幕末世界で“カブキチャンバラ”と浮世絵を謳歌!

 スパイク・チュンソフトが放つ幕末維新“if”アクションゲーム『憂世ノ志士』(PS3、2015年1月29日発売予定)、『憂世ノ浪士』(PS Vita、2015年2月11日発売予定)。ファミ通.comでは、連載企画“幕末“if”の世界への道しるべ”として、新選組の隊士、もしくは坂本龍馬となって幕末を生き抜く、仮想歴史ロマンの世界を徹底紹介していくぞ。第1回目は、ディレクターの花島和宣氏とリードプランナーの菅原隆行氏のインタビューをお届けする。

『憂世ノ志士』&『憂世ノ浪士』【幕末“if”の世界への道しるべ】連載企画第1回:開発者インタビュー_04
花島和宣氏(写真右)
スパイク・チュンソフト プランニングセクション リードプランナー。本作ではディレクターを務める。

菅原隆行氏(左)
スパイク・チュンソフト スパイク・チュンソフト 第一開発グループ プランニングセクション リードプランナー。本作ではバトル周りの仕様や、『憂世ノ志士』のシナリオを中心に担当。

――本作は幕末を舞台にふたつのハードで展開する歴史“if”ロマン。制作の経緯を教えてください。

花島和宣氏(以下、花島) 「和を扱ったゲームを作りたい」ということから始まりました。弊社の前身のひとつ、スパイクの時代から『侍道』シリーズがあり、プレイヤーのみなさんにもご好評をいただいておりましたが、その流れはいったん一区切り。新たに立ち上げようということで始まりました。

――和だけど現代的なエッセンスがあるというのは、『侍道』から続く伝統を感じますね(笑)。

花島 ふつうに和をそのまま出すのは特徴が出ないですし、おもしろくないですよね。「和だけど、なんでもアリ」というところを狙って作りました。ここは企画始動の段階から基本路線として決めていました。

『憂世ノ志士』&『憂世ノ浪士』【幕末“if”の世界への道しるべ】連載企画第1回:開発者インタビュー_01

――具体的に本作で狙っていたこと、実現させたかったことを教えていただけますか?

花島 我々は“カブキチャンバラ”と言っているのですが、ゲームの中で、けれん味溢れる派手なチャンバラを展開すること。そして、もうひとつは和を扱うということで、その象徴となる“浮世絵”を取り入れるということ。これらふたつを押し出すのにもっともふさわしい場として、自然と幕末の物語という設定が決まりました。

――前者はアクション性をより楽しむための施策、後者は和らしい舞台を堪能するための仕掛けという感じですね。そのような世界をなぜふたつのハードで描くことになったのでしょうか?

花島 幕末という時代は、倒幕と佐幕という2大勢力がひしめき合った混迷の時代でした。まずは、それぞれを主役にした物語を描きたいという思いがあったのですが、ひとつのパッケージでそれを描くと詰め込み過ぎになりますし、主人公の扱いも難しくなってしまいます。それならば土台は同じにしながらもまったく違うカラーのゲームとして、ふたつにわけたほうがいい……という結論に至ったのです。

菅原隆行氏(以下、菅原) もうひとつの理由として、ハードに合わせたストーリーが描けるということがありました。同じ出来事を描くにしても、PS Vitaとプレイステーション3では表現できることが異なります。そんなこともあり、プレステーション3の『憂世ノ志士』は伝奇ロマンテイスト、PS Vitaの『憂世ノ浪士』はミステリー推理テイスト、というように振り分けました。シナリオをじっくり読ませるような展開は、PS Vitaのほうが合っていますからね。ゲームのシステム自体はどちらも同一なんですが、シナリオの傾向をわけているわけです。

――ふたりの主人公について、設定に史実を取り入れながらも、大胆にアレンジしていますよね。

菅原 企画の当初から史実のキャラクターで進めることは決めていたんですが、カブキチャンバラと浮世絵を主体に打ち出す世界で、『憂世ノ志士』で史実通りの坂本龍馬をそのまま出しても違和感が出てしまいます。ですから、この世界に合うようなヒネリを加えています。歴史に詳しいかたならご存知でしょうが、史実の坂本龍馬は生涯で人を斬ることはしていないんですよ。

――なるほど。それなら記憶喪失の龍馬が出島にいて、絵心がある人物という設定も納得できます(笑)。

菅原 一方の『憂世ノ浪士』では、新選組の誰かを主人公に起用する案もあったのですが、プレイヤーのみなさんの中には新選組をあまり知らないかたもいるんじゃないかと。そこで、外から加わる立場のキャラクターこそがいいと思いました。そして出てきたのが、沖田芳次郎です。史実では沖田の甥ではありますが、新選組に直接入隊していたわけではありません。その関係性や距離感が、『憂世ノ浪士』の主人公の位置にマッチしていました。

花島 本作では、顔、髪型、衣装などが柔軟にカスタマイズできるので、キャラクター設定が固まっている人物は扱いが難しいという判断もあります。ちなみに、カスタマイズがどれくらい柔軟かというと、性別までも変えられるほどなんです(笑)。

――性別まで変えられるのはすごいですね(笑)。では、主人公はどのような目的で行動するのでしょうか?

花島 『憂世ノ志士』の坂本龍馬は史実通りに日本の夜明けを目指して行動します。『憂世ノ浪士』の主人公は新選組の下っ端隊士。最初は京の治安を守る立場として活動します。

『憂世ノ志士』&『憂世ノ浪士』【幕末“if”の世界への道しるべ】連載企画第1回:開発者インタビュー_03

――なるほど。では、ゲームの全体的な流れを教えていただけますか?

花島 メインクエストでストーリーを進めていきながら、町の人からのちょっとした依頼を受けてサブクエストをこなしたり、浮世絵を描いて楽しんでいくというのがおおまかな流れです。エンディングに向けてのメインストーリーはありますが、自由度は高くなっています。ひたすら浮世絵を描いて楽しむなんて遊びかたもアリですよ。

――途中の出来事には歴史的なエピソードあるんですよね? やはりアレンジされた出来事になっているのでしょうか?

菅原 ええ。たとえば、坂本龍馬のエピソードではおなじみの“寺田屋騒動”や“大政奉還”、そして“近江屋事件”も出てきます。歴史を知っている人、知らない人のどちらでも楽しめるような展開になっています。

――それは楽しみですね。ほかにも「ぜひココを楽しんでほしい」といったポイントはありますか?

菅原 この物語の中では、浮世絵が全国的に流行しているという世界観になっています。浮世絵が史実以上に一般的で、価値のあるものになっていて、全国の人が浮世絵に見栄えする場所を作ろうとしているんです。ですから、建築も極めて特徴的というか、浮世絵に映える場所を作ろうとしている世界なんです。たとえば、京都には木造の高層建築があったりしますよ。

――確かに町を歩いているだけで、気になる建築物をたくさん見かけますね(笑)。

菅原 いまみたいなハイテクに頼った建築ではなく、当時の建築者ががんばれば作れるものという設定になっています。いうなれば、古代エジプトのピラミッドみたいなものですね。ちなみにメインキャラクターのコスチュームも当時の素材から作れるもの、という設定のもとでデザインをしています。当時、志茂田景樹氏(注:過激かつ奇抜なファッションで有名な作家)みたいなファッションを好む人がいたら……というイメージですね。きっと、この世界にはそんな志向に応えるハイセンスな呉服屋がいたんですよ(笑)。

――歴史の“if”をとことん極めていったという感じですね! ところで気になるのは、ふたりの主人公や、それぞれのゲームのキャラクターが、他方のゲームの中で出会ったり、リンクするといったことはあるのでしょうか?

菅原 ふたつとも世界観は共通なのですが、メインシナリオの中でリンクするといったことはありません。同じ出来事をそれぞれで体験することになってもあまり意味がないですからね。その代わりにふたつのゲームで連動する機能を搭載しています。

花島 ひとつのタイトルで出てきた呉服屋で衣装を購入すれうば、もう一方のタイトルでも最初から手にはいるようになっています。武器をカスタマイズしたり、新たに作る鍛冶屋の機能も両タイトルで連動します。一方で強い武器を開発すれば、もう一方で最初から強い武器が使えるようになっているんです。連動の仕組みはPSNのアカウントを経由して行うものです。クロスセーブのような機能をイメージするとわかりやすいかもしれませんね。連動すると手に入る特典もありますよ。

――それは両タイトルをプレイしたくなる仕組みですね。では、最後に本作を楽しみにしている方へのメッセージをお願いします!

花島 まずはメインクエストをプレイして、この幕末歴史“if”の世界を楽しんでください。そして、ここがどんな世界かわかったら、ぜひいろいろと寄り道をしてみてください! 自慢の浮世絵作品は“廻船問屋”に納品することで、ほかのプレイヤーのもとへ“判じ絵”という形で見せることも可能です。自分のエディットした姿や、秘剣のオリジナル名称などもいっしょに“流れ絵師”としてほかのプレイヤーのもとに届けることができます。“判じ絵”には感想もかえってくるので、ぜひ楽しんでいただきたいです。

菅原 最近ではテレビで時代劇が放映される機会も減ってしまいまして……。そんな中で時代劇のゲームを作るのはどこまで受け入れられるだろうという気持ちもありながら制作を進めていましたが、やはり時代劇のエンタテインメントは日本人がなじみやすいものと思います。どんな方にも時代劇を楽しんでいただけるように、“間口が広いこと”を意識して作りましたので、ぜひ触れてみてください!

『憂世ノ志士』&『憂世ノ浪士』【幕末“if”の世界への道しるべ】連載企画第1回:開発者インタビュー_02