ドラえもんにも会える!
2017年3月4日に公開予定の『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』。今回、映画公開を記念して、特別企画『ドラえもんVR「どこでもドア」』が公開された。
『ドラえもん』史上初となる、VRで“どこでもドア”を完全実現したコンテンツ『ドラえもんVR「どこでもドア」』を開発したのは、東京・お台場“VR ZONE Project i Can”で話題のバンダイナムコエンターテインメント・VRエンタメ制作集団“Project i Can”だ。
さて、今回ファミ通.comではこの“どこでもドア”を体験することができたので、その模様をお伝えしよう。
のび太の部屋も完全再現! 居心地は最高
このアクティビティでは、ヘッドマウントディスプレイと薄型のPCを背負って体験する。この背負ったPCはバックパックのようになっており、超薄型に加えて本体上部からはショルダーストラップ(肩掛けベルト)、腰元と胸元のベルトを装着し、コードレスの状態で仮想空間を楽しめるようになっていた。
スタッフのテキパキとしたセットアップを追え、ついに『ドラえもん』の世界に入ることに。目を開けると、そこにはあののび太の6帖(※)ほどの部屋が広がる(※6帖は筆者の体感した広さです)。おいしそうなどら焼きがお皿に積まれ、勉強机とのび太がぐうたら寝転がるときに枕の代わりにする座布団、草野球で使うバットに0点のテストまで!
『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』は夏休みの出来ごとを映画にしているためか、屋外から聞こえるのはセミの音。なんというか、これが妙に居心地がよくて長居したくなった。これが没入感というものか!
のび太の部屋の隅々まで食い入るように見ていると、「ガタガタッ」と机から異音が。するとひとりでに机が開き、なかからドラえもんが登場!
「あれ、ドラえもんって、こんなにかわいかったっけ!? 以外と大きいな」なんて思っていると、「しばらく出掛けてくるから、どこでもドアで遊んでて」とのこと。「え、そんな理由で“どこでもドア”を使わせてもらっていいんですか!?」と思っていたら、すでにドラえもんはいなかった(笑)。ということで、どこへ行くのかもわからないまま、ドアノブを回してみると……。
ドアの先に広がるのは、『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』の舞台となる南極。どうやら氷山の上にいるようで、下には氷河とペンギンたちの姿が見えた。いま立っているのは真夏ののび太の部屋なのに、ドアの向こうに見えるのは極寒の南極という、なんとも例えがたいこの感覚を文字ではなかなか伝えられないのが悔しい。意を決してドアをくぐると、冷たい風がスーッと吹いているのを感じる。ドアをくぐり、ドアの周りを1周してみると、氷河が浮かぶ広大な南極が背面にも広がっている。ドアの向こうはのび太の部屋だけど、くぐらなければドアの後ろは南極。なんだか突拍子もないように聞こえるが、たしかにここ(仮想空間)に“どこでもドア”が実在するのである。
しばらく隣にいるペンギンを眺めたり、氷山の感触をたしかめようと足で床を踏みつけたり(これも没入感があるゆえの行動)していると、地鳴りのような音が響き渡る。瞬く間に氷山が崩れていき足場がどんどん狭くなっていき、「ヤバイヤバイ!」と取り乱しながらドアを通ってのび太の部屋に無事帰還した、
こののび太の部屋と南極を自由に行き来する驚異の体験は、月並みではあるが本当にすごい。のび太がドラえもんに、何度も道具をおねだりする気持ちがわかる。
まだドラえもんが帰ってくる気配はないので、再度“どこでもドア”を開けてみることに。ドアノブをまわし少し扉を開けると、遠くから「ガタンゴトン」と聞こえる。まさか……列車の上だーーー!
どこでもドアの先に広がるのは、高速で走る列車の“上”。さきほどの南極ではひゅ~っとした冷たい風を感じたが、今度はドアの向こう側で突風が吹いている。現実世界はカーペットの上だが、仮想空間では列車の上。おそるおそる前に進み、線路を眺めているとすこし背筋がゾクっとした。さらにトンネルも近づいてきて、立った状態では確実に危ない状況だ。「うおおおお」と雄叫びをあげながらしゃがみなんとか一命はとりとめたものの、取り乱してしまったのは間違いない。やはりVRの没入感は伊達ではないのだ。
スリル満点の列車を後にし、のび太の部屋に戻ってきた筆者。その後は、のび太が0点をとった算数のテストを計算してみたり窓からの景色を眺めたりしていると、ドラえもんが帰ってきたので体験会は終了した。
最後に、実際に筆者がプレイしているところを納めた動画をお届けしよう。壁に張り付いたりと一見不審者だが、かなり楽しんでいるので、暖かい目で見ていただきたい。
“Project i Can”タミヤ室長を直撃
“どこでもドア”を開くたびに次々に広がる別世界を、現実さながらに全身で体感することができた『ドラえもんVR「どこでもドア」』。本作がどうやって実現に至ったか、こだわった部分などについて“タミヤ室長”こと田宮幸春氏(バンダイナムコエンターテインメント)にお話しを伺った。
田宮幸春氏
――『ドラえもんVR「どこでもドア」』は、どのようにして指導したのでしょうか?
タミヤ室長 我々“Project i Can”は、「できたらいいな」という大人の夢や好奇心をVRの技術を使って叶えてみようという目標のもと活動しています。そもそも“Project i Can”の思想が、ドラえもんの「こんなこといいなできたらいいな」と同じだなと思い、実はVR ZONE Project i Can”を展開する前から『ドラえもんVR「どこでもドア」』の企画書自体は作っていました。2年前の東京ゲームショーでOculus Touchを体験させていただき、これはゲームでなくてもかなり楽しいなと思い、体験後すぐに書いた企画書が『ドラえもんVR「どこでもドア」』になります。どうやったら実現できるだろうと小学館様と相談していたところ、『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』のプロモーションでやるのが一番タイミングがよさそうだと言うことになり、今回実現に至りしました。
――『ドラえもんVR「どこでもドア」』の見どころはどこでしょう。
タミヤ室長 どこでもドアは映画やアニメで見てるので、ドアを通して違う場所に繋がっているということは認識されていますが、実際にドアをくぐってドアの後ろに回り込んでみると違う世界があるという体験はなかなかお客様も分ってない状況だったと思います。空間がドア一枚で繋がっているという不思議な体験は、大変でしたがおもしろかったですね。もうひとつ、我々“Project i Can”では「さあ、取り乱せ」というキャッチコピーを使っており、ようするにちょっとドキッとする体験をつねにやっているので、今回は小学館様と相談してお客様が「ワッ!」と驚くような電車のシーンを入れさせていただきました。これはある種、止まっているのび太君の部屋から、ものすごいスピードを感じられる空間という対比を置き、びっくりしてもらうことを狙っています。
――ちなみにドアを開けて違う空間に行くというのは、技術的に大変だったのですか?
タミヤ室長 企画書を書いたはものの、本当にできるか分らなかったので開発メンバーと相談したのですが、「ドアを開けて中には入らずに、見ているだけならいいですか?」と言われまして(笑)。絶対に中に入りたいと無理を言ったところ、開発チームがうまくいく方法を見つけてくれたのでなんとか実現しました。引き出しの中が4次元空間になっているのも、ドアと同じ技術を使っています。
――実際にプレイしていて、VRとドラえもんの道具は最強の組み合わせだと思いました。
タミヤ室長 そうですね。雲をつかむような世界でやっているよりは、本当にそこにドアノブがあって開けたり、机を開けるという動作はやっぱり大事だなと私自身も思いました。そのために、“VR ZONE Project i Can”で展開していた「高所恐怖SHOW」では手にマーカーを付けていただいたのですが、今回は手を自由にするためゴーグルに画像認識ができるセンサーを取り付けました。
――あれで手を認識していたのですね!
タミヤ室長 ゴーグルとはまったく別の機器なのですが、画像で手の動きを認識して動きをとらえています。
――じゃんけんもできると。
タミヤ室長 そうなります。
――背負っていたノートPCは、VRに特化したものなのでしょうか?
タミヤ室長 あちらは、“VR One”というエムエスアイコンピュータージャパン様の製品になります。やはりのび太の部屋を自由に歩いてドアをくぐるとなると、コードレスでないと大変なんです。また何もない状態でないと没入感が失われてしまうという点も考慮した結果、今回はこちらの製品を使用させていただきました。
――体験してみて、のび太の部屋にずっと居たくなりました。あの部屋は結構忠実に再現されていらっしゃるのですか?
タミヤ室長 そうですね。でも私のイメージではのび太の部屋は畳だったのですが、いつからかカーペットに変わっていまして(笑)。どうやら現代と相違がないように、いつしか少々変化したそうです。ですが『ドラえもんVR「どこでもドア」』ではしっかりといまののび太の部屋を忠実に再現しています。開発のメンバーも、のび太の部屋ができた時に寝転がっていましたね(笑)。
――“Project i Can”の今後の展開についてもお聞きしてよろしいでしょうか?
タミヤ室長 お台場で展開していた“VR ZONE Project i Can”では、わざわざお台場まで足を運んでいただき、それ相応のお金を払っていただいて、そして満足して帰っていただくという形が見えたので、こういったやり方の手応えを感じることができました。また、『ドラえもんVR「どこでもドア」』に近い体験を作っていますので、今後お披露目できるかもしれません。
<『ドラえもんVR「どこでもドア」』体験会>
日程:2017年2月20日(月)~4月14日(金)
会場:東京ソラマチ3F 特設会場
住所:東京都墨田区押上1-1-2
くわしくはこちら をご覧ください。
【作品概要】
公開時期:2017年3月4日(土)
タイトル:「映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険」
原作:藤子・F・不二雄
監督・脚本・演出:高橋敦史(『青の祓魔師 ―劇場版―』)
CAST:
ドラえもん:水田わさび のび太:大原めぐみ
しずか:かかずゆみ ジャイアン:木村昴 スネ夫:関智一
※公式サイト