第二次世界大戦後のアメリカ・ロサンゼルスを舞台に、新米刑事として数々の事件に挑むアクションアドベンチャーゲーム、『L.A.ノワール』。2011年に発売され、その濃厚な世界観と物語、ロックスター・ゲームスならではのディテールへのこだわりが衝撃を与えた本作が2017年12月7日、プレイステーション4、Xbox One、Nintendo Switch向けに改良された新バージョンとして生まれ変わる。さらに、ロックスター・ゲームス初挑戦となるVRゲームで、本編からチュートリアルと7つの事件をピックアップしたHTC Vive専用タイトル『L.A.ノワール:VR事件簿』(以下、『VR事件簿』)も発売予定となっているのだ。今回は、新バージョンのNintendo Switch版と、『VR事件簿』をひと足先に体験してきたので、オリジナル版『L.A.ノワール』をとことん楽しんだ筆者が、その進化と魅力をお伝えしていこう。
1947年のロサンゼルスがより鮮やかに蘇る
まずは新機種版から解説していこう。新機種版の大きなポイントは、グラフィックのグレードアップだ。2011年のオリジナル版でも評価の高かった、1947年のロサンゼルスを忠実に再現した広大なオープンワールドが、さらに美麗な画質で表現されている。さらに、天候のエフェクトを始め、街並みから証拠品など細部にいたるまで、あらゆる場所に手が加えられ、ゲーム体験の質がグッと向上。本作の特徴である、どこか暗い色調や雰囲気が特徴の犯罪映画“フィルム・ノワール”をオマージュした映画的な描写や表現手法も、よりいっそう冴えわたっているということだ。
Nintendo Switch版では、ドック接続時は1080p、携帯モード時は720pでプレイできる。プレイステーション4版、Xbox One版ではフルHD画質。プレイステーション4 Pro、Xbox One Xでは、4K解像度に対応している。
とくに印象的だったのは、グラフィックのパワーアップに伴って、キャラクターの表情の変化がさらにわかりやすくなっている点。取り調べの際に目まぐるしく変わる表情はより人間くさくなり、その感情がダイレクトに伝わってくる。オリジナル版よりも表情が読み取りやすいので、筆者としてはかなりうれしく感じた。
捜査の中で行う被疑者や目撃者への取り調べ。キャラクターの表情は、俳優の表情をモーションスキャンで取り込んでおり、質問や返答の内容によって多彩な変化を見せる。
また、Nintendo Switch版は、ほかの新機種にはない独自の操作が多数盛り込まれており、オリジナル版との違いをもっとも体感しやすいといえるだろう。Joy-Conのモーションコントロール機能に対応しているため、手掛かりとなる証拠品を拾って調べたり、犯人との格闘などといった動作が、ジェスチャー操作で体感的に楽しめる。さらに、ドックから取り外して携帯モードでプレイする際は、ディスプレイのタッチ操作が可能となっている。感度も良好で、現場検証で調べる場所をタッチして指定したり、画面をピンチインしてズームしたり、手帳のページをスワイプでめくったりと、まるでスマートフォンのような感覚で思うままに操作できた。
新機種版には配信中のダウンロードコンテンツがすべて収録されている。価格も手ごろなので、未プレイの人は『L.A.ノワール』の世界をがっつり体験できる絶好のチャンスだ。
Nintendo Switch版はドック接続時と携帯モード時の棲み分けができており、1本のソフトをそれぞれ違ったふたつの遊びかたでプレイできるのが、最大の魅力だ。ちなみに、筆者は携帯モードでのプレイがかなり気に入ったので、実際に購入したらまずはこちらで遊ぼうと思っている。タッチ操作で操作できるのもいいのだが、何よりも場所を選ばずにプレイできるのはすばらしい。
目の前で起きる事件に挑む臨場感
HTC Vive専用のVRタイトル『VR事件簿』では、チュートリアルの“見覚えのある男”と、7つの収録事件のうち“購入者要注意”をプレイできた。『L.A.ノワール』がVR化するというニュースを目にしたときは、「オリジナル版を考えると、VRとの相性はよさそうだけど、少し地味になるんじゃないか?」と思っていた。しかし、結果から述べるとそれは杞憂であり、むしろViveのコントローラを握る手はつねに汗ばむほど、興奮できた。なぜなら、『VR事件簿』に収録されている事件は、VRでのプレイに適したものがセレクトされており、さらにVR向けにしっかりと味付けがなされていたからだ。
『VR事件簿』では、移動から戦闘にいたるまで、ほぼすべてのアクションを、コントローラを使って現実と同じ動作で操作できる。なかでも犯人との戦闘は、オリジナル版ではボタンひとつで行えるガードや、攻撃を避けるといったアクションを、実際に動いて操作する必要があるため、格闘の末にノックアウトしたときの達成感はひとしおだ。パンチの勢いや相手との間合いも考えながら戦う必要があり、オリジナル版ならびに新機種版とは異なるおもしろさが生まれている。
手帳を開けば、取り調べでの質問の選択や移動先の設定ができるほか、フリーハンドでも情報を書き込めるようになっているとのこと。
移動手段となる自動車は、主観視点で運転席に座って運転できる点がユニークだ。現実での運転操作が、キーを回してエンジンをかけるところから再現されており、リアルなドライブを楽しめた。また、デモプレイ時は粋な計らいで椅子を用意してもらったのだが、これで“運転席に座っている”という感覚が一気に増した。運転の際は、椅子に座りながらプレイすることをオススメする(ペーパードライバーの筆者はテンションが上がりすぎて、盛大に衝突事故を起こしたが……)。そして、VR版ならではのポイントとして、車窓を流れていく風景にも感動した。360度に広がるロサンゼルスの街並みは、ぜひ実際に目にしてほしい。
ロックスター・ゲームスの新たな試みに期待
ロックスター・ゲームスからオリジナル版の『L.A.ノワール』が発売されたときは、『グランド・セフト・オート』や『レッド・デッド・リデンプション』に代表される、オープンワールドを好きなように歩き回れるアクションゲームにはない、よりアドベンチャー感溢れる新鮮な体験に胸を躍らせたものだ(言うまでもないが、思うままに行動できるのもステキな体験だ)。今回の『L.A.ノワール』新機種版および『VR事件簿』では、当時感じた興奮をさらにブラッシュアップした感覚を味わうことができた。とくに、Nintendo Switchへの進出、同じくVRタイトルへの挑戦は、現状に甘んずることのないロックスター・ゲームスの精神を感じさせてくれた。この挑戦がどのような形で発展していくのか、今後に注目したい。