ゲーム業界における日本ゲーム大賞の位置づけとは?

日本ゲーム大賞の意義をクリエイターはどう見るのか? カプコン・平林氏、セガ・酒井氏に聞く_11

 既報の通り(→記事はこちら)、2013年度を代表するにふさわしいすぐれたコンピューターエンターテインメントソフトウェア作品を選考・表彰する“日本ゲーム大賞 2014 年間作品部門”の一般投票が開始されている。

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※日本ゲーム大賞2014 年間作品部門の一般投票が本日(4月7日)より受付開始 年間を代表するゲームソフトを決定する

 日本ゲーム大賞は、1996年にCESA大賞(コンピュータエンターテインメント・ソフトウェア・アカデミー大賞)としてスタート。以降、名称や選考方法などを何度か変更しつつ、18年にわたって継続されている歴史ある賞。各年の受賞作を見れば、国内ゲームの歴史が展望できるという、日本のゲーム業界を象徴する“賞”となっている。

 ここでは、2013年に開催された日本ゲーム大賞 2013 “年間作品部門”にて、優秀賞を受賞した、カプコン『バイオハザード6』の平林良章プロデューサーとセガ『ファンタシースターオンライン2』の酒井智史プロデューサーに、日本ゲーム大賞の意義などを聞いた。

※本企画は、週刊ファミ通2014年4月24日号(4月10日発売)の記事の完全版となります。

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▲2013年に行われた“日本ゲーム大賞 2013 年間授賞式”の模様から。

カプコン・平林良章氏「評価を受けたことで、つぎのモチベーションにつながる」

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カプコン
第四開発部 第一開発室
プロデューサー
平林良章氏

――『バイオハザード6』が、日本ゲーム大賞 2013の優秀賞を受賞しましたが、まずは率直なご感想をお聞かせください。
平林 うれしい以外の何ものでもないですね。やはりファンの皆さんに選んでいただける賞ということで、喜びもひとしおです。2012年にはフィーチャー賞をいただいたわけですが、翌年の2013年には優秀賞の受賞ということで、リリースされる前の“期待度”と、発売されたあとの“満足度”という意味では、ファンの方に納得していただけたのかな、という思いもありますね。そういった意味でも、すごくうれしかったです。

――やはり、ユーザーの方に選ばれるというところで、喜びもひとしおといったところですか?
平林 そうですね。もちろん、日ごろお付き合いをしているメディアの方に、お褒めの言葉をいただくのは、それはそれですごくうれしいことなんですけど、やっぱり“ユーザーの皆さんに届ける”というところが私たちの最終の目標です。ですので、皆さんに楽しんでプレイしてもらえるということを想像しながら開発をがんばっているので、やっぱり手に取っていただいた方に評価されるというのが、いちばんうれしいですね。

――優秀賞を受賞して、何か変わったところとはありますか?
平林 何が変わったかな……というところで言えば、「皆さんにちゃんと届けられた」という評価を受けたことに対して、現場の人間が「またつぎの作品をがんばろう!」ということで、新しいモチベーションが生まれたことですね。たくさんの方に遊んでいただいた『バイオハザード6』なのですが、なかなか生の声が聞こえてこない部分もあるんですね。こういう目に見える形で評価していただけたのは、「ああ、皆さんに届けたモノが、楽しんでもらえたのだ!」というところで、指針になります。

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――今後の日本ゲーム大賞に関しては、何を望みますか?
平林 よりファンの方の意見が見える方向に進化していっていただけるとうれしいですね。さらに権威ある賞として、どんどん認知度が高まっていくと、存在意義も増していくのではないかと。個人的には、ラズベリー賞みたいなものがあってもいいのかなと思っています。“光”があれば“闇”もあるということで、よりフェアな賞ということで認知してもらえますし、話題にもなりますから。ただ、クリエイターからすれば、絶対にもらいたくないですが(笑)。

――“日本ゲーム大賞 2014 年間作品部門”の一般投票が開始されていますが、投票を考えているユーザーの方にひと言お願いします。
平林 「弊社のタイトルをよろしくお願いします!」というのは置いておいて(笑)、皆さんが楽しんでくださったタイトルのフィードバックをいただくことは、開発陣にとってのモチベーションアップにもつながりますし、新しい何かを生み出すきっかけにもなりますので、ぜひ投票してみてください。

【受賞作】
『バイオハザード6』
発売元:カプコン
ハード:プレイステーション3/Xbox 360
価格:パッケージ版/2848円[税抜](3076円[税込])、プレイステーション3デジタル配信版/2800円[税抜](3024円[税込])、Xbox 360デジタル配信版(※DLC「日本語ボイスパック」は含まれておりません)/2476円[税抜](2674円[税込])

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※『バイオハザード6』の公式サイトはこちら

セガ・酒井智史氏「大きな目標のひとつであることは間違いない」

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セガ
オンライン研究開発部
プロデューサー
酒井智史氏

――『ファンタシースターオンライン2』が、日本ゲーム大賞 2013の優秀賞を受賞しましたが、率直なご感想をお聞かせください。
酒井 2001年に『ファンタシースターオンライン』が日本ゲーム大賞を受賞していたので、『2』でも何かもらえたらいいな……と思っていたんです。ですので、優秀賞を受賞できて本当にうれしかったです。受賞したときは、ちょうどゲームに不具合が発生してしまい、チーム全体が落ち込んでいたところだったので、「しっかりがんばって、皆さんに恩返しがしたい!」という前向きな気持ちになれました。

――ゲームクリエイターさんにとって、日本ゲーム大賞というのは、どのような位置づけになるのでしょうか?
酒井 賞にもいろいろありますが、その中でも日本ではいちばん権威がある賞というか、その年のゲームを俯瞰する上で、重要な指標になるものだと思っています。

――やっぱり、クリエイターさんにとって、ひとつの目標になる?
酒井 そうですね。やっぱりいただいたらうれしいものですし。

――たとえば、フィーチャー賞を取ったら、社内でも鼻高々になるとか?
酒井 じつは、『龍が如く』シリーズって、毎回フィーチャー賞をもらっていたんですよ。当然僕らも『ファンタシースター』シリーズでも毎回狙っていたのですが、『龍が如く』は取れるんだけど、こっちは取れなかったということがずっと続いていたんです。東京ゲームショウの会期中は、話題になりそうなノベルティを企画してみたりもしたのですが、ダメでした。

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――やっぱり、そういった企業努力もするんですね。
酒井 それが、『ファンタシースターオンライン2』では、あまり努力らしい努力もしなかったのですが、フィーチャー賞を取れたんです。そのときはうれしかったですね。開発陣がモチベーションを上げるには、ユーザーの皆さんの「おもしろいです」という声が一番なのですが、ネットではマイナスの声が大きくなりがちで、それを聞ける場所ってすごく少ないんですね。それが、周囲からの“評価”としていただけるものが賞だと思っているので、そういった意味では、賞をもらえることは、ものすごくモチベーションが上がりますね。

――では、あえて日本ゲーム大賞の課題があるとしたら、それは何でしょうか?
酒井 人気投票になったら意味がないと思うんです。ユーザー数が多いゲームが賞を取ってしまったら、けっきょく“最大公約数”的なものになってしまう。ゲーム大賞だからこそ、発掘されるようなゲームがあるといいなと。たとえば、2012年に『GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動』が大賞を受賞したときも、「いいところに目をつけているなあ」ということを、すごく感じました。

――取材陣も、あのときはちょっぴり意外でしたね。
酒井 実際のところ、『ファンタシースターオンライン』が、その年に発売されたたくさんの超大作を差し置いて大賞を受賞したときも、周囲にびっくりされたんですよ。ただ、そのときに“新しいソフトだから”ということで納得していただけた部分はありましたね。そういった意味では、違った評価軸によるさまざまな賞があってもいいのかもしれません。一例を挙げると、日本ゲーム大賞では、ここ数年桜井政博さんが“ゲームデザイナー大賞”を選考されていて、2013年はソニー・コンピュータエンタテインメントの『The Unfinished Swan』が受賞したのですが、とても意義深い賞だと思いますね。賞により、いろいろな作品に目を向けていただく機会が増えていけばうれしいです。

――それはありますね。
酒井 あとは、授賞式そのものにも、もう少しエンターテインメント性があってもいいのでは……とは思います。ゲーム業界自体が、エンターテインメント産業なわけですし。

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――たしかに! ゲームクリエイターが司会をするとか?
酒井 どうでしょうね(笑)。アカデミー賞では、俳優さんが司会をしていたりしますけれど。あと、授賞式ではけっこうラフな服装の方もいたりして。東京ゲームショウの会期中なので、仕方ない一面はあるのでしょうが……。そういえば、名越(名越稔洋氏)はモデルの女性同伴で授賞式に出席したんですよ。『龍が如く』のPRのためだと思うのですが、あれは印象的でした。モデルを連れて授賞式に出席したのは、名越が初めてなんじゃないかなあ。

――ああ! それはとても印象に残っています。かっこよかったですね。ゲーム大賞を盛り上げるためには、それくらいの演出は大切になるのかもしれませんね。
酒井 ゲーム大賞ひいてはゲーム業界ですね。

――酒井さんも、『ファンタシースターオンライン2』のコスプレで日本ゲーム大賞に出席するとか?
酒井 それはちょっと(笑)。

【受賞作】
『ファンタシースターオンライン2』
■発売元:セガ
■ハード:PC、PS Vita、スマートフォン
■価格:基本プレイ料金無料

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日本ゲーム大賞の意義をクリエイターはどう見るのか? カプコン・平林氏、セガ・酒井氏に聞く_02

※『ファンタシースターオンライン2』の公式サイトはこちら