メキシコとブラジルはとくにゲームが盛んらしいです

 2014年3月17日~21日(現地時間)、サンフランシスコ・モスコーニセンターにて、ゲームクリエイターを対象とした世界最大規模のセッションGDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)2014が開催。開催5日目(3月21日)には、IGDAメキシコのゼネラルコーディネーター、ケン・ルーナ氏による“Everything You Wanted to Know about Latin America”が行われた。

いま勢いのあるゲーム市場、ラテンアメリカのことがもっと知りたい!【GDC 2014】_02
▲ケン・ルーナ氏。もうちょっと踏み込んだお話が聞きたかったところではありますが……。今度、CEDECにでもお越しになって聞かせてくださいまし。

 ここ数年、有望なゲーム市場としてラテンアメリカが注目されているのはご存じの通り。たとえば、ソニー・コンピュータエンタテインメントでは、ブラジルにプレイステーション3の生産拠点を設置。現地生産体制を築いてプレイステーション3の本体価格を大幅に改定するという施策を取った(→記事はこちら)。これは、ブラジルは関税が高いことから、輸入製品は価格が跳ね上がってしまうことへの対策だが、ブラジルを有望な市場と見込んでの戦略であることは間違いない。さらに、スマートフォンが世界中に広がることで、気軽にゲームが遊べる環境になってきているのも、ラテンアメリカのゲームユーザーの増加を後押ししている。インディーゲームの優秀なクリエイターがラテンアメリカで続々と輩出されているという話もよく聞くし……。そう、ゲームメーカーにとっていまラテンアメリカは非常にアツいマーケットなのだ。

 が、正直なところ、我々のラテンアメリカに対する知識は少ない。そんなラテンアメリカに関して詳しくなる絶好の機会!ということで、記者は眠い目をこすって会場まで足を運んだ(この講義は5日目の最初のコマだったのです)。

 講演で開示されたのは、ラテンアメリカ各国のゲームメーカー数などの現状。詳細は写真をご覧いただくとして、ゲームスタジオの数を抜書きすると以下の通り。

[ラテンアメリカのゲームスタジオの数]
メキシコ……96
コロンビア……62
アルゼンチン……75
チリ……30
ブラジル……113
ペルー……15
ウルグアイ……12

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 思いのほか多いとの印象だ。ラテンアメリカにおいても、続々とクリエイターが誕生しつつあるようだ。引き続き講演では、“南米市場で展開するにあたっての障害”と、“知っておくべきこと”、“カルチャー”が示された。

[南米市場の障害]
・モバイルおよびリテールのデータが公にされず、私的なものにとどまっているため、利用することができない。料金を払うか、コネで機密情報をもらったりする以外に方法がない。
・人々がクレジットカードを信用していないので普及せず、いまだに現金取引に依存し電子取引に移行できずにいる。
・モバイルゲームのメディアが限られている。ゲームのゴシップなどに終止しているところが多い。
・モバイルゲームのマーケティング経験が少ない。

[南米市場で知っておくべきこと]
・南米市場のモバイルマーケットは今後3年間に400%拡大すると予測されている。モバイル・デバイスの普及率が上がり、エンターテインメントはその重要な部分を占める。医者の予約はキャンセルするが、サッカーの試合は絶対に見のがさない。
・メキシコとブラジルは南米でもっともビデオゲームの消費者が多い。
・ビデオゲームの開発は過去2年間で約300%の成長を遂げた。スタジオの数はメキシコだけでも調査当時は75、今年は93、来年は110くらいになると予想される。出荷商品量は2倍に増えた。ゲームを完成させる割合が増えた。

[南米のカルチャー]
・南米の人々は共通点が多いが、細かいところでそれぞれ特徴がある。
・基本的にスペインをルーツとする人たちだが、チリにはドイツ系が住んでいるなど、多少違いが生じる。だがゲームへの情熱は共通している。

 講演後に行われた質疑応答では、盛んに質問が飛び交った。「南米で開発されるゲームのクオリティーは?」との質問には、「ゲームのレベルはほかの国のレベルに届いていると思います。スタジオは独自のIPを作ろうとしています」(ルーナ氏)とのこと。

また、「ゲームイベントは開催されるのか?」との問いには、「最近メキシコでデベロッパーのイベントがありましたが、お互いが近くにいても知らない場合もあり、交流は大切な機会だと感じました。今後は多いに繋がっていくべきだと思います。コミュニティーは数年前からでき始めていますが、Facebookが大きな役割を果たしています。ある規模に届くまで、広げていく必要があるのではないでしょうか」とルーナ氏。

 さらに、「南米でいちばん欠けているものは?」との質問には、「ビジネスです」と即答。南米では、ビジネスの知識がないために、契約をせずにゲームのソースコードをパブリッシャーに渡してしまい、盗まれてしまった例もあるのだとか。「ここは絶対に改善しなければなりません」とルーナ氏はきっぱりと言う。一方で、ブラジル在住のゲーム関係者からは「いまゲームを開発しているが、南米で人材とスタジオが見つからない」と、人材不足を嘆く声もあった。

 講演に関しては、正直若干踏み込み不足の印象はあったものの、ラテンアメリカがいま勢いのある市場であることは改めて実感できた。ルーナ氏によると、メキシコもオタク文化が盛んだそうなので(とくに『ワンピース』や初音ミクが大人気らしいです)、日本のゲームメーカーにとっても、注目すべき市場となりそうだ。

(取材・文/編集部F)