“神話構想”最新作はダンジョンRPG

 2011年に発売された3Dアクションゲーム『エルシャダイ』を手掛けた竹安佐和記氏による最新作『The Lost Child(ザ・ロストチャイルド)』がプレイステーション Vita、プレイステーション4に向けて発売された。本作は竹安氏がさまざまな神話をモチーフにして展開する“神話構想”の世界をベースにしたダンジョンRPG。基本的な要素を解説しつつ、そのインプレッションをお届けしよう。

現代の日本に混沌の邪神たちが顕現する
 本作の舞台は現代の日本。オカルト雑誌“LOST”のライターである伊吹隼人は、ある日謎の女性・バルシアからトランクを渡される。トランクの中に入っていたのは、悪魔や天使、堕天使など、“アストラル”と呼ばれる異形の存在を使役する力を秘めた魔銃“ガンゴール”。隼人はこの魔銃を使ってアストラルたちを従え、天使と悪魔の争い“天魔抗争”に身を投じることとなる。

 『エルシャダイ』と世界観を共有しているため、ルシフェルなどといった、ファンにとってはおなじみのキャラクターも登場するものの、ストーリーで描かれるのはまったく新たな物語。そのため、「前作をプレイしていないけど話についていけるかな……?」という人も“大丈夫だ、問題ない。

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▲「話をしよう……」と、お決まりのセリフであらすじを語ってくれるルシフェルにニヤリ。このほかにもゲーム中でたびたび登場して物語に干渉する。
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▲主人公・隼人のもとに現れた天使・ルアはともに戦ってくれる頼もしい仲間。ちなみに、写真には姿が写らない。

 プレイしてまず感じたのは、世界観が超濃いということ! 主人公の隼人を取り巻くキャラクターたちや、さまざまな神話や伝承の登場人物をモチーフにしたアストラルなど、竹安氏が育んだ神話構想の壮大な世界が、本作の中に凝縮されているのだ。しかも、ボスとして登場するのは『クトゥルー神話』の邪神たち。テーブルトークRPGなどの題材としてコアな人気があるものの、大々的にビデオゲームで扱われることはあまりないため、かなり新鮮に感じた。

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▲この世に4本存在するといわれる、地上界の魂を天界に送る装置“オベリスク”を守護する邪神たち。危険なアストラルたちが出現する“レイヤー”(ダンジョン)という空間の最奥に潜んでいる。

すさまじいまでのダンジョンの作り込みに脱帽!

 主人公を待ち受ける邪神のもとへ辿り着くには、まず、怪しい噂のあった街で取材を行い、邪神が潜んでいるレイヤーの位置を特定する必要がある。取材はアドベンチャー形式で進行し、必要な情報を集めるとレイヤーに突入できるようになる。

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▲街の人々から話を聞いて、レイヤーへと繋がる情報を入手。レイヤーとは関係ないものの、オカルト系の小ネタが聞けることもある。

 レイヤーの中では、凶暴なアストラルたちが襲い掛かってくるほか、プレイヤーを悩ます仕掛けが多数用意されている。邪神の待つ最奥に到達するには、仕掛けの謎を解いて進んでいかなければならないため、レイヤーの攻略は一筋縄ではいかない。さらに、そのボリュームはかなりのもの。ふだんからよくダンジョンRPGはプレイするのだが、本作のダンジョンはとくに作り込みがすごい! 筆者はダンジョン内の宝箱はすべて取得するタイプなので、どのゲームでもプレイ時間が膨れ上がりがちなのだが、本作はそのなかでもとりわけプレイ時間が長くなった。なお、レイヤーごとに用意されている仕掛けが異なるため、プレイ中レイヤーに潜っている時間はかなり長かったが、マンネリを感じることはなかった。

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▲ダンジョン内での移動速度や操作方法など、設定を自分好みにかなり細かくカスタマイズできる点が◎。難度もEASYからHARDまで3種類が用意されているのでダンジョンRPG初心者の人もご安心を。
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▲用意されているレイヤーの仕掛けはじつにさまざま。物語が進むにつれて、レイヤー内の構造はよりいやらしく、プレイヤーを手こずらせるものになっていく。

プレイヤーの手にすべてをゆだねた育成要素が好感触

 レイヤーで戦うことになるアストラルたちは、前述の魔銃・ガンゴールを使って放つ必殺技“アストラルバースト”でトドメを刺すと、仲間として使役できるようになる。アストラルは、外見、能力ともにとても個性的なうえ、“南光坊天海”や“岡田以蔵”といった歴史上の偉人をモチーフにしたものまで登場するので、「この先どんなアストラルが出てくるんだ……!?」と、つねにまだ見ぬアストラルの出現にワクワクしながらプレイできる。

 仲間のアストラルは、戦闘で獲得できる“カルマ”を消費することで強化可能。カルマは、経験値に相当するもので、プレイヤーの好きなように、仲間のアストラルたちに割り振れる。そのため、気に入っているアストラルをとことん強化したり、仲間にしたばかりのアストラルのレベルを一気に上げて、即戦力に育て上げたりと、自分の好きなように育成できるのだ。個人的には、「戦闘に参加させてレベルを上げたいけど、パーティーの枠が足りなくて育成できない!」という悩みが解消されたのが最高にうれしい。

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▲主人公・隼人や、ルアがレベルアップした際には、任意のステータスにポイントを割り振れる。アストラルたちだけでなく、主人公&ルアの育成も楽しい。

 また、アストラルは戦いを重ねることで経験を積み、戦闘中に、命令したコマンドとはまったく異なる新しいスキルを勝手に使用し、そのスキルを習得する。RPGでは、一定のレベルに達するとスキルを習得するというシステムが採用されることが多いが、本作のこのシステムは、アストラルたちが自分の意志で動いているようで、たいへんおもしろかった。

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▲戦闘の基本はオーソドックスなターン制のRPGだが、敵からの狙われやすさを目のアイコンで視覚化した“敵視”が特徴的。敵視は敵を攻撃したり、スキルを使うと高まっていく。
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▲こちらは筆者が気に入っているアストラル“ショゴス”。命令通りに動いてほしいときに限って新しいスキルを習得するので、たびたびピンチに陥る。なんだか、よかれと思ってやってくれているような気がして憎めない。

 ゲームを少し進めると、澄伝寺という施設が利用できるようになる。ここでは、アストラルのスキルを別のアストラルに移譲させる“御霊天秤”を利用したり、アストラルを“SIN化”(進化)させるなど、アストラルの育成に関するいろいろなことが行える。なかでも目を引くのは、一定レベルまで強化したアストラルのレベルを1に戻す“御霊初期化”。レベルは1まで下がるものの、初期化後は基礎ステータスが大幅に強化されるため、好みのアストラルをとことん強化できるのだ! この手のゲームでは、いつも最強の1体を作り上げるために心血を注いできた筆者にとっては、まさに夢のような(ほかのことが手に付かなくなるので、社会的死刑宣告ともいえる)システムだ。

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▲すべてのアストラルが2回まで進化するため、外見や、能力の変化を見られるのもうれしいポイントだ。

 さて、ここまで本作のデキのよさを絶賛してきたが、正直なところ、プレイするまでは内容についてかなり心配していた。というのも、ダンジョンRPGというと『女神転生』シリーズなどといった偉大なタイトルが多いため、その劣化版になってしまうのではないかという不安でいっぱいだったのだ(……本当にごめんなさい)。しかし、上で述べてきた通り、その不安を打ち砕くほど、しっかりとしたダンジョンRPGに仕上がっていた。さらに、先述した終わりのない育成システムや、全99層にも及ぶ超ド級のレイヤー“冒涜の果てルルイエロード”など、本編クリアー後にもたくさんの楽しみがプレイヤーを待っている。そして、追加ダウンロードコンテンツなど、本作のさらなる進化にも期待!