『ルーマニア #203』に対する深い愛から生まれた“新作”『project one-room(仮題)』というプロジェクト【TGS2017】

一般日初日にあたる23日に、セガゲームスブースにて、パートナーメーカーであるフリューによる『project one-room(仮題)』のステージイベントが行われた。

 2017年9月21日(木)から9月24日(日)まで、千葉・幕張メッセにて開催中の東京ゲームショウ2017(21日・22日はビジネスデイ)。一般日初日にあたる23日に、セガゲームスブースにて、パートナーメーカーであるフリューによる『project one-room(仮題)』のステージイベントが行われた。既報の通り同作は、2000年にドリームキャスト向けにリリースされた意欲作『ルーマニア #203』をリスペクトして制作されているという注目作だ。

あの『ルーマニア #203』がPS4で蘇る……のか!? フリューの注目作『project one-room(仮題)』に迫る【TGS2017】

というわけで、セガゲームスブースを取材していると、パートナーメーカーの出展スペースに気になるタイトルの映像が……。フリューの『project one-room(仮題)』だ。

 登壇したフリュー プロデューサーの大地将氏は、『project one-room(仮題)』に対する反響の大きさを「やばい!」と表現。肌で感じる期待値の高さを受けて、「広報に怒られない範囲で(情報を)ポロリしたい」とコメントした。『ルーマニア #203』発表当時、ドリームキャスト雑誌の編集部でライターをやっていたという大地氏は、『ルーマニア #203』が好きなあまり、「じつは当時ファンブックを作ろうと思っていたのですが、諸般の事情でポシャってしまいました。“いつか何かやってやろう”と思っていたんです」と『project one-room(仮題)』に至るまでの経緯を説明。まさに、「ファンの夢が叶った」のが、今回のプロジェクトなのだ。

 大地氏に続いて壇上に姿を見せたのが、ササキトモコ氏。言わずとしれた、もとセガ所属で『ルーマニア #203』の原案と音楽を手掛けたクリエイターだ。東京ゲームショウでのステージに登壇するのは、WARPのライブに出演して以来というササキ氏(おそらく1997年?)。『ルーマニア #203』が発表された当時はあまり会社から期待されていなかったために、ステージは用意してもらえなかったと苦笑いしながら語ったササキ氏は、「いま、ここに立っていることを当時の私に教えてあげたいです」とにっこり。

 と、大地氏とササキ氏が登場したところで、本格的なトークがスタート。『ルーマニア #203』を「ネジタイヘイという平凡な青年の部屋の中を神様視点で覗くゲームです。彼は放っておくと何もしないので、部屋の中のものをクリックしてリアクションをさせていくうちに、人生が変わっていく……という変わったゲームです」と、おさらいした大地氏は、同作に心惹かれた理由を「切り口が斬新」と説明。「ひとつの部屋の中だけで、テレビなどを駆使して“世界”を描く。ひとつの部屋に居ながらにして世界がわかるという斬新さに感激した」(大地氏)という。

 同作に流行歌として登場するのがセラニポージ。当初謎に包まれていたセラニポージは、のちにササキトモコ氏だと判明。そんなササキ氏は、「このゲームは最初のワンアイデアを出したくらいで、あとはセガのプロの方がシステムをしっかりと作って、ゲームとして完成してくれました。すばらしいです」と当時を振り返りつつ、「セラニに関してはがんばりました」と笑った。

 『project one-room(仮題)』では、そんなセラニポージが復活する。ここで紹介されたのが、会場で流されていた『project one-room(仮題)』のティザーでも使用されているセラニポージの新譜。楽曲名は“箱の中の女の子”で、ひとつのシナリオのテーマ曲だという。詩の中に「またね」というフレーズが聞き取れるが、「“またね”的なシナリオがあるのかな?」とは、大地氏の言葉。

 「『ルーマニア #203』に最初に触れたときの感動を、いまの人に感じてほしい」というのが、『project one-room(仮題)』の開発を決意したきっかけとなったという大地氏だが、そもそもこの話はセガゲームスよりも先に、ササキ氏に持っていったという。セラニがいないと『ルーマニア #203』にならないとアツく語る大地氏は、「セガゲームスか、ササキトモコ氏が、どちらかの協力が得られないようだったら(このプロジェクトは)ナシにしようと思っていた」という。

 「広報に怒られない範囲で、情報をぽろりとしたい」という大地氏に対して、ファンのためにより多くの情報を引き出すことを己のミッションとしていた司会者の方は、「ティザーに写った部屋は、女の子の部屋に見えますが……」と指摘。それに対して大地氏も「女の子の部屋に見えますね……」と、否定するでもなく、どうやら『project one-room(仮題)』の主人公は女子となる予感。さらに、「リメイクですか? 続編ですか?」と、司会者の方のさらなるツッコミに対しては、大地氏の口からこだわりの言葉が聞かれた。「『ルーマニア #203』を最大限リスペクトして同じシステムで作っています。ただ、もし自分がオリジナルと違うクリエイターが『ルーマニア #203』の続編を作ったら、何かもやっとすると思うんです」という。そこで、「続編やリメイクではない、雰囲気はセラニを最大限使って作る“新作”」だと大地氏。『ルーマニア #203』への深い愛ゆえのこだわりが、大地氏にこの決断をさせたようだ。

 さて、ここでトークはさらにゲームのヒミツに踏み込む形で、“箱の中の女の子”の背景をササキ氏が語ることに……。『project one-room(仮題)』では、『ルーマニア #203』同様、シナリオの内容は曲とちょっとだけリンクしており、“箱の中の女の子”の意図については、「プレイヤーが電源を切ったり、どこかに行ってしまうことに対して、“これで終わりじゃないか?”、“来てくれなくなるんじゃないか?”とイライラしたりする。別れになるかもしれないと不安を感じつつ、“また来てくれるかな?”といういじらしい気持ちもある」と説明。そこで、ああ、“箱の中の女の子”の“箱”とは、ゲーム機のことだったのかと、記者も納得。

 さて、『project one-room(仮題)』では、シナリオごとにセラニの楽曲があてられており、ここで来場者へのサービスとしてさらなる新譜が披露。タイトルは“身の丈”で、東京ゲームショウだけのために用意されたアレンジバージョンだという。歌うはササキトモコ氏本人。この楽曲の背景については、「人類が滅んだあとで生まれた未知の生命体で、ひとつの命を持つ存在です。旅立ちのときにマザー的な人が応援をしている」という、本人も認めるとおり、妄想はなはなだしい楽曲だ。大地氏によると、「シナリオでは人類は滅んでいないが、テーマは汲んでいる」という。ちょっとSFっぽい世界観は『ルーマニア #203』流で、まさにセラニポーニ。セラニの新譜で最初にあがってきたのはこの“身の丈”らしいが、この曲を聴いたとき、大地氏は鳥肌が立ったという。「これが天才の仕事か!」と。そして、セラニの新曲が聴けるということで、半泣きしたのだとか。『project one-room(仮題)』がなければセラニの新曲が出ることはなかったわけで、まさに感慨深かったのであろう。

このシルエットも、大地氏とササキ氏とでいろいろと話しあって決定したとのことだ。

 最後にササキ氏は、「『ルーマニア #203』のかつての制作メンバーで、(セガゲームスに)残っているのは2~3人だとわかっていたので、ああいう変わったゲームはセガから出ることはないと諦めていたのですが、大地さんがほかの会社であることの壁を乗り越えてセガを説得してくれたので、感激しています。開発がたいへんそうなので、フリューの新作チームを応援してあげてください」としみじみと語れば、大地氏も「最初に企画を立ち上げたときは、へんなやつが『ルーマニア #203』を作ると言い出したら、どう思われるかと不安になりましたが、言わないと(『ルーマニア #203』の新作は)なかったと思います。つぎの機会にタイトルも含めて詳細を発表したいです」と感慨深げ。

 『project one-room(仮題)』は、大地氏の『ルーマニア #203』への愛によって作り上げられたプロジェクトだったわけだ。さらに言えば、それだけ『ルーマニア #203』が斬新なタイトルだったということなのだろう。

セガゲームスブースのポスターのキャッチコピー「いってらっしゃい、またあとで」にも意味があるという。