4人のパネラーがDMM GAMESの実像を分析
2017年9月21日(木)から9月24日(日)まで、千葉・幕張メッセにて開催された東京ゲームショウ2017(21日・22日はビジネスデイ)。DMM GAMESは、同社ブース内特設ステージにてパネルディスカッションを実施。“アプリパブリッシャーだからこそ見えるPC市場”をテーマに、同社にタイトルを提供する(または今後提供予定の)4社からパネラーを招いて議論を展開した。
この日に登壇したのは、シリコンスタジオの河原典昭氏、オルトプラスの北村紀佳氏、フォワードワークスの川口智基氏、Sincetimesの森昭生氏。各社で重責を担っておられる面々が一堂に会し、ゲームプラットフォームとアプリパブリッシャーにまつわる意見が交わされることとなった。
本稿では、今回のパネルディスカッションで交わされた意見交換を、3つのテーマに絞ってダイジェストで振り返っていく。
ゲームプラットフォーム市場について
冒頭で司会の坂本氏が、「国内のモバイルゲーム市場が順調に伸びているにも関わらず、なぜPCへの展開を考えるのか」と疑問を提起。そのうえで河原氏に、PCとスマホの双方で『テラバトル2』をリリースする狙いを聞いた。これに対して同氏は、PCゲームのユーザーは、継続率と課金率がおしなべて高く、ロイヤルカスタマーになりやすい点を強調。また、シリアルコードをスマホアプリのプラットフォームに取り入れることが難しい実情も、PCゲームを重視する理由として挙げていた。
一方で森氏は、スマホ向けタイトルがPCに移行するのは自然の流れであると解説。加えて「(中国系企業であるSincetimesのような)海外企業からすると、なぜPC版を出せないのかというジレンマを感じます。PCとモバイルの双方で出して(収益を得る)というのが中国のやりかたです」と述べた。
上記とは異なるアプローチでPCゲームを捉えていたのが、オルトプラス。北村氏は「複数のプラットフォームで出すことで、IPの認知度向上に寄与するだろうという意図で、PCでも『結城友奈は勇者である 花結いのきらめき』を出すことになりました」と説明した。これと似た戦略を立てていたのは、『ソラとウミのアイダ』のフォワードワークス。川口氏は「世界観と物語をできる限り多くの方々に知っていただき、楽しんでいただきたいと考えています。モバイルを中心に展開していく中で、ゲームへの接点を増やす意味でPCプラットフォームへの展開を決めました」と参入の経緯を説いた。このように“PC版の発売を決めた”という結果に行き着くまでの経緯や狙いが、いくつかのパターンに分かれている点が興味深い。
DMM GAMESを選んだ理由
DMM GAMESと手を携えて自社タイトルを盛り上げていこうと決めた理由について、森氏は「日本のパブリッシャーさんやプラットフォーマーさんに、PC版の発売が特別ではないことを見せつけたかった思いがあります」と本音を吐露。「モバイルとPCの差はディスプレイの大きさくらいしかないのに(双方に垣根を設けてしまう)」という日本のありかたに疑問を呈したうえで、「PCゲームをもっと流行らせる意味で、僕らがお役に立てることがあるのかな」と述べていた。
これに対して川口氏は「多くのユーザーの方に作品の魅力を伝えていくためには、パブリッシャー とプラットフォーム側がタッグを組んで、より効率的なプロモーションやユーザーとのコミュニケーションを行っていく必要があります」と説明。そのうえで、「初のPCタイトルとして『ソラとウミのアイダ』で(市場に)挑戦するに当たり、作品性を理解し、導入部分のさまざまなサポートを手厚くしていただけることから、DMM GAMESさんと進めることにしました」と決断に至った経緯を語った。
川口氏がDMM GAMESのアピール力とノウハウに期待した一方、河原氏の狙いは別のところにあった模様。いわく「『テラバトル2』を出すに当たって意識した点は、同時リリースです。(どちらか片方が)遅れてしまっては意味がないという話にいちばん同調してくれたのがDMM GAMESさんでした」と、スマホ版とPC版の同時発売を受け入れてくれる点を基準のひとつとして、サービスの提供先を決めたことを明かした。
その一方、すでにスマホ版がリリースされている状況下でPC版のプラットフォームを選定することとなったのが、『結城友奈は勇者である 花結いのきらめき』のオルトプラス。北村氏は「最終的にはIPホルダーさんと協議して決めたことですが、我々としてはIP自体を育てていきたいという思いがありまして、その部分をいちばん汲んでくれたのがDMM GAMESさんでした」とプラットフォーム選定の経緯を告白。もしかしたら彼らの側は、プラットフォーマーがビジネスパートナーでありつつも、“いつもいっしょに苦労してくれる仲間になってくれる”ことを求めているのかもしれない。
プラットフォーマーに求めること
続いての議論のテーマは、DMM GAMESをはじめとするプラットフォーム側に、ゲームの提供元として求めることについて。川口氏は「たくさんのタイトルがあって、多くのお客様が訪れてくださることが、いちばん重要かと思います。今回我々は新規のIPということもありますので、もともと知らない作品を知っていただく機会をいかに作れるかが重要でした」と述べ、プラットフォームを通じてタイトルの知名度を高めたいという思いをにじませた。
これを受けて河原氏は「DMM GAMESさんがいいコンテンツを集めていただければ、そこにユーザーさんが集まるので、そのぶん私たちのほうに流れてくる方もいらっしゃるはずです」と自社タイトルに及ぼす好影響に期待。そのうえで、「いまでもそうだと思いますが、人が集まってきた中で勝てるコンテンツを自分たちで作ってくれる……この部分をしっかりとやれるプラットフォームになってくれれば、私たちのビジネス機会がもっと増えるのかな」と今後の展望を述べていた。
北村氏も同様の意見を述べつつ、「より多くのユーザーを集めるために、PCでゲームをプレイするという文化を作ってほしい」と、さらなる貢献に期待を寄せた。その新たな文化を構築するために、「良質なコンテンツを集めたりですとか、いっしょにIPを育てていただいたり……といった部分をやっていただきたいなと。その中で、私どもの側からもユーザーさんにいいものをお届けできれば」と話していた。
パネルディスカッションの概要は以上の通り。パブリッシャーやデベロッパーにとって、DMM GAMESをはじめとするプラットフォーマーは頼れる相棒。双方が手を取り合い、いまよりももっと各タイトルを盛り上げていけば、北村氏の言う“PCでゲームをプレイする文化”が日本でもきっと花開くはずだ。