日本チャンプが見る新世代の『Halo』の姿
2015年9月11日、Xbox One専用ソフト『Halo 5: Guardians』マルチプレイヤーモード“Arena”のメディア体験会が東京・品川の日本マイクロソフト 品川オフィスで実施された。
『Halo 5: Guardians』は、コンシューマーFPSの金字塔『Halo』シリーズ最新作。国内では2015年10月29日に発売が予定されており、343 Industriesが開発を手掛けたナンバリングタイトルとしては2作目にあたる。
『Halo 5: Guardians』がどのような進化を遂げているかは2014年12月30日~2015年1月19日にかけて行われたベータテストのプレイインプレッションで紹介済みのため、本稿ではマルチプレイモード「Arena」のプレイインプレッションとして、ベータテストからの改善点にスポットを当てた内容をお届けしよう。
『Halo 5: Guardians』は伝統的なマルチプレイに原点回帰。それでいてFPSのトレンドにも追随
『Halo 5: Guardians』のマルチプレイモードは4対4の“Arena”と、最大24プレイヤーと第三勢力のAIが入り乱れる“WarZone”にわかれている。343 Industriesのフランク・オコナー氏はメディア体験会の冒頭で、「Arenaはe-Sportsを意識したマルチプレイモードだ」と強くアピールした。コンシューマーFPSの競技的な一面を浸透させた『Halo』シリーズが、『Halo 4』以降、e-Sportsのメインストリームから外れていたことに対する本作での意気込みを感じられる。
『Halo 4』からの大きな変更点として、装備をカスタマイズできるロードアウトシステム、即時のリスポーンシステムを廃止。そして、一定時間でパワーウェポンがマップに出現するドロップシステムの復活など、『Halo』シリーズの伝統的なマルチプレイに原点回帰したとも言える内容だ。
追加要素として、空中から拳を地面に叩きつける“グラウンドパウンド”、瞬時に前後左右へ移動できる“スラスターパック”、スプリントからの近接攻撃として“スパルタンチャージ”が追加されたほか、武器のズーム機能をスパルタンアーマーとリンクさせる“スマートリンク”がすべての武器に対応した。さらに、縁をよじ登る、スライディングするといったアクションも追加されている。
これらの追加要素は、昨年リリースされた『Titanfall』が生んだ「スピーディーでスタイリッシュなシューター」というFPSのトレンドに対する343 Industriesからの答えだったのかもしれない。
細部の仕様変更、調整が行われたPRE-RELEASE バージョン
メディア体験会でプレイできたのはマルチプレイモード“Arena”のPRE-RELEASE バージョン。つまり、製品として正式にリリースされる一歩前の段階というわけだ。正直なところ、熱心な『Halo』ファンである筆者でないとわからないような細かい改善点がほとんどだったが、その理由を読み解いていくとなかなかに興味深い。
グラウンドパウンドは大幅に仕様変更
“グラウンドパウンド”は高所から地面へ拳を叩きつける、強力だが外した際の隙も大きい、ハイリスクハイリターンのアビリティだ。ベータテストでは、“しゃがみ”と“グラウンドパウンド”のボタンが競合しており、ジャンプ後にしゃがみを発動できない、という不満点が挙がっていた。ジャンプ後のしゃがみは、“しゃがみジャンプ”と呼ばれる高所へ登るためのテクニックとして古くから『Halo』ファンに親しまれている。PRE-RELEASE バージョンでは、グラウンドパウンドのボタンは“しゃがみ長押し”から“殴り長押し”へと変更されている。この変更によって“しゃがみジャンプ”が復活することとなった。
また、落下地点に表示される発動マーカーに改善が見られた。ベータテストでは、発動マーカーが赤色に表示されれば、発動可能となっていたが、PRE-RELEASE バージョンでは発動マーカーにゲージが表示され、それがMAXになれば発動可能となっていた。これは敵のボディーカラーが赤色だった場合に、誤認する可能性があったためだと考えられる。
さらに、ベータテストでジャンプ以上の高さをかせがなければ発動できなかったグラウンドパウンドが、平面でも発動可能になっている。この変更によって、発動するタイミングが難しいグラウンドパウンドを頻繁にお目にかかれるようになった。
武器の性能は若干だが平均化。一部武器の操作系が改善
ベータテストでは、武器の性能がわかりやすかった印象がある。要は威力と射撃レンジがその武器固有のものであり、ほかの武器とのあいだに明確な違いがあった。ある意味、尖ったバランス調整だったとも言える。過去の『Halo』シリーズでは、「この武器さえあれば、あらゆるシチュエーションで対応できる」といった武器が存在していたが、ベータテストの『Halo 5: Guardians』にはそれがなかったのだ。近距離ではハンドガンやアサルトライフル、中・遠距離ではバトルライフルやDMRといった具合で距離ごとに最適な武器が設定されていた。それがPRE-RELEASE バージョンでは、近距離でも中・遠距離の武器で対応可能、といった構図に落ち着いた。アサルトライフルや、サブマシンガンを愛してやまないトリガーハッピーな『Halo』ファンにとって残念なお知らせであるが、過去の『Halo』シリーズと比べれば十二分に威力は高いので、閉所、かつ1対1の戦いではまだ猛威を奮えそうだ。
また、スナイパーライフルとDMRの“スマートリンク”への移行が劇的にスムーズになっており、まったくストレスなく扱えるようになったのは嬉しいところ。
投擲後のグレネードは当たり判定が完全に喪失
PRE-RELEASE バージョンでは投擲後の当たり判定が完全になくなっている。これは、グレネードが手を離れた瞬間に撃ち抜かれ暴発する、または敵の投げたグレネードを眼前で撃ち抜いてしまう、といった現象への対処だ。『Halo 5: Guardians』のベータテストではグレネードの当たり判定が異様に大きく、敵に撃たれている最中にグレネードを投げると、まず間違いなく暴発するほどだった。これでは敵に先手を撃たれてからの一発逆転ができない。マップに設置されているグレネードに関しては変わらず当たり判定を確認しているので、足元に気を付けながらプレイするのをお忘れなく。
全体的に移動速度が調整。より瞬時の判断力が求められるように
移動速度についても変化が見られた。通常時の移動速度、スラスター時の移動速度はアップ、スプリント時の移動速度はダウン、といった具合だ。これによって何が変わるかというと、単純にスプリントで敵の攻撃範囲から逃げ切れる可能性が少なくなる。そして、通常時の移動速度、スラスター時の移動速度がアップしているため、近くの遮蔽物に隠れる、またはトリッキーなチャレンジで相手を翻弄する、といった選択肢に比重が置かれるようになるだろう。ベータテストでは、スプリント時の移動速度が確かに早すぎる気がしていたので、この調整で鬼ごっこに終始する場面はだいぶ少なくなると予想している。
チャージまでに時間がかかる新しいオーバーシールド
今回のメディア体験会で目玉だった“オーバーシールド”はシールドゲージを倍に増やしてくれる『Halo』シリーズおなじみのパワーアップアイテムだ。もともとオーバーシールドはオーブ状のアイテムで、獲得すれば瞬時に効果が現れていたが、『Halo 5: Guardians』では、球状のアイテムを自身の体に叩きつけることで効果が発動する。そのため、アイテムを獲得してから、自身の体に叩きつけるモーションの時間だけ、効果が表れるまでにラグが生じるのだ。そのため、オーバーシールドを取ったからといって油断はできない。効果が発揮されるまでに、頭をスナイパーライフルで撃ち抜かれればもちろん即死する。そのため、モーションの時間を考慮したタイミングで獲得するのが望ましい。
『Halo 5: Guardians』の開発にあたって、343 Industriesは『Halo』のプロ・プレイヤーたちと膨大なテスト・プレイを重ねている。ゆえにベータテストの時点でも高い完成度を誇っていたが、PRE-RELEASE バージョンではさらに素晴らしいブラッシュアップを披露してくれた。そして、e-Sportsを意識したマルチプレイモード“Arena”は競技者として楽しめる硬派なシステムと、観戦者として楽しめるスタイリッシュなアクションが見事に融合しており、それを支える柱としてスペクテーターモードも実装されている。また、海外では公式大会である“Halo Championship Series”が『Halo: The Master Chief Collection』で開催されており、失いつつあったe-Sportsとしての地位を取り戻しつつある。『Halo 5: Guardians』のマルチプレイモード“Arena”は再び『Halo』をe-Sportsのメインストリームに乗せるかもしれない。
■筆者紹介 VEXATION ベクセイション
『Halo』シリーズの現日本チャンプ。攻めるゲーマーのアイウェア“GUNNAR”オフィシャルアンバサダー。