野心的なタイトルがプレイステーションの代表になる――SIE WWS吉田修平氏インタビュー【E3 2017】

PlayStation Media Showcaseで発表された内容について、ソニー・インタラクティブエンタテインメント ワールドワイド・スタジオ プレジデント 吉田修平氏にインタビュー。さまざまな作品の見どころや、今後のタイトル展開について語っていただいた。

●PlayStation Media Showcaseの内容を中心にインタビュー

 アメリカ・ロサンゼルスにて、2017年6月13日~15日(現地時間)に開催されている世界最大のゲーム見本市、E3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)2017。開催前日となる6月12日、ソニー・インタラクティブエンタテインメントによるカンファレンス“PlayStation Media Showcase”が行われ、新作タイトルの最新情報が公開された。

 ファミ通.comでは、このカンファレンスで発表された内容について、ソニー・インタラクティブエンタテインメント ワールドワイド・スタジオ プレジデント 吉田修平氏にインタビュー。ファーストパーティータイトルを中心に、さまざまな作品の見どころや、今後のタイトル展開について語っていただいた。

ソニー・インタラクティブエンタテインメント
ワールドワイド・スタジオ プレジデント
吉田修平氏

――まず、昨夜のカンファレンスについてうかがいます。吉田さんは、カンファレンスの内容の構成には関わっていらっしゃるのですか?
吉田 私は直接は関わっていないですね。もちろん、各チームが個別に用意した内容は見ていますが、全体がどういう構成になっているかを知ったのは最近のことです。演出の内容は私もぜんぜん知らなくて、前日のリハーサルを見てギョッとして。人間が降りてきた! って(笑)。

▲『Days Gone』の映像の内容に合わせて、ステージの上から降りてきたゾンビの死体たち。

――去年も演出に力が入っていましたが、今年はいちだんとパワーアップしたと感じます。
吉田 シアターを使った演出にものすごく力を入れていて。そのおかげで、各チームのトレーラー納入の締め切りがすごく早かったんですよ(笑)。映像とタイミングをぴったり合わせて演出していましたからね。

――それは、開発の皆さんにとっては、ちょっと辛いところかと(笑)。
吉田 でも、みんな(あのような演出が)好きですから。演出については、開発とカンファレンス運営のチームが、どういうことができるかを話し合って作っていて、参加しているチームはみんな楽しんでいますね。

――カンファレンスの構成を見ると、ファーストパーティータイトルが多かったという印象を受けます。
吉田 先ほどお話しした通り、どのタイトルを披露するかには直接関わっていないのですが、プレイステーションを象徴するタイトルを選んでいると思います。

――どのタイトルも、かなり作り込まれていますよね。
吉田 PS4のローンチの時期は、各チームがそれぞれの得意分野のゲームを、スケジュールを重視して作りましたので、いい感じでタイトルを投入できたのですが、その後は、どのチームも「以前はできなかったことをやりたい!」と野心的になって。それはいいことだと奨励したのですが、一方で制作にどれだけ時間がかかるかを読み切れていなかった部分もあり、プレイステーション 4(以下、PS4)はゲームを開発しやすいハードではありますが、作り込みの段階で一部のタイトルが当初の予定よりスケジュールが押してしまい、PS4の2~3年目は、ファーストパーティータイトルのラインアップが想定よりやや手薄になってしまいました。去年あたりから、『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』や『Horizon Zero Dawn』など、野心的なタイトルをコンスタントに出せるようになってきて、長いあいだ仕込んできたタイトル群が、プレイステーションを代表するIPになってきたのかなと思います。

――『GOD OF WAR』や『Days Gone』など、昨年お披露目したタイトルが、今年の代表になったと。発売日は明言されませんでしたが……。
吉田 今回は明確な発売日を言うのを避けていますが、発売時期を言うことで、制作が順調であることを感じていただけたらと。『グランツーリスモ SPORT』も、かなり出来上がっていて、2017年秋としました。

――ところで今回のカンファレンスは、『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』の追加エピソードと、『Horizon Zero Dawn』のDLCの紹介から始まりましたが、これはいままでにないことですよね。
吉田 どちらのコンテンツも、かなり規模が大きいんです。『アンチャーテッド 古代神の秘宝』は、最初はダウンロードコンテンツにしようと思っていたのですが、チームがかなりノッて作って、ふつうのゲームのボリュームに近いものになったので、単体の作品として発売しようと。『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』を持っていなくても、これだけを購入して遊べます。北米では39.99ドルとお手ごろな値段ですが、プレイボリュームは約10時間とたっぷりです。『Horizon Zero Dawn: The Frozen Wilds』はDLCですが、これもかなりのボリュームだと聞いています。

――追加コンテンツのボリュームが増していて、カンファレンスのトップを飾るくらいの位置付けになってきたと。
吉田 いまはひとつのタイトルを作るのに非常に時間がかかりますので、新作を作る一方で追加シナリオも作るというのは開発チームとしてもやりやすいですし、ユーザーの皆さんも「まだ遊べる」と喜んでくださって、お互いのニーズが一致しているのかなと。『Bloodborne(ブラッドボーン)』の追加コンテンツも、非常に装着率が高いんですよ。もっとその世界に浸りたい、と皆さんに思っていただけているのだと思います。

――会場でも、『アンチャーテッド 古代神の秘宝』や『Horizon Zero Dawn: The Frozen Wilds』で歓声を上げる方が多かったです。
吉田 皆さんの反応もよかったですよね。とくに『Horizon Zero Dawn』は、DLCを作っていることは発表していましたが、内容はまだ言っていなかったので、ゲリラゲームズのロゴが出ただけで「おおっ」と盛り上がっていただけて、うれしかったです。

――続いて、プレイステーション VR(以下、PS VR)タイトルについてうかがいます。新作発表が続きましたが、これらは専用タイトルなのですか?
吉田 私の知る限り、PS VR専用だと思います。PS VRもチームがこなれてきていますし、ユーザーの皆さんがボリュームや深みを求めていることもわかっていますので、それに合わせて開発規模を少しずつ大きくしています。6月に出る『Farpoint』などもそうですが、今後はより長く遊べるゲーム、グラフィックの美しさが向上したゲームが増えていくことになると思います。

――それは楽しみです。
吉田 カンファレンスでは、PS VRのコンテンツについてはゲームしか出しませんでしたが、ゲーム以外のエンタテインメント業界の方が取り組まれているコンテンツもものすごく楽しいですね。日本でも、ザ・チェインスモーカーズのPS VRミュージックビデオが出ましたが、インタラクティブ・ミュージックと言えるような体験ができて。ソニー・ミュージックエンタテインメント主導で、「PS VRでやりたい」という声が出てきたのは、すごくよかったです。ドラマ『ブレイキング・バッド』のPS VRのコンテンツの開発も進んでいるのですが、『ブレイキング・バッド』のチームは、『The London Heist』に感動して、わざわざロンドンの開発スタジオまで訪問したそうです。日本でも、『傷物語 VR』のような取り組みがあります。2Dのコンテンツを、3DのVR空間の中で見るという、このような表現のしかたがあるんだ、と驚きました。アーティストならではの視点のコンテンツで、すごく楽しいですね。今後もPS VRでは、そういった非常におもしろいものが出てくると思います。

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――PS VRの販売台数は、全世界で100万台を超えたとのことですが。
吉田 ワールドワイドで100万台を超えました。製造のキャパシティを増やしていますので、今後は加速すると期待しています。

――つぎに、『ワンダと巨像』についてうかがいます。これは、リマスター版なのでしょうか、それともリメイク版なのでしょうか?
吉田 リメイクです。今回は、ゲーム内容はオリジナル版といっしょですが、アセットはすべて作り直しています。PS4の時代に『ワンダと巨像』を作るなら、こういう技術が使えるだろうと。Bluepointは、PS3向けの『ICO』と『ワンダと巨像』のリマスター版を作った開発会社なんです。だから中身はよく知っています。

――ゲーム内容はPS2版と同じなのですね。
吉田 同じですが、操作系などは時間とともにユーザーさんの好みが変わっていますので、現代風に遊べる工夫を入れようと思っています。もちろん、オリジナルの感覚でも遊んでいただけますが。原作のよさを、いまの技術で表現します。上田さん(上田文人氏)は、今回はあまり関わっていません。

――ほか、カンファレンスで反応が大きかったものと言えば、やはりトリを飾った『スパイダーマン』ですが、どこまで自由度の高いプレイが楽しめるのでしょうか。
吉田 あの最後のトレーラーは、じつは全部プレイアブルのシーンなんですよ。もちろん、ボタンを入力して進むカットシーンもありますが。ヘリコプターを追いかけるところはすべてリアルタイムで、私もあのシーンを2回プレイしたんですけど、どちらも(ヘリを追う)道筋が違っていました。

――えっ、そうなんですか!?
吉田 一本道ではないんですよ。『スパイダーマン』では、ニューヨークのオープンワールドの中を自由に移動できて、トリガーになる行動をすると、あのようにヘリコプターを追うシーンのようにイベントが発生します。そのヘリコプターを追うにしても、最終的にヘリのもとへたどりつければいいので、どのルートで進むかは自由です。このE3期間中、インソムニアックのスタッフがメディアの方向けにデモを見せると思いますが、道は毎回変わると思いますよ。

▲E3のSIEブースにある『スパイダーマン』のシアター。今回披露されたゲームプレイの印象的なシーンをオブジェで再現。

――それはすごい。しみじみと感じますが、ファーストパーティータイトルの層の厚みがすごく増していますね。
吉田 さっき言った通り、ようやくここにきて充実してきました。どれも自信を持った形で出てきますので。ゲームができているんだけど、それをさらに磨き上げて、完成度を上げて出すというスタイルに変わってきていますね。

――わりと余裕をもって、計画を進めているということでしょうか。
吉田 焦ってはいないですね。ありがたいことに、タイトルに必要だと思う時間をかけさせてもらっているというのは間違いないです。そういう意味では、ゲーム業界も変わってきていますね。以前は年末商戦をめがけて開発していたのが、いまは年末以外を狙おうという風潮になってきている。ユーザーさんも、発売月が3月であっても6月であっても買ってくださいますし。とくに新しいIPは、年末を外した時期のほうが目立ちやすい。年中が商戦期になっています。

――それは、日本だけでなく、アメリカでもそうなのですか?
吉田 そうですね。以前はホリデーシーズン一辺倒だったイメージがありますが、変わってきました。『The Last of Us(ラスト・オブ・アス)』なども、6月に出たタイトルですし。『仁王』もαテスト、βテストを経て、内容を煮詰めて2月に発売されて、世界中で評価されましたし。いまはひとつひとつのタイトルの規模が大きいので、生煮えの状態では出せないのかなと。

――では最後に、E3に合わせてほかのメーカーさんが発表されたタイトルの中で、印象に残っているものを教えていただけますか。
吉田 BioWareさんの新しいIP『ANTHEM』、あれは気合が入っていますね。ちょっと『Destiny』風の協力プレイで。あれはすごくよかったです。それから、マイクロソフトさんのカンファレンスで出ていたインディーゲーム『The Artful Escape』。昔のPS2時代にあったような、ちょっとコミカルなアクションゲームで、楽しいなと思いました。あと、ユービーアイソフトさんの『Beyond Good and Evil 2』。あの世界観で遊べるとしたらすごいなと。そしてやっぱり『モンスターハンター:ワールド』ですよね。走るアクションがいかにも『モンハン』していて。早く遊びたいです。

――ちなみにそれらは、ワールドワイド・スタジオのトップとして「こういうトレンドが来ているな」と見ているのですか、それとも、いちユーザーとして見ているのでしょうか?
吉田 どちらかというとユーザー視点です。トレンドは、そんなに変わっていないですよね。オープンワールドだったりですとか、いまのハードの世代のトレンドは続いていると思います。