“PIANO OPERA music from FINAL FANTASY”は植松伸夫氏と中山博之氏の愛情たっぷりのコンサートだった 公演内容と演奏後のコメントをリポート

スクウェア・エニックスは2014年5月9日と5月10日に、東京・大手町よみうりホールにて、ピアノコンサート“PIANO OPERA music from FINAL FANTASY”東京公演を開催した。ピアニストの中山博之氏が奏でる名曲の数々、作曲家の植松伸夫氏の軽妙なトークなどをお届けしよう。

●コンサートならではの迫力で、珠玉の名曲たちを堪能

 スクウェア・エニックスは2014年5月9日と5月10日に、東京・大手町にあるよみうりホールにて、ピアノコンサート“PIANO OPERA music from FINAL FANTASY”東京公演を開催した。

 ここでは、初日となる5月9日の公演における、ピアニストの中山博之氏が奏でた名曲の数々、作曲家の植松伸夫氏の軽妙なトーク、今回がはじめての企画となる“今、誰かに伝えたいこと”、そして演奏終了後の植松氏と中山氏のコメントをお届けしよう。


■ブラジルでコンサートをしたときのエピソードも


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▲「最後まで楽しんでいってください」と気さくにファンに語りかける植松伸夫氏。

 まずはじめに、演奏の合間に行われたトークの内容を紹介する。

 登壇した植松伸夫氏は、ファンに遠くから来た人はいないかと質問。大阪、仙台と答えるファンがいる中、なんとメキシコから来たという女性も。『FF』や植松氏の音楽がいかに愛されているかがこのことでもわかる。


 その後、MCの小川りかこ氏と中山博之氏も交えてトークは続けられた。中山氏は最近、ブラジルでコンサートを行ったそうで、「ブラジルでは『ファイナルファンタジー』や植松さんのゲーム音楽は非常に人気があるので、文化貢献の意味も兼ねて行ってみたんです」とコメント。現地ではキャパシティが500人の会場に1000人のも来場者が訪れる大盛況だったとのこと。


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▲左から小川りかこ氏、植松伸夫氏、中山博之氏。

 中山氏はブラジルでのコンサートについて、エコノミークラスで27時間かかったこと、現地ではポルトガル語しか通じないため路頭に迷いそうで不安であったこと、譜面が盗まれてしまったことなどの苦労があったようだが、現地で“総立ち”になるほどのコンサートの盛り上がり、そんな苦労も吹き飛んだとこのこと。

 続いて、中山氏が音楽を始めたきっかけについても語られた。家系には音楽家はいなかったが、中山氏は姉がピアノを習いだしたことをきっかけにピアノを始め、めざましい上達を遂げたそうだ。ちなみに、中山氏は“流行り音楽”というものをほとんど聴かないとのこと。ブラームスやベートベンなどのクラシック音楽や、『有楽町で会いましょう』といった1940年の歌謡曲をよく聴いていたそうだ。その理由については「よくわからない」らしい。


■1曲目からひん死の状態に?


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 ここからは、実際に演奏された楽曲を紹介していこう。

 本コンサートの選曲について植松氏は、発売中のアルバム『PIANO OPERA FINAL FANTASY VII/VIII/IX』をメインに選曲したとのことだが、「この会場にいる人の中には昔からのファンもいるかもしれません。そういう人たちのために昔の曲を入れたいなと思っていました」と、『VII』以前の曲も演奏された。

 オープニングを飾ったのは、『ファイナルファンタジーVIII』より“Force Your Way”。勇ましさを感じるバトル曲だ。中山氏は後のトークで「ひん死の状態になりました」と語り、1曲目から演奏が難しいハードな曲だったようだ。


 2曲目は『ファイナルファンタジーVII』より“花火に消された言葉”。『PIANO OPERA FINAL FANTASY VII/VIII/IX』インストアイベントでは、植松氏は好きな曲としてこの曲を選んでいた。しっとりとした物静かな楽曲となっている。

 3曲目は『ファイナルファンタジーIX』より“ハンターチャンス”。こちらはインストアイベントでも実際に演奏された楽曲であり、もともと激しい楽曲にさらに躍動感溢れるアレンジが加えられていた。

 4曲目は『ファイナルファンタジーIX』より“ローズ・オブ・メイ”。曲を聴いて、ゲーム中のキャラクター・ベアトリクスを思い浮かべる人も多いだろう。落ち着いた透明感のある曲だが、緩急をつけてドラマティックに演奏されていた。


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 5曲目は『ファイナルファンタジーVII』より“星降る峡谷”。勇ましさの中に、ゲーム中のキャラクター・レッドXIIIのかわいらしさ(?)も感じられる楽曲だ。

 6曲目は『ファイナルファンタジーVIII』より“The Man with the Machine Gun”。アップテンポかつメロディアスな楽曲であり、ピアノアレンジにより原曲とはまた違った味わいとなっていた。また、演奏中のモニターには“斬鉄剣”を派手に放つシーンが流れていた。

 7曲目は『ファイナルファンタジーIX』より“独りじゃない”。落ち着いた曲調ながら、どこか希望を感じさせる楽曲だ。作中の名シーンで流れるため、思い入れのある人も多いだろう。

 8曲目であり、第1部のラストを飾ったのは『ファイナルファンタジー VII』より“オープニング~爆破ミッション”。徐々に激しさを増していく、おどろおどろしさも感じる楽曲だ。中山氏の演奏は超絶技巧と思えるもの。左手が小刻みに動き低音部を連打し、ときには腕をクロスさせるという場面もみられた。


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 9曲目であり、第2部のオープニングとして選曲されたのは、『ファイナルファンタジーVIII』より“Ami”。作品のキャラクターたちの友情関係を描いた曲とのことだ。

 10曲目は『ファイナルファンタジーIV』より選曲された“トロイア国”。直前の“Ami”と同じく、どこか優しさを感じる楽曲だ。
 
 11曲目は『ファイナルファンタジーVII』の人気曲“更に闘う者たち”。おなじみのメインフレーズには多数のアレンジが加えられており、曲が進むごとにその激しさは増していった。


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■“今、伝えたいこと”とは


 11曲目の演奏終了後、ファンがアンケートに書いた大切な人への“今、伝えたい”メッセージを、中山博之氏の演奏をBGMに、MCの小川りかこ氏が読み上げるという企画が行われた。


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 5月9日の公演では、長年ケンカをして会うことがなかった友人、『ファイナルファンタジーVI』の楽譜を渡してくれたピアノの先生、お互いに深い愛情を綴った夫婦、震災で亡くなったお子さんが好きだった植松氏へのメッセージが捧げられた。

 植松氏は「何かのきっかけで遠くに行ってしまったりすると、ああしまった、あのときに伝えていればよかったってこと、よくありますよね」「(亡くなったお子さんは)きっと聴いていますよ」などと、メッセージについて優しいコメントを贈っていた。


■アンコール曲にはまさかのあの曲も


 企画“今、伝えたいこと”を経て演奏された12曲目は、『ファイナルファンタジーVIII』より“Liberi Fatali”。トークの後のなごやかな雰囲気からの演奏となったので、中山氏は「大変なんですよ、気持ちを切り替えるのって」(中山氏)。ちなみに、曲名はラテン語で“運命の子どもたち”という意味。モニターでは、楽曲が実際に使用されていたオープニング映像が流れていた。

 13曲目は『ファイナルファンタジーIX』より“Melodies Of Life”。インストアイベントにてファンからのリクエストを受けた楽曲だ。ピアノが奏でるそのメロディは、もともとのボーカル曲とは違った魅力に溢れていた。

 14曲目は、記念すべき第1作目『ファイナルファンタジー』より“メインテーマ”。モニターでは1作目のオープニング映像も流れていた。これからの冒険を感じさせる、より壮大な楽曲へと生まれ変わっていた。


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 15曲目、コンサートの最後を飾ったのは『ファイナルファンタジーVI』より“妖星乱舞”。シリーズでも屈指の大曲であり、第四楽章までが存在している。今回のコンサートでも、その演奏時間は10分を超えた。モニターではゲーム中のキャラクター・ケフカの姿がハイライトで流れていた。どこか軽妙さがあるフレーズもありながら、演奏はドラマティック。演奏終了時には、これまでで最大の拍手が送られていた。

 アンコール曲に選ばれたのは、これもまた『ファイナルファンタジーVI』の楽曲。曲が聴こえてきた瞬間、客席からは笑い声がもれていた。なぜなら、それが“道化師ケフカ”であったからだ。ケフカを象徴する楽曲に続き、ケフカのテーマとも言えるフレーズがアンコール曲に選ばれたことは、ある意味、サプライズと言えそうだ。


■ファンがいてこそ完成する

 プログラムすべての演奏を終えると、中山氏は「イチ植松伸夫ファンとして、この場にいれたことを光栄に思い、また幸せです」と語り、植松氏は「私たちのように、モノを作っている仕事は最終的にお客さんに喜んでいただけて始めて完成するんです。だから、喜んでくれるお客さんは欠かせません。僕たちが一生懸命演奏し、みなさんも楽しんでいただけたのであれば、このピアノコンサートは完成した空間になったと思います。どうもありがとうございました」と、会場に訪れたファンに改めて感謝の言葉を贈った。


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▲アンコール後、スタンディングオベーションとなった。

 アンコール曲の終了後、会場にはさらに大きな拍手が溢れ、ひとりひとりとファンが立ち上がり、いつしか総立ちのスタンディングオベーションとなった。


■演奏を終えて

 演奏終了後、中山氏と植松氏に少し時間をいただき、初日のコンサートを振り返っていただいた。

 植松氏は「1回目だからどうなるか予想がつかなかったのですが、ファンからのコメントが暖かいものばかりでした。コンサートに来てくれるファンは、本当にいい人ばかりです」。

 中山氏は「全力で演奏はしていますし、準備もしてきています。でも、最終的にはお客様に助けられたと思います」。おふたりとも初日だからでこその不安があったようだが、ファンが作り出す会場の雰囲気が力になったようだ。

 『FF』のコンサートで初の試みとなった“今、伝えたいこと”の企画については、「(アンケートが取り上げられた人にとっては)深夜放送で読まれるハガキのようにうれしいものですし、個人で行うコンサートでは、こういった企画はもっとあってもいいのかなと。僕たちは楽しいコンサートにしていきたいんです」(植松氏)。

 また、中山氏は今回トークで語られたブラジルでのコンサートについて、植松氏がその場にいなかったことに違和感を感じたそうで、作曲家がいてこそ“見守られている”感覚があり、楽曲の精神を伝えることができるのだと、植松氏の存在がいかに大きいものであるかを改めて感じたそうだ。


■愛情たっぷりのコンサート

 今回のコンサートを体験してわかったのは、ファンがいかに植松氏と中山氏がつくりだす音楽を愛しているか、おふたりもまたいかにファンを愛しているか、ということであった。ファンは「ブラボー」の声援や暖かいメッセージをおふたりに贈り、おふたりもファンがあってこそのコンサートであると語っている。クリエイターとファンが相互に愛し合っているという、理想的なかたちがそこにはあった。

 なお、“PIANO OPERA music from FINAL FANTASY”は6月7日に仙台での公演を迎える。今回の“今、伝えたい”メッセージで話された、震災で亡くなったお子さんは、こちらの公演も天国で聴いてくれるだろう。植松氏と中山氏の奏でる音楽を、ぜひファンへの愛情が感じられるコンサートホールで体験してほしい。


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【出演】

製作総指揮:植松伸夫
ピアニスト:中山博之
司会:小川りかこ

【セットリスト】

・第1部
Force Your Way(ファイナルファンタジーVIII)
花火に消された言葉(ファイナルファンタジーVII)
ハンターチャンス(ファイナルファンタジーIX)
ローズ・オブ・メイ(ファイナルファンタジーIX)
星降る峡谷(ファイナルファンタジーVII)
The Man with the Machine Gun(ファイナルファンタジーVIII)
独りじゃない(ファイナルファンタジーIX)
オープニング~爆破ミッション(ファイナルファンタジーVII)

・第2部
Ami(ファイナルファンタジーVIII)
トロイア国(ファイナルファンタジーIV)
更に闘う者達(ファイナルファンタジーVII)
Liberi Fatali(ファイナルファンタジーVIII)
Melodies Of Life(ファイナルファンタジーIX)
メイン・テーマ(FINAL FANTASY)
妖星乱舞(ファイナルファンタジーVI)

・アンコール
魔導士ケフカ(ファイナルファンタジーVI)


(取材・文 編集部/ヒナタカ)