gamescomは“世界最大のインタラクティブコンピュータービデオゲームショウ”

 過去最高となる35万人の来場者を記録するなど、盛況のうちに幕を閉じたgamescom 2017。ここでは、ケルンメッセ gamescom総責任者のティム・エンドレス氏に、同イベント開催にあたって注力した点や今後の展望などについて聞いた。なお、ケルンメッセは日本法人も設けており、国内企業のイベントへの誘致なども積極的に展開している。

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ケルンメッセのgamescom総責任者に成功の秘訣と今後の展望を聞く【gamescom 2017】_02

――まずは、gamescom運営にあたっての方針をお教えください。

ティム 運営の方針は、“ゲームのすべて”を来場者やビジネス関係者にお見せすることです。これがgamescomの根幹になります。ゲームコミュニティーのすべてを8月のケルンに集めたい。実際のところ、gamescomがスタートしたのは2009年ですが、2012年以降は、出展者数、展示総面積、来場者数などを総合して、gamescomは“世界最大のインタラクティブコンピュータービデオゲームショウ”となっています。ビジネス面で見ると、世界中のゲーム関係者の“ハブ”として機能していると自負しています。

――年々入場者数を増やしている成功の秘訣は何になりますか?

ティム gamescomのコンセプトが支持されているからだと思います。ビジネス関係者と一般来場者の両者で、訴求ポイントがはっきりしていて、それが各々のニーズに合致しています。ヨーロッパでビジネスを展開したいゲーム関係者にはビジネスエリア、一般来場者にはエンターテインメントエリアが設けられていて、最新のゲーム動向に触れることができるわけです。

――イベントスペースも年々拡大しているようですね。

ティム はい。今年は昨年に比べて4%増加して、20万1000平方メートルになりました。2009年には12万平方メートルでスタートしたので、9年間で70%以上も増加したことになりますね。展示社数は2009年が450社だったのが、今年は910社になっています。

ケルンメッセのgamescom総責任者に成功の秘訣と今後の展望を聞く【gamescom 2017】_03
※オフィシャル写真

――ゲームイベントはヨーロッパでも増えていますが、ほかのイベントにはないgamescomならではの特徴や魅力はどの点になりますか?

ティム デベロッパーやブリッシャー、流通関係者から一般来場者までを対象としたイベントとして、独立していることが成功の秘訣です。また、PC、オンライン、モバイル、家庭用ゲーム機、VR、eスポーツなど、さまざまなゲームが一堂に会しているのも大きい。全世界のほかのイベントを見ると、ゲーム業界の一部にフォーカスしたものが多いです。幅広くカバーしているところがgamescomの魅力ですね。

――メーカーに出展を促すための施策やお客さんに来場してもらうための告知など、積極的に取り組んでいらっしゃることなどありましたら、お教えください。

ティム 毎年、積極的に取り組んでいます。すでに2018年に向けてもスタートしていますよ。今年も出展企業からはすばらしいフィードバックをいただいています。ビジネスエリアでの結果にはとても満足してもらっていますし、一般向けの出展エリアでも満足しているとの声が届いています。

――具体的にどんな声が?

ティム ビジネスエリアの内容について、とても肯定的な反応をもらっています。メルケル首相が出席してのオープニングは非常に素晴らしかった。多くの出展者がスペースを拡大したので、さらに内容が充実しました。「とてもスムーズな運営だった」という意見もいただいています。

――とくに日本のメーカーをgamescom出展に誘致するために取り組んでいらっしゃることなどありましたら、教えてください。

ティム 日本はもちろんとても重要な市場です。日本からの出展は多いのですが、ヨーロッパあるいはアメリカ本部から出展している場合と、日本から直接gamescomに申し込んでいる場合があります。任天堂さん、スクウェア・エニックスさん、カプコンさん、ソニー・インタラクティブエンタテインメントさん、バンダイナムコエンターテインメントさん、KONAMIさんなどがその代表例ですね。これらの企業とは長いあいだよいおつきあいをさせていただいています。もちろん、直接日本から出展する企業にも興味を持っていただきたいです。現在日本には2名のgamescomの担当がいて、さまざまな企業とコンタクトを取っていますよ。

――日本のゲームメーカーについてのご感想をお教えください。

ティム とてもプロフェッショナルであり、自分たちの要望を明確に理解していると思います。私たちは、彼らがターゲットに届くようにお手伝いをしています。日本のメーカーは世界で大きな力を持っていることは確かですね。今年のgamescomでは、任天堂さんやバンダイナムコエンターテインメントさんは、例年よりも出展スペースを拡大して、ラインアップなども充実していただいたようです。

――2017年から始めた新しい取り組みなどありましたら、お教えください。

ティム 今年はふたつの新しいカンファレンスを開催しました。gamescomはビジネスとエンターテイメントだけではありません。まずは、開発者を対象としたカンファレンス、Devconをgamescomの会期に先駆けて8月20日~21日の2日間実施しました。こちらは、プレミアイベントとして、3000人が参加し大成功を収めています。また、eスポーツにフォーカスしたBtoBカンファレンス“スポビス・ゲーミング&メディア”も、8月21日に展開しています。ドイツを含むヨーロッパではeスポーツの重要性が高まっています。スポーツの中でもっとも成長しているセグメントで、何百万人ものドイツ人が観戦しているんですよ。同イベントには750人が参加していただきました。このイベントの目的は、スポーツ業界や消費者向けグッズ業界とeスポーツを結びつけて、新しいビジネスモデルを模索して、マーケティングの機会について話し合うことです。もちろん、ショーフロアではBlizzardやプレイステーションを始め多くの企業がeスポーツイベントを行っていて、大人気でした。

――eスポーツは会場でも大盛況でしたね。

ティム あと、今年から会期スケジュールを変更しています。従来は水曜日から日曜日までだったのですが、今年から火曜日から土曜日までの開催としました。gamescomの柱のひとつは、ケルンの街で行われる“gamescom City Festival”で、このフェスティバルをもって、“gamescom ウイーク”が締めくくられるんです。ケルンメッセでのイベントが土曜に終われば、日曜日には街で行われるフェスティバルに集中できる。これはgamescomというイベント全体にとって大切なことです。参加者は無料で、夜までゆっくり楽しめるというわけです。

――日曜日を外すことで、集客が落ちるのでは……との懸念はなかったのですか?

ティム 従来だと、木、金、土、日とチケットは完売していましたが、今年は水、木、金、土とチケットが完売しているので、問題はなかったようです。サマーバケーションの終わり近くに開催するということも重要です。ちなみに、来年も今年と同様に火曜日から土曜日までで、2018年8月21日~25日に開催することが決定しています。

――今年、gamescomにメルケル首相が視察に訪れましたね。

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ティム 首相が来てくださったことは、gamescomおよびケルンメッセのgamescomチームにとって、たいへん光栄なことでした。それと同時に、世界のゲーム業界全体にとっても重要なイベントだったと認識しています。これまで、国家の首相や大統領が、コンピュータービデオゲームのイベントのオープニングに来場したことはなかったと思います。それだけ、メルケル首相の訪問はゲーム業界全体、とくにドイツ産業にとって、とても意義のあることでした。ドイツは、ヨーロッパで最大級のゲームマーケットでありながら、ドイツで購入されるソフトのうち、ドイツで開発されているものは6%にしか過ぎません。コンピュータービデオゲーム業界へのサポート体制もあまり整っていないというのが現状です。それに対して政府も目を向け始めていて、それはメルケル首相も認識されています。メルケル首相の訪問は、これからドイツのゲーム産業の改善に向けて取り組む、いい機会になったかと思います。

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――ゲーム業界は、ドイツ国内で重要な役割を果たしていると思いますか?

ティム そう思います。ドイツ人の半数はさまざまなプラットフォームでビデオゲームをプレイしています。先ほどもお伝えしましたが、ヨーロッパ最大級のゲームマーケットであり、ゲーム業界は重要な位置を占めています。ただ、ゲームデベロッパーが少ないので、ここには大きな可能性があります。メルケル首相の来場の理由のひとつはここにあるわけです。

――ちなみに、メルケル首相はどのようなものに興味を示されました?

ティム ユービーアイソフトのブースに立ち寄って、『アサシンクリード オリジンズ』を見学されていましたね。そのあと、ホール8でドイツのデベロッパーであるAstragon Entertainmentでファーミングシミュレーター『Landwirtschafts-Simulator 17』をプレイされました。そのほか、ドイツのBluebyteとソニー・インタラクティブエンタテインメントブース、そしてマイクロソフトブースを訪問しました。『Minecraft』を授業に使っている教師ともお話をしていましたね。

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※いずれもオフィシャル写真

――最後に、来年のgamescomに向けての抱負をお願いします。

ティム gamescomは毎年成長を続けていまして、ゲーム業界にとっての“ヨーロッパのハブ”となっています。ヨーロッパでのビジネスを検討しているのであれば、gamescomにいらっしゃる必要があると自負しています。約100ヵ国から30000人を超えるトレードビジターが参加しており、真に国際的なイベントとなっているんです。910の出展社の72%は国外から参加しており、ビジネスエリアはまさに国際イベントです。ぜひ、ケルンのgamescomでビジネスをしてください!