E3を経て、見えてきたハードメーカーの戦略とゲーム業界の今後【御徒町デブ―チョの“Road to デブートン”・第5回】_07

 こんにちはー! “Road to デブートン”第5回目をお送りします! E3のためLAに行ってきました。今回はE3のざっくりまとめてをお届けします。ニュース性で言うと、もうすでに1ヵ月くらい経ってしまっていますから、あんまり意味はないですが、LAに居残り、その後サンフランシスコなども訪れてみて、その後の業界の反応なども聞いてきたので、私なりのE3 2015をまとめてみようかと思っています。それにしてもサボってしまってこんなに時間が経ってしまい、申し訳ないです……。もうすぐChina Joyとかgamescomとか始まっちゃいますね……汗。

<E3カンファレンスのざっくりまとめ

【マイクロソフト】

■ソフトラインアップ

 過去にギネス記録を更新しまくった『Halo』シリーズの最新作『Halo 5: Guardians』から始まり、『Gears of War 4』、『Fable Legends』、『Forza Motorsport 6』、さらに稲船氏プロデュースの『ReCore』、Rareスタジオの『Sea of Thieves』などXbox Oneでしか遊べないエクスクルーシブタイトルの発表がありました。

 サードパーティの怒涛のラインアップも紹介されていたけど、スクウェア・エニックスの『Rise of the Tomb Raider』はXbox Oneエクスクルーシブということもあり、期待が高まるところ。

 それにしても、マイクロソフトの日本でのやる気のなさにはガッカリしますね。余談ですがマイクロソフトは東京ゲームショウには参加しないとの報道がありました。E3でMSが発表したタイトル群を見ても、日本市場を活性化するためのラインアップのネタとしてはちょっと弱いかもしれない。日本で遊ばれるソフトと北米市場で遊ばれるもののますます乖離は大きくなることでしょう……。

■Xbox 360下位互換

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 マイクロソフトの目玉のひとつはXbox 360ソフトの下位コンパチだったと言っても過言ではないかも。Xbox OneでXbox 360タイトル約100タイトルが年末までにプレイできるようになる、とのことで、Xbox 360で栄華を極めたマイクロソフトの対PS4戦略と言えましょう。

 かつてソニーがPS2で行ったPS1との下位互換はユーザーを喜ばせましたが、業界的には“新ハード向けソフトに移行する阻害要因”としても語られていました。実際に最近では、下位互換は積極的に行われていなかったのですが、アーカイブやレトロゲームのネットでの復活などを考えるとあながち否定するべきものではないですよね。ユーザーがソフトの多様性を求める以上正しい戦略と言えます。ソニーのお家芸を採用するところはちょっとおもしろいなと思ったりして。

■VR & AR とコントローラ

 E3前に、Oculus Rift側の発表でマイクロソフトXbox Oneの無線コントローラが同梱されるとの報道があり、さらにカンファレンスではValve VRとのリンクも発表されていましたね。ソニー自前のProject Morpheusとは異なるサードパーティープロバイダとの協業です。PCでもXbox Oneでも使えるってことですね。カンファレンスでは、とくに大きなデモもありませんでしたが、VRはおもしろさをこういう場で伝えるのが難しいですよね。ニンテンドー3DSが発表されたときを思い出しました(笑)。

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 さらに今回のイベントでは、MR(複合現実)デバイス、Microsoft HoloLensのデモも行われ、最近IPごと買収した『Minecraft』を使って上手に紹介していましたよ。自分が設定した場所にMRで表示した立体画像を設置し、あちこち覗いたりして会場は大きく湧きました。が、立体の表示物にインタラクティブ性があるのかイマイチわからなかったのが残念。「もしかしてただ見るだけ?」「操作できない?」。あまのじゃくな私はちょっと意地悪な発想をしてしまいました(笑)。

 ちなみに、Xbox One Elite Wireless Controllerの発表もありました。さすがにハードコアユーザーを抱えるXbox Oneはゲーマー向けプロ仕様ワイヤレスコントローラをしっかり発表しましたよ。Windows 10にも対応。年末商戦に149.99ドルで発売の予定です。

【ソニー・コンピュータエンタテインメント】

■ソフトラインアップ

 待ちに待った『The Last Guardian(人喰いの大鷲トリコ)』からカンファレンスが始まり、『Killzone』開発のGuerrillaスタジオの新作『Horizon Zero Dawn』、『Uncharted 4(アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝)』などPS4でしか遊べない大型タイトルが会場を沸かせていましたが、カンファレンス後にいろいろな人と話しても、やはり『Uncharted 4』の出来に度肝を抜かれたというリアクションが多かったです。カンファレンスの最後にデモを持ってくるところもニクイ演出でしたし、デモ中にバグってリセットして再起動したのは、「これだけのクオリティーが実機で動いているんだぞ」と我々に知らしめるための演出だったのでは? との声も(笑)。圧巻でした。

 サードパーティーのタイトルで特筆すべきは、Activision Blizzardから発売される 『Call of Duty: Black Ops III』のPS4エクスクルーシブのニュースですね。PS4にしか供給しないという意味ではないのですが、PS4ユーザーがほかのプラットフォームに先駆けてβ版を遊べる、PS4オンリーのDLCがある、ということです。言わずと知れたメガタイトル『Call of Duty』シリーズがPS4に有利に働くとなれば、“年末商戦はソニーに勝負あり”と言われても納得せざるを得ないのです。

 また、スクウェア・エニックスの『FINAL FANTASY VII』のPS4向けリメイクバージョンの発表、kickStarterを絡めた『Shenmue 3(シェンムー3)』など、かつて業界人が心を動かされたゲームの新たな展開に熱気が上がりました。

 私のような古い人間は、日本のゲームレジェンドのひとり、鈴木裕氏がソニーのカンファレンスに登場するという事実にいちばんビックリしました。『Shenmue』はセガハードのドリームキャスト(『Shenmue 2』は海外では初代Xboxでも発売)の代表作だったからです。当時のドリームキャストはソニーPS2の競合であり、当然セガのファーストパーティーのタイトルだった『Shenmue』なわけで、『ゼルダの伝説』の新作がXbox Oneで発売される! みたいな話だなぁと感慨にふけっていたところでした。もちろん、『Shenmue 3』楽しみにしていますよ!

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■Project Morpheus

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 事前の情報では、今回のE3でソニーはかなりProject Morpheusを推してくるだろうと言われていたのですが、蓋を開けてみれば「あれ?」ってほど、アッサリした内容の発表でしたね。もちろん発売日や値段などの発表もなかったですし、「これだけラインアップを揃えています!」的なアピールもなかったのです。

 「数が揃えられなかったのかな?」とかいろいろと考えていたのですが、E3後にいろいろと話を聴いてみてわかったのですが、どうやらソニーは同日午前中に行われたマイクロソフトのカンファレンスを見て内容を変えたらしいのです。実際にはProject Morpheus向けにタイトルを作っている開発者が何人かスタンバっていたらしく、当日ドタキャンとなった模様です。

 マイクロソフトのところで書きましたが、VRはおもしろさを大勢にいっぺんに伝えるのが難しいのです。マイクロソフトのARデバイスMicrosoft HoloLensのデモがとても上手だったので、余計にProject Morpheusのタイトルのおもしろさをどう見せるのかは悩んだだろうなと憶測します。

 “見せる”ことの難しさですね。伝えられない臨場感を紙や動画だけで説明してもしょうがない、という英断です。実際にはたくさんのタイトルが準備されているはずなので皆様ご心配なく。

【任天堂】

 ここ数年、任天堂は会場を使って行うカンファレンスを行っていません。本年も同じくネットを使った“Nintendo Digital Event”を放送しました。『Star Fox Zero(スターフォックス ゼロ)』、『Super Mario Maker(スーパーマリオメーカー)』、『Yoshi's Woolly World(ヨッシー ウールワールド)』、『Xenoblade Chronicles X(ゼノブレイドクロス)』や『Animal Crossing amiibo Festival(どうぶつの森 amiiboフェスティバル)』などなどのWii U 向けタイトルと、『The Legend of Zelda: Tri Force Heroes(ゼルダの伝説 トライフォース3銃士)』、『Animal Crossing: Happy Home Designer(どうぶつの森 ハッピーホームデザイナー)』、『Metroid Prime: Federation Force』などのニンテンドー3DS向けタイトルの紹介がありました。

 ソフトラインアップを見てみると、ほとんどの任天堂タイトルにはamiiboとの連動がされており、ゲームをさらに進化させる形での機能を持っています。機能も重要ですが、やはりamiiboがかわいらしいということが目を引きます。『Yoshi's Woolly World(ヨッシー ウールワールド)』で使われるカラフルな毛糸のヨッシーamiiboはとても欲しくなりました。

 この記事を書いている途中で任天堂の岩田社長の訃報をお聞きしました。いつもE3でステキなスピーチをしてくださったことを思い出します。あのやわらかい英語のプレゼンテーションがとても好きでした。人柄のよさが感じられて、いつも暖かい気持ちになったことを思い出します。この場を借りてご冥福をお祈りします。