とコメントした。
本作は2018年7月20日に上映開始。夏休み開始付近であり、子供から大人まで楽しめるアニメーションとして、ベストなタイミングであるとプロデューサーの齋藤優一郎氏は述べる。また、海外での展開に関しては、映画が完成してないにも関わらず、すでに57ヵ国から上映オファーが届いているとのこと。日本国内の公開規模は「『バケモノの子』の458スクリーンと同等、それ以上の規模で公開させていただく方針になっている」と発表した。
最後に細田監督は、「非常に独特で魅力をもった作品になるのではと感じている。スタッフも楽しく制作しており、手応えを感じます。ぜひ期待して見てくださると、嬉しいです」と述べ、発表会を締めくくった。
作品情報
監督・脚本・原作:細田守
作画監督:青山浩行、秦綾子
美術監督:大森崇、高松洋平(※高は異体字になります)
プロデューサー:齋藤雄一郎
企画・制作:スタジオ地図
配給:東宝