2017年10月1日に、東京・ツクモデジタル.ライフ館にて、“『.hack//FanBook』発売記念トークショー”イベントリポートが行われた。その模様をリポート。

15年間の歴史を創始者たちが語る!

 2017年10月1日、東京・ツクモデジタル.ライフ館にて、“『.hack//FanBook』発売記念トークショー”が開催された。このイベントは、『.hack』シリーズ15周年記念に発行された公式マガジン『.hack//FanBook』の発売を記念したトークショーだ。

 トークをくり広げたのは、『.hack』シリーズの開発を手掛けるサイバーコネクトツーのディレクター・松山洋氏と、初代プロデューサーを当時務めた、バンダイナムコエンターテインメントの内山大輔氏。本記事では、開発の苦労話や、制作秘話などがたっぷり語られたトークショーの模様をお伝えするほか、最後には翌日10月2日まで同会場にて開催されていた『.hack//FanBook』発売記念展示会のフォトリポートもお届けしよう。

松山洋氏
内山大輔氏
イベント開始前には、松山氏が観客へどこから来たのか尋ねると、京都などの遠方から来た人がちらほら。「さすがに何かのついでに来たんだよね!?」と、松山氏も驚いていた。

 両氏が席に着くと、さっそくトークショーがスタート。まずはシリーズのプロジェクトが立ち上がった、松山氏と内山氏の出会いを振り返る。最初に会ったのは、数十年前に開催された東京ゲームショウ。サイバーコネクトツーがまだサイバーコネクトだったころの松山氏は、バンダイナムコエンターテインメントがバンダイだったころの内山氏と出会うものの、しっかりとした挨拶はしていなかったそうだ。そこから月日は経ち、現在から約17年前の時期に、『.hack』シリーズの発端となるプロジェクトが進む中で再会したのだという。

 プロジェクトの初期は、“オリジナルのRPGを作る”ということだけが決まっていたそうで、初期の段階では泥棒海賊RPGや、トレジャーハンターRPGなどの企画を産んでは内山氏が「つまんねー!」と切り捨てていたのだとか。そうしていくうちに、ついにゲームのテーマはオンラインRPGに定められたという。そこで、オンラインゲームをテーマにした実写映画『アヴァロン』の脚本を手掛け、『機動警察パトレイバー』などで知られる伊藤和典氏をシナリオに起用したいということで、半年間に及ぶ猛烈な熱意で、その思いが実現にいたったそうだ。

 そして、初代『.hack』のキャラクターデザインと言えば、『新世紀エヴァンゲリオン』などで知られる貞本義行氏だ。キャラクターデザインも有名な漫画家、またはイラストレーターにお願いをしようというところで、初期段階ではさまざまな人物がリストに上がっていたらしい。そんな中、貞本氏を起用したのは、貞本氏なら完璧なものが絶対に作れるということ。そして、ほかのゲームタイトルのカラーに染まっていない人を使いたい、という理由なのだとか。貞本氏を口説く際には非常に難航したそうで、『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する綾波レイの3Dモデルを何度も作って送り、長い期間をかけて交渉したエピソードなどを、松山氏が明かしていた。

こちらは海外版のパッケージ。当時北米では、『新世紀エヴァンゲリオン』を始めとしたジャパニメーションブームが起きており、伊藤和典氏、貞本義行氏のビッグネームのおかげで、海外でも100万本に近いセールを記録したそうだ。

 こういった著名人を多く起用するなどの前例のない取り組みについて、松山氏は、バンダイからオリジナルRPGが出ることが“地雷”と見られることを懸念していたからだと説明。「その印象を変えるために、いままでにやっていないことを取り入れたんです」と、ぶっちゃけトークも披露。『.hack』と言えば、“クロスメディア”、“メディアミックス”という言葉がまだない時代に、ゲームの発売を皮切りにアニメ、漫画、小説などといった多数のメディア展開をしたのも特徴のひとつ。当時の発表会では、まるで最初から考えていたかのように発表したそうだが、実際にはすべて後から付いた企画だと内山氏が振り返っていた。

 そして『.hack』は、『.hack//G.U』シリーズへと移行。『.hack//G.U』は前作と同じことをやらないというコンセプトのもと、キャラクターをより立たせる方向性で開発を進めたそうだ。『.hack』では主人公・カイトに感情移入してプレイするスタイルだったが、『.hack//G.U』は主人公・ハセヲの活躍を楽しむものを目指したと松山氏は語る。続けて松山氏は「“コミケ”でお客さんに同人誌を出してもらえるような、キャラクターたちを愛してもらえる方向性を目指したんですよ」と、松山氏&内山氏で、“コミックマーケット(コミケ)”に実際に勉強へ行ったという苦労も語っていた。

 そこからさらに『.hack//Link』シリーズ、映画『ドットハック セカイの向こうに』などの展開を経て、2017年11月1日に発売される『.hack//G.U. Last Recode(ラストリコード)』へとつながり、話題はこれからの『.hack』について。松山氏は「バンナムさん的には、今後『.hack』はどうするんですか? 『ソードアート・オンライン』(同じくオンラインRPGを題材とした人気タイトル)もあるじゃないですか」と、内山氏へぶっ込んだ質問(笑)。内山氏は困り顔を浮かべながら、「正直、『.hack//G.U. Last Recode(ラストリコード)』は、昔のゲームをリブートしてもどうなの? って個人的には思ってたんですよ。でも、実際に予約受付を開始してみたら、これがスゴくて」と、改めて『.hack』は今後も続くタイトルになるだろうと、内山氏は分析していた。

 トークも終盤を迎えると、松山氏は自身が手掛けた書籍『エンターテインメントという薬-光を失う少年にゲームクリエイターが届けたもの-』(2017年11月1日発売)をアピール。本書は、目の病気のため眼球摘出手術を受ける少年から、『.hack//G.U. Vol.2 君想フ声』の続きを遊びたいという話を聞き、松山氏が発売前のゲームを少年に届けにいくというドキュメンタリー。その熱い思いや、エンターテインメントとは何かということを描いているそうだ。

 イベントの終わりには、松山氏から「『.hack』15周年企画は、まだまだ告知していないことがいっぱいあります。ぜひ期待していてください!」と、今後の展開に注目してほしいというお別れの挨拶。内山氏も15年間愛してくれたファンの皆さんへ向けて「15年続くなんて思ってもいませんでしたが、15年前に真剣に取り組んだタイトルだからこそ、皆さんにここまで愛してもらえたんだと思います」と、感謝の気持ちを述べ、本トークショーは終了。終了後には、『.hack//FanBook』へのサイン会も行われた。

会場では、『.hack//FanBook』などの物販も行われた。
イベント終了後には、漫画『スプリガン』や『ARMS』で知られる皆川亮二氏から、色紙が届いたことも発表。皆川氏は『.hack』シリーズの大ファンとのことで、頼んだわけではなく本人から突然送られてきて驚いたそうだ。
こちらが皆川氏の記念色紙。めちゃくちゃ強そうなカイト!

 最後には『.hack//FanBook』発売記念展示会のフォトリポートをお届け。フィギュアやゲームなどがズラリと並んでいたほか、貴重な原画やシナリオ台本なども展示されており、イベント終了後も多くのファンの皆さんで賑わっていた。

こちらは松山氏直筆のサイン色紙!(ドコドンッ)
ホワイトボードには、『.hack』ファンの熱いメッセージとイラストがズラリ!