開発のキーマンにインタビュー

 2017年6月にアメリカ・ロサンゼルスで開催されたエレクトロニック エンターテインメント エキスポ(以下、E3)で大々的に発表され、全世界から注目を集める対戦格闘ゲーム『ドラゴンボール ファイターズ』を手掛けるクリエイターのインタビューをお届け。本作のキーマンとなる、バンダイナムコエンターテインメントの広木氏とアークシステムワークスの本村氏に、本作の気になることをインタビュー形式で伺った。『ドラゴンボール』ファンと対戦格闘ゲームファンの両方からの話題を集めている本作の、ゲーム開発秘話をバッチリ掲載。未公開の情報のヒントも!?

ゲームファンが大注目する対戦格闘ゲーム『ドラゴンボール ファイターズ』クリエイター独占インタビュー_01
バンダイナムコエンターテインメント
広木朋子氏
プロデューサー。
2008年バンダイナムコエンターテインメント入社。『ドラゴンボール超究極武闘伝』、『ドラゴンボールフュージョンズ』などのプロデューサーを務めた。

アークシステムワークス
本村・C・純也氏(左)
ディレクター/テクニカルアーティスト。
2002年アークシステムワークス入社。『ドラゴンボールZ舞空闘劇』ではディレクター、『ギルティギアXrd』シリーズではリードモデラー/テクニカルアーティストを務めた。

予想外の反響にクリエイターも驚愕!?

――本作が大々的に発表されたのはE3でしたが、そのときの反響や手ごたえはどのように感じられましたか?

広木氏(以下、広木) 正直に言うと、ここまでの反響があるとは!? と驚いています。

本村氏(以下、木村) 私も、海外で『ドラゴンボール』はとくに人気があるということは知っていましたが、ここまでとは想像していませんでした。

――『ドラゴンボール』ファンの方はもちろんですが、対戦格闘ゲームファンの方も注目しているというのが印象的でした。

広木 『ドラゴンボール』ファンの方には絶対に振り向いてほしいというのはもちろんありました。キャラクターゲームとしてはもちろんですが、対戦格闘ゲームとしても本格的なものを作りたいというのもコンセプトのひとつになっています。対戦格闘ゲームが好きなコアゲーマーの方にも注目していただければという思いでしたが、両方のユーザーの方からの支持をいただけているようで、非常にうれしいです。

本村 原作そのものが格闘を題材にしているものなので、格闘に憧れがあって、そこから対戦格闘ゲームを遊び始めた人も多いのではないかと思っています。格闘ゲームが好きな人の多くは、少なからず『ドランゴンボール』に影響を受けているのではないでしょうか。

広木 E3の会場では試遊台を設けたのですが、会場がオープンした直後から本作のプレイに並んでいただいた方もいたみたいで。プロモーションムービーや試遊台で登場させるキャラクターは6人と決めていたのですが、この選定はかなり難しかったです。

――と、言いますと?

広木 『ドラゴンボール』は歴史が長いので、たとえばこのキャラクターが出ます! と情報を公開しても話題になり辛いだろうなと思ったんです。そのため、変化球なキャラクターを出すよりは、原作のなかでも人気が高い主役級のキャラクターを出そうということになりました。

――その作戦が功を奏してかなり話題になりましたし、E3では複数の賞を獲得していますよね。海外メディアからの評価も非常に高いようですが、そのあたりはいかがでしょうか。

広木 ユーザーさんはもちろん、メディアの方にも興味を持っていただけているのは、映像のインパクトがあったからだと思っています。滑り出しとしては、かなりうまくいけたかなと思います。

本村 e-sportsというものが注目されてきて、盛り上がっているさなかに新タイトルが発表されて、題材が誰もが知っている『ドラゴンボール』ですから、話題性があったのではないでしょうか。広木さんらバンダイナムコエンターテインメントさんと我々で進めてきた方向性は間違っていなかったんだと、あの反応を見て確信しました。

広木 本作が発表されたときに会場から歓声が沸いたときはガッツポーズものでしたね。アークシステムワークスさんは日本にいたのですが、「アークさん見て!」って心のなかで思いました(笑)。

――おふたりにはこみ上げるものがあるであろう本作ですが、企画はどのくらいの時期からスタートしていたのでしょうか。

広木 過去には、『ドラゴンボールZ 超究極武闘伝』というタイトルを弊社とアークシステムワークスさんで開発しました。ニンテンドー3DSのこのタイトルはどちらかというとキッズ向けに開発していたので、つぎは本格的な対戦格闘ゲームを作りたいと思っていました。そのお話をアークシステムワークスさんに持ち込みまして、快諾いただいたという経緯があります。

――『ドラゴンボールZ 超究極武闘伝』に続くタイトルで、ということですね。

広木 もともとアークシステムワークスさんは『ギルティギア イグザード』のようなアニメ表現を使ったゲームや、『ブレイブルー』のようなドット絵の最高峰に立つゲームを作っています。それらの開発力を活かして、つぎは2.5Dという表現になるグラフィックのゲームをと。

――本村さんは、『ギルティギア イグザード』シリーズの開発をされていたのでしょうか?

本村 そうです。『ギルティギア イグザード』ではテクニカルアーティスト兼リードモデラーとして、ゲームのグラフィック開発を担当していました。

広木 本村さんとは、ニンテンドーDSの『ドラゴンボールZ 舞空闘劇』からバンダイナムコグループとお付き合いがあったんです。その蓄積や信頼関係があったので、お話もしやすかったですね。『ギルティギア イグザード』を拝見させていただいて、この内容で『ドラゴンボール』を表現したいと。

――ちなみに、テストとして最初に作られたキャラクターは誰だったでしょうか?

本村 悟空ですね。でも、最終的に完成を迎えるまでに、悟空がいちばん開発に時間がかかりました(笑)。原作があるゲームは、キャラクターをしっかりと似せないといけません。長いこと、ああでもない、こうでもないと言いながら、グラフィックがやっと形になった感じです。

――本作は3Dで作られたキャラクターが2Dのフィールドで戦う2.5Dと銘打っていますが、その名のとおり、まるでアニメのキャラクターがそのままゲームのなか動き出したのが、映像を観て驚きました。

本村 3Dのキャラクターは、どの角度から見てもカッコいい姿にするというのが、非常に難しいんです。ですが本作は、必殺技などの演出のときだけカメラが動くスタイルなので、調整がしやすいという利点があります。バトル中にプレイヤーが見る範囲ではどのカットでもキャラクターが最高にカッコよくなるように、ひとコマひとコマしっかりと調整をして、原作に近い顔や姿になるようにしています。

広木 『ドラゴンボール』の3Dのゲームは弊社でも多く発売してきましたが、アニメ的な表現のゲームというのは最近あまりなかったんです。『ドラゴンボール』はアニメ作品でもあるので、ゲームのアニメ表現の進化系として作ったら、新しいゲームをユーザーさんにお届けできるだろうと。

――超必殺技に相当する技はどれもカメラが動いたりと派手ですが、演出はどのように決めているのでしょうか。

本村 弊社でまず絵コンテを書き、一度仮組みをして、それにオーケーが出れば作り込んでいくという流れですね。絵コンテは、原作にあったシーンを意識したものを採用しています。原作を見て改めて思ったのが、とにかくスケールが大きいということ。その印象が作り手側にもありますし、ファン側にもあると思うので、どうやったらそのスケール感を表現できるかというのは、かなり試行錯誤しました。