『絶対絶望少女』のちょっとネタバレがあるので要注意!
2014年11月24日、愛知県名古屋の名古屋インターナショナルホールにて、スパイク・チュンソフトの『ダンガンロンパ』シリーズ、『絶対絶望少女 ダンガンロンパ Another Episode』(以下、【絶対絶望少女』)のイベント、“絶対絶望修学旅行〜名古屋篇〜”が行われた。“絶対絶望少女修学旅行”としては、2014年8月9日に開催された“仙台篇”(“仙台篇”のイベントリポートは→コチラ)に続く2回目で、名古屋で初の『ダンガンロンパ』イベントかつ、『絶対絶望少女』発売後初のオフィシャルイベントとなる。イベントには、声優陣から苗木誠&狛枝凪斗&召使い役の緒方恵美さん、苗木こまる役の内田彩さん、空木言子役の荒浪和沙さんが、クリエイター陣からは『ダンガンロンパ』シリーズのプロデューサー・寺澤善徳氏、『絶対絶望少女』ディレクターの佐々木駿氏、『ダンガンロンパ』シリーズのフィールドデザインを担当する河原聡氏、『ダンガンロンパ』シリーズのサウンドを担当する高田雅史氏が出演する、非常に豪華なイベントになった。イベント参加チケットの当選倍率は6倍という高倍率だったとか! なお、本イベントは『絶対絶望少女』のネタバレOKで展開していたため、この記事にも多少のネタバレがある。『絶対絶望少女』をまだプレイしていない人で、ネタバレが見たくないという人は、ぜひクリアーしたうえで読んでいただければ幸いだ。
最初に行われたコーナーは、“ココダケ! ゲーム制作の裏話聞いちゃいます”。その名の通り、『絶対絶望少女』の開発秘話を聞くというもの。いくつものテーマが出されたが、最初に提示されたのは“トロクロE3での男気ジャンケン”。『絶対絶望少女』には、『どこでもいっしょ』シリーズなどでおなじみのトロとクロが、シークレットゲスト的に出演している。このコラボレーションだが、ディレクターの佐々木氏が決めてきたものだという。佐々木氏いわく、2013年のE3(アメリカ最大のゲーム見本市)に参加した際、たまたま入った焼肉屋でトロ、クロを担当するSCE(ソニー・コンピュータエンタテインメント)のプロデューサーと出会い「『ダンガンロンパ』にぜひトロとクロを出して欲しい。モノクマと同じ、白と黒ですし」というリクエストをもらったのだそうだ。佐々木氏は、自分の判断では決められないと話していたところ、スパイク・チュンソフト代表取締役社長の櫻井光俊氏が、「佐々木とジャンケンして勝ったらいいですよ!」と提案。そんな大人の遊びに巻き込まれた佐々木氏がジャンケンに負け、後日、SCEから寺澤氏に連絡が行ったものの、「俺、聞いてないよ(苦笑)」(寺澤氏)と寝耳に水の状況でコラボレーションが決まったのだという。
話はそれだけでは終わらない。今回のコラボは、『絶対絶望少女』内で謎解きをすると、トロの部屋にたどり着くという、かなりゲームに密接に絡んだコラボレーションをしているのだが、ギリギリまで開発を進めていた『絶対絶望少女』では、トロとクロのコラボレーションも終盤まで進まなかったらしく、河原氏いわく、「開発終盤のギリギリに佐々木に呼び出されて、初めてコラボの話を聞いた(苦笑)」。しかし、そこは『ダンガンロンパ』シリーズの開発メンバー、やるならちゃんとしたコラボレーションをしようと、謎解きの要素を入れ、さらにトロの部屋をゲーム内で再現したいと、SCEに逆打診。『どこでもいっしょ』に思い入れのあるスタッフ間で、誰がその背景を担当するかで奪い合いが起こるほどで、その結果、あれほどの熱量がこもったコラボになったそうだ。
“巨大ヘリのデザイン元ネタ。巨大ヘリ、ビッグバンの実際のサイズ”では、河原氏がゲーム終盤に登場する巨大ヘリ・エクスカリバーの元ネタを披露。小高氏(小高和剛氏。『ダンガンロンパ』シリーズの脚本を担当)のプロットにエクスカリバーという名前はあったものの、詳しい設定は決まっていなかったようで、河原氏は“巨大ヘリ”、“エクスカリバー”というお題から、上から見ると剣の形に見えるようにして、ヘリの上にある輪っかを円卓、その周囲にある13個のローターを、13人いる円卓の騎士に見立てたデザインにしたのだそうだ。しかし、プランナーのほうから“ゲームをプレイするうえでこれくらいの広さが欲しい”といった、さまざまな要望が出たため、どんどんと形が拡大し、剣には見えないデザインになってしまったのだとか。ちなみに、同じく終盤に登場するビッグバンモノクマのサイズは、だいたい87メートルとのこと。“だいたい”というのは、ゲームのいろいろな場面から見かけるとき、厳密には同じサイズではなく、効果的に見えるように調整をしているのだそうだ。
高田氏は、“『モノクマと遊ぼう』誕生秘話〜潮干狩りの海辺で〜”の秘話を語った。『モノクマと遊ぼう』は、子どもたちの無邪気な歌声と過激な歌詞がギャップになっているゲーム内の楽曲。『絶対絶望少女』の楽曲をある程度作り終え、久しぶりの休日で、家族とともに千葉に潮干狩りに出かけたという高田氏だが、海岸に着く直前に小高氏から電話がかかってきて、「歌詞はエグいんだけど、ほんわかした曲が必要なんです!」と熱弁をされたそうだ。それからは、頭が制作モードになり、ずっと貝を掘りながらいろいろなメロディーを浮かべていたようで、そのため、いまだに『モノクマと遊ぼう』を聞くと、千葉の海を思い出すのだとか。
内田彩さんは、苗木こまるの印象や演じたときの苦労点を語る。苗木こまるは、長いあいだ監禁され、世の中の状態を知らないという設定だが、『ダンガンロンパ』シリーズをすべてプレイしている大ファンの内田彩さんは、『ダンガンロンパ』の世界がどうなっているのかを知っているため、“何も知らないこまるを、世界の状況を知っている私が演じるのはいいのだろうか”と悩みつつ収録に挑んだという、ファンならではの心境を明かしていた。
荒浪和沙さんは、空木言子との最初の出会いに言及。最初に、ちょっとだけ言子を演じる機会があったという荒浪さんは、すごいかわいい子だなという印象を持ったそうだ。そして、改めて本番の収録をしたときに、言子の設定を見たところ、じつは過激なセリフを話したり、いろいろとここでは書けない隠れた設定があったことを知り、驚いたのだとか。でも、あれほど感情を出すキャラクターは少ないということで、貴重な機会として、言子の闇の部分を演じるときは“やりすぎ”と言われるほどの演技をしたところ、オーケーが出たのだそうだ。
と、ここで、緒方恵美さんもトークに加わり、緒方さん演じる召使いの話……に行くと思いきや、話題はディレクターの佐々木氏が、緒方さんに慰められたという話題に。『絶対絶望少女』の制作真っ最中に、佐々木氏は“ギリギリまでおもしろさを追求するか”、それとも“完成させることを考えながら進んでいくディレクションにするか”という分岐点になり、とにかく悩みまくっていた時期があったそうだ。そこで周囲にいろいろと相談していたところ、小高氏から「緒方さんと飲むから、いっしょに来い」と誘われ、緒方さんと話す機会を得たという。そこで佐々木氏が聞いたのは、緒方さんの仕事に対する姿勢。その話を聞いた佐々木氏は感銘を受け、「逃げちゃダメだ」と思い、それでがんばれたのだという。
緒方さんは、召使いの演じる難しさについて語った。召使い……というか、召使いに似たとある人を初めて演じるとき、緒方さんの中で落とし込めるまでかなり苦労をしたというエピソードは、いろいろなところで語られている通り。ギリギリのラインで、少し揺れると別の人になってしまうという、とても微妙なところを縫うように演技をしているとのことで、アフレコでも微妙なラインを補正しながら進んでいったとのこと。また、『絶対絶望少女』のアニメパートの話題では、『ダンガンロンパ』テレビアニメーションチームの岸監督、比嘉プロデューサーが、召使いをアニメで動かせたことをうれしそうに語っていたことを報告。また、アニメ『ダンガンロンパ』のチームは、演者も含め、みんなの熱量が高く、限られた時間の中でどこまで追求するかをギリギリまで攻めたそうだ。そんなアニメ『ダンガンロンパ』を語るには、最終回のBlu-ray/DVDを見ていただきたいと話していた。Blu-ray/DVDに収録された最終回は、テレビアニメ版をかなり長尺にした、ディレクターズカット版が収録されており、テレビアニメ版を見た人も大きく印象が変わる構成になっているので、ぜひ観ていただきたい。