『Horizon Zero Dawn』でオープンワールドに初挑戦したゲリラゲームズの気風と取り組み【CEDEC 2017】

日本最大級のゲーム開発者向けカンファレンス“CEDEC 2017”で行われたセッション、『Guerrilla Gamesにおけるテクニカルアート』を紹介する。

『Horizon Zero Dawn』でテクニカルアートを担当した開発者が登壇

 2017年8月30日~9月1日の3日間、パシフィコ横浜にて開催された、日本最大級のゲーム開発者向けカンファレンスCEDEC 2017。海外からトップ開発者を迎えて行われた招待セッションのなかから、『Guerrilla Gamesにおけるテクニカルアート』の概要を紹介する。

 Guerrilla Games(ゲリラゲームズ)は、最新作であるオープンワールド型のアクションRPG『Horizon Zero Dawn』や、FPS『KILLZONE』シリーズで有名な開発スタジオ。技術面から開発者の功績を称えて表彰する“CEDEC AWARDS 2017”では、『Horizon Zero Dawn』のビジュアルが評価され、ビジュアルアーツ部門の優秀賞に輝いている。このセッションでは、Guerrilla Gamesのスタジオカルチャーと、彼らがどのように『Horizon Zero Dawn』開発上の課題に挑んだのかが紹介された。

 登壇したのは、Guerrilla Gamesでテクニカル・アート・ディレクターを務める、マルテン・ヴァン・ダー・ガーグ氏。『KILLZONE』シリーズにはコンセプト・アーティストとして参加し、『KILLZONE SHADOW FALL』ではアート・ディレクションを担当。常にコードやゲームテクノロジーに関心を持ち、『Horizon Zero Dawn』開発中に技術によるアートのソリューションに多くの時間を費やした経験から、現職へと移行した人物だ。

マルテン・ヴァン・ダー・ガーグ氏(Guerrilla Games テクニカル・アート・ディレクター)

オランダの会社であるGuerrilla Gamesのスタジオカルチャー

 マルテン氏は、Guerrilla Gamesを紹介するにあたり、ソニー・インタラクティブエンタテインメントの子会社であることと、彼らが開発し、『Horizon Zero Dawn』でも使われているゲームエンジン“DECIMA”をコジマプロダクションに提供していることから話し始めた。続いて、オランダのゲームスタジオであることを明かし、オランダの風土がスタジオカルチャーに影響を与えていると説明。

 オランダは国土のほとんどが海抜200m以下であり、海面より低い土地も多い。そこで、古くからあらゆる階層の住民が協力し合い、排水や干拓を行なうことで命や土地を守ってきた。こうした背景のもと、オランダには“ポルダー(干拓地)モデル”という仕組みが存在するという。階層を超えた全員が当事者として歩み寄り、協力し合って、それぞれが納得できる形で物事を進めようとするシステムだ。

 Guerrilla Gamesにもこの気風があり、たとえばクリエイティブディレクターが何人もいたり、インターンからマネージングディレクターに至るまで非常にフラットな関係であったりするのだそうだ。意義を唱えることも肯定的に受け入れられ、「クリエイティブな形で自分たちの情熱を追い求めることができる」スタジオなのだと、マルテン氏は語った。

『KILLZONE』と違いすぎる『Horizon Zero Dawn』開発上の課題

 さて、そんなGuerrilla Gamesが最新作『Horizon Zero Dawn』を開発する際に直面した問題は、『KILLZONE』と違いすぎること。人気シリーズでFPSの『KILLZONE』に対し、新規IPでオープンワールド型の『Horizon Zero Dawn』を制作するにあたり、適したツールもなければ、オープンワールド作品を開発した経験のあるスタッフもいなかった。

 とくに大きなチャレンジとなったのが、ゲームと同時にツールを開発しなければならないことや、三人称視点のオープンワールド用のアートを『KILLZONE』と同じくらい高い品質で用意することなどだ。広いオープンワールドに対して膨大なアセット(素材データ)が必要であったり、40時間以上のコンテンツを相手に『KILLZONE』のような細部までのアートディレクションが不可能であるということは、事前に予測していたという。

 そこで、準備が行われた。ツールやエンジンに優先順位付けがなされ、『KILLZONE SHADOW FALL』の制作中からベテラン勢に『Horizon Zero Dawn』に専念してもらう形で参加してもらったり、新しいスタッフを雇ってライティングチームやワールドとクエストのデザインをするチームを新たに作ったりするなどの投資も実行された。

できるだけ自動化をはかるためのシステムとツール作り

 限られた時間と人数とで、膨大なオープンワールドに取り組む『Horizon Zero Dawn』プロジェクトで、マルテン氏らはできるだけ自動化をはかろうと考えた。時間を節約するため、そして変更を容易にするためだ。そこで、広い世界を物で埋めていくためにプロシージャ(複数の処理をひとつにまとめるプログラミング手法)型のシステムを作ったり、簡単にイテレーション(完成度を高めるために一連の工程を短い時間でくり返すサイクル)が行えるようにした。しかし、何より、アーティストの能力を制約しないよう気を配ったそうだ。

 そのために複雑なパイプラインが構築され、事例として地形の制作フローが紹介された。このプロジェクトのために開発された複数のオリジナルツールや、World Machineなどの外部ツールを使って、山岳地帯ができていくようすが確認できた。

 プロシージャルな地形配置については、デモも公開。森林を作る際、岩などを避けて生えるべきところに木が生えていくようすや、道を作って位置を調整する際、周囲の草なども自然に再配置されていくようすを見学できた。手描きの部分ともなじみ、あまりプロシージャルだとわからないように描画されるシステムが作られたとのこと。

 また、カラライゼーション(着色処理技術)や最適化についても解説された。『Horizon Zero Dawn』では、地形や植生、人工物など、シェーダのなかでカラライゼーションを行なっている。たとえば岩ならば、単に色をマッチさせるだけでなく、表面の苔の生え具合や雪の付着なども自動的に適用されるという。スライドでは、同じアセットやシェーダーを使いながらも、環境によって異なる見栄えとなった岩が表示された。続いて、非常に広範囲にわたって岩山が続く地形での最適化の例も示された。

“BBC ネイチャー”を目指したアートのためのライティング

 最後に、地形ではなく、環境光とライティングについてもフォローがあった。『Horizon Zero Dawn』では、まるで“BBC ネイチャー”(自然ドキュメンタリー番組)のような美しいアートを目指したという。そのために用意されたのは、物理ベースのレンダリングに少し変更を加えて、ゲームとして自然に見えるような、またテレビや映画のように見ていて心地よい、アンビエンス作りが容易にできるツールであった。

 たとえば、夜間に敵ロボットが出現した際、現実ではあまりよく見えないはずだが、ゲームとしてきちんと見せるようなライティングにすることが、ツール上で簡単にできるという。また、日中と夜間では炎の見え方も異なるはずだが、その明るさを現実に近づけるのではなく、適切な明るさに調整してバランスの取れたビジュアルにすることも、容易に可能とのこと。

 マルテン氏は、新しいジャンルにおける新しいIP(知的財産)の『Horizon Zero Dawn』を制作するにあたって直面した課題への取り組みを振り返り、「フレキシブルでプロシージャに則った、そしてみずからが順応できるようなツールやシステム」の開発と運用をオーディエンスに勧め、セッションを締めくくった。