オリジナルスタッフがここに集結!

 ジャレコからアーケード、そしてセガサターン版が発売された縦スクロールシューティング『ゲーム天国』。ジャンル名に“超ハイパーおちゃらけシューティング”とあるように、ゲームの世界を舞台にした独自の世界観、歯応えのある内容、そして爆笑必至のキャラクター寸劇が一度に楽しめることで、ユーザーから高い評価を得た名作だ。

 その『ゲーム天国』が、2017年冬に『ゲーム天国 CruisinMix』(PS4/Steam)として、角川ゲームスより発売となることが発表された。その直後からSNSでトレンド入りするなどの賑わいを見せ、根強い人気を持つことを証明した“ゲー天”だが、じつは『CruisinMix』の開発を、アーケードとサターン版を手掛けたオリジナルスタッフが再集結して進めていることも大きなポイントとなっている。

『ゲーム天国 CruisinMix』メイン開発スタッフインタビューをたっぷりとお届け いまセガサターン版を移植する意味とは?【第一部】_18

 そこでファミ通.comでは、開発スタッフの中心メンバー3人&プロデュースを務めるシティコネクション代表にインタビューを敢行。前半では、『ゲーム天国』復活の真相や、復活にかける意気込みを、後半ではアーケードやサターン当時の裏話をたっぷりと語っていただいた。ファンなら「そうたっだのか!」と納得できる貴重なエピソードがてんこ盛りなので、逃さず読んでいただきたい。ではでは、スタート!(CV:西原久美子さんで)

●『ゲーム天国』とは
 ゲームの世界を舞台にしたバラエティー豊かな世界観でくり広げられる縦スクロールシューティングゲーム。ゲーム世界の制覇を企む悪の(自称)天才科学者ジーニアス山田の野望を阻止するべく、『プラスアルファ』や『モモコ100%』、『ぶたさん』といった歴代のジャレコキャラクターが立ち向かう。オリジナルは1995年にリリースされたアーケード版で、1997年6月6日にはセガサターン版が発売。爆笑必至のキャラクターの会話シーンや、カラオケの歌詞が飛んでくる追加ステージなどを用意し、アーケード版から大幅にパワーアップしている。

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●スーチーチーム(仮称)とは
 企画の2本柱である風穴氏と荒井氏、プログラマーの秋山氏、グラフィックの高橋氏らからなるゲーム制作ユニット。1990年代ジャレコ在籍時代から多くのゲームソフトを世に送り出し、一部ゲームマニアから熱い注目を集める。各人が退社後はインディペンデントな開発ユニットとして、家庭用ゲームやスマートフォンゲームを制作してきた。代表作は『ゲーム天国』、『美少女雀士スーチーパイ』シリーズ、『ちゅ~かな雀士てんほー牌娘』、『ひぐらしの哭く頃に 雀』など。なお、スーチーチームとは筆者が独自に名付けたモノであるため、より適切なネーミングがされることを期待したい。

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▲右から、プロデューサーのシティコネクション代表・吉川延宏氏。続いて、スーチーチーム(仮称)のメインディレクター・荒井正広氏、アシスタントディレクター・風穴尚紀氏、メインプログラマー・秋山 望氏。3人にグラフィッカー高橋将人氏を加えたのが開発の中核メンバーだ。

第一部:『ゲーム天国』復活の経緯と意気込みを訊く!

――本日はよろしくお願いします。まずはストレートに、『ゲーム天国』が復活することになった経緯をお聞かせください。

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▲シティコネクション代表・吉川延宏氏。

吉川 最初につながりができたのは、『スーチーパイ 20th メモリアルアートワークス』というムック本を弊社で制作したときです。弊社は2013年にジャレコのゲームのライセンス権を獲得したのですが、それがちょうど『ブラウザ雀士スーチーパイ』というブラウザゲームの開発途中だったのです。スーチーチームの皆さんは『ブラウザ雀士スーチーパイ』ではノータッチだったのですが、今回はオリジナルを手掛けられた方々に登場していただきたいと思っていました。。

風穴 開発者インタビューを収録して、アートブックに掲載してもらいました。

荒井 イラストの解説文なども書かせていただいて、開発当時の気持ちを思い出していましたね。

吉川 そのときの弊社はまだサウンドトラックCDや書籍販売が中心業務で、自分たちでゲーム制作をするなんて考えはまったくなかったんです。ですので、その場では「何かしらできたらいいですね」くらいの温度で。

――それが急転直下、いっしょにゲームを作ることとなったのにはどんな背景が?

吉川 2016年の5月ごろ、『ゲーム天国』のサウンドトラックCD制作にあたって、再度皆さんとお会いしたときですね。弊社でゲーム事業を立ち上げようと思い立った時点で、「アーケード版『ゲーム天国』の現行ハードでの復刻ができませんか?」という相談をさし上げたんです。でも、それだと基板のゲームを動かすためのエミュレーターが必要になるので、開発の座組が変わってしまう。

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▲クラリスディスク(シティコネクションの音楽ブランド)より発売中のサウンドトラックCD。ゲーム中の歌や楽曲に加え、24Pのブックレットにはスーチーチームのインタビューを掲載。

秋山 そこでこちらから「サターン版の移植だったらいけるかもしれませんが、どうでしょうか?」と逆提案をさせていただいたんです。

吉川 ホントはサターン版が出したかったので、渡りに船で即決しました。そもそもアーケード版の移植を……と打診したのも、サターンのゲームの完全移植なんて無理だと思っていたからです。でも、このチームならきっとできるだろうと。

――奇跡のようなタイミングで話が転がっていったんですね。しかし、移植となると当時の開発データが必要だったかと思いますが。

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▲メインディレクター・荒井正広氏。

荒井 いまのゲーム制作のように一括化されたデータではなかったため、それはもういろんなところから当時のデータをかき集めました。なにぶん20年前のゲームなので画像の形式が読めなかったりと、サルベージはなかなか厄介でした。

秋山 プログラムのソースコードの発見には私が協力しました。

風穴 逆に言うと、それがあったから移植ができる見込みがついたんです。

――キャラアニがパブリッシングを担当することになったのは?

吉川 キャラアニさんとは『ダライアスバースト クロニクルセイバーズ』関連で仕事のおつきあいがあったので、僕から企画を持ち込んだところ、「おもしろそうですね」と興味を持っていただきました。『ダライアスバースト』や『旋光の輪舞2』が好きなキャラアニさんの客層になら『ゲーム天国』も響くと判断していただき、正式な契約となりました。こうしてラインセンス元、開発、パブリッシャーの必要なパーツがそろったのが、去年の10月です。

――『CruisinMix』は、どんなコンセプトのもと制作されているのでしょうか?

荒井 テーマとしては、リメイクではなく“サターン版をそのまま移植すること”。画面の解像度も含めて、あたかもサターン版を遊んでいるような気持ちになってもらうことです。

風穴 完全移植をひとつの柱として、そこに新しい何ができるだろうと秋山に相談したところ……。

秋山 サターン用のプログラムがそのまま動くわけではないので、ゲーム部分はほぼ作り直しとなります。だったら、新しいキャラクターや新しいステージが組み込めるだろう、と。

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▲アシスタントディレクターの風穴尚紀氏。

風穴 それなら、サターン版の完全移植+追加キャラクターという広がりが出せるだろうと、やる気になりました。けっきょくリメイクだと、昔とは違ってしまうし、それが必ずしもいい方向に行かないことが多い。昔のよかったものが遊べて、そこに新しいモノが追加されているのが、今回は理想の形だと思ったんです。こういったアプローチはなかなかないでしょうし。

荒井 ファンの方からは、「『ゲーム天国』が遊べなくなるから、サターンを押し入れにしまえない」というありがたい声も聞きます。その思いに報いるためにも、現行機のPS4、そしてSteamで遊べるようにしようと。

――具体的にはどのようなグラフィックとなるのでしょう?

荒井 いま調節をしているところですが、基本的にはサターンと同じピクセル(ドット)数の絵となります。アーケードモードに関しては、サターン版では画面の上下が切れた、あるいは画面が横向きの状態のいずれかでしたが、今回はフルサイズの縦画面を表示できるようにします。

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風穴 新キャラクターとしてはクラリス(真)が登場するのですが、ボンバーの絵はパッケージやゲーム中イラストを担当してくださったA-10さんが、サターンのドット比率で手でポチポチ打ってくださっているんです。ドット絵に興味がある方はわかると思うんですけど、単純に高解像度のイラストのピクセル数だけを下げても、見られたものにはならない。その解像度でドット絵として見せる部分が職人技なんです。自機も当然ドット絵を新たに起こしています。ゲームの世界観的にもドット絵時代のゲームが題材なので、あえて昔の技術を再現することに力を注いでいます。

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――追加キャラクターにクラリスを選んだのはなぜでしょう。やはりシティコネクション社さんだから?

吉川 ここは強くアピールしておきたいのですが、クラリスはPS版の『Gunばれ! ゲーム天国』のキャラクターとして登場しているんですよ。しかも原作とは違って金髪のショートカット女子として。なので、今回登場するクラリスは(真)です。

荒井 『Gunばれ!』の裏話をすると、クラリスを出そうとなったときに「なにかひねりが欲しいよね」と、キャラクターデザインのそうま竜也先生と深夜の打ち合わせでハイになって決めた記憶があるんです。クラリスを知ってるユーザーさんがみんな「誰だこれ!?」と思うような怪しいノリにしようと、いま思い出してもホント酷いアイデアだったと思います(笑)。

(一同笑)

荒井 でも今回はクラリス(真)なので、原作同様に白いツナギにロングヘアなクラリスを、そうま先生に新たにデザインをしていただいたし、クルマもクラリスカーです。クルマのデザインは、スーチーパイでもおなじみの園田健一先生にお願いしました。

風穴 そうま先生は現在遠方にお住まいで、あまり密なコミュニケーションが取れないために、今回は新キャラクターのデザインと監修をお願いしています。おかけでクラリス(真)は、まるで以前からプレイヤーキャラクターだったかのようになじんでいます。

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▲左がオリジナルキャラクターデザイン担当の、そうま竜也先生によるクラリス(真)、そして荒井氏が「クルマを描かせたら天下一!」と語る園田健一先生デザインによるクラリスカー。

――おお、それは豪華なコラボレーションです。

吉川 ジャレコゲームを代表する女性主人公といったらクラリスですので、『ソルダム』のリットを出すのも違うだろうと(笑)。それにクラリスだけということもないので、そのあたりは今後の発表にご期待ください。

――てっきり金髪のトンチキガイジンが『Gunばれ!』からの逆輸入で出演するのかと思っていたので、オドロキとともにスーチーチーム“らしいな”と思いました。

荒井 そのあたりも自虐ネタとして仕込んでいきますよ(ニヤリ)。ある意味、今回シティコネクションさんで開発ができるというのは、これも含めて必然だったのかなと。

――サターン版『ゲーム天国』と言えば、キャラクターがしゃべったり歌ったりしますが、そのあたりの権利もクリアーに?

吉川 サウンドトラックCDを出したときにそのあたりも含めての再契約をしています。むしろ当時のキャストさんからは、ゲームが復活することをたいへん喜ばれていました。

風穴 しかもBGMや音声は、サントラCDを出すときに、サターンのディスクに収録したものよりキレイな音源が見つかりましたので、そちらを収録しています。よりハイファイでクリアーなサウンドで、新鮮な気持ちで遊べると思います。

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――プログラム面でのご苦労はありますか?

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▲メインプログラマーの秋山 望氏。

秋山 サターン版の完全移植ができるように、いまがんばっています。ハードウェアが異なるということは、どうしても違いはでてきてしまいます。それをすり合わせていく作業をしているところです。当時のサターンの開発資料をひっくり返しながら進めています。とくに『ゲーム天国』はサターン特有の描画機能をけっこう使っているんです。たとえばキャラクターに影を付けることだったり、特定の範囲だけを表示する機能だったり。BG(背景画面)を5枚も6枚も持てたので、そういう部分を再現するのがちょっとたいへんかなと。

荒井 ちょっとマニアックな話をすると、縦にラインスクロールができる機能があるんですけど、それも使っていますからね。それで回転っぽい表現をしたり。

――そういった蓄積があることで、今後サターンのゲームが移植しやすくなったりも?

秋山 純粋なエミュレーターではありませんが、ソースコードさえあればどんなサターンのゲームでも再現できるくらいのことはやっていると思います。

――別のサターンタイトルの移植にも期待が膨らんじゃいますね。ところで、発売日は2017年冬とのことですが、開発は順調に?

吉川 (同席しているキャラアニ担当者の方を見ながら)そうですね、そう書いておいてください。

(一同笑)

――ところで、サブタイトルを『CruisinMix』としたのには何か理由が?

荒井 当初は『ゲーム天国Plus』にしようとか、かなり悩んでいたました。先ほどいったようにリメイクではないので、そこが誤解なく伝わるようにしたいなと。クラリス(真)を出すにあたって、『シティコネクション』では収まりが悪いので、海外版の『Cruisin』から引用しました。ロゴのデザインもほぼそのままです。

風穴 日本では海外タイトルの『Cruisin』はなじみがないでしょうけど、マニアな人にとっては「あれ、もしかしてこれって……」と深読みしてもらえるネタになったかなと。『○○Mix』としたことも、さらに深読みしてもらえたらうれしいです。

――サターン版の限定版『極楽パック』ではオリジナルアニメーションなどを収録したVHSテープが付属していましたが、そのあたりはどうなるのでしょうか?

吉川 『極楽パック』に収録されていたOVA映像は、通常版パッケージ、限定BOXのどちらにもDVDとして付属します。限定BOXではさらに、100ページ超えの資料集と、当時の台本のレプリカ、そして新録のドラマのダウンロードコードが特典となります。

風穴 そうま先生には当時大量の設定や資料を描いていただいたのですが、これまで埋もれたままだったものが世に出るということで、ご本人も喜ばれています。

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――ひとまずのシメとして、発売に向けての意気込みをお願いします。

吉川 シティコネクションという会社がゲーム会社としてのスタートを切ったのが自社パブリッシングの『ソルダム』、つぎがジャレコゲームの集大成ともいえる『ゲーム天国』となります。ずっとやりたいと思っていただけに感慨深いです。今回は運命的に、人もモノも揃ったので気合いが入っていますし、“ゲー天”だけでなく、あれやこれやもできるだろうという想像は広がっています。まずは、『ゲーム天国CrusinMix』を楽しみにしていただきたいです。

荒井 『ゲーム天国』はジャレコ在籍時代に、いちばん充実して制作できたタイトルです。それをいまのユーザーにも遊んでもらえる機会を与えていただいてありがたいと思っています。当時を知る方はもちろん、新しいユーザーの方にも楽しんでいただけたらうれしいです。

風穴 いまだに毎年、正月と夏にファンレターをくださる方がいらっしゃるくらい根強いファンのいるタイトルです。いつかその方たちの気持ちに応えられることができたらいいなと思っていたところ、吉川さんからいいお話をいただけて幸運だと思っています。こうやって動き始めたからには、『ゲーム天国』の歴史をまた少しでも積み上げていきたいなと思っています。

秋山 私もジャレコ在籍時代は十数タイトルを手掛けていますが、その中でもとくに『ゲーム天国』や『スーチーパイ』シリーズは自分の代表作であると思っています。当時やり残したことを含めて、しっかりとやっていきたいと思います。

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