インタビューにて「2017年まではお待たせしません」と田畑ディレクターが明言!
ドイツ・ケルンにて、現地時間2015年8月5日~9日に開催されるヨーロッパ最大のゲームイベント“gamescom 2015”。『ファイナルファンタジーXV』のディレクターを務める田畑端氏に話を聞いた。公開されたティザームービーについてや、直前のステージイベントでの田畑氏による発売時期をにおわす発言などについて直撃!
なお、インタビューに先駆けて生配信された、田畑氏の出演する番組“アクティブ・タイム・レポート”(以下、ATR)についてのまとめは下記記事でチェックを。
[関連記事]【プレゼントあり】モルボルもチラ見せ! 『FFXV』アクティブタイムレポートgamescomスペシャルまとめ【gamescom 2015】
――ATRもステージイベントも盛況でしたね。今回のgamescomやユーザーの反応に関して、田畑さんの印象はいかがですか?
田畑端氏(以下、田畑) 本当に盛り上がってくれてよかったなと。僕はgamescomは初めてで、まだドイツのユーザーとはあまり話ができていないのですが、インタビューなどでメディアの方と話していると、そもそものシステムがどうなっているかとか、前提の話や物事の筋道をまず知りたいんだなという印象です。レギスのクルマが、ドイツのどのクルマを参考にしているか教えてほしいといった質問もけっこうあって、ドイツという国に誇りを持っているんだな、と感じました。あとはドイツではゲームのモラルに関する議論が盛んで、シドニーが必要以上にセクシャルじゃないか、と言われることも(笑)。
――お国柄ですかね(笑)。ステージイベントでは、『FFXV』を「2017年まではお待たせしません」とおっしゃっていましたが……。
田畑 本当は、発売に向けての情報出しなど、さまざまなことが決まっていくなかで、今回は発売タイミングを明言できなかったものの、“gamescomで大きな情報が出る”と期待されている方が多く、もっとも公開が望まれている発売日について何かお伝えできたらと思って発言させてもらった次第です。
――gamescomで生配信を行われたATRでも、本作の発売日や“触れるテックデモ”の配信時期などは見えていると明言されていましたね。
田畑 はい。2017年までお待たせしないところで発売日がだいたい決まっていて、開発状況を見るにそうずれることもないと考えています。
――少し“触れるテックデモ”についておうかがいできますか? そもそも体験版とは異なるものなんですよね。
田畑 遊ぶというよりは、『FFXV』の世界に触れられるものです。ゲーム性はあまり入れず、純粋に世界の魅力を伝えるものになります。雨を降らせたり、モンスターを自ら動かしてみたり、ゲームの調整やデバッグなどの際に行うような操作を通じて世界を垣間見られるツールのようなものですね。
――体験版を出されて、それをバージョンアップし、さらにテックデモもとなると、労力的には大丈夫なのでしょうか。本編の開発に影響は?
田畑 そこは本当に、ぎりぎり影響がないように歯をくいしばっているところです。HDのゲームなので、さすがにぽんぽんといろいろなものは作れないですし、今日“やろう”となったものは、数か月後に実装されるというスケジュール感のなかでやっているので、きちんと計画は立てて管理していますよ。
――現状、『FFXV』の開発進行度は、どれくらいなのでしょうか。
田畑 65%から70%くらいですね。『FFXV』は、海外版もなるべく同じ時期に出したいので、仕様が固まってから発売までのあいだに、通常より多くの工程を挟んでいます。デバックなどと並行してローカライズもやっていかなければならないので、そのための期間を長めに取っていたりもして。その意味での65~70%なので、ゲーム部分の開発だけであるならもう少し進んでいますよ。
――なるほど。これから発売に向けていろいろな展開をされていくと思いますが、ATRで発表された公式コミュニティーの開設というのは、どういった意図があるものですか?
田畑 それはいっしょにATRに出ている大藤(宣伝担当の大藤昭夫氏)が、とくにこだわっていて。ユーザーと開発との関係性をきちんと構築したうえで、スタンドアローンのビッグタイトルを作っていくというのも、これからの時代に必要かなと。日本には『FF』のファンが一同に集まるようなサイトなどがないので、そういった場所を作っていけたらという思いもあります。これをやろうと思ったきっかけは、『FFヴェルサスXIII』に思い入れのあるファンの方々の声でした。
――『FFXV』がタイトルを変更する前の、『FFヴェルサスXIII』から発売を待ち望んでいるファンですね。どういった経緯があったのですか?
田畑 『FFXV』の情報発信にあたって、『FFヴェルサスXIII』に強い思い入れのあるファンの方々が混乱していたのを感じていて。それがあったので、まずは最大限可能なスピードで体験版を用意して触っていただき、そういった方々を含むすべてのファンの皆さんに安心して発売を待ってもらえるようにしてから、『FFXV』としてのスタートを切ろうと考えていました。そうした取り組みを行っていく中で、コミュニティーを構築して、開発とファンの距離を縮めたいと考えるようになったんです。
――そして今回、gamescomにて『FFXV』としての新たな情報を発信したと。
田畑 そうです。発表した映像は、ストーリーに関するティザートレーラーになります。
――ティザートレーラーは、“15年前のノクトとレギスのシーン”、“15年前のルーナのシーン”、“犬が夜道をゆくシーン”の3つに大きく分けられます。犬のシーンは、ほかと同じく本編より15年前のことなのでしょうか。それとも、本編と同じ時間軸のことなのでしょうか。
田畑 あれは現在のシーンですね。
――犬は、Dog Cam(以前のATRで公開された、犬の視点で街を巡るというデモ。こちらの動画の46:30~や、記事を参照のこと)のときの犬ですよね。
田畑 そうです(笑)。当時はまだデザインがフィニッシュしていなかったので、今回は少しブラッシュアップされています。
――操作できるんですか?
田畑 いえ、操作はしません。彼には物語上の役割があって、ある人物からある人物に意志を伝えるメッセンジャーなんです。
――地面のにおいをかいで、相手のところへ向かっているのですね。ほかふたつのシーンについてもおうかがいします。15年前を描くということに、どんな意味を持たせているのでしょうか。
田畑 今回のティザームービーでは、ノクトらには幼少期が存在して、それが現在に影響しているということと、“親子の絆”がストーリーの重要なテーマになるということが伝わればと考えています。体験版までは、明るく楽しい、言うなればTOKIOの『ザ!鉄腕!DASH!!』の“DASH村”みたいなニュアンスを出していましたが(笑)、やはり『FF』ですから、それだけではなくテクノロジーもストーリーも“最高”じゃないと。そういう意味で重厚なストーリーやバックボーンが伝わるといいなと考えて制作しました。
――幼少期を描くことで、キャラクターへの思い入れが深まるというか。
田畑 そうです。それぞれに幼少期のエピソードがあったうえで、その15年後から物語がスタートすることで、キャラクター性に深みが出ます。また、ユーザーがゲームをスタートさせる時点で感情移入ができるように、という意図があります。
――ティザームービーでは、レギス国王の表情の変化がすごく人間じみていて驚きました。
田畑 そこにいたる一線を超えるには苦心しましたが、あれをインゲームで、リアルタイムでできるというのは自慢です(笑)。ついにドラマの中で、キャラクターを“人間”として演出できるのではないかという領域に来ているなと。スタッフも、これであれば表情だけで見る人の心を揺さぶれるという手応えを感じています。今回はティザーとして、あれもこれもと詰め込むのではなく、ポイントを絞ってお見せしています。たくさんある魅力の中からこれをお見せしようと決め、親父の男泣きで表現しました。
――レギスは以前からデザインの変更もありました。
田畑 序盤のストーリーを、『FFヴェルサスXIII』でアナウンスされていた内容から大幅に変更しているというのは、これまでのATRでお伝えしていますよね。その変更にはある明確な理由があって、レギスのデザインが変わっているのもその変更に密接に関係しているんです。これについては、そう遠くないタイミングできちんとお伝えしようと思っています。
――ノクトとルーナは、幼いころから互いを知っているのでしょうか。婚約者という関係になったのは、子どものときではないですよね。
田畑 ふたりは小さいころに知り合っていて、それは15年前のエピソードとして描かれますが、そこでは婚約などの話はありません。婚約の話が出たのは、ニフルハイムとルシスの戦争が終結する際です。和平の象徴としての政略結婚ではありますが、幸せの象徴としての意味がありました。じつはルーナは、この世界においてはノクトよりも重要な存在です。帝国の属州であるテネブラエのフルーレ家に生まれる王女は、代々特殊な役割を担っていて、ルーナもその役割を引き継いだ存在だからです。それだけに、結婚に意味があるわけですね。
――ではもうひとつ。神話や神についての設定は、『FFヴェルサスXIII』から『FFXV』への移行により変更があるのでしょうか。
田畑 『FFXV』にする段階で、そこまでに固まっていた設定については、神話とは強く絡めず『FFXV』の設定として取り込んでいます。ファブラの神話として出てくるものではありませんが、ベースとして活きています。
――表現のしかたが異なると。ところで話は変わりますが、海外のメディア発で“『FFVII フルリメイク作品(仮題)』にLuminous Studio(ルミナス スタジオ。以下、ルミナス)を使う予定はない”と田畑さんが発言した、という話が出ているとか。
田畑 ああ、あれは「ルミナスはフルリメイク版『FFVII』の制作でも使われているのか」と聞かれて、「ルミナスは『FFXV』の制作とともに作っている最中だから、ほかのタイトルではまだ使えないし、わかりません」と答えたところ、そういうニュアンスで伝わったみたいで。
――そもそもルミナスは、『FFXV』用にカスタムしながらゲームとともに作られているもので、いまは汎用エンジンではないですよね。
田畑 そうです。1本のゲームを作れるエンジンになるのは、『FFXV』が完成してからで、汎用エンジンになるとしたらその先です。いま制作に着手している作品に対しては、『FFVII』に限らずどのタイトルにも提供はできないんです。
――そのあたりに誤解があったのかもしれませんね。
田畑 そうだ、ひとつ技術面についてお話できることがありました。このgamescomで……というか、まさにこのインタビューの少し前に、現在『Just Cause 3』を制作しているアバランチスタジオとのテクニカルコラボレーションを公表できることになったんです。
――それは、どのような部分で?
田畑 『Just Cause』は、空中制御の技術がとてもユニークで高度なんですよ。空間の縦方向にシームレスの技術を用いるという例は、じつはあまりないんです。そのあたりはうちもノウハウがないので、GDC(ゲーム・デベロッパーズ・ カンファレンス。2015年3月2日~6日にアメリカ・サンフランシスコで開催)のときにアバランチスタジオの方に話を聞いたら、向こうも『FFXV』の技術に興味があるということで今回の話が動き出し、今日ちょうどそれを公表できることになったというわけです。まだまだ話は始まったばかりなのですが、『FFXV』チームもアバランチスタジオのテックチームも、この話の進展にすごく期待しています。
――『Just Cause』の空中制御の技術を用いて、『FFXV』で何を?
田畑 自分個人の目的はフルスケールで飛ぶ飛空艇実装のためです。製品版に間に合うかはちょっとわからないのですが、後からの配信になるにしてもやるべきだと考えています。あの世界を飛空艇で飛び回る、ということに挑戦してみたい。ぜひ自分でも体験してみたいし、ユーザーの皆さんにも体験してほしいと思っています。
上国料氏と松澤氏からもコメントをいただきました!
会場には、本作で直良有祐氏、長谷川朋広氏とともにアートディレクターを務める上国料勇氏と、今回公開されたレギスとノクトのイメージビジュアルを手掛けた松澤雄生氏も来場。おふたりからも、『FFXV』の見どころについてコメントをいただきました!
「まだお見せしていないロケーションやキャラクター、モンスターがたくさんいて、それぞれに力を入れて特徴的なものにしています。これまではデザイン面で特徴を出すという部分が強かったところに、技術力の向上がいい形で結びついてリアルティーが増し、『FF』らしい個性と特徴のある世界を表現できているところを見てほしいですね」(上国料氏)
「『FFXV』は、ストーリーからキャラクター、モデル、モーションにいたるまで、“人間味”に溢れた作品になっていますので、そこに注目していただきたいです。それと、今回のイラストのテーマにもなっている“親子の絆”も見どころです。彼らの15年前が描かれ、それによって本編のドラマ性が深まる展開に期待していてください」(松澤氏)