明日2023年7月23日にTOKYO MXほかにて第9話~第12話が一挙放送されるアニメ『NieR:Automata Ver1.1a』(ニーア オートマタ)。
放送を前にゲームでプロデューサー、アニメでスーパーバイザーを担当する齊藤陽介氏、ゲームでディレクター、アニメでシリーズ構成を担当するヨコオタロウ氏、ゲームでシニアゲームデザイナー、アニメでひとりのファンである田浦貴久氏にお話をうかがった。
ちょっと普通に書けない裏話やゲーム開発を経験した面々だからこそ言えるなど、いつものメンバーで『NieR』らしくゆるりと展開したトークをお届けする。
なお、本稿にはアニメ『NieR:Automata Ver1.1a』の軽微なネタバレが含まれる。
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1970年生まれ。神奈川県出身。神奈川大学を卒業後、1993年に株式会社エニックス(現:株式会社スクウェア・エニックス)へ入社。現・取締役兼執行役員/エグゼクティブ・プロデューサー。
『ドラゴンクエストX オンライン』や、『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』、「NieR」シリーズ(※)、「Voice of Cards」シリーズに加え、現在はアイドルグループ「GEMS COMPANY」のプロデューサーも務める。
また過去にもプロデューサーとして、『アストロノーカ』、『クロスゲート』他、多くの作品に携わった。
※『NieR』シリーズ
『NieR Gestalt/Replicant』、『NieR:Automata』、『NieR Re[in]carnation』、『NieR Replicant ver.1.22474487139...』
アニメ『NieR:Automata Ver1.1a』ではスーパーバイザーを務める。文中は敬称略。
ヨコオタロウ
株式会社ブッコロ代表取締役兼ゲームディレクター。
1970年生まれ。愛知県出身。神戸芸術工科大学を卒業後、株式会社ナムコ、株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメントを経て、株式会社キャビアへ入社。
デザイナーとして経験を積んだ後、「DRAG ON DRAGOON」シリーズや『NieR Gestalt/Replicant』のディレクションを担当する。
株式会社キャビアを退社後は株式会社ブッコロを立ち上げ、2017年には『NieR:Automata』をリリース。最新作「Voice of Cards」シリーズでは、クリエイティブディレクターを務める。
その独特な世界観や物語は「ヨコオワールド」と呼ばれており、スマートフォン向けアプリ『SINoALICE』、『NieR Re[in]carnation』に加え、漫画『君死ニタマフ事ナカレ』や『吉野家兄弟』、更には舞台の原作など、幅広く活躍する。
アニメ『NieR:Automata Ver1.1a』ではシリーズ構成を務める。文中は敬称略。
田浦貴久(たうらたかひさ)
2011年にプラチナゲームズに入社後、ゲームデザイナーとして『MADWORLD』、『MAX ANARCHY』、『METAL GEAR RISING REVENGEANCE』、『The Wonderful 101』、『The Legend of Korra』の開発に従事。主にプレイヤーキャラクターや敵キャラクターのアクションに関するパートを担当。
『NieR:Automata』ではシニアゲームデザイナーを務めるなど、アクション制作の要として活躍。2019年には、自身初のディレクション作品となる『ASTRAL CHAIN(アストラルチェイン)』が発売。Nintendo Switchで好評発売中。
アニメ『NieR:Automata Ver1.1a』では視聴者と同じくひとりのファン。特技はナチュラルボーンセクシー。文中は敬称略。
いま(だいたい伏字で)明かされる“9S●●事件”とは……
――ファンの方にはおなじみのところではありますが、皆さまがゲーム・アニメ『NieR:Automata』でご担当いただいた箇所をお聞かせください。
齊藤ゲームではプロデューサーをやっていました。アニメでは……最初はアニメ側とゲーム側で齊藤にどのようなポジションを与えようか、ひと悶着あったそうです。結局、スーパーバイザーというポジションをいただいていますが、基本的に何もしていません(笑)。
ヨコオゲームではディレクターでした。アニメでは、監督と共同でシリーズ構成という役割になっています。基本は監修をしていたのですが、あまりにも自分が口を出してしまうものですから、「責任を持て」という意味でシリーズ構成という名前を付けられたんだと思います。
ただ、シリーズ構成とは名ばかりで、通常のシリーズ構成さんほどはかかわっていません。なので、監修以上、シリーズ構成未満な感じですね。
田浦ゲームではシニアゲームデザイナーとして、ゲームの実装にかかわる部分全般を担当していました。アニメはかかわっていないので、ただ楽しみに待っているひとりの視聴者です。
ヨコオ今日は田浦さんを中心にインタビューすると聞いてきました!
――皆さまにお話を聞きつつ、もちろん田浦さんにもじっくりお話を聞いていければと思います!
ヨコオこのインタビューの後ろに田浦さんのグラビア掲載されるんでしたっけ? シャワーシーンのやつ。
田浦つくわけないでしょう!(笑)
齊藤つかないんだ。
――残念ながら(笑)。2017年2月のゲーム発売からアニメ化まで期間が空く形になりましたが、アニメ化の企画自体はいつごろからスタートしていたのでしょうか?
齊藤もともと私がアニメをやりたかったんです。いろいろお声はいただいていたのですが、なかなか難しいところがありました。
そんな中、アニプレックスの松本プロデューサーと折り合いがつきまして、お話自体はゲームの発売年である2017年にはあがっていました。そこから紆余曲折あり、アニメ化するまでの大変さを経験して、いまに至ります。
――製作期間についてお聞かせください。
ヨコオおおよそ2~3年でしょうか。発売の年に齊藤さんから「アニメをやりたいプロデューサーがいる」と松本プロデューサーを紹介いただいて、ご挨拶はしたものの、その後しばらく進展や音信がありませんでした。
「ひょっとしてあの企画はなくなったのかな?」と思っていたら、唐突に松本プロデューサーから「やるのです」という言葉とともに連絡がきました。
齊藤社内調整など、いろいろと奔走してくれていたんですよ。
ヨコオそのときの松本プロデューサーの手は、血に濡れていた気がします……。
――いったい松本プロデューサーの身に何が(笑)。製作が始まったのは意外と直近なんですね。
齊藤そうなんですよ。アニメはどうしても制作会社や監督をはじめスタッフの選定などがありますから、どういうチームにすればよいかを検討してくださったんだと思います。それに『オートマタ』はゲーム原作のストーリーもありますよね。
――たしかにアニメ制作陣もゲーム版を理解する時間などが必要だと思いますし、どうしても時間はかかりそうです。ちなみにヨコオさんは、シリーズ構成として監修をされているとのことでしたが、具体的にどのようなことをしていたのでしょうか?
ヨコオ最初の話から言うと、あがってきた脚本、つまりプロットですね。プロットを確認したとき、あまりにもゲームと内容が同じだったので、「変えたいです」と申し立てたんです。
自分が出した最初の案は、いろいろな諸事情でボツになってしまいましたが、つぎの案からは取り入れていただいて、そこから「シリーズ構成をやりますか」と相談された流れになります。
最初の段階はゲーム版を尊重していただいて、ほぼゲームをなぞっているものでした。僕自身、同じものを見てもしょうがないし、ファンの方もゲームとは違うものを期待しているのではないかと思い、最終的にはゲームのよいところとアニメのオリジナル部分でうまくバランスをとる方針に決まりました。
松本プロデューサーはゲームに準拠するポイントを守ろうとして、僕はゲームから遠ざけようとする。その距離感でやっています。チーム内で語られる“9S●●事件”とかすごかったですよ。
――9S●●事件!? 詳しく聞かせていただいてもよろしいでしょうか……?
ヨコオ僕がプロットの中に9Sと2Bが●●をするシーンを入れたら、松本プロデューサーから「9Sは●●はしないのです」とのご神託がありまして、そのシーンは削られることになりました(笑)。
ファンの方が嫌がることを懸念していたそうです。僕はゲームもアニメも作品はお客様のものだと思っています。その作品を楽しんでくれるお客様の視点に近い位置にいる松本プロデューサーが止めたということを理解してボツにしました。
――そうだったのですね。ゲーム本編とアニメで、同じ内容にしなかったことについて、ほかに何か理由があるのでしょうか。
ヨコオ僕がなぜゲーム本編と同じにしなかったか、田浦さんに答えてほしいですね。
田浦えぇ!? なんで僕が答えるんですか(笑)。あれですよね。表現は違えど、1回作ったものをもう1回作るのは気が乗らないから、やるならいろいろ変えたいなとか、そういう感じじゃないんですか?
ヨコオそうだけど、そういうのじゃなくて、もっと核心に迫るような「ヨコオさんはこういうクリエイターだから」みたいなのが欲しいです。
田浦ヨコオさんがゲームのディレクションをしていたときは40代、アニメは50代になったので、50代という節目で何かがあったんですよ。
40代のときのヨコオさんは9Sに●●なんて絶対にさせないですから。それを入れるということは、●●●が●●●●●●する雰囲気を、自分の中で咀嚼できるようになったのではないでしょうか。
ヨコオ俺は50代になるまで●●のなんたるかを、わかっていなかったみたいです。
田浦ヨコオさんは、長い思春期を過ごしてたんですよ。ようやく大人になったんです。
ヨコオたしかに言われてみると●●は書いてこなかったし、書いてもボツでしたからね(笑)。出しどころも難しいんです。
アフレコでリテイクをいただくヨコオさん。そしてプラチナゲームズの“気持ち”
――伏字まみれになってしまうので、この話題は切り上げさせていただいて……。アニメの収録現場にはヨコオさんと齊藤さんは立ち会っていないとお聞きしました。
ヨコオご挨拶にいったくらいですね。
齊藤そうですね。最初のころに行ってからそれっきりでしたね。というのも、プロの方々にお願いしていますし、ゲームでお願いした方々が大勢いらっしゃるので、自分は台本さえ合っていれば問題ないかと思っています。
ヨコオそもそも益山監督が仕切る現場で、感覚を統一させなければいけないので、そこに僕たちが行って指摘をするのは違うと思っていますから。
ゲームの収録では僕もいますが、ゲームクリエイターは必ずしも録音現場にいるとは限らない感じですね。僕はゲームのときは細かくお願いする派ですが、お任せする方々もいらっしゃいます。
田浦僕もゲームの収録は細かくお願いするときと、お任せするときが半々くらいですね。
あ、そういえばヨコオさんと齊藤さんは、アニメで声優として出演してるじゃないですか(第1話に登場するエンゲルスの声優はヨコオさんと齊藤さんが担当)。
齊藤いや、あれは益山監督がどうしてもという話だったので、頑張りました……!
ヨコオエンゲルスは頼まれてやりましたが、そのほかにも、たまたま現場に挨拶に行ったときに、機械生命体の兵士を急にお願いされました。急なうえに素人だったのに、普通にリテイクとか受けましたからね。
齊藤あ、そうそう。なんならエンゲルスよりリテイク多かったよね。
一同 (笑)
ヨコオほかの声優さんは、機械生命体をどういうニュアンスで演技しているかわからないので、ロボットみたいに演じればいいのか、普通に演じればいいのかわからなくて。何もわからないまま収録したら案の定NGくらって、その場で試行錯誤しました。
田浦『NieR』だからといって、ヨコオさんがやる演技が正解になるわけじゃないんですね。
ヨコオそうなんですよね。ゲームはゲーム、アニメはアニメの音の処理があるので、それに流すときにどういう声であるべきかは違うんだと思います……たぶん。
――何気ない裏話が飛び出しましたね。プラチナゲームズさんは制作協力ということでクレジットされていますが、主にどのような面で協力しているのでしょうか。
ヨコオ気持ちです。
齊藤気持ちです。
田浦気持ちです。
――ゲームで使用されたデータなどの提供は……?
齊藤はい。もちろん、気持ちだけじゃないですよ(笑)。ゲームのときのモデルデータをはじめ、プラチナゲームズさんに作っていただいたものは、スクウェア・エニックスからA-1 Picturesさんに資料として渡しています。
ヨコオ先ほどの話にあった音の処理も、データの参考に詳細をお渡しして、それをもとにしてアニメで微調整を行っています。
田浦というふうに過去のデータをお渡ししているだけで、間接的にかかわっている感じですね。新たに弊社が直接何かをやっているわけではないんです。だから、気持ちです。
お待たせいたしました田浦さんパート。マジメにアニメの見どころを聞いていきます
――はい。ゲーム制作時のアツい気持ちがアニメにも生かされているということですよね。そろそろ田浦さんパートに入らせてください。
ヨコオよし。
田浦よしってなんですか。
――田浦さんといえば、ゲーム版でメインプランナー/ゲームデザイナーをご担当されていました。そんな田浦さんから見る、アニメ版の2Bや9Sたちのアクションはいかがでしょうか。
田浦(ヨコオ)そりゃあ、物足りないですよ。
田浦なんで代わりに答えるんですか!?(笑)
ヨコオえ、違うの?
田浦えぇ……物足りないとかないですって。
田浦(ヨコオ)やっぱり●●のシーンはほしかったですね。
田浦ちょっと(笑)。マジメな話をするとゲームとアニメでは媒体が違いますからね。ゲームはプレイヤーさんの操作次第で自由な角度から楽しめますが、アニメはかっこいいカットで魅せてくれるんです。
ゲームを作ったときに、頭で思い描いたものがありますが、それでもゲーム画面には出てこないようなかっこよさ、やりたかったことをアニメのカットで再確認させてもらって、すごくありがたいなと思いました。
ヨコオアニメで動くと、ありがたさあるよね。ボーヴォワール戦とか、とてもよく絵が動いていて、すごくありがたかったですね。
田浦機械生命体に関しても、ゲームでちょっとおふざけで作ったようなキャラクターが、しっかりアニメにも登場していて、すごくゲームから引っ張っていただいていて、とても楽しく観られています。
ヨコオ益山監督がすごく丁寧に、原作のエッセンスを入れてくれるんです。益山監督の背後に誰かがいるのかと疑ってしまうくらいですが、本当にすごく細かいとろこまで拾ってくれてありがたいですね。
田浦あと、アニメだと2Bと9Sの何気ない会話シーンをはじめ、日常っぽい雰囲気がいいですよね。ゲームだとなかなか表現できない部分で、その一面を見られるのが好きです。
人にもよりますが、アクションゲームなのも相まって、大多数の方は自分で操作をしているときに、わざわざゆっくり歩かないんです。アニメだと、そういった部分を大きいカットで見せてくれるので、派手なシーンではないですが、いいなぁと思っています。
――田浦さんから見て、アニメに関することで、齊藤さんやヨコオさんにお聞きしたいことはありますか?
ヨコオいい質問ですね。
田浦ん……? いや、ちょっと待ってください。インタビューアーさんが仕事放棄しませんでしたか?
――齊藤さんとヨコオさんは、これまで自分のかかわった作品がアニメ化したことはありますか?(プラチナゲームズの田浦貴久さんからの質問)
ヨコオ初めてです。
齊藤初めてだったと思うなぁ。
――なんでアニメ化できたと思いますか?(プラチナゲームズの田浦貴久さんからの質問)
ヨコオ田浦さんのおかげですよ。
齊藤松本プロデューサーのおかげです。
――自分が何かしたからとかないんですか?(プラチナゲームズの田浦貴久さんからの質問)
ヨコオないね。
齊藤ないです。
田浦ないらしいです。
――ありがとうございます。もう質問は大丈夫でしょうか。
田浦いやあ、あるはあるんですけど……。
齊藤聞いちゃえばいいじゃん。
――ぶっちゃけ、アニメっていくら掛かっているんですか?(プラチナゲームズの田浦貴久さんからの質問)
齊藤え、これってさ●●●●●●●●?
ヨコオさあ。●●●●●●●●じゃないですか。
齊藤ヨコオさんの懐に●●●●●●●●ます。
ヨコオえ、そうなのかな。まったく確認してないです。
~~以下、割愛~~
田浦これ何も書けないですよね?(笑) ただ、ヨコオさんが頑張った結果がつぎの作品に繋がってくれるとうれしいです。
いま動いている作品もいいですけど、やっぱりファンはその先のことも見てみたいですから。
ヨコオじゃあ、田浦さんに投資して、なんか作ってって言います。そういうのがいい。
田浦いや、それはいいです。
アニメならではの表現を語る。ゲームを遊んだ人、アニメから入った人、舞台から興味を持った人にも刺さる魅力
――それもそれで見てみたい気もしますが……。お話を少し戻します。ゲーム版では細かいアクションを手掛けた田浦さんだからこそ思う、注目してみてほしいと思ったシーンや話はありますか?
田浦注目してほしいところで言うと、第6話は舞台ヨルハで登場した人たちが出てくるので、アクションとか関係なく、見てほしいですね。
ゲームをしていなくて、舞台だけ見ている人の感想も観たことがあります。舞台、ゲーム、アニメと、ファンの方でいろいろな入り方があると思いますが、そこがつながる瞬間が垣間見えたので、すごくよかったです。
第1話は、意図してゲームの最初の部分をアニメーションで再現している印象を受けました。本当にそのまま、自分たちがゲームでやろうとしたことがアニメになるとこうなるんだというのが実感できましたね。比較という意味でも、ゲームからでも、アニメからでも楽しめるような素晴らしい導入だったと思います。
――第1話は、ちょうどゲームの体験版くらいの物語ですよね。
田浦ちょうどそうですね。
ヨコオ体験版はバンカーのシーンがなかったけど、ちょうどそのくらいですね。あとはシューティングがなかったくらいかな。
――第6話は、レジスタンスに関連した話があり、ゲームだけをプレイしているファンには馴染みがないと思いますが、あえて入れ込もうと思ったのはなぜでしょうか?
ヨコオ映像にもなっていないし、ゲームでも日記で見られる程度なので、そこを補強して伝えられると、A2というキャラクターの掘り下げにもなるかな、と思って入れさせていただきました。
――小ネタで、カイネが出てきたり、仮面の街が出てきたりしましたが、これらは益山監督が小ネタとして入れたものでしょうか?
ヨコオあれは益山監督のサービスですね。これは僕が入れたいと言った記憶はなくて、監督が「あれを入れましょう」と進めていて、僕はカイネを入れることを話した記憶すらないのでサービスで入れてくれたんだと思いますよ。
田浦でも、ああいうのがあるとファンとしては盛り上がりますよね。
――ファンなら気づくポイントですし、第2話は『ドラッグ オン ドラグーン』の例のシーンが入っていたところも注目されていました。放送前ですが、取材のために先のお話の資料を拝見したら●●●●●●●●●みたいなことも書いてありましたね。
ヨコオそれも監督の仕業です(笑)。僕も放送を楽しみに待ちたいと思います。
――視聴者の方にも、ぜひ集中して探してみてほしいですね。皆さんの思うアニメならではの見どころや魅力はどこでしょうか。
ヨコオ好きなシーンはたくさんありますが、アニメ版ならではで言うと、視点が飛ぶ、というところでしょうか。例えば第6話で言うと、真珠湾降下作戦が描かれるときに、歩いている現在のリリィと過去のシーンが交互に出てきます。
あれはゲームだと、作りにくい演出なんです。プレイヤーキャラが真ん中にいて、視点が切り替わらないのが基本なので。もちろんできなくはないですが、あんまりやってしまうと基本が崩壊してしまうので、ああいうのは映像表現らしくていいな、と。
あとは、2Bが海辺でゴーグルを外してすごい素敵な表情をするシーンがありますが、寄ったときの表情のニュアンスとかディティールの出し方は、CGではない、アニメならではの情感があるなと思っていました。
あれはみんな好きになっちゃう顔ですよね。サークルクラッシャーみたいな顔してる。ゲームだと入れにくいシーンですし、ゲームのCGでやるのは難易度が高いと思います。
齊藤残り4話一挙放送の直前で、おそらく視聴者は、どこまで物語が語られるんだろうと気になっているところだと思うので、ぜひ予想してほしいです。
第8話が、水没都市で何やら怪しい影を見かけたところで終わっています。残りの話数でどこまで語られるのか、楽しみにお待ちいただけると。ゲームとどう変わっているのか、もしくは変わらないのか、そういったところも楽しめるのがいいところなので、皆さんの反応を楽しみにしています。
ヨコオ一挙放送ということで、毎週やるのではなく、一気に2時間固めて放送する普通では見ないタイプの放送になるので、チャレンジだと思います。放送直前まで、本当に4話入っているのかな、というドキドキ感、イベント感がありますね。
ちなみにあれは松本プロデューサーが考えたんですか?
松本プロデューサー そうですね。大変お待たせしているので、できるだけ早く観ていただきたいというのもありました。配信でも一気に4話公開しますので、もう少々お待ちください。
――ありがとうございます。水没都市の話が出ましたが、ジャッカスのキャラの立ち方が気になります。ゲームだとアニメに比べて相当、目立っていますよね。
ヨコオぶっ飛んでいますよね。プロットというか、シリーズ構成を作っている段階で、ヨルハ部隊以外に登場するのは、レジスタンスキャンプと機械生命体、あとはバンカーのグループがほとんど、という構造になっていました。
レジスタンスキャンプにいるのが、ゲーム版ではアネモネですが、アニメ版はリリィです。レジスタンスキャンプ内でも会話を盛り上げられるような立ち位置のキャラクターとして、ジャッカスをピックアップしています。
――それにしても、まさか『NieR』のアニメで水着回(※)があるなんてと驚きました。
※水着回:昨今のアニメではお約束的に入れられる、フレッシュな水着シーンが楽しめる話数のこと。ラブコメや学園ものなどに挿入される確率が高めであり、骨太な作品で水着回が入るのはかなりレア。
ヨコオあれは監督が入れたやつです。2Bの水着がダメだとは言っていないんですが、気づいたらジャッカスになっていました。
田浦僕は2Bの水着がよかったですけどね。
ヨコオ田浦さんは、2Bに着せるならどんな水着がいいの?
田浦(熟考)
ヨコオいま、最初にぱっと思いついて、やめようと思ったやつを口に出してほしいですね。
田浦……ビキニではないですし、ジャッカスみたいな赤でもないです。
ヨコオマイクロビキニだそうです。
齊藤なるほどなあ。
――……なるほど。ゲーム版では複数のエンディングが用意されていましたが、アニメでのエンディングも気になります。ネタバレにならない範囲で9話以降の見どころを教えていただけますか?
田浦9Sと●●が●●をします。
ヨコオそれはボツになった案です……。
田浦正直、僕はアニメにはノータッチですので、本当に内容を知りません。いち視聴者としてすごく楽しみです。
ヨコオシリーズ構成を出したのがかなり前なので、脚本のチェックもずいぶん前に終わっているんです。アニメが放送されるたびに「こんな話だったっけ?」と思います。
自分でも内容をかなり忘れているので、毎話感心しながら見ています。いちいち確認していないので、自分が合意したシナリオから変わっているのかもしれないのですが、おもしろいからいいかなと。
ゲームをやったことがない方も楽しめますし、アニメはゲームから変えているので、ファンの方も楽しんでいただければいいなと思います。ゲームのエンディングは、コンピューターゲームならではの仕組みを使っているメタなネタが多いので、それをアニメでやるのは無理がある。
どういう形で見せるのがいちばんよいのか監督が最も苦悩したところなので、ぜひ注目してほしいです。
齊藤私は、第6話もそうですが、アニメならではのシナリオが入ってきている中で、残り4話も大きな転換があるかもしれないので、おっかなびっくり待っていただきたいと思います。
「そんなに変わるの!?」とはならないかもしれませんが、アニメならではの展開もありますので、ぜひ楽しみにお待ちいただければ。
ヨコオこれは僕だけかもしれないですが、アニメは毎回「あれ、もう終わったの!?」と驚きます。情報量が多いのか、理由はわかりませんが、本当に毎話驚いています。益山監督のテクニックで情報量が多いながらもスピード感のある演出をされているんだと感じていますね。“マスヤマジック”です。
アニメ『NieR:Automata Ver1.1a』Chapter.9-12 ティザー予告
――私も本当にそう感じます。アニメは気が付いたらエンディングが流れているんですよね。ぜひ、ゲーム未プレイの方に向けたオススメポイントも教えてください。
田浦アニメを見ていたらそれでいいと思いますが、じつはゲームをプレイすると2Bを動かしたり、下から眺めるたりすることもできるので、興味が出たらゲームも遊んでみてほしいですね。
ヨコオアニメだけ観ても成立するように、益山監督をはじめ、A-1 Picturesさんにお願いをしていて、「ゲームをやらないとわからない」はあまりやりたくないという話からスタートしているんです。なので、アニメだけを見ても、わからないところはないんじゃないかと。そういう努力をしています。
逆に、アニメを全部見た方がゲームをプレイしても、それはそれで別の楽しみがあると思います。ただ、ひな鳥の刷り込みじゃないですけど、アニメから入った人は、アニメのほうがいいってなりそうですよね。
齊藤ゲーム未プレイの方が何をきっかけに観るかはわからないですが、きっかけとしてはAimerさんが歌うオープニングテーマ『escalate』から入っていただいてもおもしろいですよね。とてもいい曲で、映像も素晴らしいものを作っていただいています。
アニメ『NieR:Automata Ver1.1a』ノンクレジットオープニングムービー
エンディングもゲームでお世話になったamazarashiさんの『アンチノミー』が素晴らしい曲で、その曲を聴くだけでもいいと思います。とくにamazarashiさんはゲームでも深くかかわっていただきました(※)。楽曲きっかけで、ゲームやアニメに触っていただけるとうれしいです。
※『NieR』ファンでもある秋田ひろむさんを中心としたバンド“amazarashi”は、ゲーム『NieR:Automata』とのコラボレーション楽曲『命にふさわしい』を担当した経緯がある。『アンチノミー』でも、楽曲を聴いたヨコオさんがオリジナルの人形劇を書き下ろしている。
amazarashi 『アンチノミー』Music Video YOKO TARO Edition | NieR:Automata 1.1a ED曲
――最後に明日のアニメ放送を楽しみに待っている皆さまにメッセージをお願いいたします。
田浦ヨコオさん、齊藤さんとは違い、残り4話を待ち望んでいる皆さまと、まったく同じ気持ちです! 僕もこのお祭りを楽しみにしています。
齊藤『NieR:Automata』の5周年を記念したファンイベントで、700万本を発表、その後に750万本を発表しました。
アニメがきっかけでゲームをプレイされる方もいるかとは思いますので、これを機に800万本を皆さんと一緒にお祝いできたらうれしいですね。引き続き、アニメもゲームも応援をしていただけたらと思います。
ヨコオ残り4話というところで、僕のところに最初にチェックで回ってきたのが第10話で、第9話が飛んでいるんですよね。なので、じつは第9話で何が起きたのかわからず、僕としてもすごくドキドキしています。
明日、どういう理由で第9話がそうなったのか、放送で確認することになるかもしれません。
あ、もうちょっとオシャレなコメントしますか?
――――え、十分素晴らしいコメントをいただいたと思いますが、お願いしてみてもよろしいでしょうか。
ヨコオ大丈夫です。田浦さんがどうにかしてくれます。
田浦やめましょう!
――ですよね(笑)。皆さま、ありがとうございました!
放送再開記念生配信が明日(7/23)18時より実施
7月23日18時よりDMM TV、アニプレックス公式YouTubeチャンネルで、アニメ『NieR:Automata Ver1.1a』の放送・配信の再開を記念した生配信が実施される。
『NieR:Automata』のクリエイターである齊藤陽介氏、ヨコオタロウ氏、岡部啓一氏、田浦貴久氏をはじめ、アニメ監督の益山亮司氏、ポッド042役の安元洋貴さんが出演し、作品の魅力を語り合う。そちらも確認してみてほしい。