2015年、『新生FFXIV』は新たな挑戦のときを迎える
2014年の『ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア』(以下、『新生FFXIV』)は、大規模アップデートの相次ぐ公開に加え、日本を含めた3ヵ国で大規模なファンフェスティバルを開催するなど、文字どおり世界が認めるほどの盛り上がりを見せた。
そうして迎えた2015年。『新生FFXIV』は昨年と同様のペースで、さまざまな施策を打ち出していくことが確実視されている。そこで現時点での2015年の予定を吉田直樹氏に尋ねた。
※本記事は2015年1月27日発売のファミ通コネクト!オン誌に掲載したインタビューを再構成・未収録の話を加えたものです。
年明け早々にパッチ2.5のPart1が公開されたのを皮切りに、その後も断続的な大型アップデートの実施を予定。そして何よりも本年は、タイトル初となる拡張パッケージ『ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド』(以下、『蒼天のイシュガルド』)の発売を春に控えている。大規模MMORPGとして成功を収めている『新生FFXIV』は、今後どんな方向へ歩むのか。注目が集まるなか、インタビューが開始された。
がむしゃらに突き進んできた2014年を振り返る
──吉田さんにとって2014年はどんな年でしたか?
吉田直樹氏(以下、吉田) いろいろありすぎる年でしたが、まずは皆さんのおかげでサービス開始1周年を迎えられたことをうれしく思っています。『新生FFXIV』は当初から、国内だけでなく世界中で注目される作品を目指して開発してきたので、それがきちんと達成できてまずは安心しています。ファンフェスティバル 2014が開催できたことも大きかったですし、つぎなる世界戦略の一手を打つことができたのもよかったです。とはいえ、2014年はがむしゃらに突っ走ってきたので、正直にいえば、いますぐに振り返るのは難しい感じです(笑)。
──ファンフェスティバル 2104を通じて、吉田さんはどのような思いを抱きましたか?
吉田 プレイヤーの皆さんがいてこそのMMORPGなのだという思いを、より強く認識しました。
──MMORPGというジャンルの中で、『新生FFXIV』はどのような地位を確保できたと考えていますか?
吉田 世界レベルで見れば現在のゲーム市場において、MMORPGは比較的苦戦しているジャンルで、とくにサブスクリプション(定額課金制)ベースの超大型MMORPGは、とくにこの3年くらいは花を咲かせにくい状況になっています。小規模フリー・トゥ・プレイ(基本プレイ料金無料)のMMOはたくさん出てきているのですが、数年から10年単位の運営を目指してリリースされた大型のものに関しては、ちょっときびしい状態です。そうしたなかにあって、『新生FFXIV』はサブスクリプションのMMORPGとして、PCゲーマーのハード占有率で世界第2位を得ることができました。ビジネスも含め、数字の面でもよく頑張れているなと、個人的に感じているところです。
──『新生FFXIV』に日々親しんでいる方々については、どのような思いをお持ちですか?
吉田 初期の『FF』から遊んでくれている方から、今回初めてこのシリーズに触れたという新しい世代の方まで、年齢や性別を問わず、幅広い層の方々に遊んでもらっていると思います。とてもMMORPGらしいことなので、うれしいですね。
『蒼天のイシュガルド』は『FF』シリーズの最新作
──2015年は『新生FFXIV』にとって、どのような年にしたいとお考えですか?
吉田 ファンフェスティバル 2014で『蒼天のイシュガルド』の情報を大量に公開させていただきました。MMORPGに慣れ親しんだ方は、「拡張パッケージは既定路線、でもやっぱり楽しみだよね」と思っていただけたと思います。一方でそうでない方には、「新しい世界がもっと広がるんだね」という部分を感じていただけたと思います。『蒼天のイシュガルド』を通じて『新生FFIV』の広がりや今後の可能性を味わっていただけたらと思います。
──オンラインゲーム版の『FF』に違和感を感じていたファンの心もガッチリと掴んだようです。
吉田 僕は単なる『FF』ファンという立場のころから、「オンラインの『FF』は『FF』ではないよね」という声もよく聞きましたし、また、その声を一瞬でゼロにすることは不可能だと思っています。ですが、そういった方々にこそ、『FF』シリーズの新作として、『蒼天のイシュガルド』を遊んでいただきたいと願っています。今後、王道とも言えるPR活動を展開していくので、それを通じて「そこまで言うならプレイしてみよう」と思っていただくことを、また新たなスタートとしたいと思っています。まずは2015年のスタートとしてパッチ2.5シリーズをリリース。それを終えて、2015年最大の山場である『蒼天のイシュガルド』を発売したら、今度はそれを安定飛行させることが目標になります。その後は、いままでとは少し違った『新生FFXIV』をお見せするという形でゲームを発展させていこうと考えています。
──『FF』シリーズの新作という意味で、『蒼天のイシュガルド』のタイトルから“新生”の2文字をあえて外したと。
吉田 ふつうにプレイされている方は、そのことをあまり意識していないと思います。なぜなら『新生エオルゼア』から『蒼天のイシュガルド』に変わっただけで、“新生”が消えてなくなったとは思っていないはずだからです。単純に僕らがタイトル名を略称で呼ぶときに、『新生FFXIV』や『旧FFXIV』という単語を使うのをやめようという話をしています。今後は略称を『FFXIV』に統一しようかな、という思いがあるのみで、別に“新生”した事実をなくしますとかそういうことではありません。ゲームを始めたばかりの方が僕のインタビュー記事などを読んだときに、『新生FFXIV』や『旧FFXIV』といった略称が複数あることを不思議に思うはずなので、そろそろ『FFXIV』に統一でいいと考えています。“新生”という事実も、“旧バージョン”が存在した過去もすべて『FFXIV』なのだから、区別する必要はもうないよね、という話をしているのです。
『FFXIV』ならではのコンテンツを計画中
──『蒼天のイシュガルド』のリリースによって、『新生FFXIV』が新たな軌道に乗るんですね。
吉田 2013年からスタートした『新生FFIXV』のパッチ2.Xシリーズで、MMORPGというテーマパークの中に存在するべき基本的なアトラクションは揃えることができ、ゲームの地盤を固めることができました。今後は、『蒼天のイシュガルド』の新章を経て公開されるパッチ3.1や3.2などの3.Xシリーズを通じて、『新生FFXIV』でしか味わえないゲーム体験を皆さんに提供すべく、新たな挑戦が始まります。ときには野心的なものをお出しするかもしれないので、場合によっては空振りに終わるコンテンツがあるかもしれませんが、そうした部分も含めて、プレイヤーの皆さんとキャッチボールをくり返しながら、新しい冒険を作っていこうと思っているところです。
──“野心的なもの”とはどのようなものですか?
吉田 もちろんこれまでもゲーム体験を優先してコンテンツを開発してきましたが、今後はいままでの『FFXIV』になかったタイプのコンテンツや、「『FFXIV』ならでは!」と思っていただけるようなものを、意図的に目指すものも混ぜたいなと考えています。
──具体的にどういうことですか?
吉田 たとえば『FFXII』のガンビットは味方のプレイヤーを補助するシステムでしたが、組み合わせたガンビット自体を対戦ツールとするなどです。この仕組みはNPCにも転用できるので、そういった方面での遊びかたも可能かなと思っています。また、すでにお話をさせていただいている“飛空艇コンテンツ”は『蒼天のイシュガルド』発売後のパッチで続々とアップデートしていく予定なのですが、それを進めた先に、いままでの『新生FFXIV』とは違った楽しみが入ることを想定しています。
──そうした部分は、拡張パッケージが発売された後の、2015年の後半くらいにわかるのですか?
吉田 ご期待に沿えるようにがんばります!
飛空艇コンテンツでは作る楽しみが満喫できる
──以前に吉田さんは、実現できるかどうかわからないが実装してみたいコンテンツとして、飛空艇で大空を飛びながらドラゴンと戦うシーンを挙げていました。『蒼天のイシュガルド』に盛り込まれる”飛空艇コンテンツ”とは、このことですか?
吉田 空中でドラゴンと戦ったとしても、それは冒険者の力ではなく船の強さになってしまいます(笑)。ふつうに考えれば、巨大なドラゴンを倒すには大船団を組まなければならないですし。いずれにせよ、冒険が進んだ先に何があるのかは、もう少しお待ちいただければと思います。見た目を取るのか、あるいは性能を重視するのか……飛空艇はすごく細かく作れるので、ご期待ください。
──飛空艇の建造には、多額のギルが必要になりそうです。
吉田 ギルで解決しようと思えばそうですが、フリーカンパニーの皆さんがせっかくクラフターやギャザラーを育てているのですから、ぜひご自身の手で素材を集め、製作を進めていただきたいなと思います。ハウジングの土地購入や建物購入は、ギルで支払う方法しかありませんが、“飛空艇コンテンツ”では自分たちで材料を集めたりできるようになっていますので、皆さんにはまず“作ること”を楽しんでもらいたいです。
──そういえばパッチ2.45で追加されたゾディアックウェポンの続編でも、クラフターが製作できるアイテムを納品することになりますよね。
吉田 ゾディアックウェポンストーリーは、第一世代のMMORPGのつもりで作っているコンテンツです。先を争うように進めていくあの感じは、あり方としては正しいかなと。その反面、忙しいプレイヤーの方は、なかなか進捗が捗らないと思いますが、ゆっくり始めたぶん、条件の緩和に合わせてプレイできますので、まさにコツコツ進めていただけるとうれしいですし、過程にクラフターが作るアイテムを絡めたものも、いろいろな要素から最強の武器を作っていく、という意識があるからです。自分で製作してもいいですし、マーケットで購入していもいい、という思想です。
4つ目の新ジョブが発表される可能性は?
──今後、『蒼天のイシュガルド』4つ目の新ジョブや新クラスが発表される可能性は残されているのですか?
吉田 さすがにそれは……(笑)。
──『新生FFXIV』ロンチ直前のタイミングで学者と召喚士が発表された前例があったので、もしかして今回も……と思ってしまいました(笑)。
吉田 運営しながら新ジョブを作る場合、それこそ1年掛かりの作業になります。さらにそこに付随する、アクションやシナリオやマップなどの開発も必要になるので……お察しください(苦笑)。
──もう少し待てば、リリース日に記されている“春”の部分がもう少し具体的になるのですか?
吉田 いまの時期がもっともスケジュールがズレやすいタイミングなので、明言しづらいところです。現在『蒼天のイシュガルド』公開時に予定しているコンテンツをキチンと公開するメドが立ったときに、お話できるのではないでしょうか。『新生FFXIV』のロンチでは、クリスタルタワーの扱いをギリギリまで迷いました。現在もこれと似た状況で、「ここまで押し込んでバージョン3.0とすべきか。あるいは切り離してパッチ3.1にスライドさせるべきか」など判断を迫られている時期に来ています。早くお届けしたい気持ちは強いのですが、遊べるものがしっかり盛り込まれていたほうがいいとも思っているからです。
──現在予定されているコンテンツ以外に、新たな遊びを増やしたいという思いをお持ちですか?
吉田 いまの状態でも、すでに遊びの要素がたくさん盛り込まれています。ですが、もうひとつかふたつ、何かを入れられないものかと思う部分もあります。
拡張パッケージは本来、大ボリュームであるべき
──吉田さんが考えている、拡張パッケージのあるべき姿とはどのようなものですか?
吉田 『World of Warcraft』の拡張パッケージの例を考えると、ふつうに新作ゲームが丸ごと1本入っているくらいのボリュームは必要だと思っています。日本で拡張パッケージといえば『FFXI』のイメージをお持ちの方も多いと思いますが、『World of Warcraft』や海外製のMMORPGに親しんできた人たちから見れば、コンテンツや新ジョブ、レベルキャップ開放があって当たり前になってくると思います。ですので、まずは世界中のプレイヤーの方に、満足していただけるだけのボリュームを、というのが『蒼天のイシュガルド』の目標です。ただ『World of Warcraft』の拡張パッケージも最近では2年に1度のリリース感覚ではなく、最近はコンパクトなサイズに収めて1年に1回発売という流れに変わりつつあるので、コミュニティの消化サイクルや、要求サイクルが早くなってきているのは事実だと思います。
──『蒼天のイシュガルド』のその先は、ボリュームよりも見た目の変化を優先……つまり、拡張パッケージを短い間隔で発売したほうが、より多くのプレイヤーのニーズにマッチするのでは、ともお考えなのですか?
吉田 ゲームがロンチして、最初の拡張パッケージが発売されるまでのあいだ、その中で遊べるコンテンツは同じシステム下で作られます。その後に拡張パッケージがリリースされると、そのつぎが発売されるまでのあいだは、大きく拡張された拡張パッケージのシステムのもとでの遊びがメインになってきます。つまり、拡張パッケージが入ってこないと、ゲームが変わらないとも言えます。近年、そのサイクルが短くなってきているという思いは確かにあります。実際に『ドラゴンクエストX オンライン』のほうが、拡張パッケージのリリース間隔が早いです。ボリュームとリリース速度は比例してしまいますので、悩ましいところではありますが、変化こそがMMORPGの醍醐味でもありますので、またプレイヤーの皆さんの声や、運営上の数値、市場の動向を見て、つねに考えて続けていこうと思っています。
現代人のライフスタイルにふさわしい発売サイクルを模索
──ほかのMMORPGの拡張パッケージに関する動向もチェックされているのですか?
吉田 世界中で発売されるMMORPGの拡張パッケージの動向を注視しているのですが、最近はそもそも拡張パッケージまで漕ぎ着けられるタイトルが少なくなってきているので……。拡張パッケージの発売ペースについては、悩ましいところではあります。もしかしたら、『蒼天のイシュガルド』の3.0シリーズを短めに切り上げて、当初の予定よりも早いタイミングで4.0シリーズに移行するかもしれません。
──『新生FFXIV』が、拡張パッケージの発売サイクルのモデルケース形成を担うことになるのでしょうか?
吉田 いいえ、そういう意識ではなく、お客様のプレイサイクルやライフサイクルに沿うべきだと思っています。ほんの少し前までは、ゲームやMMORPGというエンターテイメントの中で選択肢がそれほど多くなかったうえに、皆さんの生活サイクルももう少しゆったりした時間、いい意味で生活の中にゆとりがありました。現在はエンターテイメントや、それ以外の活動に対してさまざまな選択肢が存在するので、ゆとりがないとまでは言いませんが、ふだんの生活の中で時間の使いかたが難しくなってきている実感はあります。ゲームは娯楽ですし、プレイした実感が得られなければ意味がないものです。しかし、ゲームは受動型のエンターテイメントではなく、みずから行動する必要のあるエンターテイメントですので、充足を得られるまでには、ある程度の時間がかかるのも事実です。時間が足りないのが目に見えているのであれば、そもそもゲームに手を出さずにおこう、という判断に傾いてしまう時代です。そう考えると、ボリュームを広げようとして開発期間をかけすぎるよりは、比較的短いスパンでつぎの大きな展開を用意して、“劇場型”で楽しめるほうが、もしかしたらいまの生活スタイルに合っているのかもしれません。昔は、2年に一度の拡張パッケージの発売を楽しみに待つ方は多かったのですが、その長めのサイクルはもはやいまの時代にはなじまないと思うのです。……とはいえ、『蒼天のイシュガルド』は1回目の拡張パッケージなので、発売ペースを優先させるのではなく、どっしりとした作りになっています。
3ヵ月おきに大型パッチ公開の流れは今後も継続
──2015年春に『蒼天のイシュガルド』が発売された後も、パッチ公開の間隔は現在と変わらないのでしょうか?
吉田 変えるメリットをさほど感じていません。マイナーパッチを含め、できるだけ毎月何かを、とは思っていますが、メジャーアップデートの間隔をいまよりも短くすると、内容もボリュームも破綻すると思います。かといって、コンテンツを減らすことでメジャーアップデートのリリース間隔を短縮するのも、あまり意味がありません。期間としてのサイクルは、いまのところ変える予定はありません。メジャーアップデートを3ヵ月~3ヵ月半に一度リリースし、できればそのあいだに小規模な更新を2回公開するという現在の流れは、継続していくという考えかたです。
──合間のパッチについてはいかがですか?
吉田 大型パッチの合間に、新規コンテンツを含んだ小規模アップデートを毎回2回ずつリリースするという流れは、正直に申し上げて、いまでもギリギリの開発スケジュールです。もう少し無理なく開発サイクルを回せる方法はないものかと思案しています。
──ファンフェスティバル 2014の日本での開催で、吉田さんの口から初めて“パッチ3.1”という単語が語られました。こちらについてはいかがですか?
吉田 意図的にお話をしてこなかったわけではありません。忙しくて現実逃避したかったのかな(笑)。
──ということは、すでにパッチ3.0シリーズのロードマップは完成しているのですね。
吉田 大まかなストーリーの流れや、公開していくコンテンツの構想は、ひとまずパッチ3.5くらいまで叩き台がある、という感じです。
──そのパッチ3.0シリーズは、すべて2015年のあいだに収まりきるわけではありませんよね?
吉田 無理です(笑)。先ほど「アップデートのペースは変わらない」とお話しているので、『蒼天のイシュガルド』リリースから逆算していけば、だいたいのパッチ公開のスケジュールは予想できる……かもしれません。