実力は未知数ながら、さまざまな可能性を感じる製品
昨年10月末にマイクロソフトがWindows 10の次期大型アップデート“Creators Update”に関する発表の中で、Windows 10のVR/AR対応を進める一方、PCメーカーなどから廉価で扱いやすい対応VRヘッドマウントディスプレイが登場予定であることが発表され、大きな話題を呼んだ(本誌でも既報)。
そして年が明けた2017年、CESを前に行われた先行イベント“CES Unveiled”で、その製品群のひとつとなるだろうVRヘッドマウントディスプレイのモックをLenovoが出展し、製品名などの詳細は未定ながら注目を集めていた。まだモック段階ということでデモなどを体験することはできなかったのだが、実際にモックを見てわかってきたことなどをお伝えしよう。
▲前面に離れて設置されている2機のカメラがポイント。
第1の注目は前面のカメラ部
このVRヘッドマウントディスプレイの大きな特徴となっているのが、前面にワイドに取り付けられた2つのカメラ部。関係者によるとこの部分で2通りの機能を実現するという。
まずひとつは、前述の発表時にも強調されていた、この製品群が持つ“インサイドアウト方式”のポジショントラッキングだ。この機種では前面部のカメラ2機で部屋の壁などの周囲の空間を認識し、その中でプレイヤーがどう動いたかを検出してVR空間に反映することができる。
PC用のVRヘッドマウントディスプレイとして先行するOculus RiftやHTC Viveは、現状ではプレイヤーの位置検出のために外部にセンサーやカメラを設置する必要があって、これがセットアップの手間ともなっていた。インサイドアウト方式では、このあたりが低減されることになる(ただしこれはVRヘッドマウントディスプレイ単体についての話で、モーションコントローラーなどを足すなら恐らく何らかのセンサーが必要だろう)。
▲ケーブルはデータ通信用のUSBケーブルと映像送信用のHDMIケーブルを1本にまとめたもので、PC側で2本にわかれている形。
そしてもうひとつが、マイクロソフトのHololensでの蓄積を応用したARとの融合。カメラ部でVRヘッドマウントディスプレイ外部の現実空間を取り込んでVRのCG空間と融合する“MR”(Mixed Reality)的なことが可能で、すべてではないもののHoloLens用ソフトウェアもいくつか動作するとのこと。もちろんシースルーなディスプレイで現実の視野とCG空間を融合するHololensとは異なり、このカメラで違和感のない合成ができるのか、実際どんな視覚体験になるのかといったあたりは、早く実機で確認したいところ。
▲本体右面に光る“HOLOGRAPHIC”のロゴは、Hololensとの繋がりの証。
重量や価格面の競争力も魅力
また表示部は1440ドット×1440ドットのOLEDディスプレイ2枚を使用していて、単純な解像度比較ではRiftやViveの現行機種を上回ることになる。となると「でもお高いんでしょう?」と思うかもしれないが、むしろ逆なのが面白いところ。販売価格は300ドルから400ドルの間を予定しているそうで、「299ドルから」とされているこの製品群の価格帯に収まっているのだ(ちなみにPCの要求スペックもそこまで高くないとされている)。
そして実際手に持ってみて、軽くて取り回しやすそうなのも触れておきたい。「でもそれはモックだからじゃない?」と思って聞いてみたのだが、実機でも3~400グラムの軽量級を目指しているそうで、実はこれもまた売りのひとつだった。
軽量な分、ヘッドバンド部での保持がしっかりするし、さらにディスプレイ部分をカパッと上に開くことでいちいち取り外しせずに外を確認できるという機構も実現している。これがディスプレイ部が重かったらグラグラしちゃってそういうことはやりにくい。
▲これがディスプレイ部を起こした状態。バイザーを上に上げた感じ。
というわけでこのハード、まだまだ未知数の部分が多いが、VR体験の質に一定以上のものが出せるとするならば、後発ながら安価で使いやすい“カジュアルだしハイエンド”という面白い領域を切り拓けるのではないかと感じた。とにかく早く被って体験してみたい!