ララはクリスタル・ダイナミックスの“アイコン(象徴)”

 2015年7月9日~7月12日(現地時間)、アメリカ・サンディエゴのコンベンションセンターにて、エンターテイメントコンテンツの祭典、Comic-Con International 2015(通称:コミコン)が開催。

 会期3日目の7月11日に、記者がちょいと楽しみにしていたパネルがあった。“The Evolution of an Icon in Rise of the Tomb Raider”だ。Xbox One専用ソフトとして、マイクロソフトからパブリッシングされる『Rise of the Tomb Raider』は、何を隠そう記者がE3で心惹かれてしまったタイトルの1本。“自然との戦い”をテーマにしたゲーム性もさることながら、とにかくララが清冽でかわいい!(そこか?)。まずは、動画でその魅力を再確認してみてください。

『Rise of the Tomb Raider』作り手たちの“愛”が、ララをここまで魅力的にした【SDCC 2015】_07
▲クリスタル・ダイナミックスのゲームディレクター、ブライアン・ホートン氏。

 そんなわけで、なぜララがあそこまで魅力的に構築できたかのヒントを探るべくパネルに出かけたわけですが、ゲームディレクターを務めるクリスタル・ダイナミックスのブライアン・ホートン氏の口からは、「キャラクターが生き生きとしていて信じられるようにしたいと思いました。また、キャラクターの感情をどう伝えるかも重要です。ニュアンスを伝えるために、多くの試行錯誤を重ねた結果、ディテールのレベルが上がったんです」との言葉が。なるほど。キャラクターのニュアンスを伝えたいがための試行錯誤の結果が、魅力的なララに結びついたのか。

 さらに、司会者の「ちょっとした目の動きなどはどう表現するのか?」との質問には、「とてもむずかしい部分ですね。“生きた人間”を作っているのですから、動きなど単純なことではありません。アーティストとして学んできたことと、医学的知識も必要です。とても困難な作業ですが、結果には満足しています」(ホートン氏)とのこと。“生きた人間”? “医学的知識”? まさにアンドロイドでも作っているかのような雰囲気だが、つまりひとりの人間を構築するような勢いで取り組んで初めて、ララは魅力的な存在になったということだろうか。

『Rise of the Tomb Raider』作り手たちの“愛”が、ララをここまで魅力的にした【SDCC 2015】_02
▲ララの声を演じる、女優のカミーラ・ラディントンさん。

 パネルには、ララの声を演じるカミーラ・ラディントンさんも登壇。「ひとつのセリフでも、正しいと感じるまで何度でもやり直します」と語る。“ララ”としての見地から、たとえばストーリーの展開などで納得がいかなければ、しっかりと説明してもらい、ときに変更してもらうこともあるという。「自分がララを演じていて、“ここは本物”と感じるときもあれば、違和感を抱くときもあります。そんなときは、スタッフと納得がいくまで話し合います」と、ララに生命を吹き込むために心血を注いでいる様子。ララが魅力的に見える大きな部分は、カミーラさんに負っているだろうことは間違いない。

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▲クリスタル・ダイナミックスのリード・スクリプト・ライター、リアナ・プラチェット氏。

 そして、生命を吹き込むと言えば、脚本家の存在が欠かせない。『Rise of the Tomb Raider』でリード・スクリプト・ライターを手掛けるリアナ・プラチェット氏は、ララというキャラクターを把握するためのプロセスとして、「コミックを読むことは大きな助けになりました。大英博物館に行き、彼女が登ったところを見て検証したりもしました」と、ララをいかに自身に取り込んでいるかを説明。また、「以前シリーズ作と、自身のシナリオとはどう組み合わせるのか?」との質問には、「好きなところも嫌いなところもあります」と率直に返答しつつ、「人間は変わっていくものなので、進んだり後戻りしながら選んでいきます。以前からあるところも捨てるわけではなくて、ちゃんと消化していきますよ」とのこと。“人間は変わっていくもの”とはおもしろい表現かもしれない。リアナ氏は、過去シリーズのララを“人間”として捉えて、無碍に排除するのではなくて、受け入れようとしているというわけだ。

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▲クリスタル・ダイナミックスのコミュニティー担当、ミーガン・マリー氏。

 また、開発元のクリスタル・ダイナミックスでは、ララというキャラクターの魅力をより訴求するための意味合いも込めてか、コミュニティーにも力を入れている。コミュニティー担当のミーガン・マリー氏は、『トゥーム・レイダー』シリーズに関して、「息の長いフランチャイズであり、私はララとともに成長してきました。彼女の成長を見るのはすばらしい経験です」と前置きしたうえで、「危険を顧みず冒険に挑む姿に勇気づけられたというご意見もありました。“自分の生命を助けてくれた”という方もいますね」と、ララの影響力の大きさを語る。さらに、『Rise of the Tomb Raider』は弱い面も見せるので、プレイヤーは自分に重ねてみる人もいるという。

 ちなみに、「コミュニティーとのつながりはどうしているのか?」との問いかけには、「ファンの皆さんの活動を祝福し、感謝の気持ちを伝えます。非常に大きなコミュニティーなので、皆さんの活動にできるだけスポットライトをあてるようにしています。ご意見はすべて読んで、チームに伝えています。機会がある度に、皆さんと直接コンタクトを取るように努めているんです」(マリー氏)とのこと。

 と、ここではハタと気がついた。パネリストとして登壇している方々を含め、『Rise of the Tomb Raider』に携わる人全員がララの一部であり、彼らのララに対する思いが、ララを魅力的なものにしているのだ。もちろん、“思い”だけではすべてが実現するわけではないので、そこにはすべてにおいて高い水準の努力が必要になるのだろうけれど。いずれにせよ、ララという存在は、クリスタル・ダイナミックスにとっての“アイコン(象徴)”であり、大切な存在であるのだなあと改めて認識したパネルとなった。

 最後に、記者がE3以降気になっていた、「『Rise of the Tomb Raider』では何のゲームエンジンを使っているのか?」という疑問が氷解しました。帰りがけにホートン氏に問いかけてみると、自社エンジンの“ファウンデーション”とのこと。あまりお時間もないようでそれ以上のことは聞けなかったのですが、きっとララを人間らしくする基礎(ファウンデーション)が詰まったゲームエンジンなんだろうなあ……と思ったりしつつ、会場を後にしたのでした。

『Rise of the Tomb Raider』作り手たちの“愛”が、ララをここまで魅力的にした【SDCC 2015】_06
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▲声を担当したカミーラさん(左)とコミュニティー担当のミーガンさん(右)。ふたりとも、どことなくララに雰囲気が似ていたり。とくに、ミーガンさんはララのコスプレもばっちり。
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▲今回あまりご紹介できませんでしたが、ジョナ役の声優、アール・ベイビオン(左)と、司会役の女性。女優さん? というくらいお美しい方でしたが、詳細は不明。