2017年9月21日(木)~9月24日(日)まで、千葉県・幕張メッセにて開催中の東京ゲームショウ 2017(21日・22日はビジネスデー)。その多忙なステージの合間を縫って、WargamingのCEOであるビクター・キスリー氏がインタビューに応じてくれた。

 今後のWargamingが目指すものとは、いったい何なのか。同社の各タイトルの新展開を待つプレイヤーの皆さんには、ぜひ一読いただきたい。

ビクター・キスリー(びくたー・きすりー)

Wargaming CEO。文中ではビクター。

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非常に多忙な身でありながら、5年連続で東京ゲームショウに来場しているビクター・キスリー氏。今年も初日のステージに登壇し、最新情報を自らプレゼンテーションしてくれた。

ゲームそのものにこだわり過ぎず、エンターテインメントを追い求める

――最近は『Total War: ARENA』のβテストが始まり、『World of Tanks』では30対30の“グランドバトル”が実装されるなど、Wargamingタイトルに大きな動きが見られます。まずはその辺も踏まえて、今回の東京ゲームショウ2017も含めた感触を教えてください。

ビクターWargamingとしましては、特別なイベントである東京ゲームショウでは毎回新しい情報をお届けできるように考えていますし、今年も素晴らしい情報をお届けできたと思っています。
 また、『Total War: ARENA』においても特別な思いがあります。私はもともと『Total War』シリーズのプレイヤーで、その中の『Shogun:Total War』が個人的にもお気に入りだったんです。

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自身も相当なゲーマーであるビクター・キスリー氏。『Total War』にも、しっかりと縁があった。

――日本勢力実装の発表があったところで、じつにタイムリーなタイトルですね。

ビクターこちらをプレイしながら、Wargamingとしても『Total War』と何かしらの作品を生み出せたら、と考えていました。それが今回、『Total War: ARENA』という形で発表ができて、非常に満足しております。今後の展開には個人的にも興奮しておりますし、楽しみにしているところです。

――『Total War: ARENA』は『World of Tanks』などの既存タイトルとは、まったく異なるゲームだと思われます。このタイトルを、どのように展開していこうとお考えでしょうか。

ビクターこれまでのタイトルと何よりも異なる点は、これまでになかった大規模な戦い、“合戦”を扱うところだと考えています。
 時代背景やゲームシステムももちろん大きく異なりますが、これまでと異なるゲームでありながら、チームワークが大事であるなど、「まったく異なるが、これまでのバトルタイトルと共通した点もある」というところを、積極的に打ち出したいと考えています。

――続いて、さまざまな提携も行なっているWargamingですが、いま興味を持たれている、あるいは伸ばしていきたいと考えている技術分野はありますか。

ビクターまず最初に挙がるのはVR。今回出展しているPolygon VRについても、初日に私自身でプレイしてみましたが、いままでにない素晴らしい体験ができました。非常におもしろい技術であることは間違いありません。
 現在はこのVRへの印象が非常に強いので、今後ぜひVRに関して何かしらの試みをしていければ、と思っています。

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この“CINEMA VR”はブース内で出展されているVRコンテンツのひとつ。ガンマンとなって4人対戦が楽しめる。設置や運営にかかるコストが、かなり低く抑えられているように思える。
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もうひとつ出展されているのが、モーションキャプチャースーツを用いた最新鋭の技術で、最高峰のVR体験を提供するPolygon VR。Wargamingがふたつの形態を出展したのは、今後の多様な展開を考えての布石に違いない。

――VRなどを含めた多彩なブース出展やステージを拝見しますと、Wargamingはすでにゲームを作って売る、という段階を超えたところにまで来ていると感じました。全体を統括するCEOとして、Wargamingをどのような企業にしていきたいとお考えでしょうか。

ビクター私たちは、ゲームだけを提供する会社ではなく、エンターテインメントを提供していきたいという想いから始まった会社です。
 ゲームはそのためのひとつの手段であり、ゲームを通じてプレイヤーの皆さんに、これまでにないエンターテインメントを体験していただくべく活動してきました。『World of Tanks』や『World of Warships』をはじめとして、さらにモバイルに向けた『World of Tanks Blitz』や、さまざまな動画コンテンツも作ってきました。
 今回はその中で、昨今急成長して注目されているVRやARの技術についても、興味深いエンターテインメントのひとつとして注力しています。我々はひとつの形態にこだわることなく、皆様に広くエンターテインメントを提供するため、さまざまな試みをしていく企業でありたいと考えています。

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各タイトルでイベントや大会など、ゲームとしての枠を超えた試みや、ゲームの話とは思えないほどの意外なコラボも提示しているWargaming。それらもすべて氏が語るように、エンターテインメントの提供という点に集束しているわけだ。

――多様なエンターテインメントの一環として、ウォーゲーミングジャパンではファンが集まって戦車の模型を作るといった、他の地域では見られないイベントも開催されています。こうした地域ごとの事業については、どのように評価されているでしょうか。

ビクターそうした地域ごとの試みこそ、各地域ごとにオフィスを置いている理由のひとつ。私としても素晴らしいものだと考えています。正直に言いますと、私個人だけでは世界の各地域の方々が何を楽しんだり喜んだりしてくれているのかを理解するのは非常に難しいのです。 
 会社としても、私としても、ほかの地域と同じことをする必要はまったくないと考えています。このベントを別の地域が行なったから、こちらでもやらなくてはいけない、などという形にはしたくはないのです。

――たしかに、それでは地域を分けたことの意味も薄れてしまいますね。

ビクター各オフィスがその地域で楽しんでいただけるイベントや、ときにはちょっとおかしく奇抜なイベントなどを開催していくこともあるかと思います。それは会社の理念にも沿っており、正しい姿勢だと思っております。

WargamingのCEOより、日本の悩めるeスポーツプレイヤーへ!

――これは質問というよりお願いなのですが……いま現在の日本のeスポーツには、波と同時に混迷の時期が来ています。このことで、若いプレイヤーたちが混乱と不利益を被ることもあります。伸び悩む彼らに、言わずもがなeスポーツを牽引するトップ企業のひとつであるWargamingから、応援のひと言をいただけますか。

ビクター私たちにとって、eスポーツとは必要な要素のひとつです。eスポーツ全体はもちろん、私たちが主催しているWargaming.net Leagueも、まだまだ大きな問題を抱えていると考えています。
 これらの改善とともに、プレイヤーのみなさんにより良い体験を楽しんでいただけるように、試行錯誤は続けていきます。通常のシーズンから若干変更を加え、12月に世界大会を開催しますが、その後もさらに見直した環境を整備していきたい。
 eスポーツという分野は単純に停滞しているのではなく、どの分野でもそうなのですが、いまは「変わろうとしている時期」であると思っていただきたい。私たちも引き続きサポートしていきます。変わっていくことを信じてつつ、我々も皆様も、お互いに育てあっていきましょう。

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▲eスポーツの混迷は日本だけの話ではない。だが、Wargamingのように、問題解決に動いてくれる頼もしい企業がある限り、混迷の時代はいつまでも続くわけではないだろう。ぜひ日本のプレイヤーの皆さんにも、心強い言葉を信じ、自分が信じる道を歩んでいただきたい!