岡村氏が語る日本ゲーム大賞の今後の目標
すぐれたコンピュータエンターテインメントソフトウェア作品を選考し表彰することを目的に、一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)主催により毎年行われている日本ゲーム大賞。20年の歴史を誇り、日本のゲーム産業に大きな影響力を持つ同賞の足跡と今後の展開などについて、現CESA会長である、セガホールディングス 代表取締役社長COOの岡村秀樹氏に聞いた。
CESA会長
岡村秀樹氏(文中は岡村)
今年の日本ゲーム大賞はとくに授賞式に注目してほしい
――改めての質問となりますが、日本ゲーム大賞の意義を教えてください。
岡村 当協会が主催しているもうひとつのイベントである東京ゲームショウが“日本のゲーム産業の発展”や“日本のクリエイティビティの発信”を目的にしているとすると、日本ゲーム大賞は、日本のゲーム産業から創造された“文化的な価値”を、アワードという象徴的な形で提案することを目的にしています。平たくいうと、“日本から発信されたすぐれたゲームコンテンツを、世界に向けてアピールする”といったところでしょうか。
――歴代の受賞作を見ると、この20年のゲームの歴史のおおよそがわかるようなところはありますね。
岡村 その通りです。歴代の受賞作品自体が、ゲーム業界の20年の歴史を体現しているんです。さらに言えば、日本ゲーム大賞はユーザーの方からの一般投票が極めて重要な位置づけを担っており、だからこそ、価値がある賞だと言えます。遊び手であるゲームユーザーの皆様の意思がきちんと反映されているところが、意義深いと思っています。
――日本ゲーム大賞も今年で21回目となりますが、この20年の成果をどのように捉えていますか?
岡村 ひとつ言えるのは、開発者のモチベーションアップにものすごくつながっているということです。中でもフューチャー部門賞は、開発者にとって大きな励みになるようです。東京ゲームショウでお披露目された発売前のタイトルが、ユーザーの皆様に高く評価していただけるということは、開発者にとっても非常に大きな意味を持っているのではないかと思います。
――20年にわたって日本ゲーム大賞を継続できた理由として、何があると思いますか?
岡村 中立性や透明性の高さを一貫して守り続けていることが大きいと思います。それが結果として、ユーザーの皆様からの支持を集めることにつながっているのではないでしょうか。もうひとつ、進化し続けているということもあるかもしれません。ご存じのとおり日本ゲーム大賞は、1997年に“CESA大賞”としてスタートしたのですが、そのときどきの時流に合わせる形で名称の変更や新たな賞の追加などを行ってきたという経緯があります。さきほどのフューチャー賞も2002年に設立されましたし(当時の名称はGAME AWARDS FUTURE)、2008年には経済産業大臣賞が、2010年にはクリエイターが作り手の視点から高い独創性を持ちゲームの歴史に名を刻むべき革新的な作品を選出するゲームデザイナーズ大賞などが新設されています。人気投票だけではなく、多角的な視点で表彰制度の厚みを持たせることができたのかなと。
――さらなる価値の提案といったところでしょうか。
岡村 進化という点で言うと、運営サイドの地道な取り組みも見逃せません。私自身は日本ゲーム大賞にずっと関わっていたわけではないのですが、運営スタッフはオペレーションの円滑化や積極的なPR活動など、絶え間ない努力を重ねています。
――今回の日本ゲーム大賞でとくに力を入れていることは?
岡村 授賞式自体のクオリティーアップをしたいというのは考えています。日本ゲーム大賞自体のステータスをもっと高めるために、見えかたや演出などをもっと工夫したほうがいいだろうということで、話し合いを重ねています。現時点では詳細はお話しできないのですが、今年の日本ゲーム大賞は、授賞式にも注目していただければと思います。
――今後の20年を考えたときに、日本ゲーム大賞の課題があるとすると、それは何になりますか?
岡村 日本ゲーム大賞のワールドワイドにおけるステータスを上げることです。それ自体が単独で、ものすごいニュースバリューを持ち得るような賞にすることが最終的な目標です。それを実現するために何をしていくべきか……という点を、今後考えるべきだと思っています。それは、いままで以上に発信力を高める努力だったり、海外に対して門戸を広げる努力だったりが必要になってくるのではないでしょうか。
――それは相当ハードルが高そうですね。たとえば、日本アカデミー賞くらいの認知度に、ということですよね?
岡村 そうですね。実際のところ、日本の産業規模としては映画よりもゲームのほうが大きいので、映画に負けないくらいの文化的な立場を築けるはずなんです。ゲーム産業のさらなる発展のために、努力していきたいです。
――最後に、日本ゲーム大賞への投票を考えているユーザーに向けてひと言お願いします。
岡村 冒頭でもお話した通り、価値を生み出すのが日本ゲーム大賞だとすると、その源泉になっているのがユーザーの皆さんの投票です。そういう意味では、日本のゲーム産業の価値はユーザーのおひとりおひとりにかかっていると言っても過言でありません。さらなる価値の創出のためにも、ぜひともひとりでも多くの方に積極的に投票していただきたいです。
※日本ゲーム大賞2017“年間作品部門”の応募は2017年7月21日24時までです。