『Detroit Become Human』のメディア向けセッションの模様をお届けしよう。

 2017年11月1日~5日まで(現地時間)、フランス・パリにてゲームイベントParis Games Week 2017が開催。その2日前にソニー・インタラクティブエンタテインメントヨーロッパ(SIEE)によるカンファレンス“PlayStation Media Showcase 2017”が実施されたわけだが、同イベントにおいて、記者にとって白眉だったのは、やっぱり『Detroit Become Human』。メイドであるアンドロイド、カーラの葛藤を描いた臨場感溢れる映像が、記者の心をがつんと捉えた。

 そしてその翌日……SIEEによるメディア向けセッションにて、『Detroit Become Human』のプレゼンを受ける機会を得た。気になるその内容はというと、やはり……というべきか、“PlayStation Media Showcase 2017”で映像が公開されたカーラのミッション。登壇したのは開発元であるQuantic Dreamの共同創業者、ギョーム・デ・フォンダミア氏で、「ふたつのパターンをお見せする」という。どうやら、みずからプレイしつつ、ふたつの分岐を紹介してくれるらしい。というわけで、まずはおさらいのために、“PlayStation Media Showcase 2017”で公開された映像をご覧いただこう。

 まずは、今回のデモの登場人物を整理しておくと、アンドロイドであるメイドのカーラと、父親のトッド、そして娘のアリスの3人。父親のトッドはDVの傾向があり、その日は夕食の席で、「アンドロイドのために仕事を首になったが、家庭の雑事をこなすために、アンドロイドのメイドを使わないといけない」といった不満を漏らしている。なんとも重い状況だ。そしてトッドはアリスに当たり散らし、アリスは2階の自室へ。トッドはアリスを追いかけようとするが……というシチュエーションになる。

カーラ
トッド
アリス

 ここでカーラに転機が訪れる。「動くな」とのトッドの命令に、従うか、抗うか、選択を迫られる状況になるのだ。選択は、透明な赤い壁をもって視覚的に表現され、従わない(つまりアリスを助ける)ことを選ぶと、その赤い壁を突き抜けることになる(おそらく命令に従っているとお話は一切進まないわけではあるが)。ここはおそらく、“アンドロイドが自分の意思で行動することを選択した”ということを示す、象徴的なシーンであることを意図したのであろう。タイトルに引きつけて言うならば、より“Become Human(人間になった)”瞬間だと言えると思う。

 そのあと、アリスのもとに行くことを選択したカーラは2階へ行くが、追いかけてきたトッドの攻撃に合い、破壊されることになってしまう。そしてアリスにも悲劇が訪れる……。と、最悪の結末が訪れたあとで、フォンダミア氏は複雑に分岐したフローチャートを表示し、カーラの転機となったシーンから再びプレイし始める。だが、今回のカーラはすぐには2階に行かない。まずは1階にいたままのトッドを説得にかかるのだ。もちろん、トッドは聞く耳を持たないわけであるが、そこでカーラはトッドの部屋に入り、引き出しの中にある拳銃を手にすることになる。そこでフォンダミア氏は「トッドの部屋のドアが開いていたから拳銃を入手することができました」と発言。つまり、それまでのプレイで、トッドが部屋のカギを開けておく選択をしたから、ここで拳銃が入手できるようになったというわけだ。なんとも十重二重に絡み合うゲームプレイであろうか。

 さて、拳銃を入手したカーラは、アリスを折檻すべく2階に上がったトッドを止めるべく追いかける。そこでひと騒動があり……という流れになる。カーラは拳銃を持っているために、先ほどとは違う未来が描かれるのは当然のことだ。「『Detroit Become Human』はノンリニアなゲームで、つねに判断を問われることになります」とフォンダミア氏は言う。今回のデモの2例はあくまで一部であり、本来はもっとたくさんの選択肢が存在すると思われる。

ライター兼ディレクターが語る『Detroit Become Human』の真実

 フォンダミア氏のデモが終わったあとで、『Detroit Become Human』のライターにしてディレクター(そしてQuantic Dreamの代表でもあるようだ)ディビッド・ケージ氏に、合同インタビューをする機会を得た。以下にそのやり取りをご紹介しよう。

――ゲームメカニズムについて聞かせてください。『Detroit Become Human』は、『HEAVY RAIN(ヘビーレイン) 心の軋むとき』とどう違うのでしょうか? 『HEAVY RAIN(ヘビーレイン) 心の軋むとき』と『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツーソウルズ)』のどちらに近いのですか?

デイビッド 同じ開発者が作っていますし、同じタイプのゲームなので、ぜんぜん違うとは言いませんが、私たちとしては前にやったことと同じことをくり返したくはなかったので、語りたいストーリーをまったく新しく作っています。これまでやってきた、“コントローラーで語りたい”ことの延長線上に本作はあります。キャラクターが難しい局面になったら、プレイヤーの操作も難しくなるのは当たり前のことで、プレイヤーのアクションが、そのあとの結果を決めることになります。本作では、アクションがどのような影響をもたらすのかを、きちんと描きたかったんです。ゲームを同じように進めている友だちがいても、まったく違うストーリーになる可能性があります。少なくとも、『Detroit Become Human』はいままでに関わった中で、もっとも規模の大きなタイトルであることは間違いありません。

――本作では、ストーリーがありつつも枝分かれするわけですが、そのへんの整合性はどのようにしてつけたのですか? ブレーンストーミングを行って、シナリオをどうするか、話し合ったのですか?

デイビッド 『Detroit Become Human』のようなゲームを開発するときは、ふつうにスクリプトを作ったり、リニアなゲームを作るようなわけにはいきません。アイデアを出して、構造をきちんと頭の中で組み立てていきます。いちばん大事なのは、プレイヤーにジレンマの機会を与えること。選択の機会を与えるわけです。その選択に直面したときにどうなるのかということを事前に知っておいてもらった上で決断してもらう。もちろん、アンドロイドの選択ではあるわけですが、プレイヤーにとっても、感情的で考えさせられる決断になるわけです。本作にはいろいろなテーマがあって、実際の世界ともつながっています。
 まあ、質問にお答えしますと、本作には6000~8000の多様性があります。それをやりくりするのはたいへんなことです。ライターは分岐のありうる可能性を管理しないといけないですし、アクターはきちんと演技しないといけない。非常に大きな物語なので、たいへんでしたね。これは大きなチャレンジでした。

――プレイヤーにジレンマを与えたいとのことですが、意図するところはなんですか?

デイビッド 映画では何もできないですよね? ゲームだからこそ、インタラクティブ性があり、相手に影響を与えることができる。プレイヤーに難しい質問をすることは、「あなただったらどうしますか?」という決断を突きつけることでもあります。鏡のようなものなんですね。ストーリーは自分の価値観によって変わっていく。白か黒かの選択ではなくて、善か悪かでもなくて、すごく難しい状況下で、「あなたにこういうことが起こったらどうするのか?」というのを問いかけたかった。もちろん、答えもいつも明確ではありません。答えは自分で見つけるものなのです。

――そもそもアンドロイドをテーマに選んだ理由は?

デイビッド レイ・カーツワイルの『シンギュラリティは近い-人類が生命を超越するとき』という本を読んだんですね。人間の脳はこれ以上進化しないけれども、機械はものすごい勢いで進化している。人間の脳と機械の脳の進化がクロスする地点があって、いずれは機械のほうが賢くなっていく。人間みたいな格好をして動くアンドロイドも出てくるでしょう。でも、機械としてしか扱われないという状況。すごく不思議な感覚ですよね……。それを2012年にショートフィルムにしたんです。いまはYouTubeで閲覧できますが、そのときのカーラはとても人気があって皆さん気に入ってくださったようなので、これを発展させることにしました。それがスタートポイントですね。アンドロイドとAIというのは、自分のおもなテーマではなかったのですが、「我々は誰なのか?」という、人間についての話をしたかったんです。

――2012年に公開されたカーラは、『Detroit Become Human』に登場するのと同じカーラなのですか?

デイビッド そうです。同じカーラです。

――『Detroit Become Human』のトーンは、(トレーラーにあるように)いつもこんなにドラマチックなのですか? リラックスできるシチュエーションはないのでしょうか? 緊張感があるのはいいのですが、少しゆっくりしたいときもあります。

デイビッド (笑)。いろいろなシーンもあり、スタイルもありますが……。本作には3人のキャラクターがいて、それぞれ特色があります。スタイルもトーンも違いますし、映像も違います。コナーは捜査官で、マーカスはもう少し壮大な感じです。カーラはとても感情的なところを出しています。この3人のキャラクターは、それぞれ個性的ですし、プレイヤーは3人ともプレイしないといけないので、つぎつぎと変わっていくシチュエーションを楽しんでいくことになると思います。それがひとつの大きな流れですね。

――ライターとしての立場として、3つのシナリオでいちばん感情移入しているのは?

デイビッド うーん、ライターをやるようなって20年くらい経っていますが、シナリオには自分の一部がそれぞれに入っています。マーカスにもカーラにも自分が入っている。“とくに好き”というのはないですね。それぞれにフレーバーが違います。

――3キャラクターのゲームプレイはどうなるのですか?

デイビッド ミックスされています。ひとつひとつが分かれているのではなくて、つながっているんです。3人とも死ぬことはあり、ひとりの動きがほかのふたりの動きに影響を与えることもあります。

――キャラクターどうしの絡みはあるのですか?

デイビッド それぞれ個々のストーリーとしてスタートしますが、絡み合うことはあります。ひとりのストーリーはほかのキャラクターのストーリーにも影響を及ぼしますよ。全体でひとつのストーリーになっているんです。

――コナー編はプレイしながら証拠を集めることによって、成功の確率を上げることができましたが、カーラ編ではそれはないようです。カーラ編のゲームプレイは運任せになってしまうのですか?

デイビッド 『Detroit Become Human』は調査のゲームではありません。コナーは捜査官なので、証拠集めをしますが、マーカスは革命を起こすわけですし、カーラはカーラで別の目的を持っています。悲惨な状況から逃れて自由を見つけることが彼女の目的となります。3人のキャラクターは、それぞれの“個”をもっており、意味合いも違います。3人のゲームプレイはそれぞれ微妙に異なります。なかなかに説明が難しいですね。

――デモでは、カーラが壁を破るシーンが紹介されていましたが、何かのアビリティーなのですか? ほかにアビリティーはあるのですか?

デイビッド アンドロイドを超絶に強い存在にしたくはありませんでした。もっと人間的でリアルな存在にしたかった。コナーは捜査官なので、それに見合ったスキルやアビリティーを持っています。マーカスにはそれとはまた違う、アビリティーがあります。

――コナーやマーカスは世界的に主体的に関わるキャラクターですが、カーラは自由を求めて逃れるということで、世界に主体的に関わるわけではありません。カーラを主人公のひとりに据えた理由は?

デイビッド 今回紹介したのは、あくまでカーラの1シーンで、これだけではありません。これから彼女の長い旅路が始まるのです。それぞれのキャラクターにはそれぞれテーマが設けられています。カーラの場合のテーマは、自由を求める心だったり、子どもに対する愛情だったりします。それによって前に進めるというキャラクターなのです。

――ゲームエンジンなにを使っているのですか?

デイビッド 毎回独自のゲームエンジンを採用しています。ソニーさんとは11年間エクスクルシブで仕事をしていますので、いつもプラットフォームの限界まで突き詰めてやるのが、自分たちの仕事だと思っています。本作は、いろいろな点で、これまで以上に改善されています。『HEAVY RAIN(ヘビーレイン) 心の軋むとき』からは大きなステップだと考えています。新しいエンジンはフェイシャルキャプチャーも違いますし、ひとつのカットずつで照明を変えていたりもします。クオリティーをだすためには、それだけのことが必要だったんです。
 そして、見えないインターフェースだけでは、ときに何も感じないことがわかりました。そこにあるけれど見えない、ということのバランスを取るのはすごく難しくて、ある程度見るようにして、プレイヤーにフィードバックを与える機会を提供しないといけない。私たちは少し変わったインターフェースを使うことも多かったのですが、それは課題を含むことも多かったです。今回は、プレイヤーには経験や感情にフォーカスした、何もストレスがない状態でプレイしてほしいと思っていました。操作に苦労させるわけにはいかない。シンプルなインターフェースを使って、プレイしやすいようにしています。チャレンジは、プレイヤーの心の中をいかにスムーズに表現できるかでした。

――サウンドトラックは発売されますか?

デイビッド いまはお話できることはないのですが、いずれお話しできるときが来るでしょう。スペシャルプランを考えています。

――2018年春にリリースされるとのことですが、どんなやるべき点が残っていますか?

デイビッド たくさん! いまラストシーンを作っているところです。そこから全部見直して、調整したいと思っています。全部のキャラクターのクオリティーを同じにしたりとか……。とにかくストーリーが分岐しているので、すべての部分でクオリティーの統一を取りたいと考えています。
 本作には、たくさんのサプライズがあるのですが、いまは語ることができません。ワクワクすることがいっぱいありますので、プレイしたときは、ぜひそれを発見してみてください。

デイビッド・ケージ氏(左)とギョーム・デ・フォンダミア氏(右)。