和風タクティクスRPGの魅力を解剖

 2015年に発表されたタクティクスRPG『GOD WARS(ゴッドウォーズ) ~時をこえて~』がついに本日(2017年6月22日)発売。日本最古の歴史書『古事記』と、おなじみのおとぎ話をモチーフに生み出された世界の中で、壮大な冒険譚が描かれる。そんな、角川ゲームスが贈るタクティクスRPGは、どのような仕上がりになっているのだろうか。ここでは、そのプレイインプレッションをお届けする。

古代日本を舞台に幻想的な物語が紡がれる

 母・ツクヨミの言いつけにより、富士山の噴火を鎮めるための生贄になるべく幽閉されていたカグヤは、母の真意を問うため、その姿を追い、“瑞穂国(現在の日本)”を旅することになる。

 旅のなかで、カグヤの優しさに影響され、仲間がどんどん増えていくのだが、どのキャラクターも、本作のモチーフになった神話やおとぎ話では主役級の登場人物だっただけあって、誰が主人公になってもおかしくないほど個性的。とても親しみやすいので、それぞれの関係性や、会話の内容がスルスルと頭に入ってくる。

 日本神話が好きな筆者としては、イナバがオオクニヌシのお目付け役として、彼の女性問題にバタバタしている様子にニヤリ。というのも、イナバのモデルである因幡の白兎は、神話ではオオクニヌシに助けられたという逸話があるのだ。このように、もとになった逸話をベースに、各キャラクターがどのように個性化されているのかを考えてみるのもおもしろい。

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▲幽閉されていたカグヤを救い出したキンタロウ。物語が進むにつれ、ふたりの仲はなんだかいい感じに。
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▲キンタロウと行動をともにするクマと、オオクニヌシのお目付け役のイナバ。こう見えてふたり(2匹?)は八百万の神の一柱なんだとか。

 カグヤ一行が訪れることになるステージには、満開の桜や大きな鳥居といった、日本ならではのモチーフが散りばめられている。また、“黄泉比良坂”という黄泉の国へと通じるといわれるステージでは、骸骨や蜘蛛のような外見をした異形の敵が登場するなど、ステージごとに特色があるのも好印象。起伏に富んだ地形や水辺など、多彩なステージが用意されているので、新鮮な気持ちでプレイできる。

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▲黄泉比良坂は、一本道にたくさんの敵が待ち構える序盤の難所。じつは、島根県には伝承のもとになったとされる坂が実在し、観光名所になっている。

キャラクターの役割分担がキモとなる歯ごたえ十分な戦闘

 冒険の舞台となる瑞穂国はじつに広大。なおかつ、そのなかで力を持つ国々が乱立し、諸国家間で根深い確執が生じているため、カグヤたちの旅は一筋縄ではいかない。道中には、食糧難が原因で発生した野盗や、文明の発展により自然を破壊され、怒りに我を忘れて“荒御魂(あらみたま)”に憑りつかれた八百万の神々など、さまざまな敵が登場し、行く手を阻む。

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▲難度は上の3種から選べる。筆者は“普通”でプレイしたが、歯ごたえのある戦闘が楽しめた。本作が初タクティクスRPGという人は“簡単”でプレイするのがいいだろう。
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▲“大神”や“火の鳥”などといった、強大な敵も出現する。たくさんのしもべを引き連れているので、苦戦を強いられる。

 敵よりも高い場所から攻撃すると与えるダメージが大きくなったり、敵の背後からの攻撃は威力と命中率が上がったりと、戦闘システムの基本的な作り、タクティクスRPGの王道を行くスタイル。敵からの攻撃に対しても、高所や背後のボーナスが適用されるため、位置取りに気を付けながら戦略を練る必要がある。

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▲戦闘中は敵味方ともに、“俊敏力”というステータスの高い順に行動する。画面右に表示される行動順をチェックしながら行動するのが基本だ。

 また、本作には“けがれ”という概念があるのだが、これがなかなかユニーク。けがれは、敵かれの狙われやすさを表す指標となる数値で、敵を攻撃したり、味方を回復するなどの行動を取ると上昇する。敵は、攻撃範囲にいるキャラクターのなかから、けがれがもっとも高いキャラクターを攻撃してくる。そのため、本作では、けがれを高めて敵の攻撃を集める盾役や、それを支援する回復役、敵を倒す攻撃役など、パーティー内での役割分担が勝利へのカギを握るのだ。

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▲敵は“スキル”を使って相互にサポートしながら戦ってくる。ひとりを集中して狙い、各個撃破するのが戦闘の基本だ。

 そして、役割を分担する際に重要になるのが“職業”のシステムだ。各キャラクターは、“主職業”と“副職業”を自由に選ぶことができる。職業にはそれぞれ異なる特性があるため、「打たれ強い“戦士”を盾役にして、回復手段が多い“祈祷師”は回復役にしよう」といった具合に、それぞれに役割を持たせられるのだ。

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▲主職業と副職業のほかに、キャラクターごとに決まった“固有職業”も存在。それぞれキャラクターの個性に合った、特徴的なスキルが使える。
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▲主職業と副職業のほかに、キャラクターごとに決まった“固有職業”も存在。それぞれキャラクターの個性に合った、特徴的なスキルが使える。

 けがれと職業のシステムはうまくかみ合っており、相乗効果でかなり高い戦略性を生んでいる。それゆえに、難度は高めだが、パーティー内の役割がうまく作用したときの爽快感は相当なもの。より強い敵を求めて、つぎへつぎへと物語を進めてしまう。

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▲物語を進めれば“奥儀”という強力なスキルも習得可能。発動するには“奥儀ゲージ”という特殊なゲージを消費するため連発はできないが、戦況を大きく変える効果がある。

成長要素も充実! 理想のキャラクターを育成できる

 本作には、キャラクターのレベルとは別に、職業にもレベルがある。キャラクターと職業のレベルはともに、戦闘中に敵を攻撃したり、スキルを使用すると獲得できる経験値で上昇。職業のレベルが特定の値に達すると、新たに上位の職業が開放される。

 職業は上位のものになるほど、ステータスにかかる補正が大きくなるほか、習得できるスキルも強力になるため、目に見えてキャラクターが強くなっていく。早く上位の職業に就かせるためにと、レベルを上げるモチベーションも続きやすいのだ。

 一度ステージをクリアーすると、そのステージには挑めなくなるので、レベルを上げるには“やしろ”という施設で受けられる“依頼”を利用する。依頼には、お金やアイテムなどといった、報酬も用意されているので、受けておいて損はない。

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▲スキルを習得するには、経験値といっしょに獲得できる“JP”というポイントが必要になる。
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▲やしろに“参拝”すれば、一時的にステータスを上昇させることも可能。ボスなど、強力な敵に挑むときに役に立つ。

 キャラクターが習得するスキルには、戦闘中に使用するアクティブスキルと、つねに効果を発揮するパッシブスキルがある。やしろの依頼を利用すれば、JPは稼ぎ放題ではあるものの、ふつうにプレイするぶんには基本的に有限だ。そのため、キャラクターの役割と、スキルの効果をよく吟味して、最大限に効力のあるものを習得したいところ。とくに、パッシブスキルは、最大で3つまでしか同時に発動できないものの、“物理攻撃力上昇”、“命中力上昇”、“反撃”など、非常に強力なものばかり。どれを発動させるべきかはとても悩ましいが、その考える時間も、キャラクターの役割が重要になる本作ならではの楽しさだ。

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▲パッシブスキルは一度習得すれば、キャラクターの職業に関係なく発動できるようになる。

 本作で、とくに印象深かったのが、敵の手強さだ。近くにいる敵のステータスを見て、「攻撃されても耐えるはず」と高をくくっていたら、状態異常攻撃で思わぬ妨害をしてきたり、遠くの敵が攻撃してくる敵を強化したせいでやられてしまったりと、想定が甘いと苦汁をなめることになる。ただし、だからといって、敵が強すぎるわけではない。しっかり考えれば、被ダメージをかなり抑えてクリアーすることも可能。あくまでも、歯応えのある難度で、しっかりとまとまっている印象だ。先述した通り難度も選べるので、タクティクスRPG初心者から、歴戦の勇士まで、多くの人が楽しめる作品に仕上がっていた。興味がある方は、ぜひ本作に触れてみてほしい。

筆者:河合ログ
 じっくりとテキストを読むアドベンチャーゲームから、動きの激しいFPSまで、ゲームだったらなんでも好きになる。最近は『死印』と『グウェント ウィッチャーカードゲーム』を熱心にプレイ中。