インディークリエイターの祭典、今年も開催!
インディークリエイターの祭典“INDIE STREAM FES”が、東京ゲームショウ 2014開催期間中の2014年9月20日に行われた。国内外で活躍するインディーディベロッパーおよびそれを支援したい企業・メディアが一堂に会し、交流を深めた。
インディーデベロッパーを中心とした交流サイト“INDIE STREAM”(⇒サイトはこちら)の生みの親であるNYAMNYAM(代表作『TENGAMI』)の東江亮氏、NIGORO(代表作『LA-MULANA』)の楢村匠氏が主催・発起人となって企画されたこのパーティー。“INDIE STREAM”設立の発表を兼ねる形で行われた昨年は、東京ゲームショウ 2013最終日夜に品川ソニー・コンピュータエンタテイメントジャパンアジア(SCEJA)社屋内で実施されたが、今回は東京ゲームショウ会場内の国際会議場ホールでの開催。SCEJAをはじめとする多数のスポンサー企業の支援を受け、より多くの参加希望者の都合に沿う会場での開催となった。
本パーティーは、取材・報道陣を含む参加者全員から会費を徴収するスタイル。これについて東江氏は、開会挨拶で「会費を払ってでも本気でゲームを発信したい、それをキャッチしてニュースに流したい、配信していきたい“本気の人”だけを集めたかった」と説明した。
楢村氏も「ここに集まっているのは“本気のインディー”を後押しする人たちのはず。去年より(会の)目的が絞られたぶん、歓談の内容も有意義なものになるでしょう」とパーティーの趣旨をフォロー。決して安価とはいえない会費の設定から、“INDIE STREAM FES”を単なるお祭りに済ませないという両氏の意気込みが伝わった。
独創的なゲームとそのクリエイターを注目される場所へ……“INDIE STREAM2014 AWARD”
「インディーゲームの環境が去年から急激に変わってきたいま、ただデベロッパーが集まるだけでは注目されない」「国内のインディーにもっと光を当ててもらいたい」ということで新設された“INDIE STREAM Award”。その第1回目の授賞式が行われた。応募総数46、ノミネート10作品の中から選ばれた各賞の受賞作品は以下の通り。
【審査委員特別賞】
『NEO AQUARIUM 2: ACE OF SEAFOOD』
作者名 : Nussoft
⇒WEB Site
『Ninja Smasher!』
作者名 : Q-Cumber Factory
⇒WEB Site
【Best of Art】
『Rooms: The Unsolvable Puzzle』
作者名 : HandMade Game
⇒WEB Site
おとぎの世界のようなグラフィックが印象的なパズルゲームが“Best of Art”を受賞。制作したのは、韓国を拠点とする独立系ゲームスタジオ。現在は新たなパズルゲームとKinect対応のプロジェクトにも取り掛かっているとのこと。
【Best of Game Design】
『TorqueL』
作者名 : FullPowerSideAttack.com
⇒WEB Site
第18回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門新人賞をはじめさまざな賞を受賞した『TorqueL』が、斬新なゲームシステムを評価され受賞。「『TorqueL』で賞をいただくのは4つめですけど、まだ全然貰い足りないので今後もよろしくお願いします」(FullPowerSideAttack.com代表・なんも氏)。ちなみにPS4/PSVita/PC用の製品版は現在鋭意開発中とのこと。
【Best of Narrative】
『メゾン・ド・魔王 / Unholy Heights』
作者名 : プチデポット Petit Depotto
⇒WEB Site
【Best of Technical Art】
『Gangs of Space』
作者名 : LittleBigMMO
⇒WEB Site
日本在住のフランス人ふたり組が開発した、MMO要素のあるスペースシューティングゲーム。3.11の震災を機に独立を決意し、2011年末にLittle Big MMOを設立。同社の1作目となるタイトルが、その革新的な技術力を高く評価された。
【Best of Sound】
『メゾン・ド・魔王 / Unholy Heights』
【Best of Indie Stream】
『メゾン・ド・魔王 / Unholy Heights』
アパートが舞台の異色のタワーディフェンスゲーム『メゾン・ド・魔王』が、大賞に相当する"
Best of Indie Stream”を含む三賞同時受賞。プチデポットのリーダー“めづかれ”こと川勝徹氏は、受賞を喜びつつ、ともに作り上げた仲間たちへの労いを何度も表した。「3人のメンバーが一生懸命作ったものです彼らの頑張りに対して最大の賛辞を示したいと思います」(川勝氏)
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■クリエイターのアピール力を引き出す“ライトニングトーク”
クリエイターが檀上に上がり、自身の活動を直接アピールする機会として設けられたライトニングトークコーナー。事前にエントリーした10組が、2分という限られた時間で開発中のゲームや自社の事業内容を紹介した。
■プラットフォームの垣根を超えた“インディーゲームLOVE”
パーティー後半は、INDIE STREAMの活動を支援する企業のセッションが檀上で行われた。前回はSCEJAが自社プラットフォームを通じてのインディーデベロッパー支援構想を発表するのみだったが、今回はさまざまなパブリッシャー、ゲームエンジン開発会社、ミドルウェア開発会社が具体的な支援体制を表明。インディーゲームを取り巻く環境の劇的な変化が伺えた。
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とくに会場内が沸いたのが、『Mithy No.9』を開発中のコンセプト・稲船敬二氏のゲストセッション。「今日はインディーの皆さんにいいお話を持ってきました」と切り出し、日本初のインディーゲーム支援ファンドの設立と、国内クラウドファンディングサービス“Makuake”との共同によるインディーゲーム振興プロジェクトを発表した。「インディーで一番大事なことはクリエイティブに対しての情熱で、二番目はお金。情熱があってもお金がないと作れない」(稲船氏)ことから、いちクリエイターの立場を超えたアクションを起こしたという。“Makuake”を運営するサイバー エージェントの中山氏は、本パーティーのライトニングトークにも参加したミラクルポジティブの『Airship Q』の資金調達成功例を挙げ、クラウドファンディング+投資会社・大手パブリッシャーというシステムが生まれつつあることを指摘。“Makuake”で発表し話題になったゲームプランに投資会社やSCEJAなどのプラットフォーマ―が投資する、日本独自のスタイルのインディーシーン構想を語った。
「ソニーが乗っているのにマイクロソフトが乗らないわけにはいかないんじゃないですか?」との稲船氏の問いかけに対し、スポンサーセッションで登壇したフィル氏はその場でオーケーの返事。Xbox部門リーダーからの“確約”を引き出したことで、会場は一層の盛り上がりを見せた。
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■パーティー取材を終えて……
「前のコンソール・ジェネレーションでは(開発規模が)大きいゲームばかりが成功して、クリエイティビティが下がったと思っている」(フィル氏)
「ゲーム業界には、ゲームを好きじゃないのにゲームを作っている人たちがたくさんいる。そういう人たちを手伝うのはもうイヤだなと」(浅井氏)
「(自分のゲームを)よりたくさんの人に触ってもらい、幸せになってもらうために、利益を出すことは最低条件」(河崎氏)
「日本のゲームを変えるのはここ(インディー)からしかないと思っている」(稲船氏)
スポンサー・ゲストセッションの登壇者によって語られたこれらの言葉からは、従来の大掛かりなゲーム開発のありかたに対する一種の頭打ち感と、新たな市場としてのインディゲームに寄せる期待の高さがうかがえた。“突然変異のヒット作”の出現をただ待ちわびたり、資金力や技術力を盾に開発体制をコントロールするのではなく、個々のインディーデベロッパーのクリエイティビティーを妨げない環境を率先して提供する。それが業界全体の活性化、引いては自社の利益に繋がる……という意識を本パーティー開催に協力した企業が持ち続けられるかが、今後のインディーゲームシーンの動向を左右するといっても過言ではない。
「クリエイターは不器用なんです。ゲームで自分たちを語ることしかできない」(東江氏)
「活動を支援してくれる方は増えたと思いますが、誰よりもやらなきゃいけないのは自分自身」(楢村氏)
パーティーを締めくくる挨拶での両氏の言葉は、“自分たちが作りたいゲーム”を作り続けることの意思表明のようでもあった。そこには、スポンサー企業側の高い熱量とはまた別次元の熱さが宿っていた。また楢村氏は、パーティー冒頭でインディーに関わる者どうし繋がることを推奨する一方、目の前の相手が本当に信頼できる仲間か見極める場でもあることを強調している。
“INDIE STREAM FES2014”は盛況のうちに終わった。今回のイベントを一過性のお祭りとするか“国内インディーゲームシーン・本格始動”の象徴ととらえるかは個々の参加者次第だが、筆者にとっては、INDIE STREAMの名のもとに集うクリエイターとそれを支援する企業の、メインストリームのゲームとは対極のベクトルに突き進む“本気”を思い知る機会となった。
イベント開催の準備中『LA-MULANA2』の開発をストップしていたという楢村氏は、パーティー終了直後のインタビューで「次(INDIE STREAM FES2015)は他の方にやってもらいたいですね」と本音(?)を漏らした。誰もやらないから自分でやる……というスタンスでつねに新たな道を開拓してきた氏のアクションが、今後のインディーゲーム・シーンの成熟ぶりの指標になるかもしれない。