対照的な視点で描く歴史“if”物語

 スパイク・チュンソフトから2015年2月11日に発売されるプレイステーション Vita用ソフト『憂世ノ浪士』。本作は、2015年1月29日に発売されたプレイステーション3用ソフト『憂世ノ志士』と、世界観をともにする幕末架空歴史アクションアドベンチャーゲームだ。徳川幕府に絶対的な忠義を誓い、京都で反体制勢力の取り締まりと警護に従事した組織“新選組”。倒幕と開国を目指した『憂世ノ志士』とは正反対であるこの新選組の視点で、日本がもっとも大きく揺れ動いた数年間……幕末期を新たな解釈で綴った超絶歴史“if”ロマンを体験できるのだ。

『憂世ノ浪士』プレイインプレッション――幕末期を新たな解釈で綴った超絶歴史“if”ロマンを体験_01
『憂世ノ浪士』プレイインプレッション――幕末期を新たな解釈で綴った超絶歴史“if”ロマンを体験_02

 新選組というと、これまでも誠の旗のもとで命を張って戦った若者たち、そして後の戊辰戦争から明治維新にいたる抗いと悲劇的な運命といった“物語の主役としての魅力”もあいまって、さまざまな物語で描かれてきた(数多くのゲームの題材にもなっているのも、ご存知のことだろう)。

 本作でも、歴史ファンにはおなじみの新選組の人物が登場する。しかし、『憂世ノ志士』がそうであったように、本作でも強烈なアレンジを経た人物設定となっており、史実を超えた活躍をする。ただでさえ“キャラが立っている(=個性が際立っている)”新選組のメンバーだから、本作での個性も突出している。そんな新選組に加わった主人公とともに、さまざまな戦いや事件に挑むのだ。

 ゲームシステム、プレイの流れ、バトルなどは機種が異なれども『憂世ノ志士』と共通。同じ感覚でプレイができる。シリーズ独自のテイスト(基本はシリアスな物語の運びでありながら、ツッコミどころ=コミカル性が随所に盛り込まれている)も健在だ。

 ただし、まったく同一ではないところがミソ。本稿では、その“違い”も踏まえながら、以下、『憂世の浪士』ならではの、プレイの楽しさにじっくり迫っていきたい。

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新人隊士、絵の才能を活かして難事件を解決!

 本作の主人公は、新選組一番隊隊長として知られる沖田総司(おきたそうじ)の甥、沖田芳次郎(おきたよしじろう)という青年。絵の才覚を持ちながらも、壬生狼(新選組の別称。町衆にとっては狼になぞらえて恐れられていた)に憧れて上洛した青年が主人公。叔父を頼りに、新選組の屯所(拠点)である西本願寺の門を叩くところから物語が始まる。

 やがて、覚悟と絵への誠実な取り組みが認められて、斉藤一(さいとうはじめ)率いる監察方(かんさつがた。京都で起こる盗みや殺しを調べて、犯人を探し出す役割)の一員となることに……。この役割からも察するとおり、本作は町で起こる事件の謎を解き、下手人(げしゅにん。犯人のこと)を見つけていくという“ミステリー小説”風のドラマを体験していく。

 基本的な流れは、倒幕を巡って暗躍する長州や薩摩といった諸派が絡み合う、ミステリー風味の奇妙な事件を解決することになる。ひとつの事件を解決したらひとつのエピソードが完了という、時代劇ドラマのようなテンポで進む。事件解決のカギを握るのが、主人公の“絵の才能”と、若さゆえの(ときには暴走しがちな)“行動力”。事件現場をみずから絵でしたためて(浮世絵を描くモードで写しとる)、その絵を使って推理を進めていく、対象人物を尾行するといった、本作独自の、いかにも推理モノらしいイベントもあり、プレイの楽しさを広げてくれる。

 メインミッションはそのつど設定された目的(“○○へ行く”、“○○を倒す”といったもの)をクリアーし続けることで話が進むという『憂世ノ志士』と同一の形式なのだが、ボリュームたっぷりの物語でストーリーの世界に引き込んで、二転三転する展開を読んで楽しむスタイルとなっている。坂本龍馬としてチャンバラに次ぐチャンバラ……とアクションシーンを存分に楽しむ『憂世ノ志士』、ドラマ性を重視して矢継ぎ早に起こる不可解な事件を追って楽しむ『憂世ノ浪士』という違いがあると思っていただいてもいいだろう。プレイ環境に合わせたゲームテイストの“区別”はなるほど、といったところ。

 とはいうものの、時代劇の華であるチャンバラシーンは十分味わえるようになっているので安心してほしい。推理要素がプラスされ『憂世ノ志士』とまったく同等のクオリティーの“カブキチャンバラ”(詳しくは紹介記事“幕末if世界への道しるべ【第3回】(こちら)、『憂世の志士』プレイインプレッション記事を見てほしい)が、ガッツリと楽しめるのだ。同じ操作方法、仕様でド派手なバトルがPS Vitaでも楽しめる!