2017年10月14日~15日、シンガポールで開催されたゲームコンベンション“GameStart 2017”。10月15日、『NieR:Automata』プロデューサー齊藤陽介氏とディレクターヨコオタロウ氏のインタビューを行うことができたので、その模様をお届けする。

 2017年10月14日~15日、シンガポールで開催されたゲームコンベンション“GameStart 2017”。10月15日、『NieR:Automata』プロデューサー齊藤陽介氏とディレクターヨコオタロウ氏のインタビューを行うことができたので、その模様をお届けする。

――おふたりともシンガポールを訪れるのは初めてなのですか?

ヨコオ僕は初めてです。

齊藤私は2回目ですね。1回目は別のゲームのプロモーションでしたので、『NieR:Automata』で来るのは初めてになります。

ヨコオシンガポールは町がキレイですよね。ゴミが落ちていないし、虫がいない。

齊藤花瓶に水を貯めたままにしていないか、国がチェックしているそうです。蚊の発生を防いでいるんですね。

――GameStart 2017にて2日間ステージイベントを行われたわけですが、シンガポールのゲームファンの印象は?

齊藤「若い人が多いな」という印象です。元気がある、活気がある印象。あと、コスプレイヤーさんが多いですね。あの格好のまま、電車に乗ってくると聞いてビックリしました。

ヨコオ来場者の方もそうですが、イベント会場の施工をやられている方もとても若くて。学園祭みたいだなと思いました。

――シンガポールでの『NieR:Automata』の人気は?

齊藤なぜイベントに招待されたのか、わかっていませんでした。『NieR:Automata』のプロモーションでも東南アジアを視野に入れてツアーをやっていませんでしたし、たとえば台湾であればもともと日本文化に対してなじみがあるというのはわかっていましたし、コンサートをやらせていただいたり、『NieR:Automata』のファンがいることはなんとなくわかっていました。正直、シンガポールはお客さんがこなったらどうしようかと、ビクビクしながら来たというのが本当のところです。でも、蓋を開けてみたら皆さん大歓迎してくれてたので、本当にありがたいなと。

ヨコオ今回のイベントは、ソニー・インタラクティブエンタテインメントさんではなくて、ソニー・ミュージックエンタテインメントさんにご招待いいただいたので、そういった意味でも座組みとしては変わっているなと思いました。

――GameStart 2017の印象はいかがですか。

ヨコオみんなやさしいな、と。冷えた感じがなくて、盛り上がって楽しんでくれている感じがしましたね。

齊藤通訳の方が話される前にリアクションがあるなど、日本語を理解されている方も多くて驚きましたね。

――ちなみに、ソニー・インタラクティブエンタテインメントが11月にParis Games Week 2017を開催しますが、今後イベントへの登場予定は?

齊藤あと5~6年は出なくていいかなと(笑)。

ヨコオ今回が最後で(笑)。10月末に中国のトークショウにお声がけいただいたので個人で行くのですが、それが最後ですね。『NieR:Automata』で齊藤さんやスクウェア・エニックスさんとイベントに参加するのはこれが最後かな。

齊藤発表している“音楽劇ヨルハVer 1.2”、“少年ヨルハ Ver1.0”そして2B、9Sのドール化(全高60cm大のドールシリーズ“ドルフィードリーム”化)などがありますので、メディアの露出がゼロということではなくて、イベントに呼ばれることはないのかなということですね。

ヨコオ発売前のプロモーションがほとんどですので、発売後にこういった形で呼んでいただけるのはイレギュラーですが、ありがたいですね。

齊藤本当にありがたいですね。でも、ヨコオさんは“世界のヨコオタロウ”になっているから……。

ヨコオなってないでしょ(笑)。

――(笑)。イベント2日目の夕方にはファンミーティングもあるとうかがいました。

齊藤面と向かってファンの方と話す機会は日本でもそんなにないので楽しみですね。

ヨコオ本当に人が来るんですかね? こんなおっさんに会いたいと思う人はいるのかなと。

齊藤マスクの中から美少女が出てくると思っていますから。

ヨコオ今度は本当に美少女を連れてきますよ! もしくはセクシー女優さんを連れてきて、上(マスク)も下も脱ぐとか(笑)。

――(笑)。アンケートの結果についてはいかがですか?

齊藤日本のファンの方とそんなに変わらない印象ですね。

ヨコオただ、「もし仮に、『NieR:Automata』の続編の予算があまりなかったら、貴方はどのキャラクターをリストラしますか?」というアンケートでエミールが最多投票だったのはビックリしました。A2か9Sだと思っていましたから。

齊藤確かに、前作をプレイしていないとエミールのよさがわからないところがありますから、その部分は日本のファンの方とギャップがあるかもしれません。エミール人気は日本のほうが高いかも知れませんね。とはいえ、日本のファンの方の中にも『NieR:Automata』をプレイしておもしろかったから前作を遊ばれるという方もいますので。

ヨコオ前作は日本でしか売れなかったですから。そもそもみんなに知られていないという。

齊藤私もそう思っていたんだけど、E3で『NieR:Automata』が発表されたときの反響をみると、海外にもこんなにクレイジーなファンがいたんだとビックリしました。海外メディアの方の反応も多かったですね。「待ってました!」と言ってくださって。

――『NieR:Automata』発売前にParis Games Week 2015で行われたステージイベントも、集まった方が熱狂的でしたよね。

齊藤そうなんですよ。でも、あれは作られた熱狂だと思っていました(笑)。

ヨコオ「Tシャツがほしいか?」、「イエーイ!」と言って盛り上げるんですよ(笑)。

――観客がゾンビのように群がっていましたよね。

ヨコオTシャツを配ると熱狂することがよくわかりました。

齊藤パリのステージも不安がありましたが、蓋を開けてみたらたくさんの方に集まっていただいて。

――GameStart 2017ステージも、観客との距離が近かったですよね。

齊藤あんなにお客さんが来るとは思っていなかったんじゃないですかね(笑)。

ヨコオ『NieR:Automata』はファンの方に支えていただいたという気持ちが強くて。前作から支えてくださった方もそうですが、「この植物に水をあげないと枯れてしまう」という気持ちで一生懸命支えてくださって。それはメディアの皆さんにも感じていて、いろいろな方に支えていただいたプロジェクトだなと。おそらく「つぎは支えがなくていいのかな」と思うでしょうから、『NieR』シリーズはこれからガタガタ落ち始めていくのかなと。

齊藤自分だけが知っているインディーバンドがメジャーデビューしたら離れていく感じですね(笑)。コミックマッケートでヨコオさんが本を出されたときに「何を出しても買います!」とおっしゃっているファンの方もいましたから。

ヨコオお金を出していただく意味のあるものを作りたいなと思います。

齊藤ドールまで作ることになると思っていませんでしたからね。

ヨコオ今回、グッズを作り過ぎな気がします(笑)。まあ、買わないという選択肢もあるので。

齊藤ないよりはいいと。

ヨコオぜひ記事で書いてほしいのが、ムリに買う必要はなくて、ほしいものだけ買ってください、ということ。「支えなきゃ」という気持ちは本当にありがたいんですが、欲しくないものまで買う必要はありませんので。選べるようになったよ、ということです。

――まだ10月で気が早いですが、2017年を振り返ってみていかがですか?

ヨコオ発売してからこんなにいろいろやるとは思っていませんでしたね。ふつうは、発売したらそれで終わり。プロモーションも終わり「つぎをやろう」となるんですけど、『NieR:Automata』はいろいろなことが起こるなと。

齊藤慌ただしい1年でした。2016年末に体験版を配信してから発売までが本当に怒涛の展開で。覚えていないくらい(笑)。マスター作業をやりながら並行して欧州メディアツアーにいき、発売後もゴールデンウイークにコンサートをやったり……。でも、売れていなかったら海外イベントにお声がけいただくこともなかったわけですから、ありがたいことですね。

ヨコオ『NieR:Automata』次回作はスクウェア・エニックスさんも「きっと売れる」と勘違いすると思うので、大炎上させて『NieR』の歴史を終わらせたいと思います。次回作があるとしたら、そうしたいと思います。国内初週販売本数687本とか(笑)。『NieR』はそれでいいと思っています。

齊藤それもありなんじゃないかな。

――終わらせないでください(笑)。来年公演予定の“音楽劇ヨルハVer 1.2”、“少年ヨルハ Ver1.0”ですが……。

齊藤音楽劇にするにあたって変更をしている最中ですね。

ヨコオヨルハは脚本を書かなきゃいけないのですが、まだ1行も書いていません。我ながらビックリしています。

――(笑)。

齊藤キャスティングしていますし、登場するキャラクターは決めています。だから「このキャラでどんな話にしようかな」という状況ですね。喜劇になるか悲劇になるかすら決まってない?

ヨコオぜんぜん。なにもないです。

齊藤最初と最後くらいは決まってるでしょ?

ヨコオなんとなくですけど、ジャンルぐらいは決まってます。「だいたいこんなムードで」、「だいたいこんな人数で」というのを決めて、話をあとで作ると。

齊藤キャラクターが先行している感じがあるよね。

ヨコオ 舞台は出せるキャラクター、人数に限界があるんですよね。そうすると、話の骨格もおのずと決まっちゃう。まずメンバーを決めて、必要な話があって、どのくらいのイベントがあって、90分なり120分なりの中でどうやって回していくのかを考える。

齊藤凝縮されたゲームの作り方に近いかもしれないですね。物語が決まっていない、ひとりひとりのセリフが決まっていないという状況でも、登場するキャラクターの性格とか、セリフの言い回しはオーディション段階で決まっていて、そこにはめていくという感じ。「おもしろいな」とヨコオさんを隣で見ていて思いました。

ヨコオオーディションはイヤでした。人を選ぶのがしんどくて。たとえば、声優さんだとサンプルのボイスがあって決めたりしますが、生身の方を前にした状態で決めるのは心がつらくて……。

齊藤ヨコオさんが作る世界は、ゲームと舞台で違和感はないと思いますので、安心して観にきていただければと。10月末からチケットの発売がスタートする予定です。

ヨコオこれはぜひ書いてほしいんですけど、キャスティングを並べたときに、「この事務所の声優が入っていないからこの事務所の声優を入れてほしい」という外圧みたいのがあって。もちろん、納得できない人は入れたくないので、プッシュされても「この人はいらない!」と落としています。ただ、「どっちにしようかな?」というときは、「それだったらこの人を」というのはあります。そういうところが舞台特有のおもしろさ、おもしろさというか業界裏事情だなと思いました。

齊藤最終的にはゲームの声優さんを決めたときと同じ流れですよね。ヨコオさんに誰にするか決めていただくと。でも、ひとり5分の持ち時間で判断するのは難しいですよね。

ヨコオそうですね。練習すればうまくなるだろうという人もいらっしゃいますし、飲み込みが悪い人は損してしまうと思います。

齊藤舞台もそうですが、コンサートもなにかしらの形でやりたいですね。毎回ヨコオさんと言っているのですが「こんなに大きな会場埋まるの?」と。でも、ことごとくお客さんに埋めていただいていて。期待している方がいるならコンサートもやりたいなと。

ヨコオいい思い出にしておけばいいじゃないですか(笑)。このあいだ「よかったね」で終わったじゃないですか(笑)。

――台湾で行われた“人形達ノ記憶 NieR Music Concert in Taiwan”は大盛況だったとうかがってます。

齊藤あんなに盛り上がっていただけるとは思いませんでした。

ヨコオお客さんがよろこんでくれるのならやってもいいのかな……とマジメな話としてはありますね。ただ、『NieR』らしさというか、どこかに驚きがあってほしいと思うので、岡部さん(『NieR』シリーズの楽曲を手掛けたMONACAの岡部啓一氏)とも話しながら、仕掛けというか新しいことを見せたいと思いますね……やれるとしたら。

――開発者向けのkeynoteで次回作について触れられていましたが……。

齊藤ヨコオさんはインタビューやイベントで「お金をもらえればなんでもやる」と言うんですけど、この人ほどお金で動かない人はいないですからね(笑)。ぜんぜん言ってることが違う。

ヨコオそれは誤解があって。言われたことはやるんです、お金をいただければ。ただ、最初に言われていないとやらないという特性があって。たとえば、最初に「RPGを作ってください」と言われてやったとして、RPGの主人公をネズミにして作業を進めたときに「ネズミはダメです」と言われても「最初に言ってないじゃん!」となる。「ネズミがダメだと最初に言えよ」という話。最初に言っていただかないとコントロールできないという。

齊藤じゃあ、「『NieR:Automata』続編のRPGを作ってください」とお願いしたら……。

ヨコオネズミが主人公になる場合もあり得る。

齊藤(笑)。

ヨコオ要件定義をしていただいて、それに則ってやるのが大人なので、定義されていない用件はお受けいたしかねるな、と。

齊藤じゃあ、デボルとポポルが主人公の……。

ヨコオ言われたらやりますよ(笑)。

齊藤じつはこのあいだ、社長の松田(スクウェア・エニックス代表取締役社長 松田洋祐氏)とヨコオさんと3人で食事に行ったときに、松田から「デボルとポポルを主人公にしたスピンオフをやらないか」と言われて、ヨコオさんがニコニコしながら「やります!」と答えていて。

ヨコオ松田社長に言われたらやらざるを得ない。

――(笑)。これ原稿にしていいんですか?

齊藤たぶん実現しないと思うから大丈夫です(笑)。

ヨコオその話題で言うと、そんな主観に捕らわれた狭いところで大金を動かしていいのかと(笑)。

――(笑)。DLCではいかがですか?

齊藤DLCはいい面も悪い面もあって。お客さんは世界をさらに楽しみたい。でも、それを買わないと100%楽しめないものに見えてしまう。そこに対して私の中では迷いがあって。中古に流れないというセールス的な施策の面を考えてDLCを出しましたが、続けてDLCを出すということは考えていないですね。

ヨコオ齊藤さんが作った『0STORY(ラブストーリー)』(2000年にエニックス(現スクウェア・エニックス)より発売されたプレイステーション2用ソフト。全編実写を特徴とする“シネマアクティブ”の第2弾ソフト。齊藤氏がプロデュースを手掛けたアドベンチャーゲーム)のような実写で『NieR:Automata』のスピンアウトのゲームを出してみたいですね。安っぽい感じで(笑)。

齊藤個人的に思うのが、スピンオフドラマCDはやったらおもしろいかなと。コンサートの朗読劇で描かれるのはメインストーリーの続きですし、ドラマCDになってもいいボリュームでしたから。

ヨコオ120分くらいあって。朗読劇の物語部分だけで映画1本分くらいのシナリオを書いてます。意味がわからないと思いながらやっていました(笑)。

齊藤前作のドラマをおもしろがっている人がいまもいらっしゃるので。シリアスとコメディを切り分けていて。

ヨコオ学園ものは本当にめちゃくちゃですよね。学園物のスピンアウトを望まれるお客様がいらっしゃるのは理解しているんですが、個人的には前回でもうやったしと……。お客さんがやればいいんじゃないかなと。そこから先は。

齊藤公式じゃなくてね。

ヨコオ同人誌などで学園物の『NieR:Automata』を描いていただければ。

齊藤たとえば、2Bと9Sが手をつないでショッピングを楽しむファンアートとかは、うれしいなと思いますね。

ヨコオ心が和むというか。そういうのはどっちみち僕は書けないのでファンに作っていただけるといいなと。世界を広げて、キャラクターを愛していただければ。ファンアートを見て「こういうキャラなんだ」とわかるときがありますから。説得力があれば、それが事実として定着していくと思うんです。そういう表現力で、作った人を上回る答えが返ってくるのはうれしいですね。

齊藤ありがたいことにファンアートの数は本当に多いですね。ヨコオさんが「2BのケツのけしからんアートをZIPでくれ」と言ったら海外で炎上していましたけど(笑)。コスプレもファンアートも盛り上がってくれていて。

ヨコオコスプレ、ファンアートがこんなに出るとは予想していませんでした。吉田(『NieR:Automata』キャラクターデザインを手掛ける吉田明彦氏)さんのパワーですね。

齊藤吉田明彦のケツですね(笑)。

――コスプレコンテンストのゲスト審査員はいかがでしたか?

齊藤採点してほしいと言われたのでやりましたが、コスプレ審査員をやるのは人生で最初で最後かな、と。

ヨコオみんな優勝させてあげたかったですね。

――コスプレコンテストで審査項目にゲームプレイがあるのはめずらしいですよね。

ヨコオなぜそういう仕組みになったのか僕らもわからないですが、ゲームへの忠誠度を測ろうとしているかな、と。「ゲームをやっていないのにコスプレだけやって」という批判があると思うんですけど、そういうのを防ぐため(笑)。

齊藤決してゲームをやっていないことが悪いわけではなくて。我々からすればゲームを遊んでほしいとは思いますけど。

ヨコオやらなくていいけど、買ってください(笑)。海外は2Bのコスプレが多いですよね。日本は9Sが多いイメージがあります。

齊藤どのイベント会場にいっても、コスプレしている方がいらっしゃるのはうれしいですね。ただ、近くを歩いているとうれしいけど、ちょっと恥ずかしくて(笑)。あの感覚はなんなんでしょうね。気恥ずかしいというか。

ヨコオ見てはいけないものを見ている感じで「制作者がここにいてすみません」という。まあ、見ますけどね(笑)。前作はコスプレイヤーの方があまりいなくて、少人数の方が支えてくださった感じで本当にありがたいなと。

齊藤前作のときはコスプレイヤーの方を見つけるとうれしかったですね。

ヨコオ「いた!」と(笑)。前作を含め、支えてくださっている方がたくさんいるなと感謝しています。

――では、これからもまだまだ支え続けてくれる方々へメッセージをお願いします。

齊藤今後もイベントに呼んでいただけるならば声優さんのほうがいいなと思うんですが、そのときにはおいしいご飯を食べるために私もヨコオさんもついていきます。ファンの方に支えられていまの『NieR』があることは重々承知しています。これからも応援していただけばと思います。

ヨコオ『NieR:Automata』が予想以上にヒットしたことは、作っている我々もハッピーでしたし、支えてくださった方々にとってもいいニュースだったと思っています。ですので、これ以上『NieR』の歴史を汚すことなく、ここで『NieR』という歴史を打ち止めにしたいなと。これを僕からの最後のメッセージとして書いてください。それでは皆さん、さようなら。

齊藤でも、お金もらったらなんでもやりますよね。

ヨコオお金もらったらなんでもやりますよ(笑)。