ピアノで奏でられる『FF』の名曲はまた格別

植松伸夫氏と中山博之氏のいちばん好きな楽曲とは? 『PIANO OPERA FINAL FANTASY VII/VIII/IX』インストアイベントリポート_01
▲中山博之氏(左) 植松伸夫氏(中央) 世界三大三代川(右)

 スクウェア・エニックスは、ピアノアレンジアルバム『PIANO OPERA FINAL FANTASY VII/VIII/IX』の発売(4月23日発売)を記念して、2014年4月27日にタワーレコード秋葉原店にてインストアイベントを開催した。内容は作曲家の植松伸夫氏とピアニストの中山博之氏のトーク、中山氏による生演奏のライブ、CD購入者を対象とした握手&サイン会だ。

 司会として登壇したのはファミ通の世界三大三代川。まず、トークショーでふたりが語ったのは、『PIANO OPERA FINAL FANTASY VII/VIII/IX』が発売したことの率直な感想。植松氏は「形にできてホッとしています。満を持して発売という印象」、中山氏は「いち『ファイナルファンタジー』ファン、植松さんファンとして発売をうれしく思います」と語った。

 進行はトークをはさみつつ、中山氏による『PIANO OPERA FINAL FANTASY VII/VIII/IX』の収録曲が演奏された。

どうしても外せない曲もあった

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 トークの中心となったのは、植松氏と中山氏による楽曲への思い入れだ。『ファイナルファンタジー』シリーズの膨大な楽曲の中から、今回のCDに収録されているのは12曲。その選曲について植松氏は「曲数そのものが増えているうえに3作品(『VII』、『VIII』、『IX』)からたった4曲ずつの選曲です。定番にしすぎず、あまり表に出ていない曲も入れたかった」と選曲時の想いを振り返った。人気のある楽曲『片翼の天使』が入っていないことについては、そういった意図があってのことだ。

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 どうしても外せなかった曲に関して植松氏は『ファイナルファンタジーVII』の『星降る峡谷』と『花火に消された言葉』と回答。その理由は「好きだったけど、いままであまりアレンジされていなかったから」とのこと。

 その選び抜かれた楽曲の編曲を手がけたのが、中山氏。今回の編曲については「音数も増え、尺も長くなった楽曲をピアノで再現するにあたり、ファンのイメージを壊さないようにと考えて作りました」(中山氏)。

  ただ制作当初、植松氏は中山氏からあがって編曲のMIDIデータを聞いて、その音の多さに驚き「本当に弾けるのか?」と不安に感じたとのこと。「10本の指が入り乱れて弾くような譜面になっている。ピアノを弾いたことがある人にとっては、よくこんなのが弾けるなと思うほどですので、そこを聴いて感じてください」(植松氏)。

 ハードルをあげた状態で演奏されたのは、『ファイナルファンタジーVII』からの収録曲 “オープニング~爆破ミッション”。メロディアスかつ、勇ましさを感じる楽曲だ。

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 演奏終了後、植松氏は「難しいのにテンポ早くしたね。緊張したぶん、早くなったのでは? これで競馬好きなうえに、車を峠を責めますからね、意外でしょ?」と、中山氏に茶々を入れていた。

■楽曲”Ami”には隠された意味が?

 次のトークテーマは、「ふたりが1曲だけ好きな曲を選ぶとしたら何か」というお題。植松氏は「『花火に消された言葉』かなあ。でも、どの曲も腹を痛めて産んだ子どものようなものなので全部好きなんです。中にはみんなに愛されている子もいれば、人気がなくてひっそり閉じこもっちゃう子もいる。でも、どの子もカワイイでんすよ」と、楽曲への想いを語った。また、CDにあと1曲入れるとしたら何かという質問に対して植松氏は、中村氏にバトル曲のアレンジを頼むと毎回おもしろいものができ上がるので、『ファイナルファンタジーIX』のラストバトルの楽曲である『最後の闘い』を入れたいと考えていたとのことだ。

 一方、中山氏は『ファイナルファンタジーIX』の『Melodies Of Life』をいちばん好きな楽曲にあげた。植松氏が「演奏がいいんですよ」と言うと、中山氏は「曲がいいんですよ」と笑いながら返した。このやり取りは、もはやお約束。

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▲植松氏は中山氏について「低姿勢のフリが上手い」、さらに「中山氏は競馬好きなうえに、クルマで峠を攻めますからね、意外でしょ?」などと茶々を入れ、会場は時折、笑いに包まれた。

 続いて演奏されたのは『ファイナルファンタジーVIII』からの収録曲『Ami』。ゆったりしたテンポの、どこか落ち着ける雰囲気を持った、アルバムの1曲目を飾るにふさわしい楽曲だ。

 演奏終了後、植松氏は曲名について、“Ami”とはスペイン語で友だちという意味で、『ファイナルファンタジーVIII』の作中で描かれる友情関係から付けたタイトルなのだと解説。だが、じつはもうひとつ意味があるという。「じつは『アミ 小さな宇宙人』という本からとったものでもあるんです。みんなが仲よく暮らすにはどうすればいいのか、ということが描かれた、とてもいい本なのでぜひ読んでください」(植松氏)。

ピアノコンサートへの期待も

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 植松氏と中山氏のふたりは東京・仙台で行われるピアノコンサート『PIANO OPERA FINAL FANTASY VII/VIII/IX』についても言及。仙台で『ファイナルファンタジー』のピアノコンサートが開かれるのは今回で、中山氏は公演に向けて猛練習をしているという。

 中山氏はピアノコンサートの意気込みを問われ、「『PIANO OPERA FINAL FANTASY VII/VIII/IX』ではホールで聞くグラウンドピアノの響きを味わってください」(中山氏)。植松氏は「デジタルピアノでは表現できない、生の楽器の表情の豊かさをぜひ体験してほしいですね」と語った。東京公演は残念ながらすでに満席になっているが、仙台公演のチケットはまだ購入可能とのこと(4月27日時点)。

 終了予定の時間も近づき、最後の演奏曲として選ばれたのは、『ファイナルファンタジーIX』からの収録曲『ハンターチャンス』。演奏はピアノのみの演奏とは思いないほどの躍動感、迫力があった。

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あの名曲も披露

 ここで司会の世界三大三代川からの「もう1曲くらい聞きたいですよね!」とのリクエストに、観客からは大きな拍手が。その期待に応えて演奏されたのは、中山氏がいちばん好きだと語った『Melody Of Life』。すでに中山氏はその楽譜をピアノの上に置いており、自身も弾くつもり満々だった様子。『Melody Of Life』はもともとはボーカル曲であるが、より繊細で“しっとり”としたピアノ曲に仕上がっていた。

 最後に中山氏は「昔からファンであった植松氏の楽曲により、演奏会ができることを楽しみにしています」と語り、植松氏は「『PIANO OPERA music from FINAL FANTASY』の構成は盛り上がりの場所などいろいろと考えているので、ぜひ楽しみにしてほしいです」と述べ、本イベントを締めくくった。

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▲イベント終了後の握手&サイン会。なごやかに行われたトークもあり、会場を訪れた人の多くが笑顔で植松氏・中山氏と言葉を交わしていたのが印象的だった。

(取材・文 編集部/ヒナタカ)