【現地取材】『新生FFXIV』祖堅正慶氏がサウンドチームの制作裏話を披露【FFXIVファンフェスティバル】

 2014年10月17日〜19日(現地時間)、アメリカ・ラスベガスで開催されたファン感謝イベント“Final Fantasy XIV Fan Festival 2014 Las Vegas”。初日のステージイベント“Music Panel”に、サウンドディレクターを務める祖堅正慶氏が登場。アメリカのファンを中心に、楽曲制作の様子を明かした。

●お蔵入りしたリヴァイアサン討滅戦!

 18日13時30分(現地時間)からは、『新生FFXIV』の音楽制作の現場に迫るステージイベントが催され、サウンドディレクターの祖堅正慶氏と、そのパートナー&通訳として、スクウェア・エニックス ローカライズ部シニアトランスレーターのマイケル・クリストファー・コージ・フォックス氏が登壇した。


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▲タイタン討滅戦の楽曲をバックに登場! 祖堅氏を盛大にコールしたのは、『新生FFXIV』のプロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏だ。

 祖堅氏は、「Did you win big money? I'd lost!(みんな稼いだ? オレは負けた!)」と、ラスベガスならではのネタであいさつ。続くコージ氏に、「どのくらい負けたの? ギターが買えるくらい? クルマが買えるくらい? ……家が買えるくらい?」と聞かれ、「My Heart」と答え、詰めかけた観客たちの笑いを誘った。以降、祖堅氏とコージ氏のトークは、全編英語でくり広げられた。


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▲祖堅氏みずから自己紹介。スクリーン映し出された代表作は、バラエティーに富んでいる。

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▲祖堅氏の仕事内容を公開。Ambient Soundとは風などの環境音。またBGMの言語は英語、フランス語、ドイツ語、中国語、日本語の5ヵ国語に対応させているとのこと。

 『FFXIV』のために140曲もの楽曲を作曲してきたという祖堅氏が、フローを見せながらひとつの楽曲ができるまでを解説。作曲の依頼は、おおむねプランナーか吉田氏(祖堅氏&コージ氏は、終始“吉P”とファンにわかりやすい愛称で呼んでいた)から出されるそうだ。この日の基調講演にて電撃発表された、バージョン3.0となる拡張ディスク『蒼天のイシュガルド』のプロモーションビデオは、吉田氏直々の発注だったとのこと。その際に吉田氏が「This is very big」、「This is very Heavy」とやや興奮気味にコンセプトイメージを訴えたようで、観客から笑いが起こった。

 1曲を作曲するにあたってかけた時間は、平均して2日間。アレンジにはわずか1時間から1日だ。140曲を作ったのが8ヵ月間だったから、そのくらいのスピードで作らないといけないということだ。「むちゃくちゃヘビーワークだよね」と笑う祖堅氏に、「家には帰ってる?」とコージ氏。祖堅氏は、ナイショだよと人差し指を唇に当てて、「ノー」と答えた。

 アレンジまで終えた楽曲は吉田氏にチェックを仰ぐのだが、リテイクが出されれば作曲からやり直しになる場合もある。祖堅氏は吉田氏のことを「The Primal(蛮神)……。吉……Primal」と茶目っ気たっぷりにたとえ、またもやナイショだとジェスチャーをした。そこにコージ氏が「彼ならたぶんタバコを吸いに行っているよ」と返し、ふたりで「吉Primal!」と言って笑った。このコージ氏もふだんは『新生FFXIV』のローカライズを担当しており、吉田氏のきびしいチェックを受けている。そのため、ここいちばんでふたりの息はピッタリなのだった。


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▲スクリーンには曲作りの過程が。吉田氏のチェックは50/50でリテイクが出るという。オーケーとなれば、独自に開発されたサウンドエンジン“SEAD”を用いた作業に進めるのだ。

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▲『新生FFXIV』の楽曲の作詞はコージ氏が担当。新曲ができたと言って祖堅氏が意気揚々とやってきて、「3時までによろしくね」とムチャぶりをしたこともあったそうだ。

 楽曲への歌入れは、祖堅氏やコージ氏を始め、スタッフの誰かが担当していることが多い。「歌うのは好き?」と聞かれて「ノー」と答えた祖堅氏。氏はリヴァイアサン討滅戦の曲で歌っているが、それは急を要されてのことだという。楽曲を作った当初は女性ヴォーカルを起用してレコーディングをしたが、締切の1日前に吉田氏から「何かが違う、たぶんヴォーカルかな?」とリテイクを出され、仕方なく自身で歌ったとのこと。たくさんのリテイクの中の一例としてエピソードを打ち明けた後、音楽制作時に使っているPCからリヴァイアサン討滅戦のスコアをスクリーンに映し、楽曲を再生してコージ氏とともに生コーラスを合わせた。


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▲これがPC上のリヴァイアサン討滅戦のスコア。50ほどのトラックに、ギター×4、ベース×2、ドラム×1(その中に14のトラック)が表示されている。

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▲「吉Pはタバコを吸いに行っているから……」と言いながら、リテイクを食らった女性ヴォーカルバージョンのリヴァイアサン討滅戦を流すサービスも! ワンフレーズで止め、あたかも自分が歌っていたかのように裏声でごまかす祖堅氏の姿に観客が沸いた。

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▲さらには、完全にお蔵入りしたリヴァイアサン討滅戦の曲を初披露。すると突如、吉田氏の「ノー!」という声が響く。「different.recompose please(これは違う、やり直してください)」と会場のどこかから続ける吉田氏に、悪ノリをしていたふたりは苦笑した。

 「たくさんの楽曲がゴミ箱行きになりました」と語る祖堅氏。リヴァイサン討滅戦で言うと30もの楽曲を作り、31曲目でやっとオーケーがでたという。PCのウィンドウに並ぶファイルを数えていたことから、祖堅氏は残念ながらお蔵入りになってしまった楽曲も含め、手掛けたすべての楽曲を大事に保管しているとうことがうかがわれた。また、その一連の作業が、たった2日間で成されていることが尋常ではない。


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▲“曲作り(1人でガンバル編)”と書かれている。

 ここからは、“曲作りひとりでガンバル編”と題されたトークがスタート。手元にあった小さな鍵盤を叩いてリズムを取るなどしながら、祖堅氏が日々音楽制作に勤しむサウンドルームの様子が語られた。祖堅氏のデスクはひどくちらかっているようで、「あまりキレイだと音楽ができないよ」と笑う一幕も。また、さまざまな場所に“寝部屋”と呼んでいるところもあるようだ。


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▲写真左がミキシングルーム。右がボイスなどのレコーディングルーム。両方ともスクウェア・エニックスの内部にある。いろいろな使い道があるようで、祖堅氏の極上な仮眠室にもなるとか。

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▲写真右の奥に並ぶのは、収録に使うマイクの数々。ボイス用、ドラム用、5.1サラウンドマイクなど100種類もあるそうだ。ちなみに、5.1サラウンドマイクは1本100万円もする代物で、祖堅氏も触れることができないとのこと。

 吉田氏のチェックは手きびしいものの、『新生FFXIV』の音楽制作はすごく楽しいと語る祖堅氏。いろいろなプロジェクトに関わった中でもベストだそうだ。「今後もたくさんの楽曲を作り続けていく?」という問いには、「皆さんが望むなら」と答え、観客から大きな声援が巻き起こった。


13 13-02沸く観客

▲左から吉田氏と祖堅氏がイラストで描かれているが、「左は人間じゃない。蛮神」だと紹介。

 先ほどの小さな鍵盤を使って、コージ氏が何か演奏するようにリクエスト。これに対して祖堅氏は、鍵盤が足りないためにほんの少しだけだったが、拡張ディスク『蒼天のイシュガルド』のプロモーションビデオの冒頭で流れるメロディーを演奏した。また、今回のファンフェスティバルのためのジングルを即興で作曲するようにねだられて、「植松伸夫さんの曲です」と前置きたうえで『FF』シリーズの『勝利のファンファーレ』をさらりと披露。コージ氏はそのメロディに「♪ファイナル/ファンタジー/フォーティーン/フェスティバール」と適当に歌詞をつけてアレンジしてみせた。自分の楽曲でないこの楽曲を選んだ理由として、「『FF』は植松さんが作り上げたタイトルだから」ともっともらしく付け足した祖堅氏。「植松さんがいたら、「それは僕の曲だって怒ってきちゃうかも?」」とコージ氏が冗談めいて笑いながら、「今後、植松さんとはお仕事する?」と質問。祖堅氏は「オーケー。バージョン3.0で、たぶんね」と前向きな答えを返した。


●ラスベガス最後の夜に……

 楽しい雰囲気で続いたトークもそろそろ終わりというころ。「明日(現地時間19日)のクロージングセレモニーで、シークレットでビックな何かを予定しているから、ぜひ観に来てね」と、祖堅氏が告知をした。観客からは「蛮神の曲をやって!」などという声が飛び出し、「Good idea. I'll try it!」と祖堅氏もノリノリだった。

 来たる12月17日に、アレンジアルバム『From Astral to Umbral 〜FINAL FANTASY XIV: BAND & PIANO Arrangement Album〜』の発売が予定され、祖堅氏みずからがリーダーを務めるバンド“THE PRIMALS”を結成したばかり。メンバーで会場の近くで録音をしていた経緯もあり、じつは翌日には“THE PRIMALS”のバンドステージがフェスティバルの大トリに催されたのだ。その様子はまた別の記事でお届けしたい。


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▲ファンフェスティバルの会場では、アレンジアルバムのデモCDが販売されていたが、1日目の終了を待たずに完売したとのこと。コージ氏に「これで新しい家買えるじゃん!」などと言われ、「Thank you!」とピョンと跳ねながらステージを後にした祖堅氏だった。