中国は、クリエイターも一般ユーザーもVRに前のめり

SIEJA織田博之氏に聞く 「いままでPSに触ったことがない、新しいお客様が購入してくれているのがうれしい」【ChinaJoy 2016】_03

 2016年7月28日~7月31日、中国・上海新国際博覧中心にて、アジア屈指の規模を誇るゲームイベントChinaJoy 2016が開催。会期に先駆けて行われた、ソニー・インタラクティブエンタテインメント上海主催による“2016 PlayStation Press Conference in China”直後に実施された、ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジア デピュティプレジデント(アジア統括)織田博之氏に対する合同インタビューの模様をお届けしよう。

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――まずは、この1年間における中国市場の感触をお教えください。

織田 いちばんの印象は、いままでプレイステーションに触ったことがないような、新しいお客様がお買い上げいただいているということですね。それは非常にうれしい1年でした。もちろん、苦労も伴うわけですが。

――目標は達成している感じですか?

織田 そうですね。これはパートナー様ともお話しをさせていただいたのですが、中国では、14年間家庭用ゲーム機が販売できない状況が続いていましたので、「お客様を作っていこう」、「納得していただこう」ということを目標に据えていました。そういった意味では、成果は徐々に上がっていると思います。

――今回中国市場で、プレイステーション VRをワールドワイドと同時の10月13日に発売することをアナウンスしましたが、中国市場におけるプレイステーション VRの手応えはいかがですか?

SIEJA織田博之氏に聞く 「いままでPSに触ったことがない、新しいお客様が購入してくれているのがうれしい」【ChinaJoy 2016】_02

織田 本日のプレゼンテーションでもお伝えしましたが、中国のローカルでVRコンテンツを制作しているデベロッパー様やそれを売ろうとするパブリッシャー様は非常に多いんですね。ほかの地域に比べても前のめりで、VR市場にどんどん入っていこうという雰囲気があるんです。それはデベロッパー様やパブリッシャー様だけではなくて、一般ユーザーの皆様もそうです。すぐれたVR体験を肌で望まれているんです。そのため、何とか“世界同時発売”ということで、一生懸命進めさせていただいています。

――プレイステーション VRはアジアでも展開すると思っていましたが、中国で最初に発表した理由は?

織田 プレイステーション4を中国市場でリリースしたのは去年で、(世界と比べて)タイミング的には少し遅かったのですが、これだけVRに興味を持っていただいている中で、中国のお客様に喜んでいただくには、“世界同時発売”、“アジアで最初の発表”というのが、今回外せなかったんですね。

――市場として、台湾や韓国よりも重視しているということですか?

織田 いえ。これはどこかを重視するということではなく、ご存じの通り、中国市場では、台湾や韓国に比べて、豊富なラインアップを出せないという現状がある中で、非常に熱心にお待ちいただいているお客様にメッセージをお届けしたいなという気持ちがありました。

――アジア全域同時発売ということですか?

織田 それは、明日発表させていただきます(※注)。

※“2016 PlayStation Press Conference in China”の翌日(7月28日)、香港にて2016 “PlayStation VR” Press Conference in Hong Kongが開催。プレイステーション VRを香港、台湾、韓国、シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピンなどアジア各国で10月13日に発売することを明らかにした。

――プレイステーション VRのローンチタイトルは?

織田 まだ最終的には決まっておりません。ChinaJoyの会場でも14タイトル程度お遊びいただけるのですが、センサーシップの兼ね合いがあったり、開発の進捗もあります。10月13日までまだ2ヵ月以上ありますので、なるべく多くのタイトルを、揃えていきたいと考えています。

――それは、グローバルとは違うラインアップになる?

織田 とくに、センサーシップの兼ね合いがありまして、まったく同じというわけにはいかないかと思います。逆に、中国ローカルのタイトルは、中国のお客様に先に楽しんでいただける、ということはあるかもしれません。

――今回発表したタイトルは、プレイステーション VRのローンチに含まれる?

織田 含まれるものもあるかと思います。

――VRに関するセンサーシップは、通常のゲームとは違うところがありますか?

織田 いまのところ大きな違いがあるとは聞いておりません。VR専用のセンサーシップというのはないそうで、完成したゲームを提出して、チェックを受けて、ローンチするというプロセスそのものも、審査する人たちも(ゲームソフトと)変わらないので、逆に言えば、ゲームソフトのセンサーシップ以上に複雑なことになることはないだろうと感じています。

――センサーシップは、以前のようなイレギュラーさはなくなった印象はありますか?

織田 プロセスそのものは大きくは変わっていないと思いますが、お互いが、お互いの顔と名前がわかってきたというのは大きいです。私たちは私たちで、コントロールしていないコンテンツは持ち込んでいませんし、ちゃんと、「皆さんの審査に合ったものしか売っていません」ということを1年半続けてきていますので、信頼関係が醸成できているのは非常に大きいのかなと感じています。ただ、プロセスという意味では大きくは変わっていないです。

――そういう意味では、『ファイナルファンタジーXV』は当局に信頼されている印象がありますよね。

織田 (深くうなづく)。

――それで、今回のカンファレンスでも20分という時間をとってプレゼンしたのですね?

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織田 中国ではゲーム産業を文化部が担っていますが、彼らのおもな目的はコンテンツを広める、中国のコンテンツ産業を育成することなんですね。とくに良質な海外のすばらしいコンテンツを中国で販売して、文化産業の発展育成に務めるというのが彼らのモチベーションだと認識しています。『ファイナルファンタジーXV』 は、グローバルでもこれだけ大きなタイトルですし、彼らの意図にも合致しているので、非常に歓迎されています。

――中国市場ではオリジナルのプレイステーション4が多くデザインされていますが、今回『ファイナルファンタジーXV』もあるのでしょうか?

織田 これはまだ、発表できません。

――ちなみに、中国でも『ファイナルファンタジーXV』 の体験版は配信されたのですか?

織田 配信されました。「中国でいつ出るんだ?」ということで、反響は大きかったですね。

――『ファイナルファンタジーXIV』 の正式サービスインはいかがですか?

織田 こちらはまだなのですが、中国のパブリッシャー様である盛大遊戯様とお話しながら、進めていきたいと思っています。いつから始まるかはお話しできないのですが、プロジェクトが立ち消えたわけではありません。

――もしかして、今年中国のゲームユーザーは、2本の『ファイナルファンタジー』を同時に楽しめるようになるかもしれない?

織田 どうでしょう。発売タイミングに関してはお答えできないです。

――今回のカンファレンスでは、パーフェクトワールドさんの2作のほかに、ソフトスターさんのタイトルも紹介されています。中国メーカーのサポートは、今後どのような感じになっていきますか?

織田 これもやはりカンファレンスでご紹介したのですが、海外のゲームをパブリッシュするときに、私たちだけではなくて、中国のパブリッシャー様の力をお借りしたいというのがあります。『ザ・キング・オブ・ファイターズXIV』はその一例ですね。その点は心強く思っています。海外からどんどん誘致をして、ローカルのパートナー様にパブリッシュしていただくという展開にも力を入れていきたいと思っています。

――今後、中国でもトリプルAタイトルが出てくる可能性はあると思いますか?

織田 今日もトレーラーでご覧いただきました、パーフェクトワールド様が作っている『ネバーウィンター』は、じつは他機種版が先行発売されていまして、今回プレイステーション4向けでリリースしていただけることになったのですが、海外スタジオのタイトルに引けをとらないクオリティーになっています。じつは中国ローカルのデベロッパー様の開発力はすごく高まってきていまして、プレイステーションでなるべく多くのタイトルをリリースしていただきたいと思っています。エクスクルーシブとは言わないまでも、プレイステーション向けに開発していただけるように話をしています。

――あと、インディーの“China Hero Project”に非常に感銘を受けたのですが、中国のインディークリエイターと関わっていく中で、どのように育てていくつもりですか? 日本やアメリカとは違った形になりますか?

織田 日本やアメリカはコンソールゲームにおいて20年以上の歴史があります。中国では、「コンソールゲームを作ったことがない」というデベロッパー様がけっこういらっしゃるんですね。ファンディングだけではなくて、コンソールゲームならではの技術支援など、私たちだけではなくて、エンジンを提供してくださるEpic様やUnity様など、いろいろなパートナー各社様といっしょに、これからプレイステーション向けソフトを開発していただこうというスキームです。非常に反響が大きく、私たちとしても重視していきたいプロジェクトのひとつです。

――日本のシリコンスタジオさんも参加していますね。

織田 「中国でこういう取り組みをします」というお話をさせていただいた際に、「ぜひ、参加させてほしい!」とおっしゃっていただけるパートナー様が多かったので、助かっています。

――中国ではeスポーツの市場規模も大きいですが、そのへんでプレイステーションもさらなる訴求のためにアプローチし得る部分はあると思われますか?

織田 中国市場はPCオンラインゲームで大きくなったマーケットなので、コンソールゲームで同じようなアプローチをしてもお客様には来ていただけないため、コンソールゲームならではの体験や、お届けのしかた、プロモーションなどを駆使して、こちらに来ていただければと考えています。

――ここ数年、中国スタジオの3Dの開発技術が高まっていて、いい作品が出ているのですが、PlayStation Networkの映像コンテンツなどの広がりについてはいかがです?

織田 これも非常に重要な宿題だと感じています。コンテンツに関してプレイステーションでビデオサービスを提供できるかということも継続して取り組んでいきたいです。ご存じのとおり中国にはいろいろな規制がありますので、私たちができるのか、できないのかも含め、継続的に勉強させていただいています。

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