2014年10月1日、ガストがコーエーテクモゲームスに吸収され、“ガスト長野開発部”となった。今後、ガストブランドはどうなっていくのか!? 4人のキーマンが一堂に会し、現状と展望を語ってくれた。

●ガストタイトルのキーマンたちが勢揃い!

 ガストがコーエーテクモホールディングスの子会社となり、コーエーテクモグループの一員となったのは、2011年12月のこと。以降もガストは、『アトリエ』シリーズなどの人気作品を開発し続けるとともに、オリジナル版をパワーアップさせた“Plus”シリーズなどもリリースし、子会社化以前にも増して、熱いファンの要望に応え続けてきた。
 そしてそのガストが、2014年10月1日付けで完全にコーエーテクモゲームスに吸収され、“ガスト長野開発部”となることが発表された。ガストが長らく本拠としてきた長野に引き続き開発部を置くということは、ガスト開発陣には変化はないのだろうか? それとも、あえて完全吸収したからには、大がかりな再編もあるのか……? 多くのゲームファンの疑問に答えるべく、今後のガストブランドの展開を左右するキーマンたちに詳しく話を訊いた。

※本記事は、週刊ファミ通11月13日号(2014年10月30日発売)に掲載された記事に加筆したものです。

【写真左から】
◆岡村佳人氏 (文中は岡村)
『アトリエ』シリーズをはじめ多数のガスト作品を手掛け、『ロロナのアトリエ~アーランドの錬金術士~』以降の『アトリエ』タイトルではディレクターを務める。
◆土屋暁氏 (文中は土屋)
サウンドクリエイターとしてガスト作品の楽曲を手掛けつつ、『アルトネリコ』(発売元:バンダイナムコゲームス)、『サージュ・コンチェルト』ではディレクターを担当。
◆鯉沼久史氏 (文中は鯉沼)
クリエイターとして活躍を続けつつ、コーエーテクモゲームス取締役副社長として経営面でも手腕を振るう。『戦国無双』シリーズなど代表作多数。
◆菊地啓介氏 (文中は菊地)
旧テクモ時代から『零』シリーズ、『影牢』シリーズなどを制作。プロデューサーとして、ガストタイトルの“Plus”シリーズの制作も担当している。

●“Plus”の誕生、開発力向上……シナジー効果はすでに現れている

――2011年にガストがコーエーテクモホールディングスの子会社となったのを境に、お互いの印象に変化はありましたか?

岡村 子会社化以前は、コーエーゲームスと言えば、シリアスなゲームを作られている大人の会社というイメージでした。それが、菊地プロデューサーに“Plus”タイトルを作ってもらえることになったときに、コーエーテクモゲームス社内に『アトリエ』を好きなスタッフの方がたくさんいるということがわかったんです。実際に、やり取りの中でも、非常にコアな質問や意見が出てきましたし、これはユーザーとして楽しんで遊んでくださっていたんだな、というのを強く感じました。
土屋 私は、いっしょになると知ったときには「うわっ!?」と思いました(笑)。何しろガストは小さな会社で、コーエーテクモゲームスは大きな会社ですから。それでけっこうドキドキしていたのですが、いろいろ交流してみたら、すごくフレンドリーだし、外から見ていた印象よりもすごく暖かくて、ひとつの家族のような感じを受けました。それで、「ああ、いっしょになれてよかったな」と思いました
鯉沼 大丈夫? 無理をしていませんか?(笑)
土屋 本当です、本当です!(笑)

――“Plus”シリーズは、両社が同じグループになったことによる成果のひとつですよね。
菊地 はい。“Plus”シリーズは、鯉沼が音頭を取って、僕が現場で岡村、土屋と話をして作っていったものです。ありがたかったのは、開発スタッフについても、私のチームや鯉沼のチームからも含めて、優秀で、なおかつガスト作品への愛があるスタッフを選抜して編成することができたことですね。
岡村 “Plus”シリーズについては、私や土屋が監修をしましたが、開発そのものにはガスト側のスタッフがほとんど関わっていないんです。それでも非常にクオリティーが高いものになったのは、熱意のあるスタッフが集まって作ってくれたからこそだと思います。

――言ってみれば、コーエー、テクモ、ガストの合作のようなタイトルなのですね。
鯉沼 正直なところ、旧コーエーだけではできなかったプロジェクトだろうと思います。やはり、わかっている人、好きな人が担当しないと、たぶん無理だろうな、と。その点、菊地は少々変わった人間なので……もちろん、いい意味で、ですが(笑)。いろいろな人材がいないと、いろいろなゲームを作ることはできませんからね。
土屋 菊地プロデューサーとは部署は違いますが、中でいっしょにやっている感覚が強かったですね。なんでもわがままを聞いてくれるといいますか(笑)。
菊地 ふたりとも、本当にわがままなんですよ(笑)。と言うのは、ふたりともディレクターとしてとても積極的だからなのですが、岡村はマスターアップのギリギリまでデータをいじるし、土屋も「少しだけ」と言っておきながら山ほど注文つけてきたり……(苦笑)。
鯉沼 わがままと言うか、こだわりですよね。それがなければいいゲームにはなりません。

菊地 それはもう、まったくその通りです。ただ同時に、こちらからの提案に対しても、汲んでくれるというか、柔軟だとも感じました。たとえば『新・ロロナのアトリエ』では、3人(ロロナ、トトリ、メルル)が登場するエンディングを作りたいというアイデアがあったんです。でもこれには、チーム内からも、「おもしろいけど、入れちゃっていいのかな……?」という意見も挙がっていて。そこを岡村が「ユーザー視点で考えると、ここまでいくと許せないけど、ここまでならオーケーだと思います」と判断をしたうえで、しっかり形にしてくれたんですね。結果として、やりたかったことはきちんと入ったし、なおかつお客さんに受け入れられる形にできました。そういう部分で、両ディレクターともに、意見に対する柔軟さを感じましたし、そこは見習わないといけないな、と思いました。

――その甲斐もあってといいますか、“Plus”シリーズのタイトルは、いずれもボリュームたっぷりの豪華な内容になっていますね。
土屋 実際、それまでガスト単独では実現できなかったことでも、コーエーテクモゲームスだとできてしまうんですよ。『アルノサージュPLUS ~生まれいずる星へ祈る詩~』の開発初期に、実現したいことをダメもとでリストアップして、菊地プロデューサーに伝えてみたら、「とりあえず全部入れてみましょう」と返ってきて感激しました。“Plus”シリーズをあれだけのボリュームの内容にできたのは、コーエーテクモゲームスのパワーがあればこそだと思いますね。
岡村 モチベーションの高いスタッフが本当に多いんです。『新・ロロナのアトリエ』を作ったときにも、オリジナル版『ロロナ』でプラチナトロフィーを取るまでやり込んだスタッフが何人もいて。正直な話、オリジナル版でプラチナトロフィーを取るのは、相当な苦行だったと思います。
土屋 それ、自分で言っちゃうんだ(笑)。
岡村 (苦笑)。でも、そこまでやりこんだほど熱意のあるスタッフですと、やはり上がってくる提案もぶれないですね。ガストも負けていられないな、と感じました
土屋 コーエーテクモゲームスの開発スタッフは、「ここはこれを見せるものだから、これを大事にしてほしい」という部分を、伝えなくてもわかってくれているんです。『アルノサージュ PLUS ~生まれいずる星へ祈る詩~』を作っていたときのことですが、この作品では、“禊ぎ”でタッチをすると、キャラクターがアクションをしますよね。私からはそれだけしか伝えていなかったのに、最初にできあがってきたものを見てみたら、すでに、私が「大事にしないといけない」と考えていた通りの形になっている。それで開発スタッフに、「あれ、こんなことまで説明しましたっけ?」と聞いてみると、「いいえ、でもそのほうがいいと思ったので」と返ってきて、これはすごいなぁ、と。さらに後になってよく聞いてみると、そのスタッフは、ガストショップで『アルノサージュ』のスペシャル最強DXコンボセットを買ってくれている人で(笑)。ほかにもそういう人がいっぱいいてくれるんですよ。
岡村 ただ、「今回はプレミアムボックスのイラストが気に入らなかったです」とダメ出しされることもあったりしましたが(苦笑)。

――非常にいい関係が築けているんですね(笑)。
岡村 そうですね。本来、こちらがしっかり10を伝えて、それが20になってくれる、というのが理想ではありますが、なかなかすべてが理想通りにはいかないものです。ときには、こちらからは3しか伝えられないことがあったりもしますが、それでもしっかり10、20にして返してくれる環境というのは、本当にすばらしいと思います。

――なるほど。一方、ガスト側の開発現場においては、何か変化はありましたか?
土屋 コーエーテクモグループの一員になったことで、コーエーテクモゲームス製のゲームエンジン“KTGL”を導入したのですが、やはりそれ以前のソフトと比べると、グッとパフォーマンスが上がりました。一度にたくさんの人を表示させることも余裕でできるようになりましたし、処理が軽くなったことで、裏でいろいろな処理を回したり……私はかなり無茶をするほうなのですが、それも余裕で吸収してくれるので、かなり衝撃を受けました。ガスト開発チームの基礎レベルがグッと上がったのは間違いないと思います

――とは言え、開発環境を移行するとなると、かなりご苦労もあったのではないですか?
岡村 導入当初のKGTLは『無双』シリーズに特化した環境だったため、最初のころはイベントシーンも作れない状態で、そのあたりをいちから用意していく必要がありました。もちろん現在は、RPGを作れる環境は整えてあります。やはり対応していくと、非常にいろいろなことができる幅、ポテンシャルがあるエンジンだと感じますね。
 『アトリエ』シリーズでも、『エスカ&ロジーのアトリエ ~黄昏の空の錬金術士~』からKTGLに対応したのですが、そこでグラフィックなどベース部分の改善が行われまして、明らかに「前作までと違う」とユーザーさんに感じていただくことができました。ですから、基礎部分の開発力という点で、すでにシナジー効果は現れてきていると思います。とはいえ、まだまだすべてがグループのやりかたに移行しているわけではないので、これからそれをどこまでマッチングしていくか。ガストのよさを残しながら、コーエーテクモグループのクオリティーに合ったゲームタイトルを作っていけるかが課題ですね。

★次ページでインタビューは核心へ!


【ガストが誇る看板タイトル:『アトリエ』シリーズ】
 1997年に発売された第1作『マリーのアトリエ~ザールブルグの錬金術士~』が大ヒットして以来、ガストの看板として愛され続けてきた『アトリエ』シリーズ。最新作は、2014年7月17日に発売された『シャリーのアトリエ~黄昏の海の錬金術士~』。なお前作『エスカ&ロジーのアトリエ ~黄昏の空の錬金術士~』はテレビアニメ化され、好評を博した。

▲オリジナルのPS3版に多彩な追加要素を加えたPS Vita『エスカ&ロジーのアトリエ Plus ~黄昏の空の錬金術士~』は、2015年1月22日発売予定。(※画面はPS3版のものです)

★『アトリエ クエストボード』大好評配信中!
 菊地氏がプロデューサーを務め、岡村氏が監修したスマートフォン向けゲーム『アトリエ クエストボード』は、2014年10月17日より配信中。『アトリエ』シリーズならではの魅力を、ボードゲーム形式で手軽に楽しめる内容となっている。

※『アトリエ クエストボード』公式サイト→<こちら>

▲おなじみのキャラクターたちも登場。素材集めや調合、戦闘など『アトリエ』の楽しさが凝縮されたタイトルだ。