フィーリングに力を注いだメトロイドヴァニア系のアクションアドベンチャー

 マイクロソフトスタジオが2015年3月11日にリリースしたXbox One/Windows PC(Steam)版『Ori and the Blind Forest(オリとくらやみの森)』はメトロイドヴァニア系のアクションアドベンチャーだ。“メトロイドヴァニア”とは『メトロイド』と『キャッスルヴァニア(悪魔城ドラキュラ)』を組み合わせた造語で、探索要素を含んだ2Dサイドスクロールのゲームを意味する。Moon Studiosが開発を手掛け、ストーリーや世界観、雰囲気をフィーチャーしたタイトルだ。さあ、妖精オリとともにニブルの森を救う旅に出よう

冒険心をくすぐられるメトロイドヴァニア『Ori and the Blind Forest(オリとくらやみの森)』プレイインプレッション_02
冒険心をくすぐられるメトロイドヴァニア『Ori and the Blind Forest(オリとくらやみの森)』プレイインプレッション_08

■感動的なストーリー

 森が大嵐にみまわれ、オリは親元である大樹から遥か遠くへ飛ばされてしまう。幸運にもオリは森の住人ナルに拾われ、まるで親子のように幸せな日々を過ごしていた。しかし、運命の夜を境に森は衰退し始める。食料不足からナルは息絶え、オリもまた傷を負い倒れてしまう。奇跡的に一命をとりとめたオリは精霊セインに導かれ、森を救う旅に出るのだった。この続きは、ぜひその目で見届けてほしい。

 本作には、感動的なストーリーに加え、ふつうに遊んでいるだけでは見逃してしまうような、細部まで考え抜かれた演出が散りばめてある。すべてのシーンに目を凝らして、そして気づいてほしい。ゲームを進めるにつれて「あっ!」と思うことがあるはずだ。

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■ジブリ作品に影響を受けた世界観

 オリが傷を負い倒れてしまう場面で、光が包み、命を吹き込まれる様は『もののけ姫』を彷彿させる。ストーリーテリングからも、衰退と繁栄をひとつのテーマとしているように感じられた。オリは『もののけ姫』のコダマ(木霊)に、ナルは『千と千尋の神隠し』カオナシに似た外観をしていることからも、ジブリ作品に大きな影響を受けているのがうかがえる。また、キャラクターの一挙一動が表現豊かなため、感情移入するのも容易だ。『Ori and the Blind Forest(オリとくらやみの森)』では、世界観とキャラクターが完璧に噛み合っており、まさに“そこに生きていて、実際に存在している”のだ。

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■幻想的な雰囲気

 冒頭から手書き風のキャラクターにアーティスティックな背景、そしてフルオーケストラで表現される壮大なBGMに、プレイヤーは息を呑むことになるだろう。精緻を極めたビジュアルと魅力的な音楽の融合からは2Dの“次世代”が感じられる。

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■メトロイドヴァニアに最適化したシステム

 本作には、セーブポイントを好きなとき、好きな場所に設置できるシステム“ソウルリンク”が導入されている。広大なマップを探索するメトロイドヴァニアによくマッチしたシステムと言えるだろう。“ソウルリンク”はエナジーを消費することで設置でき、ギミックの前後にはエナジーを回復できるアイテムが設置されている。ライフを回復するアイテムも同様に、適切な場所に設置されているのでほとんど理不尽さを感じない。また、セーブはマップに配置されている“精霊の泉”でも行え、ボスの前後やイベント、“長老樹”から光を吸収したあとなど、ゲームの要所ではオートセーブされるので安心だ。

 また、ソウルリンクからはオリのステータスを強化する“能力ツリー”へアクセスできる。“能力ツリー”では3系統のステータスを順に強化していくのだが、どの系統から強化を進めるかは自由だ。

 操作性で気になったのは、オリの攻撃手段である“精霊の炎”がXボタンに配置されている点だ。“つかむ/グラインド”をRTに配置するなら、逆にすればよかったのではと思わざるをえない。“ジャンプ”がAボタンに配置されているため、エネミーを回避しながらの攻撃にどうしても違和感を覚えるからだ。また、背景と攻撃のビジュアルにおいて親和性が高すぎるため、慣れるまでは見間違えるのも困りものだ。これは美しすぎるがゆえの宿命とも言えるかもしれない。ビジュアルの統一感と視認のしやすさを共存させることは難しい。とはいえ、『Ori and the Blind Forest(オリとくらやみの森)』はプラットフォーミングとして満足できる操作性を有している。挙げた以外の不満はなく、ゲームを楽しむうえで心配するほどの欠点はない。

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■ストレスフリーなレベルデザイン

 若干の操作精度が要求されるものの、ギミックの仕組みを理解するのに時間はかからない。ソウルリンクを節約し過ぎると、逆に戻され過ぎてストレスなので覚えておこう。システムを理解していれば、難度の高いギミックにも情熱を絶やさず挑戦できるはずだ。

一定の区切りとして存在する“精霊のゲート”を開くために“キーストーン”を集めていくのがゲームの基本フローだ。エネミーの攻撃を誘導して壊せる壁や、お決まりの動く床、さまざまなギミックがオリを待ち構えている。この手のゲームでは往々にしてトライ&エラーが退屈だが、ソウルリンクのおかげでストレスなく遊べる。

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とにかく遊んでみて、そしてこの世界を感じてほしい

 筆者は『Ori and the Blind Forest(オリとくらやみの森)』を隅々まで遊び尽くしたと自信を持って宣言できる。ストーリー、世界観、雰囲気、システム、レベルデザイン、すべてにおいて高水準で、今年一番の当たりを引いたと言っても過言ではない。メトロイドヴァニアを遊んだ経験がなくても文句なしにお勧めできる。ぜひ、オリとともに森を救う旅に出てほしい。きっと新しい発見や感動を体験できるはずだ。

■筆者紹介 VEXATION(べクセイション)
Halo』シリーズの現日本チャンプ。攻めるゲーマーのアイウェア“GUNNAR”オフィシャルアンバサダー。ライティング、動画制作などマルチに活躍中。最近はもっぱら本職のFPSよりホラーゲームにはまっている。

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