2大タイトルの開発者にインタビュー
2017年1月19日に発売予定の『GRAVITY DAZE 2/重力的眩暈完結編:上層への帰還の果て、彼女の内宇宙に収斂した選択』(以下、『GRAVITY DAZE 2』)と絶賛サービス中の人気オンラインゲーム『PSO2』の相互コラボが、東京ゲームショウ2016で発表された。その相互コラボが、2016年11月9日からスタート! まずは『PSO2』で『GRAVITY DAZE 2』のコラボアイテムが同日のアップデートにより実装される(『GRAVITY DAZE 2』側は、ソフト発売日以降)。この2大タイトルのコラボを記念して、週刊ファミ通2016年10月27日発売号で行った、両タイトルの開発者インタビューを完全版で公開!
※写真左から
『GRAVITY DAZE 2』
クリエイティブディレクター
外山 圭一郎 氏
『ファンタシスターオンライン2』
シリーズプロデューサー
酒井 智史 氏
『ファンタシスターオンライン2』
シリーズディレクター
木村 裕也 氏
■コラボ決定の契機は、カート部にあった!?
――まずは、今回のコラボが決定するまでの経緯を聞かせてください。
木村 最初は僕が外山さんにご相談しました。
――直接やり取りされたんですか?
木村 ええ。2013年のファミ通アワードでご挨拶をしたのが最初で、そのあと、2014年くらいから仲よくさせていただいていますので。
外山 去年はカート部の合宿もありましたね。
――カートというのは、レーシングカートですか?
木村 はい。外山さんに誘っていただいて、一時期は毎月のように行っていました。去年の夏は温泉も兼ねて、合宿にも行きました(笑)。
――まさかのカート部仲間(笑)。そのつながりで木村さんから話を持っていかれたと。
木村 今年は『PSO2』もプレイステーション4でサービスが始まるので、プレイステーション4のタイトルとのコラボを考えていたんです。そこで『GRAVITY DAZE』の続編が出るということを知って、これはぜひにと。いつもは遊びのやり取りしかしていないんですが、「今日はカートの話ではなくてお仕事の話を」というメールをさせていただきました(笑)。
外山 最初は一方向でのコラボのお話をいただいたのですが、どうせなら相互にさせていただきたいと、こちらから提案しました。
木村 ですから、こちらとしてもぜひお願いしますと。そこからはどんどん話が進んでいきました。
――それはいつごろのお話ですか?
木村 最初にご相談したのが、今年の1月くらいだったと思います。
外山 そうですね。
――かなり早い段階からお話はあったんですね。
木村 そうですね。『PSO2』はオンラインゲームで、アップデートを頻繁にやっていますが、『GRAVITY DAZE 2』はパッケージのソフトなので、仕込みは早くないといけませんので、時期的にはちょうどそのあたりですね。
――それぞれのコラボ内容について、教えてもらえますか?
外山 『PSO2』に“クレイジーキトゥン”というコスチュームがあるのを知っていて、「これ、いいな」と思っていたんです。そのコスチュームを、今回は『GRAVITY DAZE 2』内で、キトゥンのコスチュームとして扱わせていただいています。それと、もうひとつ、今作には写真を撮る“フォトモード”というものがあるのですが、その背景に置くオブジェクトとして、コンテナなどいくつか『PSO2』に関するものが登場します。
木村 『PSO2』のグラフィックは、トゥーン調ではないので、どうなるのか楽しみだったんですが、設定画をアニメ調で描いているせいか、『GRAVITY DAZE 2』のトゥーンぽい表現で描かれたものを見たら、「こっちのほうが設定画に近い!」みたいなことも(笑)。
外山 そうですよね。驚くほど違和感がなかったというか、「あれ? もともとこういうキャラだった?」みたいな(笑)。
木村 “クレイジーキトゥン”はけっこう色数も多いので、『GRAVITY DAZE』シリーズの、セピア調のスチームパンクな世界に合うのかなと思っていましたが、いい感じの差し色くらいになっていましたね。
――『GRAVITY DAZE 2』の世界は、前作よりも派手めな色使いになっていますから、合うんじゃないですかね。
外山 そうですね、よりカラフルというか、ビビットな世界観になっています。ただ、70年代、80年代風の、少しノスタルジーを感じさせるような、若干尖った世界観の縛りが大きくて、ゲームの中で着替えがあっても、基本は雰囲気に沿ったものになっています。その世界観を飛び出すような遊びは、自分たちの中ではなかなかできないのですが、コラボという形でしたら、そういうこともできるので、ぜひと。
木村 前作でもメイド服などはありましたが、あくまで世界観の中で、という感じでしたよね。
外山 そうですね。
木村 『PSO2』はわりと広く、いろいろなものを出せる世界観にはなっていますが、それでもやっぱり、コラボじゃないと飛び出せないなというラインはあるので、このお話はすごくわかりますね。
――『PSO2』側のコラボ内容は、衣装ですよね。
木村 そうですね。キトゥンとクロウの衣装と髪型。あとはロビーアクションですね。重力操作風のものができないかなと思って。さすがに雰囲気だけですが(笑)。フワッと浮いて戻ってくるというものと、重力スライドで床を滑るようなものを再現しました。
外山 ロビーアクションは、「そこまでできるんですか!」と驚きました(笑)。
木村 ロビーアクションとは言っていますが、最近はなんでもやっていますので(笑)。
酒井 できれば壁とかに引っ付いて、立てるようにしたかったですね(笑)。
――コラボをやるということで、制作にあたって、難しかったところはありますか?
木村 『GRAVITY DAZE 2』はトゥーンな感じの世界観で、シェーダーも大きく違います。ただ、その雰囲気は出したいと思ったので、テクスチャーの制作の際に、部分的にあえて単調な感じにしたり、ディティールの入れ方を工夫したりしました。
外山 こちらは、クレイジーキトゥンのセクシーなところを、どこまで攻めるかですね(笑)。シェーダーが違うので、見え方が違います。ただ、そこがクレイジーキトゥンのよさでもあるので、違和感なくギリギリの線はどこかなと。ぶっちゃけるとレーティングが変わるんじゃないかっていう心配がありました(笑)。 正直少しオリジナルよりも布面積が広めになっているので、監修で「違う」と言われないかなという心配もありましたね(笑)。
■お互いのゲームについての印象
――それぞれコラボ先のゲームについて、どういった印象をお持ちですか?
外山 セガさんらしいですよね。僕、すごいセガっ子だったんですよ。メガドライブとか、セガサターンとか。かなりのセガ信者で(笑)。当時のいちユーザーとして、すごく好きだったころのセガらしさというか。色使いや、すごく明るい近未来な感じがしっかり受け継がれたゲームなので、本当に好きなシリーズです。とくにに"0"がつく前の、『ファンタシースター』シリーズが、世代的にもかなり好きだったんですよ。『GRAVITY DAZE』のデザイナーをやってる斎藤俊介も、同じく『ファンタシースター』が大好きで、『PSO2』さんとコラボをするという話をしたら「『ファンタシースター2』のネイとかとコラボできない!?」という話になったりして(笑)。
木村 開発者は喜びますけど、いまのユーザーさんはどうですかね(笑)。
――酒井さんは『GRAVITY DAZE』に関して、どんな印象を?
酒井 SIEさんのタイトルは、わりと尖ったものが多いと思うのですが、その中でもとくに尖っているタイトルかな、という印象はありますね。独特の世界観が印象的ですし、重力操作という要素もあり、ゲーム大賞も受賞されています。じつは僕がプレイステーションを買ったきっかけが『ジャンピングフラッシュ』というゲームで、シリーズを通してすごく好きだったんですが、『GRAVITY DAZE』には、それを思い出す部分があったりします。いろいろなところに飛んで行ったり、高いところから落ちるところとかですね。あとは、あくまで僕の感覚なのですが、昔『パンツァードラグーン』というタイトルをやっていて、ちょっとそれにテイストが近いような印象を受けています。色あせた世界や、キャラクターの感じが、カテゴリーとして近いような気がして。
外山 『パンツァードラグーン』のパッケージは、メビウス(フランスのバンドデシネ作家)が描いているんですよね。
酒井 はい。もともとバンドデシネがすごく好きなスタッフが『パンツァードラグーン』を作り始めたんです。外山さんもバンドデシネがお好きですよね。そういったところもあって、血というか、源流が同じなのかなという印象を感じています。
外山 かなり鋭いんじゃないかなと思います。いま、「それだ!」って思いました(笑)。
――木村さんはどうですか?
木村 世界観やユニークな操作性も含めて、やっぱり、オンリーワンなゲームだと思います。世界観が独特な、国産のユニークなゲームでありつつも、それがちゃんとワールドワイドに通用するタイトルだというとこころがすごいですよね。いま、国産のタイトルがなかなかきびしい中で、国内でも、国外でも評価されるというのは、本当に尊敬すべき作品だと思います。それと、僕はディレクターなので、何が楽しいかということを考えるのですが、「広い街を一瞬で移動できたら気持ちいいよね」という部分からくる、プレイ感覚の気持ちよさを突き詰めている部分がいいですよね。コンセプトはシンプルならシンプルなほどいいと思っているのですが、それを体現しているようなゲームじゃないかなと思います。
――外山さんから『ファンタシースター2』のお話が出ましたが、木村さんと酒井さんは、外山さんの以前の作品である、『SIREN』シリーズなどはプレイされた経験はありますか?
酒井 『SIREN』は怖すぎてやってないです(笑)。
木村 僕は怖いもの見たさでやりましたね。夜遅くにひとり暮らしの部屋に帰って、深夜プレイするのですが、プレイ中は、部屋の窓の外の音が常に気になっていました。また、そういうタイミングで猫が鳴くんですよ(笑)。
お互いに聞いてみたいこととは?
コラボの話もひと段落したところで、少し脱線して質問タイムへ。それぞれのタイトルやゲームの作りかたの違いなど、クリエイターとして気になる部分をお互いにぶつけ合ってもらった。
■『SIREN』と『GRAVITY DAZE』の違いとは?
酒井 『SIREN』と『GRAVITY DAZE』は、外山さんの中では近いものなんですか? 僕から見ると、かなり離れているように思えますが。
外山 見た目は真逆なので、そう思われるかもしれませんが、まず街があって、そこにストレンジャー的な主人公がいて、それからストーリー性を組み立てる、という作りかたは同じですね。ただ、いろいろな見せかたができたのは、たまたま弊社が、「やりたいならやれば?」という会社だったので(笑)。やりたいことを実現できる環境にあったというのはすごくラッキーだったかなと思います。
■『PSO2』のゲーム以外への展開
外山 お誘いを受けて拝見した『PSO2』の舞台公演がおもしろくて、強く印象に残っているのですが、『PSO2』では今後もああいったチャレンジを続けていかれるのですか?
酒井 いまは具体的には言えませんが、「ゲームだけではなく、いろいろなもので『PSO2』というコンテンツを作ろう」というスタイルでやっています。ゲームと現実の境界をあいまいにするという考えがあって、今後もそういうことをやれればいいな、と思っています。
外山 『PSO2』は、いい意味でのラフさというか、「何でもやっちゃえ!」みたいなところが、見ていてもワクワクしますね。
酒井 「バカじゃないの?」とかは、よく言われますね(笑)。もちろん、皆さんに楽しんでもらえるだろうと思えること以外はやりませんけれど。
外山 また新しい舞台をお願いします。
■お互いのゲームの作りかた
木村 『SIREN』にしても『GRAVITY DAZE』にしても、世界観というか街づくりを先にというお話をされていましたが、ゲーム性はかなり特徴的ですよね。僕らが作るときは、絵作りはデザイナーが進めて、プログラマーやプランナーは素のポリゴンを使って操作性などの検証をするのですが、重力操作や気持ちよさなどの部分は、やはりそういった形で検証をやられているのですか?
外山 『GRAVITY DAZE』はとくにそうですね。僕のほうからは、まずシステムとしてどうこうというよりは、ずっと続く立体的な都市を落ちているというフィーリングから、一歩進んだところまでのアイディアを出しました。時間が制限されていて、そのあいだに次の足場までたどり着く、というようなイメージですね。そこから、生のポリゴンの箱だけでの試作をけっこうやりました。
木村 後で完成したマップを合体して、という感じですか。
外山 そうですね。生のポリゴンだと、横になってもピンとこないんですよ。
木村 そうですよね。先に絵を入れてしまうと、それだけでできた感じになって、検証がゆるくなってしまったりするので、僕たちもできるだけシンプルなもので検証しています。ただ、『GRAVITY DAZE』の場合は、多少は絵がないとわかりづらいのかな、と。
外山 そうですね、“脳をだます”というところで、そこは苦労しました。ただ、屋根を付けるだけでも、だいぶ印象が変わりますから。
木村 完全にただの四角だと、壁に立っていてもわからないですもんね(笑)。
外山 ただ、検証していく中で、ゲーム性はかなり変わりましたね。最初は、もっとパズル的なゲームを考えていたんですよ。制限の中でこの時間までにたどり着けば、次はここに行ける、というような。そして、だんだん能力が拡張されて、空を飛んでいるような開放感を楽しめるというイメージでした。ですが、パズル性の部分がものすごく不評で。逆に、振り切ったパラメーターのときはすごく楽しいという話になったんです。ただ、それだとゲームになっていないけど、いいのかなと(笑)。重力操作能力を工夫して使わないと、より上に行けないというデザインじゃないと、ゲームにならないと思っていたんです。ですが、そんなことは関係なく、ふわふわとどこにでも行ける。リスクとリターンの要素で言えば、壊れているのですが、それが楽しいと。そのタイミングでガラっと変わりました。実際にやってみないと、プレイヤーがどう受け取るかわからないという部分は、おもしろかったですね。
木村 オープンワールドで、リアルな街並みになっていますが、最初の構想だと、もっと機械的というか、ゲーム的な街並みだったんですか?
外山 そうですね、初めはオープンワールドということすら決めていませんでした。イメージとしては脱出モノのような感じだったかもしれません。崖があって、ジャンプしても届かない。というところから、最初は少しだけ傾けられて、そうするとぎりぎり届くんです。次に傾きを大きくするアイテムが手に入って、先に行けるようになるという。
木村 もっとクローズドな世界観だったんですね。
外山 ただ、それを超えていくと、最後はどこでも行ける、みたいな。
木村 でも、いざ動かしてみたら違ったと。そして、マップもオープンに。
外山 そこは僕の適当さがいいように働きましたね。皆が「こっちがいい」って言うなら、「こっちでいいんじゃない?」と。最初に考えていたものとはぜんぜん違いましたが(笑)。
――そこまでガラリと変わるのは、なかなかないんじゃないでしょうか?
木村 それが、意外とそうでもないんです。むしろ、構想通りに最後まで進むことはほとんどないですよね。
外山 ないですね。
木村 ですから、いきなり作り込まずに、実際に触ってみながら基本部分を検証して、少しずつ決めていって、絵作りをそれに合わせていくという感じですね。『PSO2』は、オンラインゲームとしては特殊ですが、3Dアクションゲームとしてはよくあるタイプなので、わりとスタンダードな作りかたなんです。ですが、『GRAVITY DAZE』はかなり特殊なゲームなので、どうなのかなと思ってお聞きしたんですが、そこは同じなんですね。
■オンラインゲームならではの難しさ
外山 逆に僕はオンラインゲームをほとんど作ったことがないので、オンラインゲームならではの難しさを聞いてみたいですね。
木村 そうですね、基本的にシングルのコンシューマーのタイトルで、やれることをひとつ増やしたとして、オンラインゲームではその4倍くらいコストがかかるんです。たとえば、キャラクターが行うアクションをひとつ増やすという、作業としてはシンプルなものですが、そこに、通信とサービス中のコンテンツへの影響という要素が加わるので、一気に工程が増えてしまうんです。ですから、当然クラッシュ&ビルドは必要ですが、クラッシュを最小限に収めるために、細かくフェイズを切って検証や監修をするのが大変ですね。ただ、そうしないと、巻き戻ったときにとんでもないことになってしまいますから。これは、ネットワークゲームに限らず、ゲームがハイエンドになるほど、そうだと思いますね。昔のゲームよりいまのゲームのほうが、巻き戻りがきついですよね。
外山 そうですね、単純にお金の面でもきついですし、スタッフのモチベーションとしてもつらいですね。「どれだけかかったと思っているんだ、簡単に言うなよ」と(笑)。
木村 『PSO2』は、グラフィック的にはハイエンドではありませんが、オンラインゲームという部分での、クラッシュ&ビルドの難しさは感じます。ただ、先ほどの話のように、最初の構想通りにはいかないことが多いので、クラッシュ&ビルド前提でスケジュールは組みますね。
酒井 オンラインゲームの場合、ランニングしながらそれをやっていかないといけないので、基本的に建て増し住宅になっていくんですよね。最初からどういう拡張をする、ということがわかっていればいいのですが、ある程度は入れておけても、想定外の拡張というのが必ず発生します。そういう予定になかった拡張も、メモリと相談しながら入れていく。予定の中の作業と予定外の作業と、それぞれ優先度を考えつつスケジュール内に収めるという難しさはありますね。
外山 オープンワールドのゲームは、想定外の要素も味のうち、というところもあると思うんです。もちろん、そうならないように気をつけてはいるのですが。ただ、オンラインゲームでは、「想定外だった」では済まない部分もあると思うんですよね。
木村 そうですね。コリジョンレベルの細かい不具合は、申し訳ないのですが、最悪パッチで直せます。ただ、アイテムやユーザーさんのパラメーターに傷がついてしまうと取り返しがつかないので、そこは本当に慎重にやっていますし、つねに緊張感はありますね。それと、不具合ではありませんが、ゲーム内の経済のバランスを崩さないように気をつけています。経済のバランスを崩してしまうと、「いままでの努力をどうしてくれるんだ!」ということになりますから。
外山 そうですよね。敵の出現率ひとつでも、間違えたらたいへんなことに……、ということもあるわけですよね。
――『PSO2』では、アップデート次々に行われていますが、やはりスケジュールはきっちりと組まれているのでしょうか?
木村 開発初期から数えると7年くらいになりますが、そのころから考えると、だいぶ作りかたが変わりましたね。チームの組織体制もそうですし、スケジュールやタスク管理の方法も、ものすごく細かくなりました。
酒井 いろいろなミスがあって、そうなってきています。作業の過程でミスがあり、更新してはいけない部分が更新されて、予定にないものが入ってしまう、ということがしばしばあって、これを防ぐにはどうしようと考えて、ツールなどで作業を行う部分が増えてきています。
木村 ダブルチェックではダメだからトリプルチェック、トリプルチェックでもダメだから、そもそもやりかたを変えようという感じですね。
酒井 どうやっても人は間違えることはありますからね。長く続けていくと、全員同じメンバーで続けるということはできません。人が変わったりすると、また最初から教えるので間違いが発生する可能性が高まります。それをどう防ぐかということで、ツールなどを作ってミスの可能性をできるだけ吸収しましょう、ということでいまのシステムになっています。それでもやっぱりミスは起こるんですよね。
――アップデートの作業自体は、アップデートごとにラインが分けられているのでしょうか? それとも、担当ごとに作業が割り振られている形でしょうか?
木村 1年から1年半ごとに行う、エピソード追加などの大型アップデートのときは一時的に2ラインになりますが、それでもトップの4、5人だけですね。ほかはみんな、2、3バージョンをつねに担当している感じです。ですから、みんな混乱しています(笑)。
酒井 「いまどこだったっけ?」みたいな。情報も先出し先出しでやっているので、「どこまで実装されているんだっけ?」と(笑)。
外山 弊社はそのあたりにあまり強くないので、講義していただきたいですね(笑)。
木村 実際、コンシューマーはここまで細かくやらなくてもいいはずですし、最終的にアウトプットされるものがよければいいと思うのですが、オンラインゲームはそうではないんですね。中がしっかりしていないと後で困るんです。
■スタッフ間のビジョン共有の難しさ
木村 ところで、『GRAVITY DAZE 2』には、前作のスタッフはどれくらい残っていらっしゃるのですか?
外山 基本的には引き継いでいます、もちろん一部は入れ換えがありましたが、コアメンバーの8割くらいは同じですね。
木村 スタッフの人数は増えたと思いますが、新しく入ってきた人とのジェネレーションギャップじゃないですけど、常識のギャップみたいなものはないですか?
外山 まぁ、最初はどうしてもありますよね。それに、うちに来た人は、だいたい最初は戸惑うんです。ぜんぜん細かい指示が与えられないので(笑)。
木村 なるほど、自由なんですね(笑)。
外山 ある程度裁量を与えるというか、自分で考えてやってくれたほうが、バラエティ性が出るというところもありますから。だから、慣れるまでは「何をすればいいんですか?」ということが多かったりします。わかってくると、「あぁ、勝手にやっていいんだな」と(笑)。いまはやっていませんが、最初はチーム内用にブログを書いていました。何を考えているのかを共有しようと。
木村 なるほど、ビジョン共有ですよね。
外山 ゲームに直接関わる、関わらないは関係なく、「昨日見たあれがおもしろかった」とか。
木村 チーム内ブログはすごいですね。でも、そういうことはすごく大事だと思います。僕はぜんぜんできていなくて(笑)。『PSO2』チームの昔からの課題ですが、ディレクターなどの考えかたやフィーリングの部分を共有するのは、すごく難しいじゃないですか。僕はそういった努力を怠ってしまうほうなので……。作っている過程で、だんだんフィーリングが合っていくのですが、クラッシュ&ビルドも少し多くなってしまうんですよね。確かに、ブログなどで考えを共有するのはいいかもしれませんね。
外山 ブログはわりと効きましたね。仕事として改めて言わなくても、なんとなく同じ方向に全体が向いてくれるようになりました。
木村 僕も、参考にしたい作品がある場合は、「みんなこれ見てよ」というのはやったりしますね。そうすると、細かく言わなくても、向いている方向は揃いますから。
――若いスタッフの方も増えてきていると思いますが、世代間のギャップなどは感じないですか?
外山 ジェネレーションという部分では、年々きびしくなっていますね。昔はなんでも『少年ジャンプ』で説明すればよかったんですけど、なかなかそれが通じなくなって(笑)。「ここでベジータみたいに」、って言ってもポカーンとしていますからね。
酒井 うちだと『機動戦士ガンダム』の話が通じなくなってきていますね。
外山 しょうがないから、『弱虫ぺダル』などを読んで、「東堂と巻島みたいに」という感じで、こっちが合わせるしか(笑)。
木村 ゲーム業界自体が、ざっくり30年くらいなんですかね。昔は同じ世代の人たちが作っていたと思うのですが、いまはその幅がどんどん広がっているので、その問題が加速しているんじゃないかと思いますね(笑)。
酒井 我々よりさらに上の世代の方々もいらっしゃいますからね。
木村 僕らはゲームバブルの後に入ってきた世代ですが、ここからさらに下の、いまの20代の人たちにはなかなか通じなくなってきていますね。
――どの世代でも知っているコンテンツというか、共通の話題が少なくなっていますよね。
木村 そうですね、いろいろなエンタメが増えていますから。純粋に数が多いので、知識のばらつきはあるのかなと思います。
外山 逆に、若い人特有の、ライブが好きだったりする部分から刺激を受けることはありますね。まさに舞台などは大好きですからね。
木村 2.5次元とか、流行っていますね。どんどんデジタル化していって、どこでもいつでも端末があれば見られるというのが広がっていく中で、限定された場所で、アナログなものを、というのが若い人に受けているのが、時代に逆行している感じでおもしろいですね。
■音楽に対するこだわり
酒井 『GRAVITY DAZE』は音楽が公平先生(田中公平氏)で、ステキでした。あの発想はどこから出てきたんですか?
外山 音に関しては、けっこう最初から、1970年代のアニメ的なオーケストラの使いかたをやりたいんです、という話をしました。
酒井 1970年代のアニメですか?
外山 冨田勲先生の『ジャングル大帝』とか、『マイティジャック』とかの、わくわくする感じを、と。田中先生に「ティンパニとか、いまだどこんなにドコドコやらないですよね」という話をして。
酒井 そこは公平先生お得意のところですよね。
外山 「やりたいことはわかったけど、同じようにはやらないからね」と言われましたが(笑)。
木村 『GRAVITY DAZE 2』は、曲数もかなり多くなったそうですね。
外山 そうですね、曲数もそうですが、ループしていく中で楽器の編成が変わるなど、かなりおもしろい試みもやっています。
酒井 『PSO2』の音楽も、ゲームの進行に合わせて楽器が増えたり、状況に合わせて違う曲になったりする“シンパシー”というシステムがあります。これに少し似ていると感じました。『PSO2』の場合は、小節単位で区切られているイメージですが、『GRAVITY DAZE 2』の場合は、どのように処理されているんですか?
外山 結果的には、そんなに細切れにはしませんでした。展開が急なところで、どんどん切り替えていくとおかしなことになりそうなシチュエーションがあったんです。あとは生のオーケストラベースだと、ある程度キチっと決まった聞かせかたをしたいというところもありましたから。そのあたりのダイナミズムと音楽性の落としどころは、サウンド担当とじっくり決めましたね。
――皆さん音楽へのこだわりは相当ですね。では最後に読者に、ひと言ずつお願いします。
木村 『PSO2』も、PS4でサービスを始めてから半年ほどになりました。そんな中、日本のコンシューマータイトルを盛り上げていきたいという思いもあって、いろいろなタイトルとコラボをしています。今回『GRAVITY DAZE 2』と相互コラボを行えるのは、本当にうれしいですし、大きな相乗効果が期待できると思っています。先行して『PSO2』でコラボが始まりますので、『PSO2』のユーザーさんは、そこで『GRAVITY DAZE 2』を知って、ぜひ買っていただけたらと。逆に『GRAVITY DAZE 2』のユーザーさんは『PSO2』のコスチュームを着て、世界観に触れていただければ。『PSO2』は無料で遊べますから(笑)。それから、『PSO2』自体も新しいものを実装して、より楽しくなりますので、このインタビューをきっかけに遊んでいただきたいです。
酒井 環境的に、家庭用ゲームが縮小しつつありますが、僕たちは家庭用ゲームを少しでも盛り上げたいという思いを持っていますので、今回のコラボで、プレイステーション4を盛り上げていきたいですね。また、相互コラボということで、それぞれのユーザーさんに、タイトルを知っていただくいいきっかけになればと思っています。『PSO2』は無料ですから、ぜひ遊んでください。そして『PSO2』に少し飽きたら、『GRAVITY DAZE 2』も遊んでください(笑)。非常に楽しいゲームになっていると思いますので、ぜひ多くの方に遊んでいただきたいですね。
外山 東京ゲームショウで発表した後、驚いているというか、「そうきたか」と言っている方が多かったんです。ふだん『GRAVITY DAZE』のファンの方の書き込みなどは見ていますが、『PSO2』のファンの方の書き込みを見て、驚きのようなものが見られたのは新鮮にでした。どちらのゲームのファンの方にも喜んでもらいつつ、意外性があって広がっていく感じを楽しんでいただければと思います。ぜひぜひ、両方のタイトルをプレイしてみてください。