『LawBreakers』日本展開はどうなるか? そのほか、重力システムやプレイステーション4版についてリードデザイナーを直撃【E3 2017】_04
▲E3 Nexonブースには、エピック・ゲームズで『ギアーズ・オブ・ウォー』シリーズを手掛けた、Boss Key ProductionsのCEOを務めるCliff Bleszinski(クリフ・ブレジンスキー)氏の姿も。なんだか渋く(?)なりましたな。

 2017年6月13日~15日(現地時間)、アメリカ・ロサンゼルスで開催された世界最大のゲーム見本市“E3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)2017”。E3会場のネクソンブースでは、クリフ・ブレジンスキー​率いるボス・キー・プロダクションズ開発により、2017年8月8日よりロシア、アジアを除く地域にて配信予定のFPS『LawBreakers』が出展されていた。

 本作についておさらいすると、近未来を舞台にし、重力が上下反転してしまった世界で、Law(平和維持組織)陣営とBreakers(反法律組織)陣営間での戦いが、サンタモニカの荒れた海岸や重力が崩壊したグランドキャニオンなどの多数の有名な場所にてくり広げられる、マルチプレイ専用タイトル。プレイヤーたちは専用の武器・能力を持つキャラクターを選択し、必殺技やマップ内にある低重力空間やスキルを駆使して戦う。スキルが試されるとともに、スピーディかつスリル溢れるゲーム体験が特徴的だ。

 さて、今回はBoss Key Productions所属の『LawBreakers』リードデザイナー、 Dan Nanni氏にインタビューを敢行。低重力空間を取り入れた独特なゲームシステム、そして日本展開について伺った。

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▲『LawBreakers』リードデザイナー、 Dan Nanni氏(文中はDan)

――ブースではプレイアブル出展されていますが、反響はいかがでしょうか?

Dan これまでプレイしていた方も、初めてプレイした方も、総合的に非常にポジティブな意見が多いです。中には1年前にαテストをプレイして今回のビルドバージョンをプレイしていただいた方がいて、「1年前と比べてかなりゲームが洗練されて、非常に感銘を受けた」とコメントしていただきました。今回はプレイステーション4バージョンを初めてプレイアブル出展しましたが、そちらも非常にポジティブな評価が多いです。当初はPCの操作性をプレイステーション4のコントローラーにうまく落とし込めるのか不安でしたが、上手くカバーできたと思っています。

――今回始めて遊ばせていただきましたが、かなりおもしろかったです! とくに上空に行くにつれ重力がなくなり、いままでに体験したことのない浮遊感を感じました。このアイデアはどのようにして生まれたのでしょうか?

Dan この重力システムは、クリフ・ブレジンスキーのアイデアですね。『The Expanse』というアメリカのテレビ番組で、重力に関する表現が含まれているのですが、そこからヒントを得て、「重力をひとつのキー要素として導入しよう」という流れが発端になります。しかし、重力の変化を加えようと言ったところで、どう導入していいのか分らないという苦悩が最初ありまして……。始めはマップに重力の要素をガツンと入れて、“重力のせいで負ける”というゲーム体験にしましたが、実際にプレイしたプレイヤーから「マップに自分が殺されるなんていやだ」という意見をたくさんいただいて……(笑)。そんな状態からスタートし、いまの“重力が勝ち負けには関わらず中立な要素となる”ように調整を施しました。

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――そういったフィードバックを得ていまのスタイルが確立されてきたと思うのですが、αテストとβテストを経てさらに改善したポイントはどこでしょうか?

Dan αテストからのフィードバックについては、大きく分けて2点あります。ひとつ目が「もっと欲しい」というリクエストです。ロールもそうですし、マップもゲームモードももっと欲しいという意見がいちばん多かったです。ふたつ目は、「遅すぎる」です。ほかのシューティングゲームと比べると比較的速いほうではありましたが、ユーザーが期待していたスピードに達していなかったというのが大きいです。一見ただスピードを上げるというのは簡単かつシンプルに聞こえるかもしれませんが、実際はかなり大変で、ゲームのスピードを上げるためにはキャラクターの能力や武器の調整が必要になります。そのほか、すべての数値面を変更しないといけないので、これにはかなり時間がかかりました。ただ、いまはその点もかなり改善されており、現在は多くのユーザーから好評をいただいています。「もっと欲しい」という意見に対しては、回復系のキャラクターなど、プレイアブルキャラクターやマップを順次追加していきました。

――スピード感やスキルベースの部分は、『Quake Champions』や『チームフォートレス』、『アンリアルトーナメント』といったスポーツ系FPSの雰囲気を感じます。

Dan 実際、開発メンバーはそれらのゲームをプレイしたことがあるということが前提になりますので、ある程度意識しているというのは正解です。ただ、それ以上に実際のスポーツであったり、映画からインスピレーションを受けました。映画で言うと、『アイアンマン』や『スパイダーマン』はキャラクターの個性においてとても参考になりました。それぞれのキャラクターが非常にユニークで、バックボーンがある。これは本作のキャラクター作りにも活かされています。

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――キャラクターにもバックボーンがあり、LawとBreakersの対立があることは明かされていますが、今後ストーリーについてお披露目することはありますか? 『オーバーウォッチ』のように、コミックやアニメーションで語られていくことに期待したいのですが……。

Dan ゲーム外での展開ですが、非常に大きな可能性があると現段階では感じています。各キャラクターの出身地や簡単なプロフィールを公式サイトで公開して、彼らの戦っている理由をコミュニティに向けてお伝えできるようにはしています。マップに関しても細かい設定があり、「どういった場所で、どういったできごとや背景があって、こういう状態になっている」ということを明確に伝えて、皆さんによりストーリー性を味わっていただけたらと思います。ほかにも、それぞれのキャラクターに固有のセリフをたくさん収録しました。例えば、AXELとCRONOSのあいだでのみ交わされるセリフは、昔AXELがCRONOSの仲間を殺してしまい、彼が刑務所に行ってしまったという背景があるとかね。

――ストーリーを語るとなると、キャンペーンモードを実装しようとかそういう考えには行きつかなかったのでしょうか?

Dan 現状、キャンペーンモードを実装する予定はありません。その理由としては、私たちBoss Key Productionsはかなり小さなスタジオだからという理由が挙げられます。キャンペーンモード、マルチプレイヤーモードと手広くやるためにはそれだけ人員もいりますしコストもかかります。マーケティングに裂く時間がかかるので、そういったことを色々と考慮すると“効率的かつスマートに展開する”ことが非常に重要だと考えました。規模はなるべく小さめに、かつ効率的にという考えを前提とすると、現段階でキャンペーンを実装する予定はありません。ただ、今後の展開については誰もわからないので、もし『LawBreakers』が大きく成長したら、あり得る話ではありますね。

――なるほど。では何故このタイミングでプレイステーション4版を発表したのでしょうか?

Dan まず初めは、PCのみの展開を予定していました。これは先ほどお伝えした通り、小さな会社だからというのが大きくて、当初10人から20人しか会社にいなかったからです。当時はまだゲームがどうなるのかまったく予想ができず、ロールがどれだけあるのか、マップ、ゲームプレイについても決まっていない、不透明な状態が続きました。しかし、ある程度内容も固まり、会社の規模も拡大し始めていたので、これはふたつのプラットフォームで同時に展開できると考えたのです。ふたつのプラットフォームで展開するメリットとしては、やっぱりコンソールとPCというふたつの違ったプレイヤーの方々に、私たちのゲームを楽しんでもらえるというメリットがあります。

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――PCではマウスとキーボードがあるのでスキルの割り振りは簡単ですが、プレイステーション4だとボタンにも上限があるので、スキル割り当てに苦労しそうですね。

Dan やはり操作性が違いますので、プレイステーション4版ではどれだけコントローラーにPCの操作感を落としこめるのか、とても苦労しました。偶然にも、ボタンとスキルの数がピッタリとハマったので数はカバーできるということが分かりましたが、どのアクションをどのボタンに入れ込むかという調整が非常に難しかったですね。例えば、“ブラインドファイヤー”といううしろ向きに銃を放つものがありますが、それはプレイヤーがキーコンフィグでそれぞれ設定してもらうという形にしました。今回のプレイアブル出展ではプレイステーション4版も遊んでいただいていますが、操作性に関しての不満はいまのところきていません。ベストな移植を実現できたと思っています。ほかにも難しかったのが、PCと同じ正確さ、動きやすさをある程度担保しないといけないなので、エイミングシステムについては非常に気を使いました。かなりの時間を費やしましたが、私たちはいまの出来に非常に満足しています。

――そういえば、ロケットジャンプ以外にも、ブラインドファイヤーで勢いを付けてジャンプをするシーンがありますが、あれは……“背面ロケットジャンプ”と呼べばいいのでしょうか(笑)?

Dan これも、“ブラインドファイヤー”です(笑)。基本的に根底にあるのは同じではありますが、すこし差別化をはかると言いますか、上に飛ぶか(ロケットジャンプ)、前に出るか(ブラインドファイヤー)がおもな違いです。昔はロケットジャンプができる武器はロケットランチャーのみで、一部のキャラクターにしか実装されていませんでしたが、ブラインドファイヤーはどのキャラクターの銃でも行えるようになっています。

――分かりました。では、答えるのは難しいかもしれないですけど、日本の展開についてはまだ発表されてはいません。こういったFPSが好きな人は、北米版や北米サーバーでも気にせずに遊ぶ傾向にありますが、日本展開についてなにか進捗はありますか?

Dan 実際のところ開発側から回答できる質問ではありませんが、私の思いとしましてはやっぱりこのゲームをより多くの皆さんになるべく早く遊んでいただきたいという思いがあります。もちろん回答にはなっていませんが、そういう思いを持っているということだけお伝えさせていただければと思います。

――現状、日本ではプレイできる機会も環境もありませんが、注目しているファンは大勢います。彼らにメッセージをお願いできますか?

Dan まだ日本の皆さんにプレイしていただくことができなくて、非常に私としてももどかしさを感じております。どうしても会社の規模が小さいので、うまく展開できない部分に関しては申し訳ないです。日本語ボイスを実装したり、サーバーなどテクニカルな問題もありますが、私たちが重視しているところは急いで出すよりも遊んでいただく皆さんにおもしろいと思っていただけるようなクオリティーに持っていくことです。もうしばらく辛抱強くお待ちいただければと思います。ただひとつ私が保証できると思っているのは、日本でローンチされるときはすべてのキャラクターであったり武器、マップとかっていうのがアンロックされた状態で皆さんにゲームをお届けできると思います。すべてのバランスが完璧に近いゲーム状態です。日本の皆さんも期待してお待ちいただけるひとつの要素になるのではないかと思います。ただ、あまりにも長く皆様をお待たせするのも申し訳ないので、極力早く最高の状態でゲームをお届けできるよう、開発一同力を注いでいきます。

――期待しています。

Dan 私もすごく楽しみです。

――ありがとうございました!