アークシステムワークスから2015年11月26日に発売予定のプレイステーション Vita/プレイステーション4/プレイステーション3用ソフト『魔都紅色幽撃隊 デイブレイク スペシャル ギグス』。本作のプレイインプレッションを、ライターの浅葉たいががお届けする。


本作の追加要素を舐めてました

 學園ジュヴナイル伝奇シリーズの監督である今井秋芳さんが手掛けたことで話題となった『魔都紅色幽撃隊』が、数々の追加要素とともに帰ってきた! と、いうことで、プレイインプレッションを書かせていただくことになった浅葉たいがです。『魔都紅色幽撃隊』は発売日に買って、隅々まで楽しませてもらった私ですが、今作も早期購入特典である特製缶バッチを楽しみにしっかり予約を済ませて待機!しているところに、ファミ通.comさんから記事の依頼が舞い込んできました。

 前作をプレイしているから、記事のほうを書くのはすぐだろうと「いいっすよ」と気軽に引き受けたのですが、正直これが甘かった。追加要素はめちゃくちゃあるし、バトルのシステム変更で攻略は大幅に変わり、自由度がものすごいことになっています。気が付いたら、新シナリオを全部見たいということで、編集さんからおそらく金曜日のつもりで「週末締め切りでいいですよね」と言われていたのを、「日曜まで週末ですよね」と自分ルールを設け、土曜日の真夜中までプレイを続け、ようやく原稿に着手しました。まことに申し訳ありません。

追加要素がスゴすぎる『魔都紅色幽撃隊 デイブレイク スペシャル ギグス』、最速プレイインプレッション&プレイ動画を公開_01
▲ひと言でいえば”完全版”ですが、その追加要素は多岐に渡ります。すでに『魔都紅色幽撃隊』を遊んでいた僕も、新しい驚きに満ちた、有意義なプレイ体験ができました。

『魔都紅色幽撃隊』の物語を構成する3つのパート

 『魔都紅色幽撃隊』のことを知らないという方も多くいると思うので、まずは本作のゲーム概要について簡単に説明しておきましょう。本作は、東京を舞台にした、人と霊にまつわる物語です。転校生である主人公の周りに集まる、不思議な力を持った仲間たちとともに、霊の抱える喜怒哀楽や、霊になるまでのバックグラウンドを探る物語が、さまざまな形でプレイヤーを揺さぶります。

 ゲームの構成は、“アドベンチャーパート”と“バトルパート”というふたつのメインパートと、その間の箸休めとなる“インターバル”から成っています。どのパートも、ほかのゲームでは見られないシステムや工夫が練りこまれています。今回の記事では、これらのパートの説明と、本作からの追加要素に焦点を当てて、作品の魅力について語っていきます。

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▲パートによってプレイフィールがガラリと変わるのも本作の魅力。システムの数は多いが、ゲーム内の説明は非常に丁寧なので、少しプレイを進めればすぐに馴染めるはずだ。

アドベンチャーパートの臨場感を高めるGHOSTと五感入力システムに注目!

 物語が詰め込まれたアドベンチャーパートは、一見よくあるテキストアドベンチャーのような形式で進みますが、キャラクターの動きには“GHOST(Graphic Horizontal Object Streaming)”と呼ばれる、アニメーションを盛り込んだ表現が使われており、通常の何気ない会話シーンでも、風に揺れる髪の毛や、呼吸の様子が表現されています。とくに、女性キャラクターの色っぽさからは、制作陣のすさまじい作りこみを感じます(笑)。

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▲イベントシーンでもGHOST表現が使われている。一度体験したイベントシーンは、“アルバム”に保存されるので、再度鑑賞することが可能です。

 また、アドベンチャーパートには、テキストアドベンチャーゲームでよく見られる選択肢とは別に、“感情”と“五感”を入力する“五感入力システム”と呼ばれるユニークなシステムが盛り込まれています。五感入力システムが登場するシーンでは、まず“感情”として、愛、友、怒、悲、悩からひとつを選択、つぎに“五感”として、味、嗅、聴、視、触からひとつを選択します(“無視”も可能)。この選択の組み合わせによって、主人公の具体的な行動が決定され、目の前にした登場人物からさまざまな反応を引き出せるのです。たいして仲よくない人に対して、“愛”、“触”といった選択をしたり、唐突に“悲”、“嗅”といった不思議な組み合わせの選択をすることができたりと、自由度がかなり高いこのシステムは、選択肢を選ぶ形のアドベンチャーゲームとは決定的に異なるプレイフィールをもたらしてくれます。

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▲五感入力システムを使ったコミュニケーションは、相手の反応もさまざま。
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▲女性キャラクターを目の前にすると、“触”や“味”といったHENTAIコマンドを入力してしまうのは僕だけではないはず。そんな悲しい青少年の性に、余裕のある返事をくれる千鶴さん。女神です。

オリジナル要素満載のバトルパート 敵を追い込む頭脳戦を楽しもう!

 バトルパートは、味方の行動を設定して敵を攻撃する、一般的に“シミュレーションRPG”と呼ばれるジャンルの多くが採用しているバトル形式に近いものですが、本作ではなんと、“敵も味方も同時に行動する”という斬新なシステムが盛り込まれています。つまり、敵を攻撃するには、敵の移動してくる位置などを予測して、攻撃コマンドを成功させなければいけないのです。こう書くと、奇抜なバトルシステムに感じる方もいるかと思いますが、敵の種類による動きの特徴を見極める“観察”と、フィールドにギミックや罠を設置して、敵の行動を縛るといった“戦略”が入り混じったバトルは、レベルを上げて物理で殴るといった、よくあるシミュレーションRPGとは違った刺激を味わえます。

 また、このバトルには、戦闘に勝利するまでの過程で、ステージ上にある“灰皿”や“お茶”などを破壊してしまうと、弁償料金を払わされるというシステムがついており、これが“いかに綺麗に戦闘を終えるか”という方向でのやり込み要素につながっています。シナリオを進めるために必須となるバトルのほかにも、任意で挑めるバトルも多数用意されているので、歯ごたえのある戦略シミュレーションを楽しみたいという人には、任意バトルにも積極的に挑んでほしいですね。

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▲罠設置など、事前の準備をしっかりとしたうえで、序盤は相手の癖を観察するように慎重に動くのがバトルのコツ。

 ちなみに、今回からの新規要素として、バトル開始前にお勧めの罠をセットしてくれる機能が追加されました。このおすすめセットだけでも、バトルをクリアーすることは十分に可能なので、物語だけを楽しみたいという人は、この機能を活用しましょう。また、バトル中は、“AP”が残っている限り、同じフェイズ中に何度でも行動できるようになったというのも大きな変更点のひとつ。この変更によって、戦略の幅が大きく広がりました。このほかにも、罠の種類や、新規のバトル(後述するDAYBREAKのコーナー参照)が増えているので、前作を遊んだ人も新鮮な気持ちで臨めるパートになっています。

遊び心満載のインターバルでバトルの準備を整えよう!

 アドベンチャーパートとバトルパートの間にある“インターバル”は、主人公たちのアルバイト先である夕隙社編集部を拠点に、バトルの準備をするパートなのですが、“GHOST”で表現されたカルトな気配溢れる夕隙社編集部の雰囲気がとにかく素晴らしい! ショップ機能や除霊道具の開発、訓練やフリーバトルなども非常に手が込んでいて、ついつい足を踏み入れたくなります。

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▲インターバルは、夕隙社編集部で過ごすことになる。ここから、さまざまなコマンドを実行し、バトルの準備をします。この画面でも、GHOST表現が使われています。
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▲インターバルでは、仲間との会話や、買い物も行えます。ショップでは、くじ引きなどの凝ったイベントも発生します。

 また、このインターバルパートでは、學園ジュヴナイル伝奇シリーズでおなじみの小林美智さんの描きおろしイラストが入ったボードゲームを遊ぶことができるんですが、本編の息抜きにと軽い気持ちで遊び始めてしまうと、これが、抜け出せなくなるほど奥深く、面白いんです。個人的には、対戦モードなどを実装してスマートフォン用のアプリやブラウザゲームとして出してほしいくらいです!

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▲ボードゲームは、遊ばなくてもクリアーできるのですが、今作でもついつい遊んでしまいました。これを元に、スマートフォン用ゲームを作ってほしい!

新規要素が盛りだくさん DAYBREAKシナリオは必見!

 本作には、“DAYBREAK”と呼ばれる追加シナリオが5話収録されており、既存のメインストーリーにひけをとらないボリュームになっています。既存シナリオの間に挟まるエピソードということで、スーッと流してプレイしようと思っていたのもつかの間、最初のDAYBREAKシナリオからして、まったく新しい情報やドラマが満載です。よく”完全版”という単語を聞く昨今ですが、これほどボリュームやプレイフィールの変化している作品は、そうそうありません。僕は前作をがっつりと遊んだのですが、このDAYBREAKシナリオのほかにも、メインシナリオの大幅な加筆やバトルのシステム変更のおかげで、本原稿の締め切りはギリギリアウトの境界線上にいますが、プレイ自体はだれることなく、大変楽しく遊びきることができました。

 ちなみに、DAYBREAKシナリオでは、メインストーリーと同じく、バトルも発生します。なかには、編集部でのインターバルを挟まずに突入するものもあって、マップ自体はそれほど難解ではないものの、突如としてレベルの高い霊が出現して驚かされることも。罠なしで挑むバトルなどもあり、ほかのバトルとは違った緊張感がありました。

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▲DAYBREAKシナリオでは、仲間キャラクターの新衣装なども見られます。敵との戦闘が突然発生することもあるので、章初めの準備を怠ると大変なことになります。

このボリュームでこの価格 あまりにもお得すぎる

 正直、前作は、バトルの難度やシステムの複雑さもあって、万人にオススメといえる作品ではなかったのですが、今作は、興味があるならぜひとも遊んでほしい作品です。そして、ゲームのハードルを上げていた、バトルパートの複雑さが、追加要素を盛り込むことで、奥深さととっつきやすさを両立する絶妙なものへと変化しています。

 また前作には、ゲーム本編が短いという意見もあったようですが、DAYBREAKシナリオや会話の追加で、ボリュームがものすごいことになっています。これでお値段が税込4140円、めちゃくちゃお得です。前作をプレイしている人が遊んだら、ちょっとお得すぎると複雑な気持ちになるかもしれませんが、そこは今作から始める人に、「前作はこうだったんだよ」などと先輩風を吹かせてドヤ顔をしたり、何より今作のDAYBREAKシナリオを含めて、変化の驚きを楽しめる特権を手に入れたということで、よしとしましょう! ちゃんと、前作を遊んだ人への配慮として、前作のセーブデータがあれば、貴重なチャームをもらえるというご褒美も用意されています。

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▲前作を遊んだときは、「さゆりちゃん、最高」とか言っていた僕ですが、本作のDAYBREAKシナリオで、ていちゃんの評価が急上昇。触っても優しい反応を返してくれる彼女の優しさに、ノックアウト寸前です。

 僕は、本作を素晴らしき“雰囲気ゲー”であると思っています。雰囲気ゲーというと悪いイメージでとらえる方がいるかもしれませんが、昼、夕方、夜のコントラスト、カルトな編集部、コミカルとシリアスが同居する怪異の物語、世界観を表現するために練りこまれたインターフェイス、この作品にしかないオリジナルなバトルの駆け引きなど、作りこみを感じる要素が絡み合って生まれる“雰囲気”は、他のゲームにはない体験をもたらしてくれるはずです。

 あと、本作を遊んだ人には、ぜひともノベル『魔都紅色幽撃隊 FIREBALL SUMMER GIG』を読むことを強烈にオススメしておきます。こちらは、ゲームとはまた違った方向で、霊や伝承への掘り下げをしていて、ノベル版ならではのドラマも満載です。ゲームをプレイしたうえで読めば、「なるほど」となるところも多いので、今作のソフトがリーズナブル! ということで、いっしょに買ってみてはいかがでしょうか。

■ライター・浅葉たいが

インテリアデザイン会社所属、ときどきゲームライター。ゲームを楽しく遊ぶサークル・ゴジライン主宰。RPG、ギャルゲー、格闘ゲームのコレクター。年末はおもしろそうなソフトが多すぎて、睡眠時間を削る日々が続いている。


魔都紅色幽撃隊 デイブレイク スペシャル ギグス
メーカー アークシステムワークス
対応機種 PSVPlayStation Vita / PS4プレイステーション4 / PS3プレイステーション3
発売日 2015年11月26日発売予定
価格 各3800円[税抜](各4104円[税込])
ジャンル アドベンチャー・RPG / 15歳以上対象
備考 ダウンロード版は各3519円[税抜](各3800円[税込]) 監督・脚本:今井秋芳、キャラクターデザイン:倉花千夏、オープニングテーマ:植松伸夫、プロデューサー:金沢十三男、田口和憲、エグゼクティブ・プロデューサー:和田康宏、開発:トイボックス・ナウプロダクション