【現地取材】『新生FFXIV』バトルディレクター権代氏がバトルの秘密を語る【FFXIVファンフェスティバル】

 2014年10月17日〜19日(現地時間)、アメリカ・ラスベガスで開催されたファン感謝イベント“Final Fantasy XIV Fan Festival 2014 Las Vegas”。バトルディレクターの権代光俊氏による開発者パネルをリポート。

●最後の大物登場?

 アメリカ・ラスベガスで開催されたファン感謝イベント“Final Fantasy XIV Fan Festival 2014 Las Vegas”。初日の開発者パネルのゲストは、いよいよ登場が待たれていたコアメンバー、バトルディレクターの権代光俊氏。「Mitsutoshi Gondai!」の呼び込みとともににこやかに登場し、バトルチームの仕事を語った。


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▲終始、笑みをたたえていた権代氏。

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▲本番前には舞台袖から会場の様子を撮影していた。

▲おそらく権代氏の見ていたのと同様の風景。

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▲アイテムレベル90はありそうな吉田氏。どこから調達したのか。

 続いて「Naoki Yoshida!」と呼び込まれた吉田氏は、アラガンのバイザーをかぶって現れ、会場の観客に大ウケ。「アイテムレベルが上がった気がする」と権代氏を食う勢い。


 「皆さん初めまして。『FFXIV』のバトル全般を担当している権代と申します。」
その正体がハッキリと口にされた途端に、どよめきが沸き上がる。ここで吉田氏が「アメリカだと権代という名前が言いにくいと思うので、Mr.Gと呼んでください」と発言すると、即座に黄色い声で“Mr.G!”のシャウトが飛ぶ。当の権代氏は「人前に出るのが苦手なので公の場を避けてきたが、とうとうやって来た自分の番が、まさか海外になるとも、これまでで最大規模の会場になるとも思っていなかった」と発言。これから『新生FFXIV』のバトルセクションについて話をしていくと明かした。


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 さて、これから話そうとする権代氏を吉田氏があおる。
「今日そこにあるフロントラインも、プライマル(蛮神)チャレンジも、会場で皆さんが楽しんでいる最新のオーディンバトルも、全部バトルセクションが、この人がリードで作っているんです。これはヘイトが上がったんじゃない?」
もちろん会場から笑いが起こる。

 最初は吉田氏による『新生FFXIV』の開発のセクション分けの解説から。


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 図の左上がプロデューサーやディレクターのグループだ。吉田氏いわく「いちばん悪いやつらのいるところ」。右側が各セクションのリード、コアメンバーと呼ばれている人々で、「僕が言う無茶をなんとかする人たち」(吉田氏)の名が連なっている。これらのセクションの中から、バトルセクションに絞った話がこのパネルのテーマだ。


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▲チームは、レベルデザイン、モンスターデザイン、バトルシステムデザインで分かれ、、新生まではF.A.T.E.も権代氏の管轄だったとのこと。脇にある人数は、新生時の担当者の数。少ない!

 F.A.T.E.は新生時380ほどの数があり、それらを4人で作っていたという。本来はもっと人数がいるべきだが、バトルチームの仕事は仕事をこなせるまでに時間がかかるもので、新生時はスケジュールがきびしく、この人数は、人を増やすことより現状の人員で最大限のパフォーマンスを出すことを狙った結果だという。

 話題は各パートの業務の詳細へ。以下はそれぞれのパートの要約だ。


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【レベルデザイン】
エリアに紐付く仕様の策定や、データ作業を行っている。具体的には、フィールドでモンスターがプレイヤーをどう追いかけるか最適のルート検索の仕様、段差やアタリ(オブジェクトが同一の場所を占めた場合の優先関係)の仕様、反響音などを鳴らすための仕様などの策定をプログラマーと詰めてデザインする。権代氏いわく、BGデザインチームとレベルデザインチームは、ゲームが新生すると決まったとき、評判の芳しくなかった街やフィールドのデザインを最初にがんばろうと決めたという。そのほか、目的地どうしの距離感だったり、景観の移ろい、生態系やレベル帯を考えたオブジェクトの配置がレベル班の仕事。ダンジョンやレイドについては、景観、ギミック、道中のモンスターの配置は、レベル班の仕事で、ボスモンスター戦はモンスター班の仕事として完全に分かれているとのこと。

 これらの流れを説明するのに、権代氏はカルン埋没寺院のマップを例として挙げ、まずは紙でモンスターの配置やギミックを考慮したマップを作成。ついで、どこにあるダンジョンなのか、どんな場所なのか、設定に由来するビジュアルのイメージをBGチームに伝えて、アートを起こしてもらうことになる。


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▲カルンの最初の紙マップ。ノーマルでは行けない部分も描かれている。

 その後、粗いBGをもとにモックアップを作成(粗いとはいえ相当のクオリティー!)。実機でこの中を歩き、カメラを回し、見にくくないか、戦闘ができないほど狭くないかなど、のテストが行われる。これでオーケーが出ると、BGチームは絵作りを続行するのだ。


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▲このモックが……。

▲こうなる。

 ちなみに、難度が高いことで有名なカルンは、じつは開発の最初期に作られたマップで、当初はものすごく広かったと吉田氏。リリースに際してプレイ時間を検討すると、レべリングダンジョンとしてはあまりに広く、一部のルートを塞いで、塞がれた部分についてはハードモード(パッチ2.4で登場予定)で使おう、となったという。

【モンスターデザイン】
 モンスターとボス戦を企画するチーム。『新生FFXIV』のモンスターの作りかたはおもに3つに分けられると権代氏。まず、フィールドやダンジョンにいる通常モンスターの挙動は、『FFXII』でパーティメンバーの挙動設定に使用したガンビット(条件設定で分岐していく簡易なAI)をモンスターに転用しているという。ここで吉田氏が「そろそろ皆さんも(ガンビットを)使いたいですよね」と観客に問いかけ、「たとえばガンビットを組んで魔導アーマーどうしを戦わせたり」(吉田氏)『FFXII』を作っていた皆川(裕史氏)や前廣(和豊氏)もいるので、バージョン3.0が落ち着いたら何か考えたいかな」(権代氏)との発言に大きな喝采が起きた。

 ついで、ダンジョンボス、蛮神、レイドのボスなどは、これらは通常モンスターにはない、増援のモンスターやギミックの進行など、コンテンツ内のすべての状況を判断基準にする必要があるので、それぞれ専用の処理がプログラムされているという。


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▲とくにボスモンスターは、戦う場所からレベルデザインがなされているので、急にフィールドに引っ張り出すのがとても難しい、と吉田氏。

 そして、クラスクエストやジョブクエストに登場するソロで戦う、QI(クイックインスタンス)と呼ばれるインスタンスのバトルは、モンスターの挙動がガンビットで、フェーズの進行がスクリプト(専用の処理)で組まれているとのこと。さらに、すべてのクラスクエストやジョブクエストに登場するインスタンスバトルはひとりの人間が作っているという。これはパッチ2.4で追加される双剣士と忍者についても同じで、そもそものバトルデザインもひとりで行っているというから驚きだ。


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▲「双剣士/忍者はまったく新しいジョブ。クイックインスタンス(バトル)で学ぶことが多いので、マウスを連打せず、じっくりプレイしてください」と吉田氏。

▲また、吉田氏の「忍者を使うか?」の問いかけには、ご覧の挙手。かなりの割合だ。

 ここで、これまでに語られたことのない、バトルコンテンツを担当者別に分けて紹介する試みがなされた。以下は、その解説画像だ。


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▲A氏はおもに低レベルのダンジョンの担当。

▲B氏はこの会場で初お披露目のオーディン戦や古代の民の迷宮、ギルガメッシュ討伐戦などを担当。

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▲C氏は、クエストインスタンスバトルをひとりで作っているという人物。

▲D氏の担当は、極タイタンにアルテマウェポン、大迷宮バハムート:侵攻編という激熱なラインアップ! 開発チーム内では“ゴッド”というあだ名で呼ばれている。

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▲ただひとり、バトル班からの参加のα氏。

 これらをまとめると以下の写真のようになる。


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 大迷宮バハムート:真成編がD氏の手によるのもだとわかると、会場ではリアルで「oh my god!」が乱れ飛んでいたのがアメリカならでは(笑)。

【バトルシステム】
 多岐にわたるが、バトルシステムの企画と仕様の作成、キャラクターの成長の要素や所要時間、コンテンツ数、報酬量などの調整がバトル班の担当。敵視のロジックやレベルアップ、レベルシンク、ジョブシェンジなど、『新生FFXIV』の根幹にあるシステムの企画と仕様の作成は、基本的に権代氏の仕事だ。そもそも『FFXI』でレベルシンクを作ったのは権代氏と知れると、会場から喝采が。さらに、ギルに関してはライブ班の河本信昭氏が握っている、と説明があると、吉田氏は「経済について語る機会があれば、河本を連れてくるので」とエクスキューズ。これも喝采を呼んでいた。

 パラメータをいくつ使って、どうやってダメージを算出するかの計算式は、『新生FFXIV』を作るにあたって大きく見直した点のひとつ。吉田氏になってからの『旧FFXIV』の計算式は、現『FFXI』プロデューサーの松井聡彦氏の手による。パラメータの種類が多く、特殊な効果を持つものを用意することでコアなプレイヤーが装備を考える楽しみを作り出していたが、ライトユーザーには少し難しいものとなっていた。価値が低いと見られていた装備が、後のパッチで導入されたものとの組み合わせで、バランスを壊したりなどもあったという。

 初めて遊んだ人が、どのパラメータを重視すればいいのか、ひと目でわからないのはゲームを途中でやめてしまう原因にもなるので、とにかくわかりやすくしてくれ、という吉田氏の要望に応えて、『新生FFXIV』はパラメータ数を絞り、バトルバランスを取りやすくしたという。さらに、アイテムを比較しやすくするために、海外MMORPGで見られるアイテムレベルという考えかたを導入している。

 ここがシンプルでわかりやすいため、短期間で多くのバトルコンテンツを作れるようになったのだ。実際、バージョン2.0をローンチするにあたって、全バトルコンテンツの調整に使った期間は2週間だったとのこと。

 この計算式を作り直したスタッフが、『新生FFXIV』最初のレイドということで大迷宮バハムート:邂逅編を手がけているのだ。ちなみにバージョン3.0の新レイドは、ゴッドことこのバトルチームのα氏で作成。いろいろ期待される。


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▲4000人近くが、ときに神妙に、ときに大騒ぎして聞いている。

 つぎの話題は、クラスとジョブの企画について。そのテーマが英訳された瞬間、会場は大盛り上がり。彼らは自分のジョブに非常に誇りを持っているようで、会場でコスプレ姿を見かけて話しかけると、熱の入った口調でそのジョブのよさを語ることが多かった(勢いがありすぎて、こちらは何割も聞き取れていないわけだが)。

 権代氏は『新生FFXIV』のクラス・ジョブを設計するうえで、これまで語られたことのなかった3つの意識を明かした。

 ひとつは、アーマリーシステムによって最終的にはひとりのプレイヤーが多くのジョブを体験すると予想。これを受け、見た目、装備、アクションだけでなく、プレイ感、立ち回り、やり込むうえで気にするポイントが変わるように、異なるシステムを各クラスに用意したという。

 つぎに、基本的に各ロール2種類ずつのクラス・ジョブがある(タンクはナイトと戦士、ヒーラーは白魔道士と学者のように)が、これはすべてのプレイヤーがどのロールにも触れられるように、片方の操作をなるべく簡単にしようと考えたとのこと。『新生FFXIV』を入りやすくて奥が深いゲームにするために、最初に人気が出そうなナイト、白魔道士、竜騎士、吟遊詩人をなるべくシンプルな形にデザインしたという。

 ここで権代氏は、“簡単”という言葉を誤解しないでほしいと説明。プレイヤースキルによる差が出る余地を残したうえで、管理するものが少なかったり、状況によってDPSの差があまりでないような、敵視の揺らぎが少ないようなデザインを意味していると補足した。吉田氏もシンプル=イージーではない、シンプルゆえに考えること、やることが多くなることもあると解説した。

 最後に、プレイヤースキルの差が出る余地を必ず持たせようとデザインしていると明かした。これは、決してゲームがうまいプレイヤーがヒーローになる、というものではなく、経験によって自分がうまくなったと必ず感じられるようなゲームデザインを指す。プレイヤースキルの差が発揮される量は、開発側でデザインできるものだと考え、シンプルなジョブはその差があまり出ないようにしていると、権代氏。

 さらに話題はコンテンツの難度の話に。難度の調整は、HPやダメージなど数値だけの話ではなく、ギミックやフェーズの調整も含めてバトル班が担当。モンスター班が作ったコンテンツをバトル班が調節することになるが、これには訳がある。

 バトルシステムとその計算式をベースに、その上にクラスやジョブ、さらに上にコンテンツが乗っている、という考えかたがまずあり、ベースに近いものをいじればいじるほど、上にあるものはすべて影響を受けるので、基本的に調整はコンテンツ側から手がけていくことになる。そのうえで、ベースに近いものをいじることもあり、クラスやジョブをいじるとなれば、すべてのコンテンツやジョブを理解している必要があるので、バトルチームが責任をもって難度の調整をしているのだ。

 と言いつつ、バトル班は3人。そこで、実際にはモンスター班もチェックには参加しているが、それでも7人。バージョン2.0ローンチ時は、ほかのプロジェクトからひとりを招いて、8人で調整したというエピソードも語られた。

 このように、プレイの腕前もプロ並みの開発者たちが、最後は実際にプレイして難度の見極めをかけているのだ。だが、バトルチームになるには、ゲームがうまくなければダメということもなければ、うまいからバトル班になれるということもない。業務のほとんどは企画やデータ作業なので、14時間生放送で展開された“超”超える力(ユーザープレイヤーが超えられないコンテンツをバトルチームが手伝って超えさせるという企画)のように、できて当たり前のように開発からも思われているのかと権代氏は軽く本音を漏らし、プレッシャーもすごいので、つぎの機会は、吉田氏らコアメンバーで超えさせてほしいと切り返し、会場の拍手を誘っていた。

 最後の話題は、吉田氏との連携について。仕事の流れは、コンテンツの長期的な実装計画、アラガントームストーンや報酬のアイテムの強さ調整、キャラクターの成長、ジョブの追加などのひな形を権代氏が作成。それに対して、吉田氏とシナリオ担当の前廣氏の3人でシナリオの側面を考えつつ、コンテンツを置く場所を申し合わせているという。最終的に吉田氏の判断を受けつつ、細かく調整が重ねられる。


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▲最初に権代氏から届いたプランでは、忍者の追加はフロントラインでの活躍を見込んでパッチ2.3だったが、間に合うわけがなかったと吉田氏。実際このスケジュールから、全開発に間に合うかどうかの精査を委ね、最後にスケジュールとコンテンツを照合して、いよいよ走っていくのが『新生FFXIV』とも。

 これらに加え、これまでのパッチで運営から得られた情報をもとに、吉田氏からの新コンテンツの提案や、権代氏からの相談などがある。基本的にお互いの言いぶんを話したうえで、互いに納得した結論を出そうとしており、クリスタルタワーなどは当初24人で挑む高難度コンテンツだったが、「難度を下げたお祭りのようなものがいいのでは?」と権代氏からの提案で、現状のようなものになった経緯がある。結果、全員が納得ずくで進めているため、問題が発生した場合も、誰かのせいというわけではなく、間違った以上は全員の責任という意識で事にあたっているという。

 また、最初に決めた計画だけを守って作っているのではなく、プレイヤーからのフィードバックを重視してそれに割けるコストを最初から見込んだうえで、ゾディアックウェポンのように新しい企画を盛り込んでいる、と吉田氏。すべてはプレイヤーの声次第なのだ。

 ここでまた吉田氏から権代氏に提案が。ゾディアックウェポンストーリーも長くなってきたので、そろそろアートマのドロップを調整しないかの問いに、「はい」と権代氏。パッチ2.4での実施を告げると、会場の盛り上がりは最高潮に。「自分も集めます」という権代氏には笑いが起こった(吉田氏はノウスまで完成している)。


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▲「これで、ゲームのすべてを僕が作っているわけではないというのがおわかりいただけたでしょうか。ゲームで問題があったときには、「ヨシダーーー!!」のほかにも「ゴンダイーーー!!」とも叫んでほしい」と吉田氏。

 以上でバトルセクションの解説は終わったが、せっかくなので最後にバージョン3.0(拡張ディスク)のトレーラーを、と吉田氏。ここに、近くのスタジオで蛮神バトルアレンジのブルーレイディスクのレコーディングをしていたという、サウンドディレクターの祖堅(正慶)氏も呼び出され、鑑賞会に。


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▲完成形を初めて観るという祖堅氏。

FINAL FANTASY XIV: Heavensward Teaser Trailer

 竜騎士がフィーチャーされたこのトレイラーを受け、吉田氏は「ぜひ竜騎士のジョブクエストを終わらせていただいたほうが、より楽しめるのではと思います」と語り、続けて「あとジョブについて何かないの?」と大きなネタ振り。

 「それは明日……」と言いかけた権代氏の声を掻き消す大歓声の中、「本当は今日権代は、あるTシャツを着てくるつもりだったが、見つからなかったそうです」と吉田氏。

 何の柄か問われた権代氏が『バットマン』と答えると、何かに気づいた観客たちが拍手とともに声を張り上げた。「僕は、クリストファー・ノーラン監督のシリーズが大好き」とだけ語って、これくらいにしますかと全員退散の構え。

 「そういえばレコーディングは?」と祖堅氏に水を向けると、「順調です。早く終わりそう」との回答。だったら閉会式でステージで演奏が可能かと聞く吉田氏に「もちろん」と祖堅氏は答え、バンドTHE PRIMALSのライブがここで確定。観客のボルテージが高まったままパネル終了となった。


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