「指輪物語」や「ホビットの冒険」などと世界を共有するオープンワールドアクション『シャドウ・オブ・ウォー』。開発元Monolith Productionsで行ったクリエイティブ・ディレクターとアートディレクターへのインタビューで、そのキャラクターメイキングや新システムについて聞いた。

●新システムや、主人公タリオンのメイキングまでいろいろ聞いた

 ワーナー ブラザース ジャパンから2017年10月12日に発売予定のオープンワールドアクション『シャドウ・オブ・ウォー』。本作はJ・R・R・トールキンの「ホビットの冒険」や「指輪物語」などに登場する世界“中つ国”を舞台とした2014年の『シャドウ・オブ・モルドール』の続編で、数奇な運命に巻き込まれた主人公タリオンの戦いが描かれる。

 本誌では今回、開発元であるMonolith Productionsに招待され、さまざまな新要素を実際にプレイして体験。その模様をお伝えしてきた。この記事ではクリエイティブ・ディレクターのMichael de Plater氏と、アートディレクターのPhil Straub氏へのインタビューをお届けする。広大な中つ国の世界や、シリーズの根幹をなすユニークなオークたちを生成する“ネメシス”システムはどのように作られているのか?

●より完成され洗練されたゲームにまとまっていると思う

Michael de Plater(クリエイティブ・ディレクター/Monolith Productions/インタビュー中表記は’’マイケル’’)

――主人公タリオンの能力という点で質問したいんですけども、ゲームはどんな感じで始まるんでしょうか。またイチから能力を習得しないといけなかったり?
マイケル それは大丈夫。ネタバレを避けたいのでどんなオープニングになるかは言えないけども、前作にあったコンバット、ステルス、移動のためのアビリティをいくつも持った状態で始まるよ。
 一方で前作『シャドウ・オブ・モルドール』をやったことがない人のために、この世界がどういうもので、どんな対立があって、どんなアクションができてというのを紹介していくんだけども、それに合わせて、これまでなかった新しいアビリティの紹介をやったりもする。

――前作をやったことがない人や、あるいは途中で中断してしまった人も、どんなことがあったか話についていけるということでいいですか?
マイケル 前作をプレイしていなくてもちゃんと遊べるゲームを目指しているから安心して欲しい。実際冒頭では、テレビドラマシリーズの冒頭のようにストーリーに追いついてもらって、主要キャラの重要な要素の紹介もやる(※海外ドラマではオープニングで前回までのおさらいをすることがある)。タリオンとは誰なのか、彼の死について、ケレブリンボールとの融合、目標である“黒の手”との戦いや関係などをささっとおさらいしていって、その上で今回の話が始まるようになっている。
 だから本作から入ってもらって大丈夫。思っている以上にスッと入っていけるはずだよ。もちろん興味があって『シャドウ・オブ・モルドール』から始めてもらえたらそれは嬉しいし、面白いと思うけどね。

――今回は装備集めの要素もありますが、レジェンダリー装備がなくてもクリアーできますか?
マイケル もちろん。レジェンダリー装備は非常に強力で、特殊効果やアビリティを持っていたりすることもあるんだけど、むしろ異なるプレイを提供するという類のもので、必須というわけではない。

――同様にオンラインコンクエストなどの要素はどうでしょう。
マイケル それも同じ。オンラインコンクエストやオンラインVendetta、またオンラインアリーナというものもあるけども、いずれも他のプレイヤーの世界や砦に干渉してみるといったオプションとしての存在で、それをやらないとメインストーリーをクリアーできないといったことはないよ。

――オンラインコンクエストとシャドウウォーズの違いについて説明してもらっていいですか? どちらも砦をめぐる戦いなので、少し混乱する部分があって。
マイケル オンラインコンクエストは、オンラインを通じて、他のプレイヤー世界にある彼らがアップグレードした砦を攻撃しにいくというもの(※対戦ではなく、守備側はプレイしない)。
 シャドウウォーズはシングルプレイの体験で、オンラインなどは必要ないし、他のプレイヤーは関わらない。メインストーリーの最終盤でサウロンに対峙した後のエンドゲームコンテンツで、引き続き砦をアップグレードとして、敵軍勢からそれを守っていき、その果てにある種のエピローグにたどり着く……という内容だね。

――オンラインVendetta(※他プレイヤーを殺したオークを代わりに敵討ちしにいくというコンテンツ)で、例えば僕のフレンドが僕の敵討ちに成功した場合、こちらにメリットやデメリットはありますか?
マイケル 誰かがあなたの敵討ちに成功した場合は、あなたもSpoils of Warという一種のリソースを貰える。オンラインコンクエストでも、ランクドモードでプレイする場合は、あなたの砦が非常に強固で誰かが攻略に失敗したら、Spoils of Warを貰える。もちろん攻め側でも砦を攻略できたら報酬があるよ。Spoils of Warを集めていくと、パワフルなオークやレジェンダリー装備などを入手できる。

――オンラインコンクエストのデモでカラゴルを召喚するシーンがありましたが、もっと大きな生物、例えばドラゴンなどの大型のクリーチャーを呼ぶことはできますか?
マイケル 本作にいろいろ大きな生物は出てくるけども、ひとまずドレイク(ドラゴン)については召喚できる。ちなみに砦によってはエサが設置してあって、複数のドレイクが飛んでいることもあるよ。

――今日のデモでは吟遊詩人のウォー・チーフが出てきましたが、彼らが戦闘中も歌っている素っ頓狂な歌に爆笑しました。彼らの歌にはバリエーションがあるんですか?
マイケル 歌もそうだし、もちろん外見やセリフなんかもバリエーションがあるので楽しみにしていて欲しい。ローカライズもされるよ。

――歌に特殊効果はあるんですか? 周囲のキャラが強化されるとか……。
マイケル ああ、そういうのはない……でもあった方がいいな。メモしておこう。最初のパッチに入るかもね(笑)。

▲さまざまな個性的なオークが登場するのも本作の魅力のひとつ。コレはバルログを復活させやがったネクロマンサー“Zog”。

――あなたにとって最初のゲームとの最大の違いはなんでしょう?
マイケル ひとつに選ぶのは難しいけども、「スケール」と言うことはできると思う。より大きく、よりバリエーションがある。でもディレクターとしては、それぞれの要素の繋がりがより強くなっていることも大事な部分だ。例えばストーリーはより強力だし、ネメシスシステムもグレードアップした。そしてストーリーとネメシスシステムの相互の影響も強化されている。より完成され洗練されたゲームにまとまっていると思う。

――個人的にはバイオーム(植生)が増えたのも嬉しいですね。前作はちょっとあまり変わらないフラットな感じがありましたから。
マイケル バイオームがより多様になったことで、もっと探索を楽しんでもらえると思う。より細かいし、植物の種類も増えたし。
 これはエンジンチームの努力も大きくて、オープンワールドゲームの例に漏れず、我々のゲームもどうしてもコンテンツ量が多いから、メモリーとの戦いになる。このゲームの場合、大量の敵キャラクターやそれぞれのAI、あらゆる場所につかまれる建物や地形などがあるわけだしね。それが彼らの改善によってできることが増えた。彼らの仕事は素晴らしいよ。

――今回のデモではバルログの一体であるTar Gorothが登場しました。あのキャラクターについてちょっと説明してもらっていいですか?
マイケル 映画「ロード・オブ・ザ・リング」に出てきたバルログとも似ている部分があるんだけども、彼は第1紀に出てきた将軍で、自然を司る精霊であるカルナンの宿敵でもあった存在だ。だから非常に強力で、分厚い装甲を持ち、喋ることもできるからセリフも用意されている。
 今日見せたミッションでは、ネクロマンサーのZogがTar Gorothを復活させてしまったため、カルナンと協力して戦うことになる。彼女(カルナン)は人間とは異なる論理で生きるものだから、危うい協力関係ではあるんだけども、そうも言っていられない状況というわけだね。

――本作の世界設計なんですけども、全体が繋がっているわけではなくて、それぞれのリージョン(地域)が”小さなオープンワールド”(※)に分かれているということでいいでしょうか。(※編注:ゲーム世界全体が繋がったひとつのオープンワールドで構成されるシステムと比較する上での表現)
マイケル それぞれ区切られているというのはその通り。本当にサイズとして小さいわけではなくて、『シャドウ・オブ・モルドール』のリージョンより大きいけれどもね。各リージョンには塔があって、異なる環境やバイオームがあり、制圧すべき砦が存在する。

――ひとつの巨大なオープンワールドにするのではなくて、そういう形にしている意図を教えてください。
マイケル 最大の理由は、そうした方がリージョンのバリエーションの数と、リージョンの個性の強さ、つまりそれぞれ異なるエコシステム・環境を持たせることを、どちらも最大限に発揮できるからだね。こっちは雪っぽくて、こっちは火山っぽくて……というのをはっきり打ち出せる。

――ひとつ個人的に気に入っている新機能をピックアップするとしたら、どれを選びますか?
マイケル 自分用の“ボディガード”を召喚できることかな。そうやっていくうちにキャラクターへの愛着が湧くし、そうしたキャラクターを自分のそばにパッと呼べるというのは気分がいいしね。

――今年のE3で見せたデモに出てきたデカいオーク(Bruz)のユニークなキャラクターがネットでめちゃくちゃ受けましたよね。ああなると想像していましたか?
マイケル ある程度そんな予感はしていたよ。個人的にも好きな一体だし、僕と同じくオーストラリア人でもあるしね(※恐らく声優の話)。きっとイケてるって信じてたさ。

●個性的なオークたちはあらゆる部門の仕事によってできあがっている

Phil Straub (アートディレクター/Monolith Productions/インタビュー中表記はフィル

――今作は『シャドウ・オブ・モルドール』と比べても環境のバリエーションが増えましたよね。どうやって新たなリージョンの風景を作っていったんですか?
フィル どこから始めようか。幅広いバイオーム(植生などの自然)を作るにあたって、どんなものを見せたいか考えた。A、まだ見せてなかったもの。B、バイオームと地理がお互いコントラストを成しているようなもの。C、話のトーンにマッチしてストーリーテリングの一部として機能するようなもの。
 そこから始めて、まずはインターネットや本などさまざまなものをソースに、リファレンスとなる資料を作っていった。そこからコンセプトを作り込むフェーズになる。植物相や枝葉はどんな感じなのか、どんな地質や地形がいいか、天気は、そしてパレット(色)はどんな感じなのか……さまざまなことを検討した。バイオームに多様性を持たせたいということは、バイオームを構成する要素それぞれで多様性があるということ。だからパレットの点でも多様性がなければならない。

 そうやって初期のコンセプトができると、参考になる自然のある場所に行って現地調査を行う。ビデオを撮ったり、高解像度の写真を撮ったりしてね。そうやって資料を作成していきながら、今度はコンセプトをもっと発展させていく。
 そしてアート側で何をやりたいかが自分たちの中で理解が固まってきたら、地形を含めた話になっていく。今回はフォトグラメトリーもやっている。これは地面に向けて複数のアングルから高解像度の写真を撮影して、それをベースにゲーム中の3Dデータを作っていくという手法だ。

――「幅広い自然があるといいよね」と言うのは簡単だけど、それだけ作業しなければいけないデータ量は増えますよね。なぜ前回はできなかったことが今回は取り組めるようになったんでしょう?
フィル 本作が続編であることのメリットとして、ゼロからのスタートではなく、すでに基礎があるということが大きいと思う。「どうやってオープンワールドの世界をシームレスに表示していくか」なんてことはもうわかっているわけだし、「大半の場所を通れる世界をどう扱うか」なんてことも、あまりやり直さなくて済む。
 だからその分、今回はコンテンツのバリエーションに力を注ぐことができたんだ。よりビジュアルでストーリーを語れるアートを生み出せたと感じているよ。

――トールキンの「中つ国」の世界という大きなIPの中で、新しいものを作っているわけです。どれぐらい創造性の自由を与えられているのでしょうか?
フィル よく聞かれるんだけども、結構な自由を与えられていると思う。そもそも映画や本が出ていても、いまだにあの世界には視覚化されていなかったり十分に探索されていないエリアやキャラクターが膨大にあるわけだしね。しかも最新のハードウェアだったり、360度ぐるっと見渡せたり、ゲームとしてのインタラクティブな環境で視覚化されているものはあまりないと言ってもいいぐらいだ。だから、そこを開拓できるのはとてもエキサイティングだね。

――映画や本や関連作品をどれぐらい参照していますか?
フィル アート部門で一番重きを置いている言葉は“オーセンティック”(※その世界観の中で本物らしさがあること)なんだ。スタジオには中つ国の知識を十分に持ったスタッフが多くいるし(※過去にも同IPの作品を手がけているため)、それぞれの作品を愛している。実際、作品の数々を参照していて、それを土台に発展させて、(外見などにランダム要素のある)ネメシスシステムなどを築いている。

――それぞれの要素についてMiddle-earth Enterprises(※)による承認作業などはあるんですか?(※Middle-earth Enterprisesは本作の版権元で、「指輪物語」と「ホビットの冒険」の映画化権などを有する)
フィル Middle-earth Enterprisesとは非常にいい関係を築いていて、フランチャイズにとって、そしてゲームにとって何がベストなのかを協力して模索できていると思う。

――シャドウシリーズでは、ネメシスシステムによって個性的なオークがいろいろ登場しますよね。アーティスト側の視点で、どうやってウォー・チーフの外見を設計しているんですか?
フィル これは長い回答になると思うな。大まかに言えば、これもまた土台をどうやって築くかが大事なんだ。キャラクターを作り出す際の流れなんだけども、内部的には“ソケットシステム”と呼んでいるものがある。ある一体のオークを構成する要素を分解して、その役割や階級によっていくらか加えたり減らしたりするんだけども、その組み合わせによって多様なオークを表現できる、非常にフレキシブルなシステムになっているんだ。

 今回は前作とはちょっと違っている部分もあって、それは部族の概念があるからなんだ。ここで裸のベーシックなオークを考えてみて欲しい。彼は一兵卒だから比較的ベーシックなアーマーを着るだろう。まずはそこのコンセプトを詰めていく。
 でも“彼”は、実際はある部族の一員、そしてある階級のオークなので、それとしてふさわしい格好になるはずだよね。だからベースとなるオークについてのコンセプトが固まった所で、それぞれの部族に対してビジュアル的にどういう特徴を持たせるかを模索した。

 これは単なるキャラクターデザインというよりも、オークたちの社会がどうなのかという世界観のデザインに近いのが楽しい部分だ。じゃあ彼らの砦はどんな感じなのかとか、キャラクターの外見だけでなく関連する領域とも繋がってくるしね。
 そして部族についてのコンセプトが固まってくると、今度は階級について掘り進めていくことになる。そうして部族の中で階級によるバリエーションがあって、さらに同じ階級の中でのバリエーションがあって……といった具合の構造ができていく。

 というわけで、まずはコンセプトを詰めていって土台を作るんだ。それぞれの装備なんかも同じで、どれぐらい年季が入っている感じにするのか、ブランド(支配下に置くタリオンの能力)されたらどうなるのか、どういうのが本物らしさが出るのかとか、かつカッコいいものになるのかとか、そういう事を自分たちで発見していく。
 そして土台ができたところで、実際のコンテンツとなるパーツを作っていく。それをシステムに放り込むと、これまでに言ったような要素を組み合わせてオークを生成してくれるので、ちゃんとほかの要素と組み合わせられるのか、どんな感じに見えるのかを確認していく。オークの外見はそういう工程を経てできあがっているんだ。

▲スタジオに飾られていた前作『シャドウ・オブ・モルドール』開発時のオークの装備のコンセプト資料。

――となると、あるオークの外見は半分アーティストの産物であると同時に半分プログラマーの産物でもあると言えそうですね。
フィル 確かにそういう所もあるけど、自分としてはすべてはある種の“規律”とともに表現されていると考えているんだ。アートの素材はエンジニアリングの産物である、あらゆるパーツを交換可能なシステムとともに動くわけだけども、そこには当然ライター陣の仕事も関わってくる。こういう外見の奴ならこういうことを喋るよね、とか。だからネメシスシステムというのは、あらゆる部門の仕事によって成り立っているんだ。
 そしてそうして作ったものだからこそ、ユニークな体験ができる。みんなそれぞれいろんなオークに出会えて、プレイヤーが干渉することで彼らの存在が変わっていく。例えば彼らが昇進すれば外見も変わるしね。そうやってそれぞれのゲーム体験を形作っていくんだ。

――これは本作についてということではないんですが、タリオンというキャラクターをどうデザインしたのか教えてください。彼の中にはケレブリンボール(タリオンに宿っているエルフの霊。力の指輪の制作に関わった人物でもある)の要素もあって、ふたつの存在が同居しているユニークなキャラクターですよね。
フィル 確かにタリオンとケレブリンボールの組み合わせはユニークな所があると思う。これもコンセプト上のテーマを詰めていくところから始まっていて、アート面だけじゃなくてもちろんストーリーテリング面も関係している。

 ハイレベルな部分では、光と影、そして生と死という対立を考えたんだ。そしてタリオンは元々ゴンドールのレンジャーなので人間であり、肉体の持ち主で、ケレブリンボールはエルフであり、さらに霊でもある。ここにもまた対立する要素を見て取れるよね。
 またこのふたりのキャラクターによって、ゲームプレイ上の異なる要素を表現できると考えた。タリオンは直接的であり、力を行使する存在でもあって、フィジカルで、主に戦闘をゲームにもたらす。そしてケレブリンボールは素早くて、エルフ的で、どちらかと言えば精神的なものをゲームにもたらす。

 彼らのコンセプト開発では、これまで説明してきたほかの要素と同じく、色も大事だった。パレットで言えば、タリオンはアースカラーだったり落ち着いた色、ブラウンとかアースグリーンといった色を持っていて、それはケレブリンボールと対照的になっている。大雑把に言えばある色に対しての寒色版があるといった感じだね。

 コスチュームデザインではゴンドールのレンジャーとして人々が想像するような、しっくりくるものを目指した。かと言ってありふれたものになるのも、どこかで見たものになるのも避けたかった。そこでユニークなシェイプを盛り込むよう試みたりしたね。顔についてもそうで、この時代の中つ国の人物としてしっくりくることが大事だった。
 ケレブリンボールは“ふたつの顔”を持つ。基本的には外見でも流れるようなエルフの優美さというものを象徴しつつ、一方では我々が“フィアーフォーム”(怖い状態)と呼んでいる状態があって、外見上でもベースとなるものと比べるとやや優美さを失うと言っていいと思う。

――そして今回はタリオンは装備を変えられますね。
フィル そう、ここまでは主に前作でのキャラクター開発だけども、本作ではRPGシステムとしてタリオンの装備を変えられる。ケープにもバリエーションがあるし、アーマーはもちろん、弓矢、ダガー、ソード、そういったものも同様だ。だからそういった部分の開発も当然入ってきた。
 これもまた大変だったけど、楽しかったよ。それまでやってきたビジュアルデザインやコスチュームデザイン、それぞれの種族の特徴などの成果を、今度はタリオンというキャラクターの中で表現するわけだから。ドワーフ系アーマーがあればエルフ系アーマーもあるし、レンジャーアーマー、さまざまなものがある。そしてそれらを手に入れた時に、プレイヤーのレベルや成長を感じられるものにしたかった。

 成長ツリーに従ったスキルのバリエーションなんかも増えているし、RPGシステムという観点では本作ではより幅広いものになっていて、それはタリオンというキャラクター開発の点でも、どんな能力で、どんな装備なのか、どんな体験ができるのか、よりプレイヤーによって異なるタリオンを表現できるようになっているんだ。

――アート面でPS4 ProやXbox One Xに特化したものはありますか?
フィル それらのハードウェアでは4K解像度やHDRに対応しているけども、そもそも前作の開発が終わった時に、グラフィックスエンジニアやコンテンツクリエイターの間で「次はもっとグラフィックを改善しよう」というのが一致した意見だった。これは特定のハードウェア向けというより、全体的にね。
 だから描画エンジンは書き直されているし、PBR(物理ベースレンダリング)を導入して、いろんなものがもっとリアリスティックに描写されるようになっている。サブサーフェイス・スキャッタリング(皮膚下での光の散乱のシミュレーション)なんかもそうだね。キャラクター描写の上ではこれは大きい。環境マッピングも改善していて、これは水面などの反射に影響してくる。

――Monolith Productionは『Blood』に始まり、『F.E.A.R.』や『Condemned』など、ホラーゲーム開発の長い歴史を持っています。シャドウシリーズを開発するにあたって、その歴史は寄与しているんでしょうか?
フィル そう思うね。というのは、シャドウシリーズはさっきも言った通り光と闇の対立がコンセプトの根幹にある。アーティストの観点から一般的に言っても、いいコンテンツとは光と闇の両方を使いこなすことで生まれると思う。
 そして話の点でも、そもそもタリオンが一度死ぬところから始まって、サウロン絡みの話があり、今回ならシェロブ(大蜘蛛の化身)絡みの話があって、極めてダークだよね。シェロブなんか巨大な蜘蛛なわけで、とてもホラーだ。オークは彼らなりのユーモアも持っていたりするけども、基本的には怖い存在だ。

(前段に引き続き)フィル 一方で、Monolithが得意としてきたダークネスやホラーな側面というのは、それがダークなコンテンツを作るのに役立つというだけじゃなくて、ある種のユーモアと並べることで別のコントラストをなすことができる。
 自分がアートディレクターとしてチームと働くにあたって一番大事にしているのは、「それを受け取る人に感情的な反応をもたらす」ということなんだ。映画にしても本にしてもゲームにしても、いろいろな感情を受け取るよね。この点においてアート班はそれを助ける仕事をよくできていると思う。