ビデオゲーム以外でも活用事例が続々
アメリカのカリフォルニア州サンフランシスコで開催中のGDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)。その開催3日目となる現地3月1日、商用ゲームエンジンUnreal Engineを提供するEpic Gamesが基調講演を行った。
前日にプレスカンファレンスを行った競合のUnity同様、Unrealも既存ユーザー向けの細かいアップデートや新機能追加は配信などでのアップデートにシフトしているため、かつてのような新機能続々発表というわけではなかったが、一方でビデオゲームに留まらないさまざまな活用事例が披露された。
終盤ではOculus VRが同社のVRヘッドマウントディスプレイOculus Riftと周辺機器の価格改定を発表(すでに別記事でお伝えした通り、Riftと専用モーションコントローラーTouchのセットが7万6600円/598ドルに)し、話題を一気にかっさらった感があるが、ゲーマーにとってもうひとつ注目だったのが、Gearbox Softwareを率いるランディ・ピッチフォード氏が登壇し、技術デモを披露したこと。
「これは実際のゲームじゃないからね」と念押ししつつ、デモの内容は、Unreal Engine 4上で同スタジオの人気FPS『ボーダーランズ』シリーズのアートスタイルを構築するというもの。確かにこれがそのまま現行機での『ボーダーランズ3』に繋がるわけではないが、将来的な開発を見据えた実験であるのは間違いないだろう。
トゥーンっぽい輪郭線を強調した『ボーダーランズ』シリーズの特徴的なアートスタイルが、Unreal Engine 4のシェーダーやマテリアル設定を通し、より細かく複雑なディテールで、光のあたり具合や遮蔽をシミュレートしつつ描き込まれているのを確認できた。
またILMからは、映画「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」で印象的だったロボットK-2SOのシーン制作での事例が披露された。ソースコードに手を入れてエディットしたILM仕様のUnreal Engine 4を使って、製作中のシーンの調整に役立てたのだという。ゲームエンジンでは高品質なリアルタイム描画を得られるため、プリレンダー型のツールでレンダリングが終わるのを待たずに作り込んでいけるというわけだ(恐らく最終的な出力はピクサー製のRendermanによるもの)。
そしてシボレーでの事例では、VFX会社のThe MillによるARカー“The Blackbird”がステージに置かれ、実際にリアルタイムデモが披露された。
The Blackbirdは、車体の周囲にトラッキング用のARマーカーがビッシリと貼られたスケルトン風の特殊車両。このクルマを走らせて収録を行い、カメラに映ったARマーカーで位置認識を行って、その情報を元ににCGの車体を重ね合わせることで、例えば実車が間に合わずに収録できなかったり、あるいは収録が目撃されて発表前の新車がリークされるといった事態を避けることができるという。もちろんこの場合もILMでの事例と同様、最終出力はUE4でなくとも、リアルタイムに現場でショットを確認できることによる作業の効率化が得られる。
一方、Unreal Engineを採用したモバイルゲーム『Lineage II: Revolution』の事例紹介では、ローンチ一ヶ月の時点での総収入が1億7600万ドル(約200億円)、MAU(月間アクティブユーザー)が500万ユーザー、DAU(一日あたりのアクティブユーザー)が215万ユーザーを記録したという。ちなみに発表では韓国の人口が約5000万人であることにも言及され、MAUはその10%にあたるというのだから、ちょっともう何が起こっているのかよくわからない。
なお攻城戦では100対100で200人が集まる設計だそうで、Unreal Engineの採用はその描画負荷を処理させるという点でも貢献しているとのことだった。