KYUSHU CEDEC 2015、10月17日(土)に開催!
“コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス”、通称“CEDEC(セデック)”は、日本最大規模のコンピュータエンターテインメント開発者向けカンファレンス。例年、8月または9月に神奈川県・パシフィコ横浜で開催されており、17回目の開催となる“CEDEC 2015”も盛況のうちに幕を閉じた。
そんなCEDECが、2015年10月17日(土)に、“KYUSHU CEDEC 2015”として福岡県の九州大学 大橋キャンパスにて開催されることが決定。九州でCEDECが行われるのは、今回が初となる。
ファミ通.comでは、CEDEC運営委員会の委員長を務めるバンダイナムコスタジオ植原一充氏と、KYUSHU CEDEC 実行委員長を務めるサイバーコネクトツー松山洋氏にインタビューを実施。九州での開催を決めた経緯や、KYUSHU CEDEC 2015の見どころなどについてうかがった。
サービス精神旺盛、九州ならではの魅力が詰まった“KYUSHU CEDEC”
――始めに、九州でCEDECが開催されることになった経緯を教えてください。
植原 CEDECは、近年はパシフィコ横浜で開催しているのですが、地方の参加者の方から「横浜は遠い」、「会社から出張の許可が下りない」というお声をたくさんいただいていました。CEDECの運営委員会のみの力では、関東以外で開催することは難しいのですが、“地方の方々に対して何ができるだろうか”とずっと考えていて、地方の会社の皆さんとも話し合いを進めていました。そしていろいろな方の協力を得て、昨年末に札幌、今年の2月に大阪で、SAPPORO CEDEC 2014とKANSAI CEDEC 2015を開催したんです。
――札幌と関西での実施は、手ごたえはありましたか?
植原 札幌では、スマイルブームさんを始めとする皆さんにご協力いただき、オペレーション面の課題などは残りましたが、無事に終えることができました。関西では、大阪芸術大学の皆さんにご協力いただいて、産学連携のもと、いい環境で実施できたと思います。トラブルもありましたが、少しずつ地方での開催のノウハウを得てきたと言えますね。そして今回、松山さんたちにご協力いただいて、KYUSHU CEDEC 2015を福岡で開催することになったんです。
――松山さんは、以前から「九州でCEDECを開催したい」と考えていたのですか?
松山 もちろんです。ご存じの通り、サイバーコネクトツーは福岡にある会社ですので、「CEDECに行きたいけど、なかなか行けない」という地方の会社さんの悩みはわかっているつもりです。参加費用だけではなく、交通費や宿泊費がかかりますし、しかも開発の手を止めてまでいくわけですから、それなりの費用になる。将来のための投資とはいえ、その決断をするのは、中小の会社さんには難しいですよね。ですので、「なんとか地方で、九州でやれないかな」と私も思っていましたし、CEDECの運営委員会も、地方で開催するプランをずっと練っていたわけです。で、なんで私がKYUSHU CEDECの実行委員長をやっているかというと……知ってました? じつは私、CEDECの運営委員なんですよ。
――CEDECの公式サイトを見ると、アドバイザリーボードの欄にお名前がありますね!
松山 そう、アドバイザーなんですよ。でも、何せ福岡で仕事をしているものですから、会議に参加できないことも多くて。前の運営委員長の斎藤さん(バンダイナムコスタジオ 斎藤直宏氏)に、札幌でCEDECが開催されるよりも前に、「これまでの会議に出られていないぶん、九州でCEDECをやることになったら、松山さんに任せるよ!」と言われていたので(笑)、今回先頭を切ることになったわけです。
――ずっと九州開催の構想は温めていて、ようやく実現の目途が立ったと。
松山 私が実行委員長となることが決定したときから、心に決めていたことがありました。それは何かと言うと……九州にはもともとGFF(Game Factory’s Friendship。福岡のゲーム関連会社11社が加盟し、さまざまな共同作業を行っている組織)があって、産・学・官が連携している福岡ゲーム産業振興機構(GFF、九州大学、福岡市の連携機構)があります。福岡でCEDECをやるのなら、GFFはもちろん、九州大学と福岡市ともしっかり協力して進めていきたい。そう思ったんです。その準備に時間がかかったこともあり、札幌や関西よりも遅れての開催となりましたが、努力の甲斐あって、KYUSHU CEDECはすごく理想的な形になっています。
植原 まだ開催前ではありますが、私もそう思います。いいイベントになるという手ごたえはありますね。
――KYUSHU CEDECでなんといっても目を引くのは、マンガ『キングダム』の作者、原泰久先生の講演です。
松山 声を大にして言いますけど、この講演、私がいなければ実現できませんでしたからね! もちろん、集英社「ヤングジャンプ」編集部のご協力があってのことですが。
植原 松山さんは、最初から「ぜったいにやりたい」とおっしゃっていましたね。
松山 CEDECを、そのまま九州に持ってくるという形では満足できないと思いました。九州でなければ体験できないことを提供したいと。そこで、九州在住のクリエイターによる講演を柱にしよう! と、福岡県にお住まいの原先生に「ヤングジャンプ」編集部を通してお願いしたんです。
――基調講演は、レベルファイブの日野社長が担当されますね。
松山 これも、私が日野さんに頼みこみました(笑)。
植原 日野さんには、CEDEC 2015でも基調講演をお願いしましたが(CEDEC2015 日野晃博氏の基調講演のリポートはこちら)、KYUSHU CEDECではまた違うお話をしていただけるとのことです。非常におもしろいセッションになると期待しています。
松山 KYUSHU CEDECは、もちろん九州のクリエイターのために実施するものですが、関東や関西の方にとっても、「KYUSHU CEDECを見に、福岡に行きたい」と思えるような、魅力のあるものにしたかったんです。それから、収支をちゃんと合わせることも重視しました。どこかの企業が費用を負担して実施するのでは、1回限りの開催になってしまうと思いましたので。
――確かに、それでは未来に続いていきません。
松山 その点も含めて、産・学・官が連携して進めているので、いい形になっていますよ。本当に贅沢なイベントです。参加費用はたったの2000円ですからね!
※学生は500円。団体(10名以上)はひとりあたり1500円
――2000円で、さまざまなセッションを受講できるのは、かなりオトクだと思います。
松山 しかも今回講演するのは、ゲーム企業の人だけではないんです。福岡には、映像やWebのビジネスを手掛けているクリエイターも多くいらっしゃるので、その方々の講演も企画しています。講演の幅の広さも、KYUSHU CEDECの魅力のひとつですね。
――全国から参加者が集いそうですね。
松山 じつは、お隣の国、中国からの参加者も期待できるんですよ。博多から東京までは飛行機で1時間半ですが、博多から上海までも1時間半なんです。サイバーコネクトツーは中国の会社さんともお仕事しているので、スタッフが中国に行くたびに、KYUSHU CEDECの告知をしています。「まずは見に来るだけでもいいから!」って。いま、講演の通訳を手配しようと調整しているところです。さらに、開催日の夜にはデベロッパーズナイト(参加者の交流会)のようなパーティーも企画しています。CEDECのデベロッパーズナイトは有料ですが、こちらは無料にするつもりです!
植原 先ほど松山さんがおっしゃった通り、CEDECは赤字になってはいけないんですけど、「すべては参加者のために」というくらいのサービス精神で運営しています。
松山 いろいろな会社の方との出会いの機会になるので、ぜひ参加してもらいたいですね。
CEDECに参加して、「悔しい」と思ってほしい!
――今回のKYUSHU CEDECで、「初めてCEDECに参加する」という方も少なくないと思いますが、セッションを受講するうえで必要な準備や心構えがあれば教えてください。
松山 まずはセッションを聴くこと、参加することから始まるものではありますが、クリエイターの皆さんには、“登壇すること”を目標にしてほしいんですね。情報を発信する側にならないと、世の中は変わりません。人から与えられるだけじゃダメなんです。クリエイターって、そういう生き物じゃないんですよ。CEDECに参加したら、100人中100人が同じ感情が芽生えるはずですよ。めっちゃ勉強になる、でも同時に「悔しい」って。自分たちだって、みんなに学んでもらえる技術を持っている、と。ですから、“与える側になっている自分”をイメージしながら参加してもらいたいです。そういうクリエイターがいいものを作って、世の中を変えていきますので。
植原 言いたいと思っていたことを、松山さんにほとんど言われてしまったのですが(笑)。CEDECには、ゲーム業界以外の講演も取り入れています。大学でコンピュータエンターテインメントを研究されている方の話だったりとか、アニメ業界の方の話だったり。ちょっと違う業界だけれど、エンターテインメントに関わっている方々ががんばっている。その姿を見て、「自分たちもエンターテインメントに関わっているのに、悔しい」と思っていただきたいですね。いま、「ゲーム業界は停滞している」と言われたりしていますが、そのイメージを打ち破るためにも、たくさんの情報をインプットして、「自分たちはもっと新しいことができる!」と考えて、ゲーム業界を活性化してもらえたらいいなと思います。
松山 そう、エネルギーにしてもらいたいんです。経営者の方は、CEDECに参加したがっているクリエイターがいたら、自分の会社に対する投資だと思って、背中を押してあげてほしいです。
――KYUSHU CEDEC当日は、もちろんサイバーコネクトツーのスタッフの方も参加されますよね。
松山 ものすごい人数になりそうなんです(笑)。もともと、CEDECでも、みんなで枠を取り合っていますから。今回は地元で開催、しかも土曜日1日だけなので参加しやすいということで、100人くらい手を挙げています。開発スタッフだけではなくて、宣伝チームも全員行きたいって言いだして。うれしい悲鳴ですね(笑)。
植原 バンダイナムコスタジオからも、行きたいと考えているスタッフは多いと思います。ついでに福岡観光をしよう、なんて画策している人もいると思いますよ(笑)。
松山 東京から来ていただけるなら、つぎの日の日曜日に、うちの会社見学ツアーを組もうかな。よし、やります。九州外からお越しの方は、せっかくの機会なのでぜひご参加ください!
※サイバーコネクトツー会社見学ツアーへのお申込みは→こちら
――インタビュー中に企画が決まってしまうなんて! さすがのフットワークの軽さですね。
松山 九州が活性化している姿を見て、九州に支社を作ってくれたらなと。
――勢いのあるKYUSHU CEDECの開催を楽しみにしています。では、最後に読者に対し、ひと言お願いします。
松山 冒頭でもお話ししましたが、我々運営側は、KYUSHU CEDECに非常に手応えを感じています。ご参加いただいた方に損はさせないイベントになる自信があります。この福岡での開催が、沖縄だったり仙台だったり、名古屋だったりと、いろいろな地方でのCEDEC開催につながればいいですね。いまは、テクノロジーが発展したおかげで、クリエイティブは場所を選びません。地方からゲーム業界を元気にして、お互いに勇気を与えあって、世界に通用するすばらしいタイトルを作っていきましょう。いっしょに勉強して、いっしょに強くなろう!
植原 いまは、業界の中にいる人間がどんどん元気を出していかなければいけないときだと思います。「こんなことをやってみた」と共有しあって、新しいこと、おもしろいことに取り掛かれるようになりたいな、と。これまでなかなかCEDECに参加できなかった方に、ぜひ福岡に集まっていただいて、「僕らもがんばらなきゃ」と思っていただきたいです。よろしくお願いします。