暗黒騎士についてなど──ロンドンフェスティバルを終えた『新生FFXIV』吉田直樹プロデューサー兼ディレクターに聞く【FFXIVファンフェスティバル】

 2014年10月25日。大盛況のうちに幕を閉じた『新生FFXIV』ファンフェスティバル 2014 LONDON。バンドTHE PRIMALSのライブから続いて、グランドフィナーレの挨拶を終えた吉田直樹プロデューサー兼ディレクターに、その直後、話をうかがう機会を得た。

●怒濤の2週間を終えて

 2014年10月25日(現地)、大盛況のうちに幕を閉じた『新生FFXIV』ファンフェスティバル 2014 LONDON。バンドTHE PRIMALSのライブから続いて、グランドフィナーレの挨拶を終えた吉田直樹プロデューサー兼ディレクターに、その直後、話をうかがう機会を得た。場所はステージのバックヤード。大道具に埋もれてポツンと置かれていた白いソファーに座っていただき、ラスベガスとロンドン、ふたつのファンフェスティバルを終えての率直な心持ち、拡張ディスク『蒼天のイシュガルド』についてもう一歩踏み込んだ内容など、つれづれと語っていただいた。


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●終わったからヨシというわけではなく

──ステージ、お疲れさまでした。感想などを……。
吉田直樹氏(以下、吉田) (うなだれながら)いまはこういう気分ですよ。
──燃え尽きた『あしたのジョー』じゃないですか(笑)。
吉田 放心状態というのが正直な感想です。
──東京のフェスティバルが1週間後でなくてよかったですね(笑)。
吉田 でも東京が1週間後だとしたら、逆にまだ気が抜けてない気がします。東京での開催までは2ヵ月離れているうえ、やはりホームグラウンドなので、心持ちが少し違うと思います。警備が必要になる規模なので、そういう部分もぜんぜん違います。東京での開催は、いままで自分たちでひとつひとつ手作りしてきたプロデューサーレターLIVEの超拡大版という意識でいるので、とにかく楽しんでいただくことがすべて。プロデューサーレターLIVEは、手作り放送だからこそ緊張感が高く、何かをミスしたら「すべて自分の責任だ」と全員が思っているくらい、意外とピリピリ緊張感を持ってやっています。そのぶん放送が始まったら楽しくいこう! と。その雰囲気をたくさんの人に東京で味わっていただきたいと思います。
──海外はやはり心持ちが変わりますか。
吉田 今回の海外ファンフェスティバルは、始まってしまえばいつものようにお客さまに楽しんでいただける話だったり、セッションだったり、当たり前ですが全力で当たったので表面化しづらいのかもしれませんが、ふだん東京でやっている状況とは違い、初めて取り組む会社さんが多く、綱渡りな部分もありましたし、その綱が切れるんじゃないかと怖かったのは事実です。それでも、自分たちの経験がまったく及ばないところで、これだけの規模のファンフェスティバルをやりきったので、まずは本当にホッとしています。到らないところは多々あったと思いますが、会うお客さまそれぞれに“Amazing! ”、 “Awesome! ”と言っていただけたので、つぎもファンフェスの機会があった場合も、またそう言っていただけるように、反省点はしっかり踏まえ、もっともっと盛り上がるものにしていきたいと思います。
 何よりこれだけの期間、開発も運営も主力メンツが日本を空けたのは初めてでしたが、結果、この2週間、ゲーム本体の運営上でミスが発生し、帰国したらワークフローからすべて見直さないとダメだなと思いました。ミスの原因をたどると、ここまで気合いと根性とノリと魂で突っ走ってきましたが、振り返ったらあまりにも規模が巨大すぎた、ということもあり、足元を見つめ直してみようと思います。
──かつて新生するにあたりいろいろ見直したように、また見直す時期に来ている?
吉田 『FFXIV』としては初ということもあり、ファンフェスティバルの巨大さを手さぐり状態だったので、今回の実施内容はそれぞれに反省点としてあると思います。日本のゲーム業界でも先駆けのように、ずっとタイトルの走り出しからプロデューサーレターLIVEを通じて生放送の経験を積んでいたこともあり、何かライブでトラブルがあったとしても、お客さまにわからないようにリカバーできていたのですが、その文法が通用しないところでは、かなりの綱渡りになってしまいました。
 また、ゲーム本編の運営は、ファンフェスに気を遣いすぎたため、コミュニティチームをはじめ、『FFXIV』というプロジェクト全体を見て、ゲームも運営も、ファンフェスもそうですが、いつもだとダブルチェックで進めるものが、なぜかシングルチェックすら曖昧な状態で進んでいたりなど、ミスが多く反省が残ります。もう少し意志決定権を分散させると同時に、自分がやるんだという意識に変えていかないとダメな部分があるのかな、と今回思ったところですね。
それは宣伝にしてもそうで、MMORPGにとってもっとも大きな話題は新クラスや新ジョブなのに、バナーひとつ作るにしても、いつものパッチのようにシヴァがフォーカスされる素材の確認が多く、「そこは流れ作業じゃないんだから変えようよ」と。もちろん既存のプレイヤーの皆さんに向けては、忍者はもうご存じなので「シヴァをお楽しみに」でいいのですが、いまアカウントを止めている方や新規の方には、「お、『FF』でひさしぶりに忍者が来るのか」というほうが興味の対象としては大きくなると思うのです。その使い分けをちゃんとしてほしくて……。日本から離れてみて、思うところはたくさんある状態ですね。
──フェスティバルの最後に「またロンドンに戻ってきます」とおっしゃっていましたよね。
吉田 終わったばかりですが、もっともっといろいろできただろうという悔しさもあるので、「『FFXIV』のファンフェスはすげえわ!」と言っていただけるよう、さらなる準備をして今回以上のファンフェスを開催しに戻ってきたいですね。 ただ、そんな話ばかりしていると失敗したように聞こえますが(笑)、みんな充分全力を尽くしましたし、お客様も喜んでいただけたので大成功なのは間違いないです。ただ、終わったからヨシというわけではなく、さらに上を目指したいな、というのが正直な感想ですね。
──ストリーミング放送では、東京への期待感が高まっていた模様です。
吉田 ありがたいお話です。ですが、僕らはイベントではなく、やはりゲームが本業。ゲームをしっかり作り、動いているものや、プレイヤーの皆さんがやりたいと思っているコンテンツやジョブというものをきちんとご提示できれば、それがいちばん望んでいただけることだと思っていますし、いちばん盛り上がっていただけるポイントだと思うので、そのためにまず開発をしっかり続けます。ゲームである以上、しっかり作れば、そこは絶対に裏切らないので、自分たちでハードルを上げつつ飛び越えて、前向きに行く。そうでないと新しいゲームにならないので、この部分を中心に全力で行こうと思っています。


●アメリカとヨーロッパの違い

──ラスベガスとロンドンで反応の違いはありましたでしょうか。
吉田 僕はあまり感じませんでした。
──ラスベガスのコスプレでは、白魔道士とナイトが人気でした。ヨーロッパは白魔道士が多いですね。
吉田 白魔道士は多いですね。かわいいものをすごく好きという方が、『FF』をやっている方の中に意外と多い、という感じはあります。
──ヨーロッパの方のほうがカートゥン的なものが好きな人が多いですね。
吉田 そうですね。そこはJAPAN EXPOもそうですが、ヨーロッパは日本の文化にリスペクトというか親しみを感じてくださる方が多いのは事実だと思いますし、アメリカに比べると若干シャイだなというのは感じます。これがまたドイツに行くとぜんぜん違うんですが(笑)。ドイツのプレイヤーの方はタトゥ率が高く、たとえば頸にレガシーマークではなく、“A REALM REBORN”のロゴを入れている方がいらして、その下にどうしてもサインを書いてくれと言われました。「つぎに会うまでに、サインをそのまま刻んでくるから」と言われて、止めてくれって(笑)。
──愛情表現がすごいですね。
吉田 タトゥに関しては、なじみの深いファッションなんだろうなと思います。
──今回のロンドンフェスティバルでは、フランスの方が多かったですね。
吉田 そうですね。いまフランスのプレイヤーの方の数が非常に多いこともあり、多くのファンの方が、フランスにいらっしゃいます。
──撮影などをお願いしても、ヨーロッパのほうがアメリカより、「ニホンゴわかります。すこし」という方が多かったです。
吉田 そうですね。マンガ・アニメの影響の大きさを実感します。


●“暗黒”というキーワードは、僕らの中二心をくすぐる

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──さて、今朝の『HEAVENSWARD(蒼天のイシュガルド)』の発表が遠い昔のことのようですね。会場の反応でいちばん大きいなと感じた部分はどこでしたか?
吉田 それはジョブですね。キャラクター育成をもう一度進めるとなると、アイテムレベルを上げるために過去のコンテンツも新しいジョブのバトルシステムで遊び直すことになり、いままでとプレイ感覚がまったく違うし、気づかなかったことが出てくると思います。新クラス・新ジョブ追加のタイミングは、もう一度新鮮な気持ちでゲームができるチャンスと僕は思っています。お客さまも、同じことを感覚的に捉えているのかもしれないし、理屈でそう思っている方々もいらっしゃるのかもしれません。新しくて、育て甲斐があるジョブによって、ゲーム全体に変化が起きると思ってくださっていると思います。しかも「どう動くんだろうな」と期待される。だからこちらもついつい引っ張りめに発表してしまいます(笑)。
──ほかでもない暗黒騎士を選んだことも含め、今回ロールがタンクであること、両手剣であることなど理由を教えていただければ。
吉田 新ジョブのタンクを何にするか、ほかにも選択肢がなかったわけではなくて、今回──って、まだひとつしか発表していないんだった(苦笑)。
──こちらは別にかまわないです(笑)。
吉田 (笑)。まず暗黒騎士は注目していただきたいタンクジョブですし、パーティの盾役として、つねに前線で戦う花形です。タンクは立ち回りが難しい面をよく指摘されますが、プライドを持ってタンクを務めている方たちは、本当にゲームを好きでいてくださっていると僕は思っています。それゆえ、『HAVENSWARD』のジョブはタンクから決めようとバトルチームにお願いして。
 そのときにコミュニティの皆さんからも、たくさんの「○○ジョブが欲しい!」というアイデアをいただいていましたし、やはり『FF』ということもあり、侍などもギリギリまで候補だったのですが……。忍者の公開がかなり早い段階から決まっていたので、和風のジョブが続くのを避けた意味もあります。今回『HEAVENSWARD』をかなりダークめなハイファンタジーにしようとしている状況で、侍を選ぶとゲームの雰囲気がブレそうなんです。舞台がいままでまったくプレイヤーの皆さんに公開していない地域になるのであれば、また考えも違ったとは思いますが、「つぎは絶対イシュガルドだろう」と皆さん思っていたはずで、それを考えたときに、やはり今回はイメージに合わないということが大きい理由です。とはいえ、今後侍が実装されないかといえば、そんなことはないと思いますし、たくさんのリクエストをいただいていますので、今回は見送りとなっていますが、今後も引き続き検討していこうと思います。ただ、着流しに「居合」を使うような侍と、鎧甲冑を着て戦場へ出る将軍のようなイメージは、分けて考える可能性が高いです。
──『FFXI』からのプレイヤーは暗黒騎士にDPSのイメージを持っている方もいます。
吉田 海外ゲームやファンタジー世界を突き詰めたとき、僕にとっては『ファイナルファンタジー タクティクス』や『伝説のオウガバトル』のイメージの方が強かったのです。あとは漫画『ベルセルク』のガッツ。暗黒と言いうとテラーナイトやデスナイトなど、とても重い鎧を身にまとい、ヘビィアクスやツーハンドソードを振るう、いわゆる攻撃的重タンクというイメージがあります。ゲームである以上、ある程度のスタイリッシュさは必要になるので、それを考えると“暗黒”というキーワードは、僕らゲーマーの中二心をくすぐる部分があり、わりとすんなりいまの形になっています。
──暗黒騎士はジョブのみで、対になるクラスがないというお話でしたが、どういう形になるのでしょうか?
吉田 そこはまだ言えません。
──剣術士やナイトとはまったく無関係のルートをたどるのでしょうか。
吉田 それも正直まだなんとも言えないのでご容赦ください。
──暗黒騎士が最初から使える仕組みについては?
吉田 ぬぬ(笑)。やはり拡張ディスクを手に入れたら、皆さんすぐ触りたいと思いますので……。まずレベルキャップが解放された既存ジョブのキャップを上げるのか、新ジョブを上げるのか。シナリオも気になるし、というように、悩んでいただけるのがいいかなと。
──要素が多すぎですね(笑)。
吉田 そここそが重要で、僕らは『HEAVENSWARD』を本当に新作の『FF』のつもりで作っていますので、宣伝も、PRも盛り上げていきたいです。


●黄金銃を持つ男

──それではその先、吉田さんの着ていた『007』のTシャツが意味するところについて、もう一歩踏み込んでお話をいただければ。
吉田 何か撃つんだと思います(笑)。いま言えるのはそこまでですね。でも、それだけではおもしろくないとは思っているので、そんなにシンプルではありません。過去の『FF』シリーズをじっくり見ていただきつつ、どんなジョブが来るか、予想していただけると幸いです。


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──ということは新蛮神ラーヴァナのように、まったく新しいジョブというわけではないんですね?
吉田 それ以上は、まだご想像を楽しんでいただくタイミングかなと。
──東京のファンフェスティバルではお話いただけるんでしょうか。
吉田 東京はファンフェスティバルのトリですからね、もちろんです。
──新しいトレーラーもそこで観られるわけですね。
吉田 フルバージョンのCGIトレーラーに関しては、パッチ2.5の内容を含んでいます。“時代の終焉”トレーラーがそうだったように物語がつぎへと大きくつながっていく話なので、まだパッチ2.5がおそらく当たっていない東京のファンフェスティバルのタイミングでは描ききれないので、何かしらをカットするか、あるいはトレーラーというよりは、どちらかというとインゲームの映像をできるだけ皆さんに最新の状態でお知らせしたいというのが、いまの気持ちです。
──ではプレイアブル出展などはないと。
吉田 いいえ、スケジュール的にまだ無理です。
──パッチ2.5の情報は並行して発表されているんですよね。
吉田 パッチ2.5の情報はいろいろお話できると思います。パッチ2.5の情報は、そのころから、垂直立ち上げで発表していく予定です。
──今回のファンフェスティバルで触れられるオーディンのバトルは、今後ゲームの中には登場するのでしょうか。
吉田 ファンフェスティバル先行公開という形で、今回は仕上げているので、全会場を終えたのちのアップデートにて実装しますので、公開サーバーで世界中の皆さんに楽しんでいただくつもりです。どういう経緯でオーディンと戦うことになるのかなどは、クエストも作りますので、パッチをお待ちいただくことになります。
──ファンフェスティバルでのオーディンの強さは接待モードでしょうか。
吉田 そうですね。ファンフェスティバルにいらっしゃる皆さんは、『FFXIV』をやりこんでいらっしゃる方が多いので、真蛮神戦程度のつもりで作ってほしいとスタッフに話をしました
──ということは公開サーバーでは、極オーディンも控えている。
吉田 そうですね。やるとは思います。


●直接触れ合うことで得る刺激

──フライングマウントも衝撃的でした。既存のエリアでの扱いはどうなるのでしょう。
吉田 新生時に公開された3国エオルゼアフィールドは飛べません。飛べるようにフィールドを作っていないのです。飛行をシームレスに行う場合、MAPのリソース分割や、別途読み込みを行う“上物”の配置など、速度と描画範囲を仕様に合わせる必要があります。いずれ将来的に手を入れるかもしれませんが、3.0スタート時点ではまだ飛行できない予定です。
──飛行の時間に制限はあるのですか。


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吉田 ありません。ただ、ゲームとして破綻しない仕組みにはしています。いきなりどこからどこへでもフライングできてしまうと、ストーリーやコンテンツも飛ばせてしまうので、ゲームを進めている感覚とそのフライングが報酬としてつながる感じをゲームデザインの中に組み込んでいます。「レベルキャップに到達したし、エンドコンテンツにいくぜ」というころになると、相当開放感があると思います。
──6~7種類のフライングマウントが実装されるとのことですが、モノによって性能が変わったりはしないのて゜しょうか。
吉田 すでに基本形ができて開発サーバーではすでに飛べているのですが、まだまだいろいろなアイデアも出ているので、そこは調整中です。コンテンツとして段階を付けたりだとか、おもしろいギミックを入れたりなどは、これからになります。さらにせっかくの要素なので1回公開して終わらせるつもりもあまりないです。
──そこが「6~7種類の登場」と幅があった理由でしょうか。
吉田 コストによる見積りがそれくらいということで、6種類か7種類が当落線上という感じなだけです。ただ、意外とデブチョコボが飛ぶのを皆さん楽しみにしているようなので、余裕がもう少しあってもいいのかなと思いました。でもデブチョコボがすごい勢いで滑空している姿があまりイメージできないのですが、ジャンプしたときにぶら下げた餌をさっとサベネアの野菜に切り替えると、猛烈にでぶチョコボが飛ぶのもありかもなあ、などと……。「スピードが速くないと、結局使ってもらえないだろうな」など、などいろいろ考えて実装をためらっていたところではあるんです。でもそこは『FF』シリーズなので、おもしろさ重視というところで決めてもいいのかな、なんてことを今日ステージで皆さんの反応を見ながら考えていました。ともあれプレイヤーの皆さんにお会いすると、短いステージの中でしたが、いろいろなアイデアを本当にいただけるなあと思いました。
──開発者Q&Aのパネルディスカッションで、会場から寄せられた質問<こちらを参照>も濃かったですね。
吉田 そうですね。ああいうとき、プレイヤーだからこそなんだと思いますが、時間が決まっているから、ささいな質問やジョークを聞くのがためらわれる、と考えていらっしゃるところがきっとあるんだろうなと思います。
──ゲームがわかっている、という体裁の質問をしなければと。
吉田 プレイヤーの方ひとりひとりとは各ゲームのイベントでお話させていただいたりすることはありますが、今回はある意味お客さまの側も緊張しているというシチュエーション。今回ライブで欧州の皆さんと直接やりとりさせていだたくのは初めてだったので、そういうところはあるだろうと思いました。
──フライテキストの位置を変えられないかという質問では、かなり長考されていましたよね。
吉田 僕は画面を見る位置がいまの実装で目線が固定されているので、とくに必要性を感じていなかったというのが正直なところでした。ですので、すごく新鮮な質問でした。でも「確かにあったほうがいいかな」と思いつつ、実現するための処理がすごい勢いで頭の中に浮かんだのですが、「これはきついな」と思って、いろいろアルゴリズムなど簡単にする方法を考え始めたんです。それで長考に(笑)。


●新しい蛮神

──新しい蛮神たち、とくに完全新規のラーヴァナが印象的でした。
吉田 いわゆる王道のクラシック『FF』で見られる、シリーズ通じてイフリートが最初にいて、シヴァ、ラムウ、タイタンなどが続き、その先にリヴァイアサンが終盤近くに出てきて、最後はバハムートが現れる、という流れは、ここまででやりきっているので、ここからはある種の新しい挑戦です。プレイヤーの方からも、「そろそろおなじみじゃない、サプライズはないのか」という声もいただいていたので、僕らが作る新しい定番蛮神のようなものもストーリーとともに作っていかなきゃと思っていたところでした。同時に発表したビスマルクが、過去のシリーズから登場の獣型なので、新規の1体目として、とにかくカッコよく、人型に近いか、そちら側へ倒そうと、スタッフみんなで頭をひねって考え出しました。


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──雲神ビスマルクも空を飛びそうですが、ラーヴァナにも羽がありますね。あの羽も使うのでしょうか。
吉田 あの新蛮神ふたつのバトルに関しては、最終的なバトルコンテンツデザインとしてどう落とし込むか、いままさに企画中です。いまは新ジョブを含めたレベル60のベースぜんぶを作っている最中なので、ラスベガスで行った権代(光俊バトルディレクター)の講演にもあったように、ベースを定めないまま蛮神のようなコンテンツを詰め始めてしまうと、バランスの着地点が曖昧になってしまいます。いまは、新しいジョブ“たち”と既存のジョブがすべてレベル60になって、新しいアビリティやアクションが入ってきたときに、どんな使い心地になるか、そこに力を入れて作っているところです。
 同様に今日少しお話をしたダークナイトは、開発サーバーではかなり動いているのですが、具体的なバトルイメージを少し濁して語っているのは、自分たちで使いながら、まだどっちへ転がるかわからない部分があるからです。方針は決まっていて、大筋は見えていますが、僕らとしては有力な候補を2パターン持っている状態なので、仮組しつつ実際に触って、「やっぱりこっちだな」と決めていく。そのチョイスは間もなくだとは思っています。
──雲の向こうに竜のすみかがあって、デブチョコボで近づいたら危ない、というお話もありました。空を飛んでいるとき、移動中のように敵とエンカウンするのでしょうか。
吉田 その言いかたが必ずしも正しいわけではないので、正確なところはもう少しお待ちいただきたいなと思います。少なくとも通常フィールド上でふつうのモンスターと空中でのバトルをするつもりはありません。相当な負荷とアニメーションコストになるわりに、制約が多すぎるので、バトルとしておもしろくならないと思います。ですのでコンテンツとして実現させるか、イベントで実施することになると思います。
──その竜のすみかは将来的に行く場所なんですよね
吉田 『旧FFXIV』の反省からか、『新生FFXIV』では、「作って名前を出した場所には行ける」をポリシーにしているので、きちんと訪れることができるように制作しています。今回ご覧になっていただいているもののほとんどは、バージョン3.0のスタート時点で目的地になっているので、行っていろいろな出会いを楽しんでいただければと思います。
──いま発表されているものは、3.0シリーズではなくてバージョン3.0公開時点で遊べるものなんですね。
吉田 いまお話しているものは、基本的にほぼそうですね。


●『HEAVENSWARD』をたくさんの人に楽しんでいただいけたらまた

──まとめの代わりに、明るいファンフェスティバルの感想をうかがおうかと(笑)。
吉田 いやいや、別に暗くはないですよ、単純に一度燃え尽きた直後の状態なだけなので!(笑)。ラスベガスのときに、少しお話をしましたが、ファンフェスティバルができたというよろこびのフェーズは、ラスベガスで一度過ぎているからだと思うんです。オリジナルでMMORPGを開発しているなら、ワールドワイドにファンフェスティバルを催すというのは、プロデューサーにとって、大きな目標のひとつだと思うんです。


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吉田 今回『新生FFXIV』を引き受けることになって、短い期間でグローバルに通じるMMOに仕上げなければならないとなったとき、大変だと思うと同時に、絶対にファンフェスティバルを開催したい! と思ったんです(笑)。『FFXI』も『FFXIV』も応援してくださっている方の中には、『旧FFXIV』の運営中にも、「ファンフェスをやってほしい!」という声も頂戴しました。本当の意味で皆さんの信頼を取り戻さないと、「いまそんなことをやるなら、ほかにまだやることがあるだろう」と言われますし、もちろん絶えず動き続けるMMORPGなので、いまだって「ファンフェスティバルなどやっていないで、ゲームでもっとやることがあるだろう」と言われるとは思います。ただ、コミュニティがイベントをやれる規模になり、いまはもうファンフェスティバルをグローバルに開けるMMORPGもそう多くはないとう状況があります。そこで実施できるという機会を逃したくなかった。
 僕の中でスタート地点だったラスベガスでは「ひとつ目標が叶ったが、つぎはもっと高いレベルでやりたい」と思い、このロンドンでは「やっぱりまだまだやれることがある」と確信しました。これからに控えている日本に、それらの反省や気合いをすべて集約して、大いに盛り上がっていただける、すばらしいファンフェスティバルにしたいと心から思っています。また『HEAVENSWARD』でゲームをさらにたくさんの人に楽しんでいただけたら、それを皆さんといっしょにまた楽しめるファンフェスティバルを開きたいですね。


●韓国での展開

 話もまとまり、会場を後にした吉田氏。深夜だが、打ち上げの場があるというので、記者も潜入。場所を変え、少しだけ気になっていた韓国展開の話もうかがった。


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──今後の韓国はどういう予定でしょう。
吉田 ラスベガスのファンフェスティバルの直前に、韓国ゲームメディアの皆さんを招いての記者懇親会が行われました。韓国のメディアの方にもご挨拶ができ、相当いろいろポジティブに捉えていただけたようで、つぎは11月にあるG-STAR(韓国ゲームショウ)でブースを大きく構えます。そこで新規でいろいろ『FFXIV』に興味を持っていただいているプレイヤーの皆さんに対してのPRと、韓国のコアプレイヤーになっていただこうと考えているグローバル版にすでに接続されているコミュニティの方々にアプローチをして、来年のクローズドβまでつないでいくというのが現状です。
──G-STARは『FFXIV』だけでブースを出展するのですか?
吉田 中国ではシャンダゲームズさんにご協力いただいたように、韓国ではアクトズソフトさんにご協力いただいていますので、今回はアクトズさんのブースになります。大きなブースを用意していただけるようです。
──G-STAR自体が今年はひさびさに大規模ですね。
吉田 ソーシャルゲームに押され、大作のヒットが出ないこともあり、お金をかけてもムダかも……という意識が広がっていましたね。だから小粒なモバイル系のタイトルばかりが出ていたようです。ですので、今回はひさびさに皆さんが気合いを入れ直している感じです。
──出展以外に特別に何かされるのでしょうか?
吉田 いまのところ、韓国版プロデューサーレターLIVEをやってくれないかと打診を受けています。
──実現の可能性は?
吉田 グローバルに放送はしないと思いますが、韓国ゲーマーの方に向けて実施する予定です。これは単純に新しい韓国のプレイヤーの皆さんの疑問に答えることと、いまグローバル版をプレイしてくださっている韓国のプレイヤーの皆さんの疑問に答えるものです。割合も新規の方向けのほうを多くしてほしいという話もしてあります。じつは韓国版のティザーサイトがすでに開いていますが、つぎにブリッジサイトを開きます。それから、G-STAR専用のサイトをいまアクトズさんが作ってくださっているので、そこにアクトズアカウントでログインして、質問を書き込んでいただきます。そこで質問をあらかじめ募集して、それをライブで答える仕組みです。あとはメディアさんのインタビューですね。
──気になります。
吉田 グローバル版から見たら、大きなニュースにはならないと思います(笑)。『FFXIV』の魅力をゼロからお話する新しいプレイヤーの方向けの話なので、皆さんはもう耳にタコができているお話になると思います。新情報についても、韓国版のロンチはまだまだ先なので、おそらくパッチ2.3や2.4の内容でスタートすることを考えると、グローバル版より手前のバージョンになります。そういう意味でも新情報の出しようがないのです。
──とくにMMORPGでは、韓国で開発され、韓国が先行し、日本が手前のバージョンで後から遊ぶことが多いので、その逆を行くわけですね。
吉田 アクトズさんは、「逆にコンテンツが多すぎてちょっと心配だ」と言っていました。これによってトッププレイヤーとカジュアルプレイヤーの差があまりにも開きすぎて、カジュアルプレイヤーの皆さんがついてこれなくなるということが若干心配だ、という見解でした。「コンテンツが多くて悩むのは初めてです」とのことです(笑)。このポイントは韓国版ローンチの際、開発側で意識して調整させていただこうと思います。
──サーバー自体はアクトズさんが用意したものですか?
吉田 そうです。

 ここで着席しているスタッフ全員に飲み物が届く。乾杯の挨拶は……もちろん吉田氏だ。
「じゃあ、長い長い2週間、いろいろ反省もありつつですが、ぜんぶやりきったので、いまはグビッと飲んでください。お疲れさま!」

「ああああああ、うめええええええ!」
 誰ともなく、誰もが叫んでいる。
 吉田氏も濃いめのトラウトをグッと飲み干し、向かいに座っていたスタッフに話しかける。
「この2週間さ、3ヵ月分くらいの仕事をした感じじゃない?」