『マフィア III』のキーパーソンに聞く 「とにかく本物らしさを求めて」【インタビュー】

発売中の2Kの『マフィア III』。ここでは、開発元であるHangar 13 代表 兼 クリエイティブディレクター ヘイデン・ブラックマン氏とアートディレクターを担当したデイヴ・スミス氏に聞く。

●『マフィア III』のキーパーソンに聞く!

 プレイステーション4、Xbox One、PC用ソフト『マフィア III』は、2Kから発売中のアクション・アドベンチャーだ。オープンワールドを採用しつつ、緻密なストーリーを構築。魅力的的なキャラクター造形と相まって、深みのある世界観を作り上げている。“1968年のアメリカ架空の都市であるニューボルドーを舞台に、ベトナム戦争帰還兵である、黒人と白人のハーフ、リンカーン・クレイによる、復讐劇が展開される”という、おおよそのストーリーラインを聞いただけで、ドキドキするではありませんか。

 ここでは、ソフトのリリース直前に行った、開発元であるHangar 13 代表 兼 クリエイティブディレクター ヘイデン・ブラックマン氏と、アートディレクター デイヴ・スミス氏への秘蔵インタビューをお届けする。すでにプレイ済みの方も、これから触れてみようという方も、世界観を理解するための手掛かりにしていただけれると幸いである。

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Hangar 13 代表 兼 クリエイティブディレクター
ヘイデン・ブラックマン氏

――まずは、『マフィア III』を開発することになった背景を教えてください。

ヘイデン もともとは、強烈なナラティブやストーリーを持ったオープンワールドのゲームを作りたいと考えていました。このふたつを融合するには、『マフィア』というフランチャイズがぴったりだと思ったんです。『マフィア III』というプランを提示されたときは、“ストーリー”と“オープンワールド”というふたつのゴールを実現するためのプレゼントをもらったような気持ちでしたね。

――“復讐”をテーマに選んだ理由を教えてください。

ヘイデン 『マフィア II』はヴィト・スカレッタがギャング集団の中でのし上がっていくストーリーです。そういった意味では、従来からあるタイプのギャングストーリーと言えます。本作は、それとは違うストーリー、ナラティブにしたいと思ったんです。そこで“復讐(リベンジ)”にフォーカスしたのですが、単なるリベンジストーリーではありません。リベンジが、リンカーンのおもな動機となっていることは確かですが、一方で、旧世代を駆逐して、新しい犯罪集団を作ろうともしているんです。彼が孤児であったために、つねに“どこかに属したい”、“家族がほしい”と思っていることが根幹にあります。ブラック・モブがイタリアン・モブに倒されたときから復讐を目論みます。と、同時になくなったファミリーの代わりに新しい集団を作るというわけです。

――ああ、それは破壊と再生とも言えるわけですね?

ヘイデン そういう一面はありますね。

――先に舞台設定があって、復讐というテーマができたのですか? それとも、復讐というテーマが先で、舞台設定をはめ込んだのですか?

ヘイデン これまでのシリーズの流れを考えて(1作目は1930年代、2作目は1940年~1950年代)、まずは1960年代後期という時代設定を考えました。つぎに、ニューオーリンズ(ニューボルドー)を選んだんです。そして、この時代にもっとも興味深い主人公として、黒人と白人のハーフとして、ベトナム帰還兵を選びました。そのあとは、孤児という設定にするなど、キャラクターを発展させていっています。私にとっての本作のテーマは、“生まれがいっしょなのが家族なのではなくて、その人のためなら死ねるのと思うのが家族”だと思います。これがはっきりしてからは、すべてがここから発展していきました。リンカーンは、彼を受け入れてくれたファミリーのために、死ぬ覚悟がありました。旧勢力を倒して、その骨から新たな集団を作る……。これがもっとも重要なことになります。

――主人公であるリンカーンのキャラクター造形にあたって注力したポイントは?

▲主人公のリンカーン・クレイは、黒人と白人のハーフにして孤児。ベトナム戦争の帰還兵にして黒人組織に身を置く……という、複雑な境遇の持ち主。

ヘイデン すべてです。リンカーンには4つの特徴があります。中でも、混血であることと孤児であることは、彼の人格形成にとってより大きな影響があったかもしれません。それが、“自分の家族を守り、復讐を成し遂げる”という、強い気持ちにつながっていきます。一方で、ベトナム兵だった彼は、ギャングを相手に兵士のように戦うスキルを持っています。そして、彼もまた犯罪者なのです。ブラック・モブの周辺で育ち、ギャング内の上下関係や、ほかのギャング組織との横の関係などをよく知っているんです。

――“混血”、“孤児”、“ベトナム帰還兵”、“犯罪者”がリンカーンの特徴というか、属性というわけですね。いずれにせよ、魅力的なキャラクターになっていると?

ヘイデン 私が彼でいちばん好きなところは、異なるタイプの人たちをまとめ上げる能力があることですね。ベトナムでは、ジョン・ドノヴァンというCIAのエージェントと親しくなったのですが、ふたりはまったく異なる環境に育ったんですね。リンカーンは南部の貧しい黒人で、ドノヴァンは東海岸の富裕層で、高等教育を受けている。まったく異なる世界で育ったふたりは、ベトナムで出会わなければ、けっして友人にはならなかったでしょうね。また、リンカーンには、3人の“腹心の部下”がいます。カサンドラはハイチ・ギャング、ヴィトはイタリアン・ギャング、そしてバークはアイリッシュ・ギャングをそれぞれ仕切っています。実際に存在しそうな、こうした“腹心の部下”たちと、うまくつきあっていくわけです。彼らがそれぞれ何を欲しているかを理解して、うまく付き合っていくことになる。これは大事なことです。

――プレイヤーは、“リンカーン”として、うまくやっていかないといけないということですね(笑)。リンカーンは異なるタイプの人たちをまとめあげるのが上手ということで、“腹心の部下”のシステムを盛り込んだのですか?

ヘイデン ゲームプレイ上おもしろいと思ったということに尽きますね。もちろん、彼らとさまざまな会話を交わす楽しさもあります。

――お話をうかがっていると、リンカーンは1960年代のアメリカを象徴するような人物として造形しているようですね。

ヘイデン そうかもしれません。当時は市民権運動が活発でしたが、彼はまさにその渦中にありました。また、兵士としてベトナム戦争にも関わることになりました。ひとりの人間が1960年代を代表できるとは思いませんが、1960年代のアメリカが経験したものを代表する人物ということは言えるでしょうね。

――では、3人の“腹心の部下”についてはいかがですか? 彼らを造形するのはたいへんでした?

ヘイデン 納得できるようなキャラクターを作るのは難しいですね。まずは、リンカーンと関わりを持つ人物たちはどんなキャラクターにするのかを、よく検討しました。歴史上、1960年代の南部ではどんな犯罪グループが活動しているのも調べた結果、ハイチ人、イタリア人、アイルランド人のギャングを設定しました。そもそも『Mafia II』の主人公であるヴィトを再登場させたかったのですが、味方にするか、敵にするかで迷いました。彼はファンの皆さんにも人気がありますが、私たちも好きなキャラクターなので、最終的には味方にしました。もちろん、ゲームを進めるなかで、彼をどう扱うかによって、リンカーンに対するスタンスが変わってくるわけですが……。

――3人の造形で、もっとも苦労したキャラクターは?

ヘイデン 3人とも苦労しましたよ。ヴィトは前作よりも年を取って、『Mafia II』の最後で見た彼とは少し違っています。ある意味では、前作から彼を知っているので、(ほかのキャラクターよりは)作りやすかったかもしれないですね。バークは、アイルランド人ギャングのステレオタイプだけは避けたかった。ゲームの序盤ではピリピリしていて暴力的なので、ステレオタイプに見えるかもしれませんが、ゲームを進めて彼を理解していくうちに、奥深さに気づき、変化が見えるようになりますよ。これをうまく展開するのは難しかった。カサンドラはハイチ人ギャングで、ブードゥー教をモチーフとして取り入れていますが、マンガ的なものとしてではなくて、彼女の“信心”として表現したかった。このバランスを取るのは、すごくたいへんでした。映画やゲームによく登場するようなキャラクターではなくて、あくまでも本物に近いありかたを追求したかったんです。

▲リンカーンの“腹心の部下”。左からトーマス・バーク、カサンドラ、ヴィト・スカレッタ。いずれも個性的なキャラクターで、3人の物語も紡がれる。

――キャラクターにも“本物らしさ”を求めたということですね。少し情報を整理するためにうかがいたいのですが、“腹心の部下”からはどのようなサポートを受けられるのですか?

ヘイデン それぞれ異なるサポートを与えてくれますよ。カサンドラはガンディーラーを紹介してくれるので、武器の提供が期待できます。ガンスミス(銃の改造やメンテナンスなどを行う職人)も教えてくれるので、武器をアップグレードして射撃の正確性を上げたり、よりダメージを与えられるようにカスタマイズしてくれます。さらには、より多くの武器を持てるようになります。『マフィア III』のようなゲームでは、大いに役立つでしょうね。電話のオペレーターも紹介してくれるので、電話線を切ってもらうこともできます。電話線を切るというのは重要で、誰かに犯罪を目撃されても警察を呼べなくなりますし、戦っている相手が後方支援を頼もうとしても、電話が使えないわけです。

――携帯電話がない1968年ならではの設定ですね(笑)。

ヘイデン (笑)。ヴィトの支援ははおもに人ですね。いっしょに戦う人を見つけたり、ほかのギャングから集金する係を提供してくれたり……。ギャングドクターを紹介してくれるので、より多くの救急パックを持てるようにもなりますよ。バークはクルマですね。クルマの運搬係を提供してくれるので、クルマが必要なときはすぐに呼べます。また、警察の通信司令係も紹介してくれます。警察に見つかっても、見逃すように進言してくれたりするわけです。爆発物の専門家も教えてくれるので、グレネードやC-4といった弾薬や、そのアップグレードした武器を保持しておけるんです。ちなみに、3人の“腹心の部下”に隠れ家やテリトリーを与えると、特別な報酬をくれます。たとえば、ヴィトはサイレンサー付きピストルだったり……。

――3人の“腹心の部下”の中で、とくにおすすめは?

ヘイデン うーん……。テストプレイに際しては、いろいろと試してみたんですよ。いちばん最近のプレイでは、ヴィトに全部与えてどうなるかを見ることにしました。そうすると、ヴィトとリンカーンの関係が変わっていくのが見られました。ヴィトを優遇すると、メインミッションとは別のミッション、いわゆるオプショナル・クエストを提供してくれるんです。『Mafia II』と『マフィア III』のあいだで何があったのかを教えてくれたりします。ヴィトも忠実に動いてくれるので、とてもいいと思いましたが、3人全員に同じように報酬を与えて平和にやったほうがいいんじゃないかな(笑)。

▲ミッションのあとで、部下にどの報酬を与えるかで、3人の対応が変わってくる。その後のストーリーにも影響を及ぼすことになる。

――オプショナル・クエストとはどのようなものなのですか?

ヘイデン メインとなるストーリーは、すべてリンカーンがギャングを倒すか、自分のファミリーを構築することに関わってくるものですが、オプショナル・クエストではさらに3人のアンダーボスに関するミッションとなります。たとえば、カサンドラのためにあるものを彼女の隠れ家まで持っていって、彼女に対する評価を高める。それぞれ個人的につながりのあるミッションを与えてくれることで、彼らの背景にあるストーリーがわかるというわけです。

――ちなみに、いちばん好きなキャラクターは?

ヘイデン リンカーンですね。CIAエージェントのジョン・ドノヴァンも気に入っています。一方で、バークにはニッキーという娘がいまして、ニッキーとリンカーンの関係はとても興味深いです。バークとリンカーンはベトナムに行く前から友だちだったのですが、リンカーンの帰還後、ふたりが世界についてさまざまな話をするシーンがあります。ふたりが登場するシーンでは、とてもパワフルだと思うときがありますね。

▲CIAのエージェント、ジョン・ドノヴァン。ひと癖もふた癖もあるキャラクター。こんなキャラクターが世界観に奥行きを与える。

――ところで、『マフィア III』は1960年代のフィルム・ノワールの影響を受けているとうかがったことがあるのですが、どんな映画から影響を受けているのか、映画好きのひとりとして気になるところです。

ヘイデン 1960年代のフィルム・ノワールに限らず、いろいろな映画に影響されていると思います。『マフィア III』はシネマティック・リアリズムを追求しているので、さまざまな映画を見て参考にしました。『ゴッドファーザー』や『グッドフェローズ』は言わずもがなで、あとは、タランティーノ。彼の『パルプ・フィクション』、『レザボア・ドッグス』はとくに興味深い。『ジャンゴ 繋がれざる者』もおもしろいですね。フィクションだけではなく、ドキュメンタリー映画も、たくさん見て参考にしましたね。こうした映画を含む、多くのコンテンツや事実から影響を受けて、大きなブレンダーに入れて、撹拌して出てきたのが、私たちのゲーム『マフィア III』です!

――“撹拌された”という点がミソなのですね。

ヘイデン たとえば、リンカーンのボスだったサミー・ロビンソンは、1960年代の実在のボスだった、ニッキー・バーンズやフランク・ルーカスの影響を受けています。ですが、サミー・ロビンソンとふたりは違う。サミー・ロビンソンは彼自身のキャラクターを作り上げています。サル・マルカーノはカール・マルチェロから刺激を受けていますが、彼もマルチェロではなく、独自のキャラクターになっています。

――最後に、『マフィア III』を楽しみにしているファンに向けて後押しの言葉をお願いします。

ヘイデン 皆さんがこのゲームを楽しんでくれるとうれしいです。力強いストーリーテリングと、まさに、その時代のその場所にいるというリアリティーを感じていただけるはずです。さらには、本作は真のオープンワールドゲームを目指しているので、オープンワールドゲームのファンにも楽しんでもらえると思います。ぜひともご期待ください!

▲さまざまま攻撃方法を仕掛けられるのも本作の魅力だ。

●1960年代当時にその場所にいるという感覚を味わえるように注力した

Hangar 13 アートディレクター
デイヴ・スミス氏

――まずは、アートディレクターとして注力した点を教えてください。

デイヴ その時間に、その場所にいるという感覚を味わってもらえるように最大限努力することです。1968年のニューオーリンズがモチーフとなっていますので、その世界観にはまり込めるように、正確に表現することを心掛けました。

――具体的にはどのように表現したのですか?

デイヴ ゲームのために緻密なシミュレーションを重ねました。まずは、“ニューオーリンズとはどのような街か?”ということを私たちのほうで考察し、そこからナラティブとゲームシステムを組み込む形で構成していきました。ニューボルドーを構築するにあたっては、ニューオーリンズのさまざまな場所を組み合わせて、効果的に表現しています。その土地を象徴するフレンチクォーター(『マフィア III』ではフランス地区)のような場所があると、世界観に引き込みやすいので、効果的ですね。街をよく知らない人でも、その場所を認識する仲介役になるんです。フレンチクォーターの再現にあたっては、バ膨大な数の写真を使って、正確に表現しています。

――ゲームのために、あえて変えたところもあるのですか?

デイヴ そうですね。ストリートは、その大胆な例です。ニューオーリンズはとても密度の高い街で、狭い通りがひしめき合っています。ゲーム中では、プレイヤーを中心とした半径3メートルは確保しないとカメラの視点が確保できません。さらには、プレイヤーがクルマの運転を楽しめるようにしなければなりません。ゲームプレイの要請を配慮しつつ、古い街並みのテイストを失うことなくストリートを作らなければならなかったんです。

――なるほど。ストリートひとつとっても調整が必要だったのですね。

デイヴ 家の内部もそうですよ。内部は、20世紀初頭の古い建物の雰囲気を持っているのですが、中で動くには空間が必要です。そのため、視覚的なトリックを駆使して、実際よりも狭く見せる工夫をしているんです。

――あら、そんなことを! ところで『マフィア III』には10の地区がありますが、それぞれどのように差別化をしているのですか?

デイヴ ダウンタウン、バイユー、フランス地区の3つは、ニューオーリンズと言えばすぐに思い浮かぶ場所かと思います。また、港町としても名高いです。ニューオーリンズは、桟橋と小さな漁船から出発して、港町に発展するという歴史を形作ってきましたから。対照的に、大きく変化させたのがフラットな場所です。そもそも実際のニューオーリンズは平坦で地下室もないんです。そこで、ゲームではおもしろくなるように運河を盛り込みました。さらに、市の境界を明確にするために、周囲に岡も作りました。各地区特有の建築スタイルを取り入れるなど、さまざまな要素を入れることで、プレイしても飽きないように、バラエティー感をつけていますよ。

――いちばん苦労した地区なんてあります?

デイヴ フランス地区かなあ。先ほどもお話したとおり、とても密度が高くてコンパクトな場所です。迫力のあるゲームプレイ空間を作るのはとても難しかったです。たとえば、プレイヤーがいまはいる建物は大きいけれど、周囲のほかの建物はとても小さかったりします。その場合は、見えないところでビルをつなげるといったトリックを使っています。じつを言うと、これは大きな作業でした。フランス地区のモチーフとなったフレンチクォーターは、ニューオーリンズのもっとも有名な場所なので、細かいところまでチェックされます。つまり、ここがどんなところなのが知っている方が多いので、正確に表現しないと、プレイヤーは離れていってしまうんです。

――なるほど……。ところで、少し無茶振りですが、ご自身が構築したニューボルドーをひと言で表現すると?

デイヴ うーん。“セクシーで危険な場所”かな。

▲緻密に構築された街並みが世界観にリアリティーを与える。

――では、つぎはキャラクターについて聞かせてください。キャラクター作りでもっとも注力したポイントは?

デイヴ キャラクターを作成するにあたっては、まずはキャラクター・バイオ(ナラティブ担当が作る1ページの説明)とスクリプトがあり、そこからモデルを作り上げていきます。この部分は、私にとってもっとも重要です。キャラクターにはきちんと性格があり、キャラクターのビジュアルヒストリーが見えることが肝心です。リンカーンは人生を通してずっといろいろなものに影響を受けてきたわけですから。

――影響を受けてきたものは姿形に現れるということですね?

デイヴ 先ほどお話しししたバイオは、テキストで説明されたものです。ナラティブ担当が、イメージとして持っている俳優が書いてあることもありますね。「xxxxが喋っている感じ」といった具合に。具体的に造形され始めたら身体的な特徴を入れていき、それがキャラクターデザインに反映されます。

――『マフィア III』でも、モチーフにした人やイメージした人がいそうですね。

デイヴ グループとして扱いますね。ゲームの大きなテーマは、“新しいクライムファミリー”です。彼らが古いクライムファミリーのマフィアに取って代わるわけです。マフィアのデザインは、1950年代をイメージしています。まあ、時代錯誤的で、バランスを失った、的外れな感じですね。一方で、リンカーンと、彼が配下に収めるギャングたちのビジュアルデザインは、1969年から1970年代のもので、このあいだにはビジュアルの大きなギャップがあります。

――そんな工夫が……。

デイヴ このふたつのガイドラインから、リンカーンたちは若くてよりカジュアルで、カウンターカルチャーの動きや市民権運動の影響が見られます。リンカーンのジャケットはベトナム戦争時代のもので、ポップカルチャーの影響が見られます。ロバート・デ・ニーロの『タクシードライバー』に見られる、カウンターカルチャーの雰囲気を持っているんです。このように、いろいろな関連性を持たせて、リンカーンという人物を理解していくようにしました。

――リンカーンを造形するにあたって、刺激を受けた俳優はいるのですか?

デイヴ 刺激というか、リンカーンはふたりの俳優を組み合わせて造形しています。ひとりはアレックス・フェルナンデスで、本作ではリンカーンの声とモーションキャプチャーを担当しています。ただし、アレックスは背が高くないため、身体はゲームのコンバットシーンのモーションキャプチャーを担当してくれた、MMAファイターを組み合わせています。リンカーンは、ふだんはミリタリーブーツとジャケットを着用し丸刈りですが、これはファミリーを殺された彼が、みずから戦地に行くことを決断したことを明示しています。ゲームの冒頭では、ベトナムから帰還したばかりで、髪も長め。さらにヒゲも蓄えてソフトなイメージですが、“裏切り”とともに見た目も変化します。彼はある目的を持って戻ってきたわけですが、それが実現できずに、ふたたび“兵士”となって敵に対峙するようになるのです。

――少し好奇心から聞いてしまうのですが、映画化されたら、誰に演じてほしいですか?

デイヴ 誰でしょうね……。それはわからないなあ。彼とは3年もいっしょにいるので、彼自身が“リンカーン”というキャラクターです。まあ、インスピレーションを受けた俳優は、ザ・ロック(ドウェイン・ジョンソン)かな。映画『ファースター 怒りの銃弾』で、彼が目的を持って早足で歩いているシーンは印象的でした。リンカーンは、あんな感じで、ヘビーでちょっとやそっとでは動じないような感じにしたかったんです。

――3年もいると、リンカーンは親友みたいなものですものね。

デイヴ 彼のことはよく考えます。ある意味で彼は子どもなんです。若くして苦労し過ぎた。ベトナムで経験したことはほかの人には理解されないので、自分が属する場所がない。ゲームプレイを通して、(プレイヤーは)ベトナムを去ったときの彼とは違う人物になっていくことがわかります。また、戻ってきた場所も、彼が出ていったころとはすっかり変わってしまいました。プレイヤーがどのようにゲームを遊ぶかにかかっていますが、さらにゲームの最後には違う人物になっています。私にとって彼とのつながりは、彼がどんなに変わっても根本では人間性を維持していることです。彼はけっして失うことのない“善性”を持っているんです。

――主要キャラクターの中で、いちばん造形がたいへんだったのは?

デイヴ カサンドラです。彼女は開発中に大きく変わりました。スクリプトが変更されたこともあります。3人のアンダーボスのうち、ヴィトはあまり変えませんでしたが、バークはアイルランド人で、少しクレイジーで抑えが利かないキャラクターにしました。カサンドラは、ある意味でリンカーンを鏡に写したようなところがあります。育った環境が似ているんです。ふたりは社会との付き合いかたが異なる。彼女は本当の自分とは違う“キャラクター”を演じていて、どの顔を誰に見せるかを検討して作っていくのに、少し時間がかかりました。

――カサンドラは、どんなふうに変わっていったのですか?

デイヴ 最初はもう少し年齢が上で、40代でした。ブードゥー教の魔術を隠れ蓑にしているという設定で、デザイン的にはツーリスト色が出ていました。その後、スクリプトが変わっていき、作ろうとしている世界観と合致しなくなったんです。地に足のついた、ニューボルドーに不可欠なキャラクターにしたかった。カリカチュアとしてスタートしたのですが、ニュアンスの強い人物に変わっていきました。重要なのは、彼女はほかのふたりのアンダーボスと、同等の立場にあるということです。ロマンチックな関係を作るのは簡単でしたが、それは彼女の性格には合わないし、私たちが望むことでもありません。最終的にカサンドラは、とてもお気に入りのキャラクターになりました。

――ちなみに、いちばんお好きなキャラクターは?

デイヴ うーん、バークに惹かれますね。かなり破綻して人物で、自分自身でも満足してないところから始まるキャラクターですが、実際には誠実な人柄で、家族に起こった悲劇とどう対峙するかで悩んでいます。一方で、必要なときにはユーモアも兼ね備えているんです。『マフィア III』はシリアスタッチのゲームですが、バークのおかげでユーモアを注入することができていますね。彼が画面に出ていると、楽しくなります。

――バークを筆頭に、クセのあるキャラクターが揃っているということですね。アートディレクターという立場から見た、『マフィア III』の魅力はなんでしょうか?

デイヴ 世界観の詳細にこだわっていることです。ゲームに出ているすべてのものがその時代に合っていて、場所も的確に表現されています。この時代のフォントやグラフィックデザインが大好きなので、忠実な再現を心掛けました。一方で、自分たちの解釈も加えていますけれども。何かが正しく作られていないために、プレイヤーがゲームに没入できなくなることが最悪だと思っています。そのために、本作では標識1枚にもこだわりました。いずれにせよ、日本のゲームユーザーの皆さんにも、『マフィア III』を気に入ってもらえるとうれしいです。数年をかけて一生懸命作ってきたこのゲームですが、キャラクターや街並みを誇りに思っています。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。



▲クルマも本作にとって重要な要素。ドライブからカーチェイスまで、とにかく楽しい!

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