●プレイヤーを引き込むブッ飛びの(?)歴史“if”物語

 スパイク・チュンソフトから2015年1月29日に発売されるプレイステーション3対応の『憂世ノ志士』。黒船来航に端を発する200年続いた徳川幕府体制の揺らぎが起こる。国の未来を憂う者たちが、忠義と理想を抱き日本の未来のために戦った動乱期……いわゆる幕末期を舞台に、後の明治維新の礎を築いた志士、坂本龍馬を主人公にした“架空歴史”アクションアドベンチャーだ。史実のエピソードを軸にしながらも、スタイリッシュに描かれた歴史上の人物が活躍する架空歴史活劇が展開するぞ。本稿では、この超絶歴史“if”ロマンを体験する本作のレビューをお届けしよう。

 主人公は前述したとおり、歴史上に名高い土佐藩出身の志士、坂本龍馬だ。ただし、本作の龍馬は記憶を失った人物として現れる。ゲームの冒頭では、長崎の出島で記憶をなくした状態で目が覚めるところから始まる。さらに目覚めたとき片手には絵筆も。浮世絵の才覚に優れているという設定のもとで、物語が始まるのだ。
 出島とは、江戸期で海外交易が唯一許されていた長崎の一区画。本作でも西洋風のレンガ建築と長屋建築が共存する和洋折衷の街が描かれているが、まずはこのエリアを舞台にしてミッションをこなしていく展開となる。
 出島の貿易商であり、龍馬たちの世話人でもある女傑、大浦慶(おおうら けい)、龍馬を慕う娘、お龍(おりょう)、そして幕府の海軍奉行でありながら開国論者として国を変えようとする男、勝海舟(かつかいしゅう)の手ほどきを受けながら、みずからが海援隊という志士たちの組織の長であることを知らされる。そして、幕府側の中心人物としてなぜか出島に現れた新選組隊長・近藤勇(こんどういさみ)の動向などから幕府の不穏な動きを察知して、京都へ上洛する、というのが物語の動機となる部分だ。
 ここまで語った人物はいずれも幕末期に実在した歴史上の人物なのだが……歴史に明るい人ならば、この時点でも大胆にアレンジを施した架空歴史のドラマとなっていることがおわかりいただけよう。なぜ、新選組隊長が出島に? 出島の豪商として知られる大浦慶が海援隊のパトロンに? そもそも龍馬がなぜ絵師兼剣士に?(実在の坂本龍馬は生涯一度も剣で人を斬ったことがないという)……などなどツッコミどころ満載の“暴走気味”な「もしも」のエピソードや人物描写が満載。このツッコミどころだらけであることこそ本作のスパイスであり、最大の魅力となるところだ。史実の出来事とリンクしたストーリーが、ときにはコミカルなエピソードとして、またあるときには陰謀渦巻くシリアスなドラマとして描かれており、「えっ、これがアノ人?」、「えっ、これがあの出来事とそうつながるの!?」という驚き(あるいは笑い)がつねに待っているのだ。この虚実の絶妙なアレンジの妙は、ぜひみずから物語を追って楽しんでほしいところ。そして、全力でツッコミ(?)をしてほしい。最初は小さな「えっ?」が、開国を目指す志士たちのエピソードを進めるうちにきっと大きな「ええええーっ!!」となっていくだろう。

 物語は“メインクエスト”の目的(○○へ行く。○○を倒すなど)を果たすことで進行するのだが、大きな話の節目でひとつの話が完結するというもの。各話の終盤には必ず大どんでん返しや、決定的なセリフといったハイライトシーンも待っている。メリハリのある展開でグイグイと壮大な世界に没頭させてくれるのもいい。もちろん、歴史を知らないと楽しめないというわけではなく、幕末期の歴史をまったく知らない人にも問題なく楽しめるシナリオとなっているので安心してほしい(おまけ要素として、幕末用語集や対立勢力図も用意されている。項目や図はドラマの進行に応じて変化するのは、ささやかながらうれしい配慮だ)。

世界観と登場人物 ~超絶架空幕末ロマン~

●戦うほどに強さと気持ちよさを実感! “カブキチャンバラ”

 本作では時代劇の華ともいえるチャンバラも大きなお楽しみ要素となっている。メインクエストの一環として、あるいは任意のタイミングでバトルシーンが発生して、これらのバトルは剣と剣を交える形で展開する。本作ではバトルを“カブキチャンバラ”と称しているが、その意味することは「ド派手で爽快感たっぷりのチャンバラ」ということ(詳細は紹介連載記事3回目を参照してほしい)。鮮やかな“連続攻撃”、渾身の力を込めた“溜め攻撃”、相手を空中に舞い上げる“打ち上げ”といったアクションがそれぞれボタンに割り当てられたシンプルな操作体系で、空間をフルにつかった時代劇さながらの(そして、ときには時代劇を超越したアクションの)チャンバラが体験できるという次第。
 相手の剣を直前でガードすることで、とっさに反撃の行動に移せる“魅切り”のタイミングも決してシビアではないので、慣れさえすれば思いのほか意のままに出せるようになる。またバトルを重ねることで得られる習得ポイントを消費することで、技の数=アクション数はどんどん増えるので、行動もより自由かつ多彩になる。
 このようなことから、プレイを進めるほどに、自分でもホレボレするような(?)カッコいい剣術で闘えるようになる。
 アクションゲームなので、もちろんプレイヤーの技術は重視されるのだが、基本のタイミングさえ経験的に把握すれば手グセだけでもじゅうぶん闘えることも特記しておきたい(じつは、大きなダメージを与えるには「武器の耐久度の管理をしっかり行う」、「敵に合った種類の武器を選ぶ」ことも大事になる)。難度をわざわざ落としているというネガティブな意味ではなく、仕様や操作体系の工夫によって万人に“チャンバラ”のスピード感や鮮やかな剣さばきが体感できるようにした……という印象だ。「上手な人も、そうでない人もしっかり楽しめる」というアクション要素のバランス感覚は、さすが『侍道』などチャンバラアクションのゲームを数多く手がけているスパイク・チュンソフトならではと感じた。

バトルについて ~“カブキチャンバラ”で斬る!~

●出島、京都、江戸の幕末ライフを満喫! 

 いわゆるオープンワールド(自由にフィールドを往来できる世界)風のフィールドを行き来しながらさまざまな出来事を体験していく本作。前述のようにメインクエストをこなしていくことで物語は進行するのだが、それ以外にもゲームの楽しみかたは山盛りだ。
そのひとつは、口入屋(くちいれや)や、浮世絵屋で請け負うことができる“町衆の依頼”をこなしていくこと。人の数だけ困りごとがある……という感じでさまざまな依頼が登場。依頼をこなすために町のスミズミまで巡るのは探索気分も相まって楽しいぞ。また、特定の条件下では、メインシナリオにも影響がある“サブクエストが発生することも。登場人物のユニークなエピソードが体験できるので、マップ画面の“?”マークがあるところは積極的にマークするようにしよう。
 ほかにも、思いのままに浮世絵を描きまくってコレクションを増やす、オンラインを通じて自分の浮世絵作品を公開するといった“浮世絵師ライフ”を極めるのもよし、幕末の伊達男(女?)としてファッションのコーディネートを追求するのもよし……と、いろんな遊び方ができる。広大なマップ、強力なカスタマイズ性、多彩なコレクション要素が多彩な過ごしかたを約束するぞ。
 (ある程度進めなければオープンにならない仕様やフィールドはあるものの)メインクエストに縛られることなく架空の幕末世界の生活が謳歌できる“緩さ”は、密かに本作で重要なポイントだと思う。「膨大なクエストをこなさなければ、ほかの要素が楽しめない」といったクエスト受注型ゲームにありがちな制限や忙しさに追われることはなく、プレイヤーそれぞれのペースで架空の幕末ライフが謳歌できるのはうれしい。

 “歴史モノ”という固定観念にとらわれずに、ぜひ気軽な感覚で楽しんでみてほしい。八月十八日の政変、薩長同盟、池田屋事件など龍馬でお馴染みのエピソードなどを経て、超絶歴史ドラマが織りなす壮大なエピソードや、ありそうでない世界観に夢中となるハズだ。日本の未来を変える志士、坂本龍馬の生きかたはプレイヤーが決める!?

幕末を遊び尽くす! ~浮世絵とコスチューム~


憂世ノ志士
メーカー スパイク・チュンソフト
対応機種 PS3プレイステーション3
発売日 2015年2月11日発売予定
価格 7800円[税抜](8424円[税込])
ジャンル アクション・アドベンチャー