『シュタインズ・ゲート』新作など千代丸スタジオが贈る新作タイトルについて志倉千代丸氏へ独占インタビュー

2015年3月28日(土)に行われた、志倉千代丸氏のTwitCastingによる新作ゲーム発表配信。その配信で明らかになった多数の新情報について、志倉千代丸氏に独占インタビュー。

●志倉氏の手掛ける新作タイトルやアニメ化情報など、直撃インタビュー

 2015年3月28日(土)に行われた、志倉千代丸氏のTwitCastingによる新作ゲーム発表配信。その配信で多数の新情報が明らかになった。ファミ通.comでは、志倉氏に事前にインタビューを敢行。このインタビューをもとに当日の発表内容を練っていくという、いわば元になった台本とも言うべき内容をお届けする。なお、『シュタインズ・ゲート ゼロ』に関しては、週刊ファミ通2015年4月16日号(2015年4月2日発売)にて詳しく訊いているので、そちらもチェックしてほしい。

■志倉千代丸氏(文中は志倉)
ゲームの企画・原作のほか、作詞・作曲といった楽曲制作、アーティストとしてのライブ出演など、幅広い活躍を見せる、“ゼロワンクリエイター”。

■千代丸スタジオ本格始動

――まずは、“千代丸スタジオ”について伺えればと思います。スタジオ自体はもうあるんですよね?
志倉 はい。MAGES.とは別に千代丸スタジオ関連作品の版権を管理していく役割として、株式会社クロウムエッジという会社があります。

――えっ、社名は“千代丸スタジオ”ではないんですね。
志倉 そこが超ややこしいんですよ(笑)。現状は“クロウムエッジ”という会社なんですけど、“千代丸スタジオ”に社名変更する予定です。たぶん、この記事が掲載されているころには変わっていると思います。

――なるほど。ちなみに“クロウムエッジ”という名前はどういう意味なんですか?
志倉 「“クロム”ばりに“エッジ”の効いた企画、原作を作るぜ!」という意気込みで命名しました。カッコイイでしょ?(笑)。でも、1ヵ月ぐらいで「これは、ややこしいぞ」と気づいちゃったんですよね。ずっと考えていたんですが、今回はいい機会なので、このタイミングで社名変更することにしました。企画や原作の作業というのは“モノ作り”の基本で、僕はこれを“ゼロワンクリエイティブ”という言いかたをしています。無(0)の状態から、どうやって有(1)を生み出すかということですね。この“ゼロワン”はすごく責任重大なパートなんですが、同時にクリエイティブの世界ではイチバンおもしろく、楽しいパートでもあるんですよ。でも、いまの時代は“無からのモノ創り”に向き合っている若者が意外と少ないんですよね。0から1を僕が作ってそこからはチームで最終的な完成型を目指すわけですが、仕事としてチームでエンタメのモノ創りができるなんて、こんなにうれしいことはないですよね。

――ということは、“千代丸スタジオ”は基本的に志倉さん原作の作品を作るスタジオということになるわけですか? たとえば科学アドベンチャーシリーズなどを制作していく?
志倉 主力は科学アドベンチャーシリーズになると思いますが、2015年4月に第2巻が発売される『オカルティック・ナイン』というノベルなど、科学アドベンチャー以外の新作も含めて、千代丸スタジオというブランドで手掛けていきます。僕が原作、企画から携わっているものはもちろんですが、僕が何らかの形でコラボしているような企画に対しても千代丸スタジオというブランド可能性もあります。とにかくクリエイティブなパートで、僕と関係性の強い作品には、このロゴマークをプリントさせてもらおうと思っています。

――なるほど。ちょっと整理したいのですが、“千代丸スタジオ”はゲーム開発スタジオになるんですか?
志倉 ゲーム開発専門ではないですね。メディア全方位型の“ゼロワンクリエイティブ”なスタジオです。

――ゲームにこだわらず、いろいろなコンテンツを作っていくスタジオということですね。
志倉 そうですね。あくまで千代丸スタジオは、“原作を作る”会社です。千代丸スタジオが原作を作ったら、それをMAGES.がゲーム化したり、KADOKAWAが、書籍化やコミカライズ、アニメ化をしたりと、さまざまなメディア展開をしていくわけです。だから、僕らがゲーム自体を丸々作るということはないんですよ。

▲千代丸スタジオのロゴ。こちらは人類の夢である“宇宙”を投影するプラネタリウムの機械をモチーフにデザインされたもの。“エンタメとは夢の投影である”という意味合いで、このデザインになったのだとか。

――なるほど。では、“千代丸スタジオ”という名前にしようとしたキッカケは?
志倉 “志倉スタジオ”とか、“志倉プロダクション”というものを最初は考えていたんですよ。

――“コジプロ”的な。
志倉 あ、ばれましたか(笑)。もちろん小島さん(小島秀夫氏)の存在は大きくて、“コジプロ”さんのことも意識していますよ。昔から自分の名前でプロダクションなり、スタジオなりを構えるというのは夢のひとつでもあったんです。でもブランドに自分の名前をつけるなんて、ちょっとまだ図々しいだろうと、ずっと遠慮していたんですよ。もちろんいまでも「おこがましい」とおもっていますし。たとえば、いまもやっていますが、ラジオ番組の冠とかに“志倉千代丸の○○”とかね。ちょっと僕には分不相応かなと。「自伝の本を出しませんか?」なんてお誘いもあったりするのですが、同じような理由でお断りしてきました。ただ、ここにきて自分の作品も少しずつ増えてきたことだし、「そろそろいいんじゃない?」というわけではないんですけど「すみません、ちょっとやらせてもらってもいいですかね?」みたいな気持ちに、やっと思えるようになってきたんですよね。それで、“志倉○○”よりも、下の名前のほうが、エッジは効いているかな(笑)と思ったので“千代丸スタジオ”と。

――ゲーム業界のみならず、いろいろなメディアで志倉さんの名前も浸透してきましたから、そういった気持ちの変化があったということですかね?
志倉 まぁ確かに昔と比較したら、ゲーム業界でも少しは浸透しているのかもしれませんが、僕自身としては“ゲーム”を作っている感覚ではないんですよ。ときどき「アドベンチャーゲームなんて、こんなのはゲームじゃない。ゲーム性もないし紙芝居だろ!」と言われる方がいるのですが、ホントにその通りで。僕自身“ゲームであることの重要性”をそんなに意識していないんですよ。

――えええええ!? 志倉さんからそんな発言が出ると思ってもみませんでした(笑)。
志倉 テキストアドベンチャーにとって“ゲーム性”というのは、時にジャマな存在だったりもするんですよ。たとえば、Xbox Oneでも、プレイステーション4でも、どんなゲーム機でもいいですけど、あれってある意味のメディアプレイヤーだと思うんです。ゲーム専用プレイヤーじゃないんですよね。もちろんメインの機能としてはゲーム機なのかもしれませんが、メディアプレイヤーなんです。僕らは、あるフォーマットを用いて、そのプレイヤーを通じて皆さんと物語を共有してるというだけで、「ゲームであるというカテゴライズが必要なの?」とも思っているんですよね。だから、ゲーム会社さんの集まりとかに行くと、僕的には、いつも肩身の狭い思いというか、「ウチはゲーム会社でもないんだよな」とずっと思っていて。

――それは、現在もですか。
志倉 現在もです。だから、ヒューマンに在籍していたころは、バリバリ“ゲーム会社”だったんです。当時は「ゲームを作っています!」と胸を張って言えたんですけど、いまは、大きな声で「僕はゲームクリエイターです!」なんて、とても言えないですね。だから、肩書にも書かないし。やっぱり、テレビゲームって手触り感がすごく重要な世界で、そのマイスターの皆さんと「同じ土俵でやっているのか?」と考えると、おこがましいと思っちゃうわけですよ。

――なるほど。でも、アドベンチャーゲームのゲーム性という意味では、科学アドベンチャーシリーズの“○○トリガー”など、選択肢だけではない形でゲームに介入するという要素も取り入れられていると思うのですが?
志倉 もちろん、ちょっとしたゲーム性はあるんですが、「テレビゲームです!」と言うほどかなぁ? とも思っていて。アドベンチャーゲームって、ゲームジャンルの中では歴史上もっとも進化していないジャンルなんですよ。ほとんど進化させないまま、僕らはずっと保守的にやってきているんです。そう考えると、こんなに進化もしていないジャンルを、「ゲームと言っていいのか?」と思ってしまって。もともと、アドベンチャーゲームというのは、表現力の低いコンピューターで、どんなゲームができるかと試行錯誤したうえで、1枚絵を通じて物語を共有できるノベルスタイルのものが出てきたんです。むしろ、当時はあれしかできなかったんですよね。でも、いまはもっと表現力も上がっているのに、出てくる作品はほとんど何も進化していないという。これで、「ゲーム会社の社長です!(キリッ」なんて、とてもじゃないけど言えないです。そのうえで、「じゃあ、小説家ですか?」と言われたら、たしかに小説は出しましたけど、これまた中途半端な気がしていますし。「では、音楽家ですか?」と言われると、音楽“だけ”をガチでやっている方々と比べられても、「いやいや、僕なんかは」と思っちゃうし。あ、もちろん僕だって全部ガチでむきあってるつもりなんですけどね。まぁでも、どのジャンルにも身を置ける気がしない。ただ、最近になって、逆にそれが強みになるんじゃないか? とも思っているんですよね。最終的にそれらがすべて作品につながっていく。それってつまり、メディアミックスということなのかもしれないと思うんですよね。だから、「自分の肩書きはいったい何なんだろう?」と考えたときに、僕が身を置けるとしたら“ゼロワンクリエイター”、これしかないだろうと。要するに、「原作を作るのが仕事です」と言っちゃえば、“ゲームを作る”のでも、“小説を作る”のでも、“音楽を作る”のでも、なんでもいいじゃないですか。だから、「自分の拠りどころはここかな」と思ったんです。

――ゼロワンクリエイターですか。
志倉 要は、“原作クリエイター”なんですよね。音楽ひとつとっても、コード、メロディー、リズムなど、ある程度、自分で打ち込んではいますが、その後の2~10は、アレンジャーさんや歌い手さんやスタジオのエンジニアさんが作っているわけじゃないですか。僕が全部作っているわけでは、決してないんです。けっきょく、すべてにおいて、ゼロワンクリエイターなんですよね。こうやって書くと「お前は1しかやってないのか!」と怒られそうですが、あくまでも例えですからね。場合によっては0~5くらまでやる時もあります(笑)。僕の場合、ゲームのために原作を書いていないので、なおさらゲームクリエイターではなく、原作クリエイターなんですよね。たとえば『オカルティック・ナイン』もゲーム化したいと思っているのですが、あれって、ゲームのために書いたわけではありませんからね

――そもそも小説ですもんね。っていうか、ゲーム化されるんですか?
志倉 はい。きっとゲーム化すると思います。『オカルティック・ナイン』は小説として出版されていますが、実際は小説のために書いたわけでもなくて。アニメ化やゲーム化といった、いろいろなプロジェクト、それこそ何にでも使ってもらえるように書いているんですよね。たとえば、『オカルティック・ナイン』のキャラクターを書いているときに、僕がどんなメディア展開をイメージして書いていたかというと、作ったキャラクターがクレーンゲームで取りやすいかどうか? だったんですよ。

――また、めちゃくちゃな話をブッ込んできましたね。
志倉 ふつうのゲームクリエイターだったら、おそらく「これがポリゴンになると、こんな感じ」とかイメージするじゃないですか。たとえばキャラクターデザインを見て「これは、3Dモデル化しやすいぞ」といったことをを考えるだろうし、小説家だったら、本になったときのイメージだったり、表紙にデザインされるキャラクターのイメージなどをイメージすることもあると思うんです。でも、僕は「髪の毛がこういう形だと、クレーンゲームで取りやすいんじゃないか?」と考えてキャラクターの設定をしていましたから。未来の形はなんでもいいんですよ。

――(笑)。
志倉 「なんで俺は、クレーンゲームのことを考えながらキャラクターを作っているんだ?」、「俺は何屋だよ!」と自問自答することもありましたけどね。でも、それくらい自分はゲームクリエイターとは言えない“何か”なんですよ。だから、ファミ通さんなどのゲームメディアに載せてもらうのも「本当にすみません」という気持ちでいっぱいです(笑)。

――(笑)。ちなみに千代丸スタジオは、基本的に志倉さんがすべてを取り仕切るという感じですか。
志倉 そうですね。千代丸スタジオで原作を作って、そこからゲームやアニメの制作チームに渡します。

――なるほど。千代丸スタジオは、これからついに本格始動というわけですね。
志倉 そうですね。あと“千代丸スタジオ”では、“シナリオ評価システム”として、“PLOTALIZE”というシステムを確立しようと思っています。この名称は“物語のあらすじ(プロット)”と“見える化(ビジュアライズ)”からなる造語です。脚本の完成度を上げるためのオペレーションシステムで、「絶対にはずさないシナリオとは何か?」というテーマを突き詰めるためのものです。独自のシステムには細分化された評価ポイントがあり、デバッガーやテストプレイヤーの協力で、そこにスコアやコメントが入力されていきます。これを独自のアルゴリズムで解析し、物語全体のリズムや起伏、伏線の投下や回収のポイントを最適化するものです。たとえば海外ドラマのシナリオなんかは、たいていの場合チームで執筆にあたります。何人かで分担して書いて、できあがった塊を評価するみたいなことは、当然、どのジャンルの人たちもやっているわけですが、それをできる限りチャート化、パラメーター化したいんです。どのあたりでシナリオがダレるのか、どこで衝撃があるのかというものを視覚的に見られるようにして、●●さんの作ったところは衝撃的な展開が多すぎたから、こっちに衝撃を分散しようとか、全体を通じてスコアが上げられたらいいなと。まだまだ完成型は遠いですが、少しずつ形になってきています。まぁ、つねに進化していくようなものだと思うので、おそらくこのシステムに完成はありませんが。

――でも、もうすでに取り組まれていたんですね。
志倉 じつは、『カオスチャイルド』のときからすでに運用をしていました。100人ぐらいの人からサンプリングできるとベストですね。ストーリーの趣味なんて人それぞれなんですが、おもしろいことにグラフにしてみると、だいたい同じような評価の折れ線グラフになるんです。たとえば、1章から12章まであったとすると、それぞれに意見は異なるんですが、みんなの意見のフィルターを重ねていくと、ほぼ同じような線へと収束するんですめ。

――へぇ―――。
志倉 そうすると「フラグの回収ポイントを、このダレているところにちょっとズラすことで、ダレが緩和されるよね」みたいな傾向が見えてくるんですよ。もちろん、そうしたところで人によっては「このシナリオはクソだわ」と言う人も出てくると思いますが、思いっきりハズす確率は低くなるんじゃないかなと。かといって平均的な、中立的なものばかり作ってもつまらないので、このシステムから抽出したデータを踏まえたうえで、それも参考にしながら最終的な脚本に落とし込んでいきます。

――なるほど。
志倉 このシステムも、原作とは別に“千代丸スタジオ”の資産になっていくと思っています。けっきょく、ゼロワンの部分がつまらなかったら、2~10の仕事は地獄でしかないですからね(笑)。

■『カオスチャイルド』がプレイステーションプラットフォームへ

――そんな“千代丸スタジオ”が原作を務める『カオスチャイルド』ですが、プレイステーションプラットフォームへの移植が発表されました。これは待ち望んでいた方も多いと思います。非常に評価が高いのに、ハードを持っていなくてプレイできなかったという方も多いと思うんですよね。もちろん、このソフトのためにハードを購入したという方も多かったと思います。
志倉 ありがとうございます。

――ちなみに移植というのは、いつごろから考えられていたのでしょうか?
志倉 もちろん、Xbox One版を作っているときから考えてはいました。以前から言っている通り、「最終的にはすべてのハードで動くようにしたい」というのが、僕らの理想なので。でも、実態としてはハードごとに開発が終了した順番で告知・発売をしています。実際、Xbox Oneへの着手がイチバン早かったんですよ。マイクロソフトさんも当時からとても協力的で。ネットでは時々「マルチで後から出すなら、同発で出せよ!」と言われるんですけど、でき上がってないものは出せないじゃないですか(笑)。全機種揃うまで待つのも辛いですからね。

――そんな中で、プレイステーション Vita、プレイステーション4、プレイステーション3での発売が発表されたわけですが、こんなに一気に発売されるとは思っていませんでした。
志倉 じつは『カオスチャイルド』のXbox Oneでの評価が、うれしいことに国内の星付け順だと、いま現在トップなんですよ。Xbox One全作品の中で。これって、すごいことじゃないですか? 『マインクラフト』よりも上にいるんですよね。僕は『マインクラフト』のほうを応援したいんですけどね(笑)。

――(笑)。でも、それはすごいですね。
志倉 ですよね。これだけ評価をいただいてる作品ですから、「できるだけ早く、いろいろなハードで遊べるようにしたいよね」という想いも、もちろんありました。その最速のタイミングが、2015年6月で確定したということなんです。昔ですと『ゼビウス』は、アーケード以外ではSHARPのX1というパソコンでしかできなかったわけですよ。僕はMZ2000ユーザーだったので、「うわー、すげぇうらやましい」と思っていて。その後、いろいろなハードに順を追って発売されていって、最終的には10機種以上のマシンで動くゲームになったのですが、結局、MZ-2000には最後まで移植されなくて……。あの悲しい想い出は忘れられませんね(笑)。

――(笑)。
志倉 あの悲しみを忘れないために、いまでもMZ-2000を所有しています(笑)。まぁ、だからというわけではないのですが、あの悲しみを味わってほしくないし、できるだけ早く移植をしたかったんです。ただ、「そんなに“全機種で~”言うなら、ウチのドリームキャストでも遊べるようにしてよ」とか言ってくるヤツがいるんですよ(笑)。本当にね、さすがにいい加減にしてほしいですよね(笑)。それは冗談としても、お店に売り場があるハードでは、やっぱり全部で出したいし、それでいくと今回、いまのところ発表のない、iOSとか、Androidにも移植したいとは思っています。ビジネス的な話をすると、移植をするにもコストは掛かるので、その移植費用くらいはなんとか元が取れるなら、やっぱり全ハードでやりたいですよね。

――そのあたりの話は、以前から掲げられていましたよね。これまでの取り組みを見る限りは、追加要素などもとくになく移植される感じでしょうか?
志倉 オープニング曲を書き下ろしましたので、オープニングのムービーは変わります。それ以外の部分は各フォーマットに最適化する以外、とくに手を加えていないですね。あ、もちろん細かな変更はありますが。たとえばプレイステーション4版は、電話での会話シーンで相手の声が手元のコントローラーから聴こえたり。もちろん、この機能をオフにすることもできます。あとは、限定版の特典に期待してほしいですね。

――ちなみに、『カオスチャイルド』を、まだプレイしてない人に向けて見どころを伝えるとしたら。
志倉 そうですね……。風が吹いたときに、「女の子のスカートがめくれちゃったらいいのに!」と妄想することって健康男子だったら、1度や2度はきっとあるじゃないですか。おそらく、そういう魅力が詰まっています(笑)。

――……………………。え? 本当に、それだけで大丈夫ですか(笑)。
志倉 でも、間違ってはいないと思います。サイコキネシス能力を持っていたとして、この場合、「じゃあ、その力を使ってミニスカートをめくっちゃえ」と思うのは、やっぱり甘いんですよ。

――ほぉ。
志倉 スカートをめくるのではなく、その女の子の机にある消しゴムを落として、「消しゴムを拾ったときがチャンスだ!」というのが、今回の主人公になります。はい。

――(笑)。そこにロマンを感じるような妄想力を持った主人公ということですね。
志倉 そうなりますね。はい。

――なるほど。『カオスチャイルド』では、『劇場版シュタインズ・ゲート 負荷領域のデジャヴ』の若林漢二監督が制作に参加されていますが、演出面も強化されているんですよね。
志倉 アドベンチャーゲームはあくまで1枚絵なので、アニメの監督としては、たぶんいままでいちばん苦労したんではないかと思います。1枚絵と言っても、その1枚絵で語るテキスト量はけっこうな量ですし、そこで描かれる要素を1枚絵にギュッと凝縮する必要がありますからね。でも、やっぱり、ひとつひとつのイベントグラフィックとかカメラアングルなど、おもしろいシーンがかなりあります。そういった点は「アニメの監督といっしょに作るとこうなるんだ」と思いましたね。たとえば、本作では全キャラクターに背中を向けた立ち絵があるんですよ。だから、こちらを向いているキャラクターと背中を向けているキャラクターが会話しているのを俯瞰で見ているようなシーンがイベントグラフィックでなく、ふつうに作れるんです。パッと見、イベントグラフィックに見えるシーンなどもあるので、そういう意味では、いわゆる止め絵のアドベンチャーゲームの中では見せかたをチャレンジしているとは思いますね。後は、“マッピングトリガー”という新システムにも注目してほしいです。僕は、よく海外のドラマなどに出てくる、地図上に写真やメモとかを貼っていって、糸でつなげているシーンに憧れていて。でも、「あれ何で糸でつなげるんだろうね?」という話をしていたんですよ。たとえば、殺害現場と容疑者の写真を糸でつなぐということはわかるんです。でも、まったく関係なく糸でつながっているものもあるんですよ。それ見ながら糸でつないでマッピングしていくことで物語が分岐するのは新しいんじゃないか、と考えて作った要素です。でも、まだ僕の中では完成系ではないんですよね。

――まだ進化するということですか?
志倉 もっと進化できると思います。本作でマッピングトリガーを行うことで、どんな効果があるかというと、事件や内容の把握度が試されるんですね。設問に対して、どれだけちゃんと答えられるかによってユーザーの把握度がわかるわけです。物語を把握できていないのであれば、先に進んでも話がわからなくなるだけなので、進めないようになっているんですよ。場合によってはバッドエンドになることもありますし、そのシーンをループすることもあります。「いや、ちょっと待てよ。違うな」といってループすることで総当たりができるじゃないですか。だから、これはある意味、昔のアドベンチャーゲームスタイルでもあるんですね。

――答えが見えていないけど、総当りで臨めば正解にたどり着いて、その先のストーリーを見て納得するみたいな。懐かしいです。
志倉 しかも、マッピングトリガーによって物語も分岐もするので、斬新なシステムになったと思います。僕はわりとこのシステムが好きで。マッピングトリガーのシーンになると専用のBGMが流れるんですけど「おっ、キタキタ! マッピングトリガーが来たぞ!」とテンションが上がるんですよ。でも、もっと可能性があるシステムだと思っています。たとえば、『カオスチャイルド らぶChu☆Chu!』という作品もし発売されたら、この“マッピングトリガー”でもっと無茶ができるなと思っていたり。もう、どうでもいいような恋愛に関する小さい事件を、この地図を使って「あのとき、○○ちゃんはここにいた!」とか言って行うような馬鹿馬鹿しさだったり、もっと妄想が爆発した分岐を作ったり、いかようにもできますからね。ぜひ、今後の進化にも注目していただきたいシステムです。