『ぺんぎんくんギラギラWARS』開発者インタビュー 1985年生まれのぺんぎんくんに訪れた“いつかギラギラする日”とは?

2017年9月21日に発売された、Nintendo Switch用配信専用タイトル『ぺんぎんくんギラギラWARS』。1985年リリースのUPLのアーケードゲーム『ぺんぎんくんWARS』を大胆にアレンジした、本格的な対戦アクションゲームとして、好評を博している。今回は、その開発メーカーであるシティコネクションの主要スタッフに、誕生秘話をうかがってみた。

『ぺんぎんくんギラギラWARS』開発者を直撃

 2017年9月21日に発売された、Nintendo Switch用配信専用タイトル『ぺんぎんくんギラギラWARS』。同作は、1985年リリースのUPLのアーケードゲーム『ぺんぎんくんWARS』を大胆にアレンジした、本格的な対戦アクションゲームとして、好評を博している。今回は、その開発メーカーであるシティコネクションの主要スタッフに、誕生秘話をうかがってみた。

参加者
松下寿志氏(写真・左)
ぺんぎんくんギラギラWARS』ディレクター

上田祐美氏(写真・中央)
同 アートディレクター、グラフィッカー

山邊颯太氏(写真・右)
同 シナリオ、音楽ディレクション(一部)

おなじみのあのレトロゲームが蘇った理由

──まずはやはり、なぜいま『ペンギンくんウォーズ』のリメイクなのか、という点を伺わなければなりません。

シティコネクション代表・吉川延宏氏 ここに関してはまず私からご説明させていただきます。シティコネクションはジャレコIPを持っている会社ですが、ジャレコそのものではないので、「ジャレコ以外のIPもやっていきます」という姿勢を、コンソールの2作目から出す方針でいました。“遊びの基本となる部分がしっかりして、そこを大幅に改変しなくてもリメイクできるタイトル”をいくつか候補に挙げ、その中から『ぺんぎんくんWARS』(以下、『ぺんぎんくん』)を選びました。

上田 『ぺんぎんくん』は、対戦プレイに向いているルールがNintendo Switchにぴったりだったのが、最終的な決め手になりましたね。アーケード版はひとりプレイ専用ですが、ファミコンなどの移植版では対戦プレイに対応しているし、液晶パネルを上に向けて机の上に置いた本体を対面で見ながら、おすそわけプレイするのに合っているなと。

──ああ、Nintendo Switch本体を『ぺんぎんくん』のコートに見立てたわけですね! そこから具体的に、どのような方向性でアレンジしていくかという段階になるわけですね。

松下 大きく、ふた通りの課題がありました。ひとつはゲームルール。“10個のボールを相手陣地に送り込んだら勝ち”のままでいいのか? という点です。

──それは、『ぺんぎんくん』のゲーム性が未完成だから……ということですか?

松下 というよりも、“いま風”ではなかったんです。当初は『ぺんぎんくん』と同じルールにしてテストプレイしていたのですが、「何か物足りない」という感想が、スタッフのあいだで芽生えてきまして。

前作『そるだむ 開花宣言』に引き続き、ディレクターを務めた松下氏。

上田 ある日アーケード版をやっていて気づいたのが、ボールを10個送り込んだときよりも、“相手にボールを当てたとき”のほうが楽しい、ということでした。

松下 だったら、当てたときのご褒美がほしいねとなって、試しに体力ゲージをつけてみたら、これがおもしろかったんです。

──ホッケー寄りの決着ルールをドッジボール寄りに調整してみたと?

松下 『ぺんぎんくん』の競技名は“ドジボール”ですが、本作は“ギラボール”なんです。似ているけど、ちょっと違うという(笑)。

上田 “10個送り込んだときは相手に大ダメージ”という仕組みを入れることで、原作のルールを意味のあるものとして残せました。

ギラギラ→デコトラ→ロードムービー!?

松下 もうひとつの問題は、デザイン面でした。卓球台みたいなコートでボールを投げあうってままにはいかないだろうということで、世界観のコンセプト決めには時間を費やしました。

山邊 開発の最初の1ヵ月は、ずっとそれでしたね。“ギラギラ”ってキーワードが出てくるまでが、長かったんです。

──そのギラギラは、どこからやってきたのでしょうか?

上田 『ぺんぎんくん』のリメイクを、昨今の昭和カルチャーのリバイバルブームと関連づけて連想していったら、“デコトラ(※1970年代に流行した、電飾や派手なペイントでなどで飾り立てたトラックの俗称)”という単語が浮かんだんです。デコトラ……ギラギラ……語感もいいしいけるんじゃないの? ということで決まりました(笑)。

松下 “ギラギラ”という言葉でイメージされるものは人によっても違うので、それを整えていくのがひと仕事でした。上田の頭の中にあるイメージをアウトプットして、それを共有していく作業ですね。

上田 当初はふつうのリメイクでいく予定だったのですが、会議が盛り上がって、ギラギラというキーワードが出て、シングルプレイモードもボリュームたっぷりに作ろうとなったとき、対戦相手の動物たちにもキャラクター性を持たせたほうがいいんじゃないかとなりました。そこから、オリジナルのようなトーナメント戦での進行ではなく、“ペンギンがトラックで旅をして、各地の動物と出会う”という形式がいいねという話になりました。

ビジュアル面のみならず、世界設定全般の原型となるアイデアを生み出した上田氏。

──ここでまたデコトラにつながるんですね(笑)。

上田 ジャレコが昔出したデコトラのゲーム(2008年発売のWii用ソフト『全国デコトラ祭り』)の模型を見ながら、「これは荷台が(競技の)ステージになるな」といった感じでイメージを広げていきました。

山邊 キーワードが決まった時点で、音楽の方向性の話もしていましたね。

吉川 アーケード版、ファミコン版で使われていたBGMは、オリジナルのファンも意識しているはずなので、絶対に外せないものとして、その原曲のルーツにある、サンバやファンクといったジャンルのリズム感は生かしたいと思っていました。また、コンセプトである“ギラギラ”というイメージを国内外のターゲット層に伝えるため、海外で流行っているリバイバルを中心としたクラブサウンドを参考にメインやメニュー関係のジャンルを統一させていきました。

──オリジナル版BGMの原曲は、石川秀美のアイドルソング“もっと接近しましょ”で、『ぺんぎんくんギラギラWARS』にはそのアレンジバージョンもばっちり収録されています。正直これは、いろんな意味でものすごく大変なことだったのではないでしょうか?

吉川 そこは、過去にクラリスディスク(※シティコネクションの音楽レーベル)でどんな曲の許諾も取ってきたという実績がうちの会社にはあるので(笑)。こういうところに話を通せばスムーズにいくだろうという筋道はわかっていたので、その通りに交渉を進めました。

山邊 メインBGM以外は、シングルモードの旅先として訪れるワールドごとに、それぞれ異なるミュージシャンに自由に作ってもらいました。ゲーム音楽的というよりは、クラブサウンド寄りのモノになりましたね。

フリーランスのライターからシティコネクションに入社し、本作には宣伝担当としても関わっている山邊氏。

松下 BGMはコミカルでかわいらしい感じになると思っていたのですが、カッコいい曲揃いだったので驚きました。音楽によって、プレイ中のエフェクトなど、ビジュアル全般のイメージが整っていった面もあります。

山邊 音楽のクオリティーに関しては、弊社タイトル共通のこだわりとして、今後も追求していきたいですね。

eスポーツとして成立する、 絶妙なバランス調整

――キャラクターごとに異なる性能にする、というのは最初からの構想としてあったのでしょうか?

松下 基本アクションは大まかに“ダッシュキャラ”、“キャッチキャラ”、“ガードキャラ”の3タイプです。

山邊 ガードキャラのナマケモノは最初は弱かったけど、結果的に一番玄人向けのキャラクターになりました。タイミングよくボタン入力すると、そのままボールを跳ね返せるんです。

――ああ、対戦格闘ゲームでいうところの“ジャストガード”とか、“ブロッキング”みたいな。

松下 “ふたりで戦うゲーム=対戦格闘”というイメージがあって、このゲームに合った格ゲー的要素を盛り込んでいきました。そういう意味では、やっぱり“必殺技”も外せないなと(笑)。

上田 最初は各キャラクターにひとつずつだけだったのですが、最終的にはふたつに増やしました。基本の性能タイプと固有必殺技の組み合わせで、キャラクターごとの特徴がはっきりしましたね。

――こうなると、ゲームバランスのチューニングは『ぺんぎんくん』と別物というのは大前提として、かなり神経を使ったのではありませんか?

松下 そこは本当に、最後の最後までやりましたね。このキャラクターとこのキャラクターの組み合わせだと、こっちが絶対勝てない……という相性差を、かなりまろやかに調整しました。

山邊 じつは、『ぺんぎんくん』の“いかに対戦相手にボールを当て続けて身動きをとれなくするか”というセオリーをどうするかについても、相当試行錯誤しました。それがいいのか、悪いのかという根本の部分から。

――『ぺんぎんくん』は古いゲームで、しかも対CPU戦オンリーなぶん、そこが露骨に出ますよね。

松下 相手にやられると「これはいけない」と思うのですが、そうやって自分が勝つと気持ちいいので(笑)、最終的にそれはアリにしました。

山邊 たとえやられてたとしても、対戦プレイだったら何とか逃れられるようにはなっているので、理不尽さはだいぶなくなっているんじゃないでしょうか。あとは、勝敗ルールごとのキャラクターの相性ですね。とくに、ルールが毎回変わるオンライン対戦では、“このキャラクターでこの動きをしていれば大丈夫”というセオリーは通用しにくくなっています。

――たしかに、“相手の体力を0にしたら勝ち”以外にも、さまざまな決着のつけかたが用意されている点が、本作の“対戦ツール”としての幅を広げていますね。

松下 特殊ルールは、スタッフで試してみて「これがおもしろいんじゃないか」というものを揃えたのですが、ぜんため(※今年8月5、6日に岐阜県岐阜市で開催された、ゲームを中心としたエンターテインメントイベント“全国エンタメまつり”)の出展でプレイヤーの反応をじかに見られたのは、よかったですね。

上田 真ん中にある大爆弾をボールで押し合って、相手陣地に送ったほうが勝ち、というルールが、とくに人気でした。パッと見て何をすればいいかわかりやすいみたいで、子どもから大人までゲラゲラ笑いながらやっているのをみて、手応えを感じました。

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『ぺんぎんくんギラギラWARS』が初めてプレイヤブル出展された、ぜんための様子。

松下 ガチ勢は基本ルールで真剣勝負を、ファミリーやキッズの皆さんは、簡単ですぐに決着がつく特殊ルールを……というように遊んでもらえるといいのかなと。

上田 2vs2の4人プレイも、最初のうちはワチャワチャした感じになるけど、やり込んでいくうちに自然と役割分担ができて、かなり本格的な対戦が楽しめるんです。

“末永くやり込める対戦ツール”として

──オンラインマルチプレイの実装は、海外版『そるだむ 開花宣言』で対応させていることもあって、すんなりと?

松下 いきそうだったのですが、いくつか山がありましたね。

吉川 ロサンゼルスとの対戦プレイなど、いろんなネット環境やデバイスのパターンで試したのですが、毎回結果が違って、苦労しました。最終的には、自社サーバーを介してもいない、Nintendo Switchタイトルの通信プレイ環境としては最高峰になったのではないかと思います。

シティコネクション代表・吉川氏。

――ということは、海外版がリリースされたら世界中のプレイヤーと楽しめるようになるんですね。

吉川 現在は日本人どうしのマッチング限定仕様にしていますが、環境としては整えています。

上田 オンラインでは、シングルプレイモードで成長させたキャラクターどうしでの対戦がメインになるので、お気に入りのキャラクターをいかに育てるかも楽しみのひとつになってきますね。

山邊 最初は一度上げたパラメーターは変えられないようにしていたのですが、それだと気軽に遊べなくなるので、いつでも自由に割り振りできるようにしています。あと、強さには直接関わらない要素として、シングルプレイモードで獲得したボールのデザイン(スキン)を、手持ちの5個のボールに自由に反映することができます。

上田 ボールのデザインは、特定のキャラクターからしか貰えないものも含めて100種類です。レアなデザインを称号のようにアピールする楽しさも、オンラインならではないかと思います。

――すでにオンライン対戦を満喫しているプレイヤーの皆さんも多いと思われますが、最後にいま一度、『ぺんぎんくんギラギラWARS』のアピールをお願いします。

松下 ネット対戦もウリのひとつですけれども、ローカルも気軽に楽しめるようにできています。LRボタンを使わないので、おすそわけプレイでも無理なく遊べます。ぜひ友だちや家族とワイワイ言いながら遊んでみてください。

上田 見た目や性能面で、お気に入りのキャラクターが絶対いると思います。それを見つけてやり込むと、また違った世界が開けてきます!

山邊 コントローラー前面の4つのボタンにそれぞれアクションがあてはめられているので、押すと何かしら反応があるのは、ゲームとしてわかりやすい設計です。ルールがわからなくてもすぐ楽しめる内容なので、これからの方も気軽にプレイしてみてください。あと、音楽はぜひ一度はヘッドフォンで聴いてほしいですね。

吉川 これだけボリュームのあるタイトルをこの価格(1800円[税込])で提供してよいものかと悩んだのですが、最終的には大勢の人に楽しんでもらえればと思い、決断しました。お買い上げいただいた方は、ぜびローカル対戦プレイで布教してください (笑)。



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